転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

544 / 551
こんにちは!S,Kです!

今回は久しぶりの日常回…どうやら璃緒達に何かあったらしいが…?

それでは、最新話をどうぞ!


亜遊美と鋼太の神隠し〜世界渡りの追いかけっこ〜

《フォウ…フォ〜ウ〜……》

 

「フォウ、気持ちいいか〜?」

 

《フォウ〜ン…》

 

「ははっ…そうかそうか…」

とある日の昼下がり、遊海は穏やかな時間を満喫していた…膝の上では遊海によるブラッシングを受けたフォウが蕩けたお餅のようになって伸びている。

 

 

《マスター!次は私もお願いします!》

 

「ほいほい…彩華もずいぶん頑張ってくれたからな〜」

 

《♪》

膝の上でフォウを眠らせながら、遊海は彩華の核石を磨く…遊海はこうしたお手入れで精霊達との仲を深めているのだ。

 

 

 

《そういえば、今日は亜遊美と鋼太が遠足に行くと言っていたなぁ》

 

「ああ、ハートランドシティの郊外にある自然公園に行くって言ってたな…璃緒が頑張ってキャラ弁を作るんだって張り切ってたよ…え〜っと……ほら!」

 

《ほう…たしか、あの子達の好きなレースゲームのキャラクターか…!上手くできているなぁ!》

そんな時、メガロックが思い出したように遊海の孫、璃緒の子供達の事を口にする…今日はハートランド小学校の遠足の日だったのだ。

璃緒は張り切って作ったキャラ弁の写真を遊海達に送っていた。

 

 

《ふふっ…懐かしいですね、リョウガとリオがユウミとミドリの家族になって、最初の小学校の遠足の時にお弁当を忘れてしまって…》

 

「ああ〜…慌てて遠足先まで届けに行ったなぁ…まだ近い場所でよかったよ……ははっ、なんだかずいぶんと歳を取った気分だ…」

 

《お前も精神的に成長した、という事だ…まぁ、あまり老け込んでしまったら遊馬や遊嗣が困ってしまうぞ?》

 

「メガロックがそれ言うか?」

のんびりと昔の思い出を語り合う遊海と精霊達…それは本当に幸せな、穏やかな時間だった。

 

 

ピリリリピリリリ…ピリリリピリリリ…

 

 

「うん?噂をすれば…璃緒からか」

そんな時、遊海の持つDゲイザーが着信を知らせる…その相手は璃緒からだった。

 

 

「もしもーし!璃緒どうs『お父さん!助けて!!子供達が!!』亜遊美と鋼太が!!!』っ!?何があった!!?」

のんびりと通話に出た遊海…だが、Dゲイザーから響いたのは気が動転している愛娘の助けを求める声だった…!!

 

 

 

 

 

キィン!!

 

 

「璃緒!!何があった!!!」

 

『お父さん…子供達が、子供達がいなくなっちゃったの!!!』

ハートランドシティ郊外・自然公園…璃緒をビーコンとした「紋章の力」による転移で遊海はその場所に降り立っていた。

 

 

「落ち着け、璃緒…落ち着いて、何があったのか話してくれ」

 

『はっ…はっ……はあっ……お昼過ぎに、学校の先生から連絡が─────』

取り乱した璃緒を落ち着かせながら話を聞く遊海…璃緒の話を要約するとこういう事だった。

 

 

自然公園へと遠足に来た子供達が昼食終わりの自由時間で遊んでいると亜遊美と鋼太を含めた6人の子供達の姿が見えなくなった。

教師達は慌てて他の子供達を集め、いなくなってしまった子供達を探したが見つからず…すぐに警察と行方の分からなくなった子供達の両親へと連絡が回った…という事らしかった。

 

公園には何台ものパトカーが集まり、警察官や両親と思われる人々がそれぞれに子供達の名前を呼んでいる…。 

 

 

 

「鉄男君は?」

 

『いま、こっちに向かってる…凌牙や遊馬さんにも連絡してくれるって…』

 

「そうか……彩華!」

 

《既にサーチしています…ですが、2人の反応が見つかりません…少なくとも、この自然公園周辺とハートランドにも…》

 

「──なんだと?」

事情を聞いた遊海は最強レベルの探知・サーチ能力を誇る彩華へと問いかける…だが、その彩華でも子供達を見つけ出す事ができなかったのだ。

 

 

「こういう場合、子供達は穴に落ちたとか…池や川に入ったとか……最悪、誘拐されたなんて事もある…だけど、そこまで広くないこの公園でサーチに引っ掛からず、痕跡も残さないで消えるなんて、そんな事……いや、まさか…彩華、検索対象を変えて再サーチ!対象は──」

 

《はい!()()()()()を検索対象に加えます!!》

 

『まさか…あの子達、()()()()に迷い込んじゃったの!?』

 

「分からない、分からないが…可能性を1つずつ消していくしかない!」

今までの経験を総動員した遊海は1つの可能性に辿り着く…それは人間界で稀に開いてしまう()を介して異世界へと迷い込んだという可能性だった。

彩華はその可能性を確かめるべく、再びサーチを開始する…!

 

 

 

《───見つけました!!この先の森の中です!》

 

「っ…行ってみよう!!」

そして、彩華のサーチが次元の歪みを発見…遊海達は彼女の後を追いかけた…。

 

 

 

 

《反応はこの近くですが……》

 

《フォウ……フォウ、フォーウ!(遊海!こっちに何かあるよ!!)》

 

「フォウ!何か見つけたのか!」

子供達を探す声が微かに聞こえる森の中、彩華の言葉を頼りに周囲を見回す遊海達…その時、フォウが大きな木の根元を指し示す。

 

 

 

「っ…亜遊美の帽子……見つけた!!」

 

『木の根元って…不思議の国のアリスじゃないのよ!?』

木の根元に落ちた黄色の学帽…その近くに渦を巻いて異次元への扉が開いていた…!

 

 

 

「璃緒、俺が飛び込んで子供達を連れ戻してくる…!お前はここで──」

 

『私も行く!!今の私なら足手まといにはならないわ!!私も連れて行って…!!』

 

「まったく、仕方ないな!とりあえず時間が惜しい…トフェニ!連絡役を頼む!遊馬がアストラルと一緒にいたら遊馬号の準備をするように伝えてくれ!」

 

《御意!》

1人で子供達を追おうとする遊海…だが、覚悟を決めた璃緒の様子を見てトフェニに連絡役を託した…!

 

 

 

「よし…行くぞ!」

 

『うん!!』

 

《主殿、璃緒殿…どうか気をつけて!!》

そして、遊海達は一息に異次元の扉へと飛び込んだ!

 

 

 

 

…………

 

 

 

「っ…璃緒、いるな?」

 

『うん、大丈夫…!』

扉を抜けた遊海はすぐに璃緒の無事と周囲を確認する。

そこは不思議な鉱石が光を放つ、うす暗い洞窟の中だった。

 

 

「彩華、この世界の座標は分かるか?」

 

《少し待ってください……わかりました!十二次元世界の1つ、以前に迷い込んできた『鋼鉄装甲虫(メタルアーマード・バグ)』が暮らす精霊界です!》

 

「っ…不味いな、昆虫族の世界か…巨大なモンスターや危険な虫もいる……っ…この足跡、子供達か!!」

遊海達がたどり着いたのは昆虫族の暮らす精霊界…巨大虫や危険なモンスターの多いエリアだった…そして、足元には数人分の小さな足跡が続いていた…。

 

 

《子供達の反応は近くにありません、とりあえず──》

 

「足跡を追おう!」

 

『ええ!』

 

 

 

 

《この先に別の世界への扉が開いています、子供達はそこへ向かったのかもしれません…》

 

『もう…!危ない事はしないように言い聞かせてたのに…!!』

 

「あの子達が自分で飛び込んだのか、それとも何かに()()()()のか…とにかく、無事でいてくれればいいが…!」

子供達の足跡を追う中、彩華が再び別世界への扉の出現を完治する…そんな中で遊海も璃緒も子供達の無事を祈っていたが…。

 

 

《っ…マスター、後方から何かが高速で接近中!警戒を!!》

 

「了解っ!!璃緒!俺の後ろに!!」

 

『うん!』

その時、彩華の索敵レーダーが何かの存在を感じ取る…遊海は鋼の鎧を纏い、璃緒を庇いながら後方を睨む…!

 

 

ゴロゴロ…ゴロゴロゴロゴロ!!

 

 

『っ…何か転がってくるわ!!』

 

「岩か…!?どっせい!!!」

そして、現れたのは人の腰の高さほどの岩…遊海は咄嗟にそれを受け止めるが────

 

 

《キシャアアア!!》

 

『ひっ!?』

 

「『ゴキボール』か!!」

転がってきたモノ、その正体は丸い体を持つゴキブリ型モンスター『ゴキボール』だった…間近で巨大な虫を見た璃緒は流石に青褪めた顔をしている…。

 

 

《マスター!『ゴキボール』と思われる反応が10体以上接近中!!》

 

「っ…この洞窟は『ゴキボール』の縄張りか!?璃緒!扉に向かって走れ!!」

 

『わ、わかった!!』

謎の洞窟─そこは『ゴキボール』の巣穴だったらしく、侵入者を感知した『ゴキボール』達が襲いかかる!!

 

 

「ああ、もう!!お邪魔してごめんな!!アイスメイク・ウォール!!」

受け止めた『ゴキボール』を放り投げた遊海は『トリシューラの影霊衣』へと換装…氷の壁を作り上げて『ゴキボール』達の進路を阻む!!

 

 

「璃緒!扉に飛び込め!!」

 

『うん!!』

背後で氷の砕ける音を聞きながら、遊海達は再び異世界への扉をくぐった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「ああ…びっくりした…!今度は何処の世界(シュル!!)だあぁぁぁっ!?」

 

『父さん!?』

 

《フォウ─!?(遊海ー!?)》

扉を抜けて一息ついた遊海…しかし、その瞬間…足元に絡みついた蔦に逆さ吊りにされてしまう!

 

 

《キュラララ…!》

 

「っ…『魔界のイバラ』…いや、『人喰い植物』か!?」

 

『お願い!「ラグナ・インフィニティ」!!』

 

「すまん璃緒…!!」

遊海を襲ったのはイバラの生えた蔦を操る植物族モンスター『人喰い植物』…遊海達は植物族の住む精霊界に迷い込んだらしい…。

そして、吊り上げられた遊海は璃緒の召喚した『神葬零嬢ラグナ・インフィニティ』に蔦を斬り落とされて助け出される!

 

 

「ありがとう璃緒、助かった…!」

 

『ううん…いいの…!それより、子供達がこんな場所に迷い込んでいたら…!!』

 

「植物族の精霊は知性があって意思疎通できるモンスターも多いが…このエリアは…!」

璃緒に助け出された遊海は周囲を見渡す…そこには『人喰い植物』や『ヤシの木』『スネーク・パーム』『マンイーター』『イービル・ソーン』など…危険度の高いモンスター達が繁茂していた…!

 

 

《マスター!こちらに近付いてくるモンスターの反応を感知!》

 

「っ…(この危険地帯に近づいてくるなら、それなりにレベルの高いモンスターか…!友好的なモンスターだといいが…!)」

その時、彩華が再び近付いてくるモンスターの反応を感知…遊海は即座に警戒する、そして───

 

 

 

「「「「!!!」」」」

 

 

『他のモンスター達が引っ込んでいく…?』

 

《──────》

周囲のモンスター達がイバラや触手を引っ込めたり、地面の中に逃げていく…そして、現れたのは───緑色の甲冑を着込んだ剣士だった。

 

 

「お前は…たしか…『聖蔓の剣士(サンヴァイン・スラッシャー)』、か…?」

 

《(コクッ)》

遊海はそのモンスターに見覚えがあった…ハノイの騎士・スペクター…彼の扱う『聖蔓の剣士』だった、彼も遊海の言葉に同意するように頷いている。

 

 

「俺達は精霊界に迷い込んでしまった人間の子供達を探してるんだ…このくらいの背丈で、黄色い帽子をかぶった人間達が来なかったか?」

 

《(クイクイ)》

 

『付いてこい、って言ってるみたい?』

 

「そうらしい…行ってみよう」

手振りを交えて『聖蔓の剣士』に説明する遊海…その意図が伝わったのか、剣士は遊海達に付いてくるように促した。

 

 

 

『わぁ…綺麗…!』

 

「『聖天樹の大母神(サンアバロン・ドリュアランティエ)』…この辺りの支配者だったのか…」

剣士に付いていく事しばらく…静かな森を抜けた先で視界が開ける、そこに佇んでいたのは桃色の花が咲き誇る大樹の幹に女性の姿が浮かんだ母なる樹『聖天樹の大母神』だった。

 

 

《─────》

 

【─────】ズプリ

 

『あっ…「聖蔓の剣士」が…!?』

 

「『聖蔓(サンヴァイン)』モンスターは『聖天樹の大母神』の子供であり()()みたいなものなんだろう…ああして取り込まれる事で『大母神』に情報を共有する…母なる樹から生まれ、母なる樹に還る…それがあの精霊達の在り方なんだ」

そして…『大母神』の前に跪いた『剣士』が『大母神』から伸びた蔓に包まれ、吸収される…それを見た璃緒は口元を押さえるが、遊海は静かに彼女達の生態を見つめていた…。

 

 

 

《遊海、あれとの話は任せてくれ…知らん仲ではない》

 

「ああ…スペクターが入院中の遊嗣を訪ねてきた事があったらしいな…頼む、メガロック」

 

《うむ》

そして、『大母神』の声を聞き取れるメガロックが遊海達の前に歩み出る…。

遊海もニュアンス程度ならば理解できるのだが…大地に根ざす大樹と大地の竜たるメガロックは相性がいいらしい。

 

 

【─────、─────】

 

《ふむ…なるほど……》

 

「メガロック、『大母神』はなんて言ってるんだ?」

 

《うむ、少し前にピンク色のフワフワ?を追いかけて子供達がこの世界にやって来たらしい…危うく凶暴な植物達に襲われる所だったらしいが…先ほどの『聖蔓の剣士』が切り捨てて助けたそうだ》

 

『ピンク色のふわふわ…?』 

 

「そうか、だから『人喰い植物』は気が立ってたのか…」

 

『大母神』の言葉を通訳するメガロック…やはり、子供達はこの世界にやって来ていたらしい。

 

 

 

【─────】

 

《子供達を保護しようとしたらしいが…ピンクのフワフワを追って、別世界の扉を抜けてしまったらしい…まったく、元気なのはいいが、わんぱくが過ぎるなぁ…》

 

「なるほど…とにかく、その扉へ行ってみよう…ありがとう『大母神』」

 

【───、───!】

 

《ははっ…『こちらこそ、私の()()を許してくれてありがとう』…だとさ》

 

「そっか…」

別世界に向かってしまったらしい子供達…その行方を聞いた遊海は『大母神』に感謝を伝える…だが、それは『大母神』も同じだったらしい…彼女の幹に浮かぶ女性は優しく微笑んでいた…。

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

「───この世界は……」

 

『お父さん…?来た事がある世界なの?』

 

《ここは………かつて、マスターや十代さん達が激しい戦いを繰り広げた精霊界です…今は暗黒界や戦士族の精霊達が共存する世界となっています》

『大母神』に示された扉を抜けた先…そこは暗い空の広がる精霊界───遊海と十代にとって因縁ある世界だった。

 

 

『あれ…?お父さんや十代さんってカイトさん達に協力する為に12次元の世界とか、他の世界も回ったんじゃ…』

 

《マスターは、この世界を訪れても…短い時間しか留まっていません……この世界には、マスターの悲しい思い出が多すぎるのです》

 

『あっ…(母さんが言ってたわ…「破滅の光」の影響を受けたユベルの陰謀でお父さんが『邪神』に魅入られて、本気の殺し合いをしたって…この世界が……)』

何処となく暗い表情の遊海を見た璃緒は翠から聞いた昔話を思い出す…この世界こそ、遊海が()()()()を刻まれてしまった…因縁の場所なのだ。

 

 

 

「この世界には『タイラント・ドラゴン』とか危険なモンスターもいる…早く、あの子達を追おう」

 

『お父さん…』

顔を強張らせた遊海は帽子で表情を隠す…その様子だけで、璃緒は遊海が抱え続ける傷の深さに気付いていた…。

     

 

 

《ん…おやぁ…!?こりゃぶったまげた!!遊海!遊海でねぇか!!》

 

「えっ…?」

 

『っ…悪魔族のモンスター!?』

その時、遊海達の頭上から間の抜けた声が響く。

そこにいたのはオレンジ色の大きな手を持つ、壁のような体躯の悪魔族モンスターだった…その姿を見た璃緒は臨戦態勢を取るが───

 

 

「レンジ…?お前なのか…!?」

 

《遊海!やっぱり遊海かぁ!!久しぶりだぁ!!》

 

『えっ…お父さんの知り合い?!』

 

《『暗黒界の番兵レンジ』…当時、『破滅の光』の狂気に侵されて暴走状態にあった『暗黒界』のなかで唯一、正気を保っていた優しい精霊です…当時、まだ力を使い熟せていなかったユウミやミドリを守ってくれた恩人でもあるのですよ》

 

『(そっか…お父さんはこの世界を避けてたから…!)』

だが、それは杞憂だった…大きな悪魔──『暗黒界の番兵レンジ』は嬉しそうに遊海を抱き上げ、その様子を驚いた様子で見ていた璃緒へとフレアが説明する。

 

遊海は十代を介して『暗黒界』のモンスター達が復活している事は聞いていたが、この次元に訪れても最低限の時間しか留まらなかった事で顔を合わせる事ができずにいたのだ。

 

 

 

「レンジ…元気そうで良かった…!!十代からお前達が復活したのは聞いてたけど、あの時のお前のままなんて…!!」

 

《オラも死んだかと思ったけんど、なんとかなるもんだなぁ!ブロン様やブラウ達も正気に戻って元気にやってるだよ!あの時は本当にすまなかっただぁ!》

 

「良いんだ…俺も、胸のつかえが取れたよ…!」

当時、遊海は荒事や物語への「干渉」に慣れておらず…守れなかった命もあった…そんな中で心残りになっていたレンジ……彼との再会は遊海の背負っていた重荷を軽くする事ができたのだった…。

 

 

《ん?遊海、隣のべっぴんさんはどちら様だべ?》

 

「ああ!うちの娘の璃緒だ、これでも3人の子持ちなんだぜ?」

 

《おおっ…!?そうなんだか…!あれから何十年も経てばそうなるかぁ…!………ん?その髪色、さっき見た()()に似とるなぁ…?》

 

『っ…!?子供達を見たの!?』

 

「レンジ…実は、人間界からうちの孫達が精霊界に迷い込んだらしくてな…その後を追いかけてるんだ…!」

 

《そうなのか!?》

遊海に子供ができた事を喜ぶレンジ…しかも、子供達を見かけたらしい…!

 

 

《いや、ピンク色のウサギを追いかけてる子供達を見かけて声を掛けたんだども……一緒にいたズールやブラウの顔を怖がって逃げちまっただよ…》

 

『「ああ〜…!!」』

 

アニメGXでは『悪役』として描かれてしまったが…本来の『暗黒界』は魔界の英雄として扱われるヒーロー…しかし、悪魔族故に怖がられたり、勘違いされる事が多い…その言葉を聞いた遊海と璃緒は顔を覆ってしまう…。

 

 

「弱ったな…これ以上、12次元世界を回ると本当に危険なエリアに行き着きかねないぞ…!?」

 

『危険な場所って…!?』

 

「陸地が存在しない、魚族や海竜族の暮らす世界…断崖絶壁に鳥獣族の暮らす世界…炎族や炎属性が暮らす火山の世界…それに──」

 

《ううっ…!?あの地獄の世界だべか…!?あんな恐ろしい世界に子供達が行ったら大変だ!!早く追っかけるだよ!!》

 

「っ…ありがとう、レンジ!今度は翠や息子と一緒に遊びに来るよ!」

 

《わかった!遊海、リオ!またなぁ〜!子供達の無事を龍神様に祈ってるだよ〜!!》

レンジに見送られながら、遊海達は子供達の痕跡を追いかけた…。

 

 

 

 

『でも、ピンクのウサギを追いかけてって…本当に絵本とか、物語の世界の話じゃないの…!』

 

「あー…でも、子供ならやりかねないなぁ…!!『亀を助けたら竜宮城に行ける』とか、『カエルにキスをしたら王子様になった』とか…お前達も信じてた時があるだろ?」

 

『それはそうなんだけどぉ!』

荒れ地に残る子供達と小さな獣の足跡を追いかける遊海達…無邪気な子供達だからこそ、ついつい面白そうなモノを追いかけてしまったのだろうと遊海は考えていた。

 

 

《マスター!次の扉が見えました!》

 

「っ…フォウ!次はどんな世界に行くか分からない!ポケットに入っててくれ!」

 

《フォウ!》

次の扉が迫り、遊海はフォウを胸ポケットに抱え込む…そして、2人は扉へと入り込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

 

『────なに?この世界…』

 

「は、初めて来る世界だが…()()が違いすぎないか??」

 

《フォウ…(絵本の中みたい…)》

扉を抜けた先…その景色を見た遊海は言葉を失った。

 

 

地面は白いモコモコとした雲のように

 

広がる空は薄いピンク色でフワフワとした虹が架かっている

 

目の前の森もまるでイタズラ書きのイラストのようにもこもことしている…。

 

まるで、絵本の世界に飛び込んだようなファンシーな精霊界だった。

 

 

 

 

《この世界はまだ、私達の訪れた事のない精霊界のようです…次元地図にマッピングしておきます…っ、近くに精霊の反応を確認!気をつけ───えっ?》

 

《(ぴょこ)》

 

「『か、かわいい…』」

 

《フォウウ…!!(ライバル登場の予感!!)》

新たな精霊界へとたどり着いた遊海達…そんな彼らを出迎えたのは、ピンク色の体と水色のタテガミを持つ愛らしいポニーだった…あまりにも可愛い精霊の登場に遊海と璃緒の声が重なる…。

 

 

「こんにちは…この森に、俺達みたいな…人間の子供が迷い込んでないか?」

 

《ひひん!ぷるる!》

 

「知ってるみたいだ…ついていこう!」

遊海の言葉を理解したらしいポニーは遊海達を森の奥に誘った…。

 

 

 

《ひひん!》

 

「っ…あっ…!!いた!!」

 

『亜遊美!鋼太!みんなって……ええ〜…?』

ポニーの導きに従う事しばらく、遊海達は子供達にようやく追い付いた…と同時に()()した、その理由は──

 

 

 

《すぅ…すぅ…》

 

【すぴー…すぴー…】

 

「「「すぅ…すぅ…」」」

 

《フォウ〜(遊海や璃緒達の心配も知らないで…ぐっすり寝ちゃってるねぇ…)》

森の中の広場…そこには熟睡する6人の子供達の姿があった。

その腕の中にはピンク色のウサギや可愛らしいネコやキツネ達の姿があり…その体をピンク色の大きなリスのような精霊に預けている。

 

 

 

《ひひん…ひひん!》

 

【う〜ん、ポニィ…どうしたの〜?……あら、また人間さんのお客様?この子達を迎えに来てくれたのかしら?ふわぁ…】

ポニー…ポニィというモンスターが眠っていた大きなリスのような精霊の前髪を引っ張る…そして、大きなリスはのんびりとした様子で目を覚ました。

 

 

「眠っていたのにごめんな、俺はデュエリストの白波遊海…そして、娘の璃緒だ…きみの周りで眠っている子供達を探して精霊界を渡ってきたんだ」

 

【あらあら、ご丁寧に〜…わたしは『メルフィー・マミィ』、ここはメルフィーの森という場所よぉ……ごめんなさいね〜…子供達、人間界に迷い込んじゃったうちの子…『メルフィー・ラビィ』を追いかけて来ちゃったらしいのよ〜】

 

「あー…やっぱり……」

人語を話せる大きなリス『メルフィー・マミィ』はのんびりとした様子で事情を語る。

 

ふとした事で人間界に迷い込んでしまったピンク色のウサギ『メルフィー・ラビィ』…亜遊美達は偶然、その姿を見つけてラビィと追いかけっこを繰り広げてメルフィーの森までやって来てしまったらしい…。

 

 

【ほら、少し前に()()()()()()()があったでしょう?それで他の世界に繋がる穴が開いてしまったみたいなの…うちの子達、怖がりな子が多いから…びっくりしてしまったみたい】

 

「大きな、グラグラ……地震?───あ…あの時のか!??!」

大きなグラグラ…地震…それを聞いた遊海は原因に心当たりがあった…。

 

 

それは究極のパワーの衝突…『覇王龍ズァーク』と『スカーレッド・ハイパー・ノヴァ・ドラゴン』の大激突だった。

 

 

 

「……璃緒、すまなかった…今回の騒動の原因はシンクロ次元のジャックと()だ……まさか、精霊界まで影響が出てるとは…」

 

『ええー…!?何やってるのよお父さ〜ん…!』

 

「すまん…!!カイト達に次元の歪みの調査を頼まないとなぁ…はぁ…」

今回の事件の原因が判明し、遊海も璃緒もへたり込む…まさか、遊嗣とジャックのデュエルの影響がここまで出ているとは思っていなかったのだ。

 

 

 

「ん…あっ…ママ!若じいちゃん!!」

 

「あっ…本当だ!見て見て〜!ウサギちゃんと追いかけっこしてたの!ふわふわなんだよ〜!!」

 

《ぴきゅ?》

そして、眠っていた亜遊美と鋼太が目を覚まし…無邪気な笑顔で遊海達に駆け寄る…その腕の中では『メルフィー・ラビィ』が首を傾げている。

 

 

「おー…2人とも…とにかく、無事で良かった……だけど、お母さんや、お友達の親御さんを心配させるんじゃなーい!」

 

コツン☆

 

「「いた〜い!!?なんで〜!?」」

 

『なんでじゃないの!!本ッ当に心配したんだから〜!!』

 

【あらあら〜……】

 

《フォウ…フォウフォウ…(とりあえず、一件落着…かな?)》

そして…孫達の無事を喜びながら、遊海はその頭に拳骨を落としたのだった…。

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

「なるほど…そんな事があったの…」

 

「ああ、子供達は『大人の目につかない所で昼寝をしてた』って事になったらしい…カイトとDr.フェイカーの手回しで学校の先生達もお咎め無しにしてもらうってさ」

夜の帷が落ちた頃のハートランド・白波家の家…凌牙はDENCityで事件の続報を待っていた翠へと父から聞いた一部始終を報告していた…。

 

 

 

「亜遊美ちゃんや璃緒ちゃん達は?」

 

「2人は父さんと璃緒、鉄男と学校の先生にこっぴどく叱られて落ち込みモード…まぁ、父さん達の気持ちも分かるけどな…今はフォウを抱っこしながら夢の中だろうさ、璃緒も疲労困憊で小鳥に様子見を頼んだよ」

 

「本当に、怪我がなくて良かった…」

無事に人間界に戻ってきた子供達は両親や先生に大層叱られる羽目になった…特に、遊海の孫2人の落ち込み方は凄まじく…フォウがメンタルケアに付き添っている…。

璃緒も久しぶりに走り回ったせいで疲れ果ててしまい、小鳥達ハートランド女子チームが応援に向かったらしい。

 

 

 

 

 

「──それで、遊海さんは?」

 

「ああ、父さんなんだけど…」

 

 

 

「ぐう……ぐがぁ~……ぐがぁ~………」

 

 

 

「……見ての通りの大いびき…よっぽど神経張り詰めてたんだろうなぁ…」

そして…一連の事件を解決した遊海はDENCityに戻る気力もなく、リビングのソファで珍しくいびきをかきながら眠ってしまっている…。

 

 

 

「明日、璃緒の家でフォウを回収してから帰るってさ」

 

「了解!ふふっ…遊海さんも凌牙君もお疲れ様!」

 

 

「ぐぅ……亜遊美〜…鋼太〜……璃緒を、お母さんを…大切に……ムニャ……」

疲れ果てた遊海を優しく労る翠…そして、遊海は夢の中でも孫達を叱りながら…それでも、幸せそうに眠っているのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。