転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

『VRAINS』の物語は終わりを迎え…それでも、彼らの未来は続いていく───という事で、『その先』の物語の幕開けです!

アイデアは多少あるものの、何処まで続くのかは未知数…自分でもどうなるかはわかりません!

それでは、新たな物語をどうぞ!


After Episode その先の未来へ
ガールズトーク〜乙女達の悩み事〜


「ぐぅ……ぐぅ…」

 

《フォ〜ウ…フォウ〜!!(遊嗣〜!朝だよ〜!!)》

 

「ふぎゃ!?…………うーん…あと5分〜…」

 

《あはは…今日の遊嗣はお疲れモードみたいだね、フォウ》

 

《フォーウ!?(遊嗣!?学校遅れちゃうよ〜!?)》

 

Aiオルタの起こした事件からしばらくが過ぎ…新学期を迎えた遊嗣達は高校2年生になった。

世界を脅かす火種は今度こそ消え去り、遊嗣達は普通の学生らしい学生生活を送る事ができていた。

 

 

《ほら!遊嗣起きて!マシュが待ってるよ!》

 

「っ……うーん…おはよう、ロマン…フォウ…」

 

《フォウ!(もう!遊嗣は本当に寝るのが好きなんだから…)》

 

 

 

 

 

「遊嗣さん!おはようございます!」

 

「おはようマシュ!」

桜の花が舞う通学路…いつも通り、待ち合わせをした遊嗣とマシュは手を繋ぎながら学校へと歩き始めた…。

 

 

 

「穂村さん、元気そうでよかったですね!」 

 

「うん、久しぶりの再会があんな感じになるとは思ってなかったけどね」

尊は新学期前に故郷の町へと戻り、リンクヴレインズが世界的に解放された事で先日、久しぶりに再会したのだが…『ネオ・ハノイ』を名乗るハッカー集団の襲撃に巻き込まれてしまった。

 

だが、すぐに駆けつけた遊作や遊嗣達…さらに『ハノイ』の名を騙った事でリボルバー達、本物の『ハノイの騎士』の怒りを買い…ネオ・ハノイは数時間で壊滅する事になったのであった。

 

 

 

 

「というか…マシュ、いつの間に新しいアバターを作ったの?すごく凛々しくて可愛い鎧だったけど…?」

 

「あ、ありがとうございます!///実は、アルトリアさんが──」

 

《ユージの隣で戦いたいのなら、それらしい姿を見繕った方がいいと助言したのです》

 

「あっ!おはようアルトリア」

 

《おはようございますユージ、先日も見事な戦いでしたね》

先日の戦いの際、新たなアバターとして鎧を纏った姿を披露したマシュ…そのアイデアを発案したのはアルトリアだった。

彼女は彩華達のように常にマシュの傍にいるわけではないが、マメに様子を見に来るようにしているのだ。

 

 

《白い戦闘服もいいですが…鎧には相手を畏怖させ、自分や味方の士気を上げる効果もあります…マシュは優しいですから、見た目で侮られないようにした方がいいと思ったのです》

 

「なるほど…!流石は騎士王…」

霊体化したアルトリアがマシュの鎧姿の意図を明かす…それは彼女なりにマシュの事を考えた結果だったらしい。

 

 

 

「おはよう遊嗣、マシュ」

 

「遊作君おはよう!」

 

「おはようございます藤木さん!」

そして、そんな2人に声を掛けたのは普段通りの様子の遊作…Aiオルタとの別れを経た彼も普段通りの日常に戻っていた。

 

 

「ネオ・ハノイ(?)の件は大丈夫だった?」

 

「ああ、リボルバー…本物のハノイの騎士達の情報提供ですぐに捕まったらしい……考えてみれば、この街だけでも1000人以上のハッカーが潜んでいたんだ…『ハノイの騎士』がいなくなったと勘違いした奴らがリンクヴレインズを荒らし始めるのも時間の問題だったな…」

 

リンクヴレインズは全世界に開かれたネットワーク世界となり、ハノイの騎士は表舞台から姿を消した…それにより、押さえ込まれていた野良ハッカー達やハノイの騎士として暴れていたハッカー達がリンクヴレインズを荒らし始めていた。

無論、SOLのセキュリティ部隊も警戒しているが──遊作もまた正義のハッカー『Playmaker』として、彼らとの戦いを続けている。

 

彼が憧れた鋼の騎士──白波遊海のように、手の届く誰かを助ける為に…。

 

 

 

「そういえば…今日はデュエル部の活動日か?」

 

「そうなんだけど、今日は出れないんだ…サッカー部に助っ人を頼まれちゃって…」

 

「ああ…それはそうか…体力テストで()()()()()を出したらな…」

 

「学年、どころか学校中に広まってますもんね…『白波君の運動能力がやばい!』『この1年に何があった!?』って…」

 

「あはは……まさか、こんな事になるなんて…」

そして、遊嗣は思わぬトラブルに巻き込まれていた。

 

新学期の体力テストの際、「精霊の力」の制御を誤った遊嗣は全ての種目で新記録を更新…それを運動部に所属する同級生達に知られた事で野球・サッカー・陸上・バスケットボール……格闘技系以外の様々な部活動の助っ人に引っ張りだこになってしまっていた…。

 

 

「うぅ…体を動かすのは嫌いじゃないけど、あんまり目立ちたくなかった…!!」

 

「遊嗣、あまり無理はするな…目立ち過ぎない程度に頑張って、運動部の奴らを納得させればいい…お前はどちらというと()()()()が得意なタイプなんだから…」

 

「遊嗣さん!次のサッカーの試合は応援にいきますから!」

 

「ありがとう遊作君…でも…マシュが応援してくれるなら、頑張らないとね」

自分の出自の事もあり、失敗に頭を抱えてしまう遊嗣…しかし、マシュの応援を受けた彼は頑張らない訳にはいかないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『マシュさん、ちょっといいかしら?』

 

「財前さん?どうしたんですか?」

時間は流れて放課後…デュエル部の活動が終わり、帰り支度をしていたマシュに声をかけたのは財前葵だった…。

 

 

『その…ちょっと相談したい事があって…付き合ってくれる?』

 

「はい?」

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 

『ごめんなさい、急に声をかけてしまって…』

 

「いえ!誘って貰って嬉しいです!」

DENCityのとある公園、整備された林や花畑の広がるその場所で葵とマシュはベンチに腰掛けていた…。

 

 

 

「それで、私に相談というのは…?デュエル部のことですか?」

 

『そういうのじゃなくて…その、()()()()()()()?っていうのかしら…ほら、デュエル部には私達しか女子がいないから…』

 

「えっ…財前さん?もしかして…その、()()()()ができた…とか…?」

 

『……うん…その相談に乗ってほしくて…』

 

「ええっ!?!?」

葵がマシュに声をかけた理由…それは、自分の恋愛相談をする為だった…思わぬ内容にマシュは目を白黒させている…。

 

 

 

「あ、いえ…その…私には荷が重いような……」

 

『何を言ってるの?遊嗣君とマシュさん、ハイスクール一番のカップルじゃないの…観覧車からのおんぶデート、しっかり噂になってるのよ?』

 

「あ、あううう〜…///」

高校一番のカップル認定を受けている遊嗣とマシュ…それを聞いたマシュは顔が真っ赤になってしまう…。

 

 

『こほん…まぁ、私の周りで相談するならマシュさんしかいないな…と思って…ネットの知識に頼りすぎるのもよくないし…恋愛の()()として、色々教えて欲しいの』

 

「あ、ありがとうございます…不肖、マシュ・キリエライト…財前さんのお力になります!」

 

『…ありがとう、マシュさん』

自分の恋愛の相談相手としてマシュを選んだ葵…その信頼に応えるべく、マシュは彼女の話に耳を傾けた…。

 

 

 

 

「それでは、ありきたりな質問ですが…財前さんがその方を()()だと思う理由を教えてください!」

 

『……その……彼の事をいつの間にか目で追ってしまっていたり…胸が、ドキドキしたり……彼がバイトしているお店に行ってしまったり……』

 

『ああ…!わかります!私も、遊嗣さんとお付き合いする前から胸がドキドキして…近くにいてくれるだけで嬉しい気持ちになって…それは紛れもなく「恋心」だと思います!』

 

『やっぱり、そうよね…』

マシュの質問に頬を赤らめながら答える葵…その様子はいわゆる()()()()()の表情に間違いなかった…。

 

 

『ねぇ、マシュさんは白波君とどういう風に出会ったの?デュエル部に来た時にはもう恋人同士みたいな距離感だったけど…』

 

「っ///…あの時はまだ、恋人にはなっていなかったんですけど……私と遊嗣さんはリンクヴレインズで出会ったんです、ハノイの騎士がイグニス、というAIを探して大暴れした時…瓦礫の下敷きになった私に手を伸ばしてくれたのが…遊嗣さんだったんです」

 

『あっ…プレイメーカーがAiを捕まえた日ね!あの時はみんなパニックだったもの…』

 

「えっ…?あれ??財前さん、なんでAiさんの事を知ってるんですか???」

 

『えっ?マシュさん…私、ブルーメイデン…()()()()()()()()よ?ミラー・リンクヴレインズで一緒に戦ったじゃない?』

 

「えっ?」

 

『えっ?』

 

「『ええ〜〜っ!?!?!?』」

 

遊嗣との馴れ初めについて語るマシュ…しかし、葵がAiの事を話した事で表情が固まる。

 

実はマシュ、葵がブルーエンジェルだと今の今まで知らなかったのだ。

 

お互いの認識の相違に葵とマシュは顔を見合わせ、驚きの声を上げてしまった…。

 

 

 

 

 

「まさか、財前さんがブルーエンジェルだったなんて…!?」

 

『ぷっ…ふふっ…!白波君も誠実ね!まさか、マシュさんにも私の事を伝えてないなんて…本当に真面目なんだから』

思わぬ形で正体を明かしてしまった葵はマシュの様子を見て苦笑する…遊嗣とマシュの絆の深さを知っているからこそ、自分との約束を守ってくれていた遊嗣の真面目さが嬉しかったのだ。

 

 

「えっ、あっ…それでは、財前さんが想いを寄せている方、というのは───」

 

『ええ……リンクヴレインズの英雄、プレイメーカー──藤木遊作君、彼の事よ』

 

「わぁ…!」

そして、マシュは葵が想いを寄せる人物の正体に気が付く…それは自分達の親友の1人、藤木遊作だったのだから…。

 

 

 

「では…藤木さんを好きになった理由を教えて頂いてもいいですか…?」

 

『うん…藤木君、プレイメーカー…彼がリンクヴレインズに現れた日から、私の運命が変わった気がするの…』

 

葵は遊作に想いを寄せるようになった理由をマシュに伝える。

 

 

マシュと同じ日、遊作によってハノイの騎士の攻撃から助けられた事。

 

彼の戦う理由も知らないまま、兄の為に敵対心を燃やしていた時期があった事。

 

その敵対心をハノイの騎士・スペクターにつけ込まれ、遊作と戦いになり…仕込まれた電脳ウイルスで昏睡状態に陥ってしまった事。

 

自分の為にリボルバーと戦い、ワクチンプログラムを手に入れてくれた事。

 

SOLテクノロジーへのハッキングでプレイメーカーとして、遊作が戦う理由を知った事。

 

 

そして、ハノイの騎士との決戦や光のイグニス・ライトニング一味、Aiオルタとの戦いを経て…幾度となく自分達兄妹やリンクヴレインズのピンチを救い、助けてくれた遊作への好意を自覚するようになったのだと…。

 

 

 

「財前さんと藤木さんの間にそんな事が…」

 

『うん…まぁ、おそらく…100%、藤木君は私の想いになんか気付いてない……同級生の1人、くらいの感覚だと思うわ』

 

「それは、確かに…」

遊作への想いを語った葵…それを聞いたマシュは納得したように頷く…。

遊作は基本的に感情を表に出さない…しかも、相棒の草薙やAiから見ても「女性と話している姿が想像できない!」と笑われてしまうレベルの不器用さ…その様子はミラー・リンクヴレインズ事件後に親交を深めたマシュでも納得してしまうものだった。

 

 

 

『ねぇ、マシュさんはどういう感じで白波君とお付き合いする事になったの?』

 

「わ、私は…その……リンクヴレインズで助けられた日に、遊嗣さんに()()()()してしまって…ハイスクールで再会して…アナザーの電脳ウイルス事件に巻き込まれた私を必死に助けてくれて………それで、ハノイの塔の事件の後……同じように、私を大切に思っていてくれた遊嗣さんが……告白の先攻になって…////」

 

『えっ…恋愛小説みたい!そんな事って本当にあるんだ……!?』

そして、マシュに遊嗣と恋人同士になった経緯を聞いた葵はあまりの純愛さに驚きを隠せなかった…それはまさに()()()()()というほかなかったからだ。

 

 

 

『藤木君は……私をそういう風には見てないわよね…』

 

「……たぶん、藤木さん…誰かに()()()()という経験が少なくて…()()というモノが分からないのではないでしょうか…?」

 

『マシュさん…?それって…どういう意味?』

 

「あ、えっと…遊嗣さんや草薙さんに教えてもらった事なんですけど──」

マシュは自分なりに遊作の置かれた状況を推察する…ロスト事件に巻き込まれ、解放後は養護施設に預けられた遊作は孤独な…愛を知らない幼少期を過ごした。

 

その中で自分の過去を奪ったハノイの騎士について知り、その後は()()の為に戦い、生きてきた…だからこそ「誰かを愛し」「誰かに愛される」という感情を抱き難くなっているのではないかと…。

 

 

 

『誰かを愛する…好きになる、という感覚がわからない…か……たしかに、そう考えると色々しっくりくるかも…』

 

「藤木さんは今もプレイメーカーとして、リンクヴレインズで悪質なハッカー達と戦っています…自分達が受けた苦しみや悲しみを、他の誰かに経験させない為に……けど、たぶん…今の藤木さんは…自分が何の為に生きているのか、分からなくなっている部分がある気がするんです」

 

『あっ…そうか…ハノイの騎士、リボルバー達とも和解して…Aiオルタの事件も解決して…()()が終わったから…』

 

「はい…なので、これから少しずつ普通の生活を送って…藤木さんの新しい『生きる目的』ができれば…財前さんの想いに気付いてくれる、かも…?」

 

『なるほど…マシュさんって分析が得意なのね!』

 

「たくさん本や小説を読んできたおかげです!……知識としてだけ、なので…正確性には欠けてしまうかもしれませんが…」

自分が数多の本から学んだ知識…そして、事件後の遊作の様子から読み取った分析を伝えるマシュ…それを聞かされた葵は静かに頷いていた…。

 

 

『じゃあ…積極的なのは逆効果になるかもしれないって事ね……私も、性格的にそういうのは苦手だけど………ありがとう、マシュさん…相談できたら楽になったわ』

 

「い、いえ!少しでもお力になれたならよかったです!!」

晴れやかな表情でマシュに感謝を伝える葵…その言葉にマシュも恐縮しながら応えている。

 

 

『でも…本当にマシュさんと白波君ってお似合いのカップルだと思う…ゴーストガールに見せてもらった暴走したライトニングとの決戦、すごかったもの…』

 

「──はい…遊嗣さんのお父さんやお母さんからも、すごく感謝されて……きっと、私と遊嗣さんが出会うのは()()だった…そう思ってます」

 

『なんだろう……すごく胸がキュンとしちゃう…憧れちゃうな…』

 

「えへへ…ありがとうございます!」

そして…恋愛の先輩として、遊嗣とマシュの関係に憧れた様子の葵…それを聞いたマシュは照れくさそうにはにかんでいたが…。

 

 

「でも…」

 

『…?マシュさん、白波君と何かあったの?』

 

「いえ、そういうわけではないんです……私の()()()()だと思うので…」

 

『───何かあったら、力になるからね?』

 

「はい…ありがとうございます!」

一瞬、表情が曇ったように見えたマシュ…しかし、彼女はその不安を振り払って葵に笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜…!マシュが恋愛相談を受けるなんてねぇ…」

 

「は、はい…!私も驚いたんですけど、少しでも力になれてよかったと思っています!」

とある休日、マシュは翠と彩華に連れられてARC次元を訪れていた…久しぶりにヒロイン会の集まりがあったのだ。

 

今回のメンバーは翠・マシュ・沙良・舞・明日香・アキ・柚子の7人…その話題は先日のAiオルタの事件、そしてマシュが受けた恋愛相談についてだった。

 

 

 

 

「ずっと復讐の為に戦っていて、自分に向けられた想いに気付かない…すごく、心当たりが…」

 

「アキちゃんのそれは()()()ではないけど…気持ちは分かっちゃうよね…」

DM世界で生きた『十六夜アキ』の記憶を受け継いだアキが複雑そうな表情を浮かべる中、彼女の心情を察した翠がフォローする…。

 

「でも、その男の子…遊作君は自分の戦いにケジメをつけたんでしょ?時間は掛かるかもしれない…けど、きっと変われる時が来る…私の知り合いにもそういう人がいるから…」

 

「柚子さん…そうですね!藤木さんも最近は明るい表情を見せる時が増えたので、きっと財前さんの想いが届く日が来る…私もそう思います!」

マシュの話を聞いてかつての黒咲隼やユートの事を思い出す柚子…遊作の変化に気付いているマシュも明るい表情で応えている。

 

 

 

「そ・れ・よ・り……マシュの方こそ、遊嗣との仲はどうなのさ?少しは進展したのかい?」

 

「は、はい!観覧車デートで、キスしました!!」

 

「「「「「わ〜!!ロマンチック〜!!」」」」」

 

「ふふっ…遊嗣、きっとすごく驚いたでしょ?その光景が目に浮かぶわ〜!遊嗣は本当に幸せな子なんだから…」

そして、マシュに遊嗣との進展について訊ねる舞…マシュの答えを聞いたヒロイン達は黄色い歓声を上げ、翠も嬉しそうに笑っていた。

 

 

「………でも…その……」

 

「っ…マシュちゃん、どうしたの?遊嗣が何か嫌な事しちゃった…?!」

 

「翠さん…いえ!違うんです!!遊嗣さんはいつも通り優しくて…でも、()()()()()……」

 

「どうしたの?マシュさん、すごく不安そうな顔をしているわ」

しかし、その時…にわかにマシュの表情が曇る…マシュはここしばらく、遊嗣の様子に()()()を感じていた…。

 

 

「……遊嗣さんが、少し()()()気味かなって…外や学校で一緒にいる時、常に()()()()ように動いている気がして……あと、時々ぼーっとしていたり…ふと声を掛けた時にすごくびっくりした顔をしたり……私を抱きしめる強さが強かったり……」

 

「うーん…独占欲、っていうのも違うねぇ……翠、何か気付かなかったのかい?」

 

「初めて聞いたわ…!?家ではそんな様子見せない、いつも通りのあの子だったし…」

マシュが語る遊嗣の()()…それを聞いた翠も驚いた表情を見せる。

 

 

「あと……翠さん、この前…私の家で遊嗣さんがお泊まりした日の事、覚えてますか…?」

 

「あっ…うん、出掛ける時はすごく楽しそうだったのに…帰ってきたら『寝相が悪くてマシュに迷惑かけちゃった』って、落ち込んでたっけ…」

 

「……話していいのか、わからないんですけど……こんな事があって……」

そして、マシュはとある出来事を翠達に語った…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideマシュ

 

 

 

「遊嗣さん!せっかくだから、一緒に寝ましょうよ!この前のやり直し、という事で!!」

 

「マシュ、今回はダメ…!本当にダメだから!!ランスローさんは遠征でいなくて、お泊まりの許可はもらったけども!!」

その日、Aiオルタのせいで台無しになってしまったお泊まりデートのリベンジを果たすべく、マシュは遊嗣を自分のマンションに誘った…しかし、遊嗣は流石に……という事でマシュと同じベッドではなく、ランスローが用意したマットレスで眠ろうとしていた…。

 

 

「む〜…なら、次に遊嗣さんの家でお泊まりする時は一緒に寝る、という事で!」

 

「うっ……マシュがこんなに押しが強くなるとは思ってなかったなぁ……うん、じゃあ約束!指切りしておく?」

 

「えへへ…はい!ユビキリゲンマン〜♪……ユビキリゲンマンってどういう意味なんですか?」

 

《ゲンマンは拳と万…嘘をついたら1万発殴る、という意味だよ?あと…ユビキリも江戸時代は約束を破ると、本当に小指を切り落としていたとか…!》

 

「「ひゃあ!?」」

マシュの押しの強さに負けた遊嗣が観念したようにマシュと約束を交わす…しかし、ロマンの語る『指切りの怖い意味』を聞いて思わず抱き合ってしまうのだった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「っ…(喉、渇いちゃった…お水……)」

そんなこんなで2人が寝付いた深夜、マシュは喉の渇きで目を覚ました…そんな時───

 

 

「うっ……うう…うっ…!!」

 

「ゆうじ、さん…?」

寝惚けたマシュの耳が低い声を拾う…それは、マシュのベッドの隣で眠る遊嗣の声だった。

 

 

「っ…ぐぅ…ううっ…!?」

 

「っ…遊嗣さん…?どうしたんですか…?遊嗣さん!?」

異変に気付いたマシュが慌てて眼鏡を掛け、ベッドサイドの明かりを点ける…その明かりが照らし出したのは、苦しみ魘される遊嗣の姿だった。

 

苦しそうに魘される遊嗣…顔色は悪く、全身から冷や汗を流し…目元からは涙が溢れている…。

 

 

「遊嗣さん…!?遊嗣さん!!」

慌てて遊嗣を起こそうとするマシュ…しかし、遊嗣は目を覚まさず、魘され続けている…。

 

 

《っ……驚かせてごめんね、マシュ……いつもこうなる訳じゃないんだよ…》

 

「ロマンさん!遊嗣さんが…!!」

その時、申し訳なさそうな表情のロマンがデュエルディスクから顔を出す…。

 

 

《マシュ、遊嗣の事が心配なら……彼を抱きしめてあげてほしい……()()()()()()()()()()()って……》

 

「っ……遊嗣さん…大丈夫、大丈夫…!私は、ここにいます…だから、泣かないで…」

 

「……ま……しゅ………ごめ…ん…──すぅ……」

ロマンの助言を聞いたマシュは優しく遊嗣を抱きしめる…そして、しばらくすると遊嗣の寝息は穏やかになっていった…。

 

 

 

「───ロマン、さん…いま、のは…?」

 

《……これでも、ずいぶんマシになったんだ…()()()()のあとから悪夢を見るようになったみたいでね……でも、起きた時には何も覚えていないらしいんだ……大丈夫、時間が解決してくれるはずさ》

 

「遊嗣さん……大丈夫、大丈夫……」

戸惑いを隠せないマシュ…しかし、ロマンの言葉を信じた彼女は戻ってきた眠気には勝てず、遊嗣を抱きしめて眠りに落ちていった。

 

 

翌朝、マシュが同じマットレスで眠っている事に気が付いた遊嗣は……驚きのあまりにマットレスから転げ落ち、床に顔面を強打したのであった…。

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

「そんな事が…!?」

 

《……ロマンから報告は受けていません、遊嗣が隠すように頼んだのか…ロマンが伏せているのかはわかりませんが…》

 

「遊嗣さん…すごくつらそうで、苦しそうで…でも、何もできなくて…!」

 

「マシュ、大丈夫、大丈夫…落ち着いて深呼吸するんだよ」

マシュが語ったお泊まりデートでの一幕……それを聞いた翠は口元を覆い、マシュはポロポロと涙を流し、舞が静かに慰める

翠や彩華も──遊海ですら、遊嗣の異変に気付いていなかったのだ。

 

 

「ねぇ…それ、遊嗣君…何かが()()()()になってない…?悪夢を見て、魘されるって……」

 

「ええ…私も、アカデミアで教師をしていて相談を受けた事があったわ…デュエルでひどい負け方をしたのがトラウマになったり、事故に遭ったのがトラウマになって悪夢を見て眠れないって…」

 

「悪夢……トラウマ……」

マシュの話を聞いたアキと明日香が声を上げる…遊嗣は何かしらの()()()を抱えているのではないかと…。

 

 

「──翠さん…遊嗣君はこの前の事件の時、『覇王龍ズァーク』の姿になって暴れてしまったって聞きました…その()()って…」

 

「っ──!!…遊嗣は…意識データを奪われて眠らされていたマシュちゃんが…()()()()()()と勘違いして、我を忘れて暴走してしまったと聞いたわ……遊嗣の心に残った傷に気付けなかったなんて…!私は母親失格よ…!!」

そして、柚子の言葉を聞いた翠は頭を抱えてしまう…気付いてしまったのだ、遊嗣が両親にすら隠していた心の傷の()()に…。

 

 

「えっ…まさか──遊嗣さん、私の、せいで…!?」

 

「そういう事、だろうね……遊嗣はずっと遊海や翠に守られてきた…2人は遊嗣の中で眠る『覇王龍』の力が目覚めさせないように…目覚めなくていいように、あの子を守ってきた……だから、()()()だったんだろうね……自分の心が抉れてしまうほど、()()()()()を失う…心の痛みを味わうのが…」

 

遊嗣は遊海や翠、凌牙や璃緒…精霊達…たくさんの人々に守り育てられてきた……彼の中で眠る『覇王龍』の力が目覚めなくても済むように、色々な経験をさせながらも…激しく心を揺さぶるような事は避けられてきた…。

その甲斐もあり、新生リンクヴレインズにおけるブラッドシェパードとの戦いにおいて『弱点になるトラウマが存在しない』と言われるほどに…。

 

 

だが、今の遊嗣は違う。

 

 

ミラー・リンクヴレインズの戦いの果てにダークネスの呪いによって、遊海の命を奪われかけ……Aiオルタの事件では自分の勘違いだったとはいえ、大切な恋人を失うような経験をした……それが心を蝕む()となり、遊嗣を苦しめているのではないか…舞達はそう推測した。

 

 

 

《…ロマンが遊嗣の異変を伏せた意味が分かりました…おそらく、遊嗣自身も今の自分がトラウマに蝕まれている、とは()()()()()()()のでしょう……マシュと触れ合うふとした瞬間に、あの日の事が過り、不安になり…夜は悪夢を見てしまう……ロマンはそれを時間が解決してくれる、そう判断したのでしょうね…》

 

「……下手にトラウマを刺激して、心の傷を悪化させないようにしているのね…翠さんやマシュちゃんの様子を見ている限り、正しい判断だったみたいだけど…」

 

「遊嗣さん…」

そして、彩華がロマンの意図を察する…ロマンはあえて、トラウマを指摘せず…遊嗣の中で折り合いがつくか、記憶が薄れるまで見守っているのだろうと…悪化するような事があれば、すぐに遊海達に報告する用意をした上で…。

 

 

「翠さん…私、何ができるんでしょう…?遊嗣さん…私のせいで…」

 

「マシュちゃんのせいじゃない…全部、()()()()()()()()()()だけよ………こういう時は構い過ぎてもダメな場合もあるわ……貴女はいつも通り、遊嗣の隣にいてあげて…それがあの子にとって、一番の薬になると思うの…」

 

「翠さん…」

無意識に自分を追い詰めてしまっている遊嗣…しかし、翠はマシュに穏やかに声を掛ける…彼女と一緒にいる、それが一番の()()()になると信じて…。

 

 

 

「それはそれとして…何か、()()()()させてあげるのもいいかも?遊嗣君、最近運動部の助っ人に行くんでしょ?もしかしたら体を動かせば楽になる、何かに集中していれば大丈夫って無意識に考えてるのかも?」

 

「なるほど…」

明日香のアドバイスにマシュが頷く…そんな時だった。

 

 

「あっ…!それなら、()()()()方法があるじゃないですか!遊嗣君の事も、マシュちゃんの受けた恋愛相談も…全部、良い方向に持っていく方法が!!」

 

「「「えっ?」」」

柚子が何か思い付いたように明るく声を上げる…。

 

 

 

「ちょっと零児や海馬社長…遊海さんや遊矢達にも相談しなくちゃいけないですけど…こういう時こそ、私達の出番だと思うんです!」

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