転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
今回は…みなさまお待ちかね(?)の遊嗣とマシュのデート回となります。
慣れない描写ですが…私なりに挑戦してみた結果なので、温かい目で見守ってもらえたらと思います。
では…コーヒーの用意ができた方は…どうぞ!
「遊嗣さん…どうしたんでしょう…?いつもなら5分前には待ち合わせ場所にいるのに…」
快晴の青空が広がるDENCityの中央広場、いつもの待ち合わせ場所でマシュは遊嗣の事を待っていた…しかし、いつもなら時間前に待ち合わせ場所に来る遊嗣が姿を見せず…マシュは不思議そうな表情をしていた…。
「マシュ!ごめん!寝坊しちゃった!!」
「あっ…遊嗣さんおはよ……ぷっ…っ〜〜!!!」
そんな時…慌てた様子の遊嗣が猛ダッシュで待ち合わせ場所へとやって来た……のだが、その様子を見たマシュは思わず噴き出してしまうのを堪えられなかった。
「遊嗣さん…髪型、すごい事にっ…どれだけ慌ててたんですかっ…?」
「へっ……わっ!?ナニコレ!?鳥の巣!?!?」
「ふふっ…こんな事もあろうかと、ブラシはちゃんと持ってきてます!梳かしてあげますね!」
「あ、ありがとう…///」
寝坊した事で最低限の身だしなみで飛び出してきてしまった遊嗣…その髪は寝癖のせいで鳥の巣のようになっており…デートの始まりは彼の髪を梳かす事から始まるのであった…。
〜〜〜〜
「わぁ…遊嗣さんがプロデュエリストになってるなんて…素敵な夢ですね…!」
「そうなんだよ…あまりにもリアルすぎて自分が何処にいるのかもわからなくなっちゃって……結局、フォウが顔にダイビングしてきたから起きられたんだけどさ…」
公園のベンチで髪を梳かしてもらいながら、遊嗣は夢で見た光景を語る…それはまさに『夢』のような時間だった。
「あの…その夢の中で私は…?」
「マシュは────っ…///」
自分も夢の中に出てきたのか尋ねるマシュ…その言葉に遊嗣は朧げになりつつある夢の光景を思い出し、思わず赤面した。
何故なら、夢の中で大人の女性へと成長したマシュと遊嗣はキスを交わしていたからだ…。
「遊嗣さん?」
「ゆ、夢の中のマシュも可愛かったよ!でも、やっぱり…現実で会うマシュが一番可愛いかな…」
「っ…あ、ありがとうございます///」
赤面しながらマシュに答える遊嗣…その答えを聞いた彼女も林檎のように赤面してしまうのだった…。
「そ、そういえば…今日は何処に行きたいの?」
「あ…はい!今日は何処に行く…とかではなくて、DENCityを遊嗣さんと一緒に歩いてみたいな…と、思って…この前の蚤の市みたいな出会いがあるかもしれませんし!」
「なるほど…じゃあ、繁華街とか…色んな場所を回ってみようか!」
そして、話題を変えた遊嗣はマシュにデートの行き先を尋ねる…どうやら、今回は街ブラデートのような形らしい……目的を決めた遊嗣達は手を繋いで街の中へと歩き出した…。
「わぁ…本がたくさん…さすが、大都市のDENCityですね…!」
「うん!あ…昔売った漫画だ…懐かしいなぁ…」
最初に2人が訪れたのは大手の古本屋…以前の蚤の市や古書店とは違う品揃えにマシュは目を輝かせている…。
「あっ…これ…海馬瀬人さんの自伝…?」
そんな中、マシュは一冊の本に目が留まる…それは海馬瀬人の自叙伝だった。
「少し見てみましょうか…」
なんとなくページを開いたマシュ…そこに書かれていたのは───
〜〜〜
──俺は基本的に超常現象や幽霊、などというモノは信じない……だが、神という存在だけは信じよう…俺は運命の神に感謝すべき3人との出会いを経験した──
──1人は当然ながら、我が終生のライバル…武藤遊戯、そして──その武藤遊戯に宿った、古代エジプトの名もなきファラオ──
──もう1人は…白波遊海、高校の廊下でぶつかる…そんなありきたりの出会いではあったが…奴には何度も助けられてきた……運命を覆す奴の強さはこれからもなお、世界を救うのだろう──
──そして、3人目は…我が妻、紗良との出会い……他人への愛、というモノを兄弟愛以外に知らなかった俺に、初めて
〜〜〜
「っ///(か、海馬社長は…すごく厳しい方ですが…こんなロマンティックな一面もあるのですね…!!勉強になります…!!)」
海馬の自伝を読んだマシュは頬を赤らめる…歴史改変騒動の中でマシュはデュエルロイド瀬人やARC次元の海馬社長とも顔を合わせてはいるが…ここまでロマンティックなタイプだとは思っていなかったのだ。
「(遊嗣さん……)」
「あっ…SOLテクノロジーの新製品…AI搭載型のアンドロイド『ソルティス』…へぇ…まぁ、うちには関係ない話かな」
「そうですね…財前さんの家には可愛いメイドロボットがいるらしいですけど…」
「リンクヴレインズを閉鎖したから、別方面で頑張ろうとしてるんだろうね」
街中を歩く遊嗣達…その時、街頭ビジョンにはSOLテクノロジーの社運を賭けた新製品の広告が映し出されていた…。
「普段歩かない道を歩くと…なんだか新鮮な気分になりますね」
「そうだね、ズァーク…『覇王龍の乱』で街は更地になったって言うけど…それでも色んな人達が暮らしてる…人間の力ってすごいよ」
比較的街としては新しいDENCity…しかし、それでもそれを感じさせないほどの人々が暮らしている…そんな光景を遊嗣は嬉しそうに眺めていた…。
「チャンピオン!!デュエル教えて〜!!」
「チャンピオンやプレイメーカーみたいに強くなりたい!!」
『おーし、任せとけ!!このGO鬼塚がお前達を立派なデュエリストになれるように特訓してやるぞ〜!!』
「「「わ〜い!!」」」
「あっ…GO鬼塚さんです!確か、孤児院の出身で今でも子供達の為に頑張っているとか…!」
「鬼塚さん…元気になってよかった…!」
そして、子供達の歓声に目を向けた遊嗣達は子供達にデュエルを教える鬼塚豪の姿を見つける…。
プレイメーカーとのケジメをつける為に無茶な特訓を行い──その果てにプレイメーカーを守る為にシャドウ・ネームレスの凶刃に倒れた鬼塚…だが、事件後に無事に意識を取り戻し──本来の姿を取り戻した彼は再び子供達の『星』になる為に努力を重ねているらしい。
『───ん…?おおっ…お前さん、Yu-Zだろう?久しぶりじゃねぇか!イグニスの事件に巻き込まれて大変だったらしいな…元気そうでなによりだ!』
「鬼塚さん!貴方も元気そうでよかったです!」
その時、鬼塚が遊嗣の存在に気付く…遊嗣のアバター姿は本来の姿とあまり変わらない事で事情を知る者にはすぐ気付かれてしまうのだ。
『事件が全部終わった後、アースが見舞いに来てくれてな…アイツもAiも、新天地に旅立ったんだろ?元気にしてるのか?』
「父さんがたまに連絡を取ってるんですけど…仲間達と協力して、新しい故郷作りを頑張ってるそうです!」
『そうか…そりゃよかった…アイツの思い、しっかりと届いたんだな…』
アースの無事を聞いて安心した様子の鬼塚…彼はアースと不思議な絆を結んだようだ…。
『そうだ…少し時間空いてるか?子供達にデュエルを教えたいんだが…なにぶん人数がいるからな…少し手伝ってくれねぇか?』
「いいですよ!……って、ごめんマシュ!先にマシュに聞かないと…」
「ふふっ…私も手伝いますね!子供達と遊ぶのは好きなので!」
『おっ……デート中だったのか…そりゃ悪い事をしちまったな…昼メシの時間まで手伝ってくれ!』
「「はい!」」
そうして…遊嗣とマシュはしばらくの間、子供達と戯れる事になったのだった。
「子供達、可愛かったですね!」
「うん!みんな、鬼塚さんをチャンピオンって呼んでて…やっぱり誰がなんて言おうと、この街のカリスマデュエリストのトップは鬼塚さんだよ!」
鬼塚や子供達と別れた遊嗣達は再びのんびりと街を散策する…色とりどりの花が咲く花屋や人々の行き交うスーパーマーケット…香ばしい匂いの香るパン屋…リンクヴレインズにはない、人々の営みがそこにはあった。
「そろそろお昼時だけど…何を食べようか?」
「そうですね…町中華、というお店に入ってみたいです!この前見たぶらり旅の番組で見た料理が美味しそうで…!」
「ああ…!だからデートもぶらり旅なんだ……この感じなら、中華屋さんもありそうだけど……あった!『紅州宴歳館 泰山』…?入ってみようか…」
「はい!いい感じのお店ですね!あっ、ランチメニューもあるみたいです!」
『いらっしゃいアルー!』
───この後、遊嗣とマシュはこの店に入ってしまった事を酷く後悔する事になった…。
「…………まだ、口の中がいたいれふ……」
「よりによって、あんなお店を引き当てちゃうなんて……なんで、全部の料理が激辛なのさ……麻婆豆腐はまだしも、小籠包とか天津飯にまで、唐辛子を入れなくても……ああ…アイスが染みる……マシュ、ごめんね…」
「いえ…私が残した激辛料理まで食べてくれて、ありがとうございまふ、遊嗣さん…」
「母さんのお仕置き麻婆豆腐の経験が、こんな形で役に立つとは思ってなかったよ…うぅ…ヒリヒリするぅ…」
とある公園、そのベンチで遊嗣達は燃え尽きていた…遊嗣達が入ってしまった中華料理屋は町中華の皮を被った激辛料理屋(注意書きなし)だったのだ…。
マシュは不意打ちの激辛天津飯一口でダウン…その後、遊嗣は自分の頼んだ麻婆豆腐定食(超激辛)や激辛小籠包を含めた料理を気合で完食し、コンビニで買ったアイスや飲むヨーグルト(+マシュのお昼用のおにぎり)でダメージを癒していたのだ…。
「でも…こういう
「あはは…そうかな……そうかも?」
お茶で口の中をリセットしたマシュが苦笑いを浮かべる…その様子を見て遊嗣も苦笑していた。
『───奇遇だな、こんな場所で会うとは』
「「っ…!」」
その時、遊嗣達に声を掛ける者がいた…それは遊嗣達よりも年上に見える、白髪に青のメッシュが入った青年だった。
遊嗣は、彼との直接の面識は無い──だが、その
「───リボルバー…鴻上、了見さん…!」
『久しぶりだな、Yu-Z…ミラー・リンクヴレインズでは世話になった』
偶然か必然か…遊嗣はリボルバーと邂逅したのだ…!
『白──いや、神のイグニス・ロマンはいるか?』
「今日は留守番だよ…彼女とのデートだから」
『そうか…邪魔をしてしまったならすまない…だが、お前に聞きたい事がある』
リボルバーの纏う鋭いオーラ…それを見た遊嗣は無意識にマシュを庇うように前に出る。
『……6属性のイグニスがネットワーク世界から消えた…奴らを匿い、逃がしたのは鋼の騎士、白波遊海の仕業か?』
「そうだよ、イグニスと人間…その2つが手を取り合えるようになるまで距離を置けるように…その為に、Aiや不霊夢達は普通の人間には行けない新天地に旅立った…貴方達、ハノイの騎士でも手を出せない場所に…!」
『──そうか、カイバーマンの言葉は真実か……それが分かればいい…感謝する、Yu-Z…さらばだ』
イグニス達の行方…その答えを遊嗣から聞かされた了見は静かに彼らの前から去っていった…。
「リボルバーさん…どうしたんでしょう…?」
「たしか…カイバーマン、瀬人さんがハノイの騎士をホワイトハッカーとして勧誘してる…って父さんが言ってたかも……ああ、びっくりしたぁ…」
了見の鋭い威圧から解放された遊嗣はベンチに座り込む…彼らと敵対する理由はないとはいえ、緊張するのは仕方ない事だった…。
「……こうして歩くと…この街も意外と狭いなぁ…今日一日だけで何人顔見知りと会うんだろう?」
「それだけ、遊嗣さんがみんなとの
「そうかなぁ…父さんも色んな人と絆を結んでるし、遺伝したのかな…?」
「遺伝…というよりは遊嗣さんの
「そっか…そうだったら嬉しいなぁ…」
マシュと街を歩く中で鬼塚や了見と出会った遊嗣は意外と世界は狭いモノだと思い始める…しかし、それはマシュが言う通り…「遊」を継ぐ者たる遊嗣だからこその出会いばかりだった。
「あっ…あれは───」
「学校から見える観覧車!こんな場所まで歩いて来ちゃったんですね!」
そんな時、遊嗣が見覚えのあるモノを見つけて声を上げる…それはDENCityの高台にある観覧車──尊や不霊夢と出会い、ボーマン達との戦いが始まるキッカケになった場所だった。
「───せっかくだから、乗ってみる?」
「───はい!」
〜〜〜
「わぁ…高〜い!」
「晴れててよかった!街は一望できるし、水平線まで見えて……この前に乗った時は景色を楽しむ余裕もなかったから…」
「この前…誰かと一緒に?」
「遊作君や尊君とね?男三人で観覧車って不思議な話でしょ?不霊夢が提案したんだ」
「不思議というか奇妙というか…なかなかしない体験ですね…」
2人を乗せた観覧車はゆっくりと回り、空へと昇っていく…その中で遊嗣の奇妙な体験を聞いたマシュは苦笑していた。
「街の平和な景色を見てると…あの戦いが起きた事が夢だったみたいだよ……」
「遊嗣さん…」
小さくなっていく街の景色を眺めながら、遊嗣はぽつりと呟く。
僅か2カ月程前…遊作達と観覧車に乗った時の遊嗣は、自分の
戦いの中で自身の前世を自覚し、覇王として覚醒を遂げ…そして、父親を救う為に
「でも…もうあんな苦しくて、悲しくて辛い戦いは経験したくないなぁ……もう、お腹いっぱいだよ…」
「もう大丈夫ですよ…!遊海さんが、あんな戦いはもう起きないって言ってましたし!しいて言うなら…学生としての戦いが迫ってますけど…」
「──定期テストと学年末試験の事はまだ思い出したくなかったかなぁ!?」
「くすくす…!」
少し落ち込んでしまった遊嗣を笑わせようと冗談を言うマシュ…過ぎた戦いよりも間近に迫った試験を思い出してしまった遊嗣は頭を抱えてしまうが…それはマシュの狙い通りだった。
「それより遊嗣さん!もう少しで観覧車が一番上まで上がるみたいです!一緒に写真を撮りませんか?」
「本当だ…そうだね!やっぱり思い出は形に残さないと…」
ゆっくりと観覧車は頂点へと近付いていく…それに気付いたマシュは自然に遊嗣の
「スマホを内カメラにして…街の景色が写るように…こんな感じかな?マシュは大丈夫?」
「はい…!」
遊嗣はカメラの用意を整え、マシュへと声をかける…そして、観覧車は頂点へと差し掛かり───
「いくよ〜!ハイチー────っ!?」
チュッ♡ カシャリ!
「……////」
その瞬間、遊嗣の頭の中は
「ま、Mまマ…マシュ…!?マシュさん!?!?」
「えへへ…キスの先攻、今度こそ…私がもらっちゃいました!!」
マシュの予想外の大胆な行動に思わず敬語が飛び出してしまう遊嗣…その様子を見たマシュは悪戯が成功した子どものような、無邪気な笑顔で笑っていた…。
「遊嗣さん…嫌、でしたか…?」
「いや、マシュが嫌いとか、キスが嫌だったとかそういうんじゃなくて!?!?!?……僕なんかで、よかったの…?」
「私は、
「マシュ……」
普段は見せない取り乱し方をする遊嗣を不安そうに見上げるマシュ…彼女は自分の想いをしっかりと遊嗣へと伝えた…。
「───ごめん、マシュ…ありがとう…でも、こんな不意打ちじゃなくてさ……もう一度、キスをしたい…かな…///」
「───はい…!」
そして…遊嗣とマシュはもう一度、唇を重ねた……この日、2人の絆は…今まで以上に固く、強くなったのだった。
「─────あれ…?私……」
「あっ、気が付いた?おはようマシュ…よく寝てたよ?」
「ゆ、遊嗣さん…?」
ふと、マシュは目を覚ました…街の景色は夕焼け色に染まり、ゆっくりとマシュの視界を流れていく。
そして、マシュは何か大きな
「もう…びっくりしたよ…観覧車が下に着く直前に寝ちゃったから…長く歩いて疲れてたもんね……」
「えっ…あ…私、おんぶされて…!?!?///」
そして、マシュはようやく自分の状態に気付く…彼女は遊嗣におんぶされて運ばれていた。
遊嗣はマシュを起こさないようにゆっくりと…暗くなり始めた道を歩いていた…マシュはデートの歩き疲れと遊嗣と想いが通じた事で気が抜けて眠ってしまったのだ。
「ゆ、遊嗣さん!?重くないですか!?私、まったく知らないで…!?もう自分で歩けますから!?!?」
「大丈夫大丈夫!マシュは軽いし、上着をベルトみたいにして固定して…精霊の力で強化もしてるから!…みんなの目線がくすぐったかったけど…もう慣れた!」
「あ…あううう〜〜//////」
遊嗣の体を気にするマシュだったが、遊嗣は明るく応える……なお、マシュは羞恥心で頭から湯気が出るほど真っ赤になってしまった…。
「みんな…こうやって、思い出を積み重ねて…
「遊嗣さん………………フツツカモノですが、よろしくお願いします…?」
「───そんな日本語、何処で覚えたの??それはちょっと早いかな?///」
初々しい2人の言葉が夕暮れの街へと溶けていく…そんな彼らの姿を大きな満月が見守っていた…。