転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「最悪の呪い」によって命を落としてしまった遊海…そして、知らぬうちに自分の手で大切な者の命を奪ってしまっていた遊嗣…。
彼らの未来に「光」は残されているのか…。
それでは、最新話をどうぞ。
「遊嗣さん……」
KC病院、病室……マシュはベッドに寝かされた遊嗣へと寄り添っていた。
遊海の死の原因……それは18年前、ダークネスによって仕掛けられた呪いによるものだった。
……だが、それによって遊海の命を奪ってしまったのが自分だと気付いた遊嗣は悲しみと後悔によって暴走───大事になる前に三幻魔による精霊の力の吸収によって無理矢理に意識を刈り取られ──目覚める事なく眠り続けていた。
そして、大会議室に集っていたメンバー達は一度解散したものの…誰も、病院を離れる者はいなかった…。
《オレ達が……ライトニングが、遊海を巻き込まなければ…遊嗣は、家族で笑って過ごせてたんだよな…》
「……お前が気に病む事じゃない、ライトニングに破滅の光の意思が混ざっていた時点で…この戦いは避けられなかったんだ」
病室の外では遊嗣の身を案じる遊作と尊がいた…そして、デュエルディスクから目だけを覗かせたAiが遊海や遊嗣を戦いに巻き込んでしまった罪悪感を抱くが…遊作によってフォローされている…。
《しかし…呪いの影響とはいえ、父親を手に掛けてしまった遊嗣の悲しみや後悔は……察するに余りある……尊、遊嗣は…》
「………
「オレは…遊嗣を信じる、遊海さんから受け継いだ
《遊作…》
意図しなかった事とはいえ、自分の手で父親の命を奪ってしまった遊嗣を案じる不霊夢…尊は遊嗣が立ち直れなくなると言うが、遊作は遊嗣の強さを信じていた……マシュと共に、心の闇を乗り越えて破滅の光を打ち倒した遊嗣の姿を思い出しながら…。
『………マシュ…一度、家に帰ろう…お前も疲れただろう』
「お父さん…心配かけて、ごめんなさい……でも、遊嗣さんが目を覚ますまで…」
『──そうか………ゼリー飲料や食べやすい物を買ってきた、何かお腹に入れておきなさい』
「お父さん……ありがとう…」
ミラーリンクヴレインズにおける疲労が残る中、遊嗣へと寄り添い続けるマシュ…ランスローは彼女の体調を案じていたが──娘の想いを優先して口を出さないようにしていた…。
『………話は、凌牙から少しだけ聞かせてもらった………遊嗣君の受けたショックを推し量る事なんて、私達にはできないだろう……マシュ、彼の手を離してはダメだぞ……今、彼の傷付いた心を
「っ……はい…!」
父の言葉を聞いたマシュは眠り続ける遊嗣の手をしっかりと握りしめる…。
「(遊嗣さん……!!)」
マシュはただ祈る事しかできなかった…。
「……ここ、どこ…?」
気付いた時、遊嗣は真っ暗な場所にいた……前後の事はあやふやだったが…次第に思考が明瞭となり、全てを思い出していく…。
「……そう、だ……僕が、
気が付く前の全てを思い出した遊嗣は暗闇の中で項垂れる…大好きな父の死、伝説の決闘者達や
…自分が父を殺したという罪悪感が弱りきった遊嗣の心を押し潰そうとしていた…。
「………僕、どうなったのかな……急に、力が抜けて………このまま、消えちゃいたい…!父さんを殺した僕に、生きてる資格なんかっ…!!」
罪悪感に押し潰されそうになる遊嗣…その時────
───………───……────
「──なんだろう、この音……風の、音…?」
遊嗣の耳が何かの音を捉える…それは風の音にも、森のざわめきのようにも聞こえる…
「行ってみよう……」
遊嗣はその音に導かれて立ち上がり…歩き始めた…。
「────ここは…………」
しばらく歩んだ遊嗣の目の前が開ける…そこにあったのは満天の星空と天の川、そして…潮騒の海に輝く光の道────
「スターダスト・ロード……」
かつて、マシュと初めて心を通わせた思い出の場所──スターダスト・ロードの見える浜辺だった…。
「なんで、スターダスト・ロードが…?もう時期は外れてるのに……………違う、
そのスターダスト・ロードを見た途端、遊嗣は気付く…自分は夢を──いわゆる明晰夢を見ているのだと…。
「……僕は、マシュと一緒にいる資格なんてない……自分の親を、父さんを殺した僕なんかが……!!」
光の道を見ながら流した涙が砂浜に吸い込まれて消えていく……スターダスト・ロードを見つめていると思い出すのはマシュとの温かな思い出ばかり……しかし、大きな
キン──
「……あの、光は……」
その時、潮騒の音が響く砂浜に穏やかなオレンジ色の光が灯る…その光は傷付いた遊嗣の心を包み込むように穏やかだった…。
「……行ってみよう……どうせ、夢だし…」
「………誰か、いる…?」
光に誘われるように進む遊嗣…近付くにつれ、その光はどうやら炎──
『────おう、来たか遊嗣……綺麗な場所だな、お前の
「えっ───?」
遊嗣はその
「なんで…こんなタイミングで夢に父さんが出てくるんだよ…!!僕を恨んでるの…!?僕が父さんを殺したから!!」
『恨んでなんかないさ…自分の息子を恨む親なんているもんか……お前は変わらずに、俺達の
「っ…!!」
死んだはずの父の姿に自分を責める遊嗣…だが、遊海は穏やかに応え…遊嗣は言葉を失う…。
「………これは、
『そうだなぁ……確かに、この俺はお前の無意識が創り出した幻かもしれない……それとも、知り合いの
「父さん…父さん!!ごめんなさい…ごめんなさい!!僕が、僕のせいで!!うわあああああぁぁぁ…!!!」
『ほら、泣け泣け…泣いたら少しは落ち着くだろう………遊嗣、よく頑張ったなぁ…偉かった、偉かった…』
遊嗣の前に現れた遊海…それは幻影ではない──正真正銘、命を落とした遊海の
それを悟った遊嗣は遊海の胸へと飛び込み、謝りながら子供のように泣きじゃくる…遊海は遊嗣が泣き止むまで、静かに抱きしめ続けた…。
『ビックリさせてごめんな、遊嗣……目が覚めた、と思ったら冥界にいる知り合いの真ん前にいてさ…気付かないうちに死ぬなんてあるんだなぁ…初めてだよ、こんな事…』
「死んだ事が何回もある時点で、普通じゃないよ…」
『そりゃそうだ!あっはっは!』
「笑いごとじゃないって…」
泣き止み、落ち着いた遊嗣へと遊海が今までの事を語る…遊海はリンクヴレインズから助け出された後、そのまま冥界へと落ちてしまっていたのだ。
『向こうにある「鏡」で何が起きたのかは知ってる……ダークネスにしてやられてた、か……まったく気付かなかった……何が【汝に平穏は訪れぬ】だ…そんな呪いが効くかってんだ!』
「……効いてるから、死んだんでしょ…」
『……まぁな』
現世で何があったのかは知っているという遊海…彼は明るく笑いながら強がるが…遊嗣に正論を言われて頭を掻く…。
『しかしまぁ…こんなに穏やかな死に方ができるとは思ってなかった……俺の死に様は───もっと残酷で、悲惨な……ベッドの上で死ねるようなモンじゃないと思ってた……自分でも驚いてるんだ』
「でも、みんな悲しんでたよ……次元を超えて、たくさんの人が来て……」
『そうだなぁ……みんな、俺が死ぬなんて思ってなかったろうからな……俺と翠の事を知ってるなら、なおさらに…』
「父さん達の事…?」
自分の死に様に驚いた様子の遊海…そして、遊海は遊嗣へと自分達の最後の秘密を明かす。
『遊嗣、お前はズァークの魂と力を受け継ぐ転生者だ…そして、凌牙と璃緒も…元は人間として生まれ、異次元人バリアンとして生まれ変わった転生者……そして、俺と翠も──転生者なんだ』
「えっ……そうなの?」
『ああ…と言っても、お前達とは違う…こことは違う、ずっと遠い世界──ソリッドビジョンすら存在しない、デュエルモンスターズが「娯楽の1つ」として存在する世界……そんな世界で俺と翠は暮らしていたんだ』
そして…遊海は遊嗣に自分達の秘密を明かしていく…。
デュエルモンスターズが「娯楽」として存在する世界で不慮の事故で命を落とし、それを不憫に思った優しい神様によって今の世界に転生させてもらった事。
「元の世界」には武藤遊戯・遊城十代・不動遊星・九十九遊馬…そして榊遊矢、藤木遊作が「主人公」として活躍する物語が存在し──その中で起きる悲劇を回避し、『最善』を掴む為に戦い続けていたのだと…。
「それじゃ、父さんは…僕が、ズァークが生まれる事も──」
『ああ……でも、断片的な情報しかなかったから……ズァークが「心の闇」を抱く前に見つける事ができなかった………俺達が、ズァークを早く見つける事ができれば───お前に、お前達につらい思いをさせる事もなかった……ごめんな…』
「……謝らないでよ、父さん……ミラー・リンクヴレインズで『覇王龍ズァーク』を喚び出す時…僕、ズァークと会ったんだ……ズァークは、父さんの事を憎んでなかった…『心の闇を乗り越えたきみなら、遊海を助けられる』『きみの進む道を見せてくれ』って…背中を押してくれたんだ…」
『───そうか……ありがとう、遊嗣…胸のつかえが1つ取れたよ…』
自分達の旅路の真実を語る遊海…それを聞いてなお、遊嗣は遊海を嫌いにはならなかった…思い出したからだ…前世の自分が命を終える時、涙を流しながら見送ってくれた優しさを…。
「………父さん…父さんを助ける方法って、ないの
…?」
『………
「そんな……」
そして…遊嗣は遊海に父を救う為の方法を尋ねるが……遊海はそんな手段を持ってはいなかった…。
「父さんって、何回も死んで…死にかけても蘇ってきた不死身の英雄なんでしょ…!?なら、1つくらい!!」
『単純に
「そん、な…!!」
『遊嗣……さっきも言ったけど、俺はお前のせいで…お前に決闘で負けたから死んだ訳じゃない…
「父さん…
『遊嗣……』
必死に遊海を救う為の手掛かりを求める遊嗣…しかし、遊海は自分の運命を受け入れていた…だが、遊嗣は諦められず遊海を抱きしめ…遊海は困ったように視線を落とす…。
キィン───
『ああ…もうそろそろ、時間切れか……『死者は現世に干渉してはならない』…それはどの世界でも変わらない
「父さん…そんな…!!」
その時、遊海の体を穏やかな金色の光が覆う……冥界に戻らなければならない
「いやだ…嫌だ!!行かないで…!父さんがいなかったら、僕は…母さんは!!」
『……大丈夫、お前は1人じゃない…凌牙がいる、璃緒がいる…マシュちゃんや遊作、遊馬達や、ARC次元の海馬社長や遊戯も力を貸してくれる……翠を遺してしまう事だけは心残りだけど……あいつなら、きっと立ち直ってくれる…お前がいれば、きっと…』
『父さんがいなきゃ、やだ…!まだ、なんにも恩返しだってできてないのに!!』
『……もう、充分すぎるくらい
「えっ…」
遊海との別れを受け入れられず、再び泣きじゃくる遊嗣…そんな大切な息子に、遊海は穏やかに感謝を伝える…。
『
「父さん……うん…」
『良い子だ………母さんの、翠の事は頼んだ───元気でな、遊嗣…俺はずっと、お前達の幸せを祈ってる!』
「父さん…やだ…!!父さぁぁん────!!!」
遊嗣に願いを託した遊海の姿が粒子となって消えていく……その顔は遊嗣を心配させないように、最後まで穏やかな笑顔だった…。
『………良かったのか?遊海』
『ああ……これで良い……遊嗣に言いたかった事は、全部伝えられたから……無茶を聞いてくれてありがとう、アテム』
冥界──アテムの王宮…遊嗣との別れを終えた遊海はこの場所へと戻ってきていた…玉座には冥界の王、アテムが座っている。
『違う……
『悔い……後悔か……そんなの────
アテムの問い掛け…それを聞いた遊海は床へと崩れ落ちる…顔を歪め、遊嗣の前では我慢していた大粒の涙を零しながら…。
『まだ、死にたくなんて、なかった…!!翠が、ひとりぼっちになるじゃないか…!遊嗣も、凌牙も璃緒も…克也も、海馬社長も、遊戯も…みんな泣いてるじゃんか!!最善を目指して戦ってきたのに…俺のせいで、みんなが泣いて…!!ダークネスの馬鹿野郎!!よりによって面倒な呪いなんて掛けやがって!!くそっ……クソぉぉぉ────!!』
『遊海……』
それは、遊海が初めて見せた慟哭だった…自分の不甲斐なさを呪い、最善の結末に水を差してしまった自分の『死』に遊海は自分を責め続け……アテムはただ、遊海の肩を抱く事しかできなかった…。
「っ……とう、さん……」
「あっ…!?遊嗣さん!気が付いたんですね!?よかった……」
「ま…しゅ……」
太陽が西の空に傾く頃…眠り続けていた遊嗣が目を覚ました…目覚めた彼の横にはマシュが付いていてくれた…。
「夢の中で、父さんに…会ったんだ……『俺が死んだのはお前のせいじゃない』…『これ以上気に病むな』って……俺が父さんを殺したも、同然なのに……父さん…ごめんなさい…ごめんなさいっ…!!!」
「遊嗣さんっ……」
夢の中で出会った遊海について話す遊嗣…その目からはとめどなく涙が溢れ…それを見たマシュも涙を流す…。
遊海の願いを聞いても……その死を受け入れる事ができるほど、遊嗣は
『目が覚めたみたいだね、遊嗣…無事に目を覚ましてくれて安心したよ』
「えっ…あなた、は…?」
その時、泣きじゃくる遊嗣へと話しかける者がいた…それは青い髪の、穏やかな印象を抱かせる青年だった。
『ボクの名前はブルーノ、遊海の古い仲間だよ……遊嗣、キミは遊海を……お父さんを救う為に───
「「えっ…!?」」
ブルーノの思わぬ言葉に、遊嗣とマシュは目を見開いた…。