転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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蛇の刺客〜襲いくる悪夢〜

「急ぐザウルス!早くアニキを保健室に!!」

 

「アニキしっかりして〜!!」

 

「十代!気をしっかり持つんだ!!」

剣山と翔、ヨハンは十代を連れて保健室へと急ぐ…十代はオブライエンとの死闘の末、デスベルトによりエナジーを抜かれ気絶してしまっていた…。

 

 

「鮎川先生!大変ッス!アニキが十代の…!」

 

「カウンターショック急いで!早く服を…!!」

 

「はい!!」

 

「なっ!?何事ッス!?」

 

保健室へと駆け込んだ翔と剣山が見たのは戦場だった、鮎川先生や看護師達が走り回り処置をしている…その脇には翠に付き添われた新入生・早乙女 レイの姿があった…。

 

 

「翠さん!レイちゃん!どうしたザウルス!?」

 

「剣山さん…翔さん!遊海先生が…遊海先生が!!」

 

「カウンターショック!!」

 

バチバチッ…ドン!

 

「…なんとか戻ったわ…いったい…何があったの…?」

 

鮎川先生の視線の先には気絶し、右腕全体に黒い茨の模様が巻き付き、死に体の遊海の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・朝〜

 

 

オブライエンとのデュエルの翌日、遊海はなんとか回復していた…。

 

「ふぁ〜…よく寝た…なんとか体調は戻ったかな…」

 

《マスター、でも無理は禁物です…デスベルトも着けているんですから…》

 

「ああ…そうなんだよな…」

 

遊海の腕には黒く輝くデスベルトがあった…生徒達は白なのに何故か黒である…

 

 

 

「これ…絶対に何かの仕掛けがあるよな…黒いし…」

 

《慎重に行動していきましょうマスター…》

 

「ああ…、痛っ!?」

 

《どうしたんですか?マスター?》

 

「いや…デスベルトの下に痛みが…くそッ…ズレない…!なんでこんなピッチリと…」

 

《マスター!あまり無茶は…!》

 

「こうなれば…精霊変身!モードクリフォ…!痛っう!?」

精霊アーマーを纏おうとするが痛みが強くなっていく…。

 

《マスター!?腕に変な模様が!!》

 

デスベルトの下から黒い茨の模様が伸びてくる…

 

「なんだコレ!?呪印か何かかよ!?」

そう言っている間にも茨は伸び肘の辺りまで伸びてくる…

 

 

 

《マスター!?》

 

「くそっ!『魔法除去』!『ハーピィの羽箒』!『幽鬼うさぎ』…ぐああぁぁああっ!!?」

 

遊海は手当たり次第に除去関係のカードを発動させるが痛みは増していく…その痛みは肉体では無く魂を直接刺すような痛みだった…

 

[遊海!ヤメロォォ!!!カードを…『精霊の力』を使うな!!]

 

「ユウスケ!?ッ…わかった!精霊力…強制封印!!」

 

遊海は精霊の力の供給を全てストップする…それによりアヤカの姿が見えなくなる…しかしアヤカは自力で実体化する。

 

《マスター…大丈夫ですか…?》

 

「ゼェ…ゼェ…なんとか…な、痛みは治まった…」

精霊の力の封印と共に痛みは治まっていく…茨も肘上で動きを止めている…。

 

 

 

「限定解除…精霊を視る力…」

遊海は閉じていた力を瞳に流す…痛みは無い…

 

 

「限定解除…干渉能力…っぐ!?…ダメか…」

両腕に力を流す…しかし痛みを感じすぐにやめる、そして僅かだが茨が伸びる…

 

《マスター…いったい何が…?》

 

「…どうやらこのデスベルトは文字通り呪いのアイテムだったらしい…しかも俺を殺しうる…な…」

 

《なっ…!?どういう事ですか!!》

 

 

 

「この黒いベルトには呪いの『種』が仕込んであったんだ…」

 

《呪いの種…?》

 

「ああ…そして種は俺の力を吸い上げ芽を出した…精霊の力を吸い上げてな…。そして呪いは俺の魂に根を張り俺が力を使う程成長する…そして成長すればする程、魂を絞め上げる、そして成長しきれば…俺は致命的なダメージを受ける…」

遊海は茨を見つめながら呟いた…。

 

「俺は決闘以外では死なない身体だ…しかし不死身なのはあくまで『身体』…魂までは及ばない…魂を砕かれたら…俺は死ぬだろうな…」

 

《そんな…マスター!な、何か方法は…!そうだ!フレアさんに頼めば!》

 

《アヤカ…それは不可能です…》

遊海の肩にフレアが実体化する…話は聞いていたようだ…

 

《フレアさん!なんでですか!?》

 

《呪い単体であれば私がどうにかできます…問題はその黒い腕輪です…。》

 

《デスベルトが…》

 

《その腕輪には物理的な破壊への耐性、精霊の力に対する耐性、炎熱・氷結に対する耐性があります…それが呪いの元を守り解呪できないようになっているのです。仮に…オリジナルの三幻神が揃えば腕輪を破壊して解呪できるでしょうが…その前にユウミの魂が保たないでしょう…》

 

《そんな…!?》

フレアは淡々と事実を話す…、その瞳には僅かに涙が溜まっていた…

 

 

「これはユベルからの警告だろう…『邪魔をしたら殺す』っていうな…まったく、厄介なモノを取り込んだもんだ…」

 

 

ユベルは宇宙に打ち上げられた時に破滅の光の影響を受けてしまっていた…それにより愛に一途だったユベルはさらに歪められ病的なヤンデレへと変わってしまった…その由来を思えば皮肉な事だろう…。

 

「アヤカ…フレア、この事は翠には内緒にしておいてくれ…これは俺だけの問題だ、これ以上心配はかけたくない…。」

 

 

《わかりました…でも本当に無茶だけはしないでくださいね…?》

 

「ああ…無茶はしないさ、さて…そろそろ朝ご飯かな…行こうか…」

 

《はいユウミ…》

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます遊海先生!」

 

「おはようレイちゃん!今日も元気そうだな!」

 

「はい!ぼくは十代様と一緒にいられるだけで幸せなんです!」

 

「たはは…参ったな…」

 

「よかったな十代!彼女候補か?」

 

食堂に行くと十代やヨハンと一緒に新入生の早乙女 レイちゃんが食事を摂っていた。

 

早乙女 レイ…彼女がアカデミアに来たのは約三年前に遡る…。

十代達が入学してしばらくした頃、小学生なのに年齢・性別を偽りアカデミアに転入してきた彼女はカイザー亮に告白するためにやってきた、その後何やかんやがあり十代とデュエル、勝負に負けた彼女は十代に惚れ自分が小学生である事を告白し島を去った。

 

その後成長した彼女はジェネックスに出場、数々の先輩やプロを下し万丈目に続き大会で準優勝、その戦績を見た鮫島校長により特例で中学生ながらアカデミアに飛び級入学を果たしたのだった…、尚明日香とは十代を巡り火花を散らしているが…それは十代の預かり知らぬところである…。

 

 

 

「レイちゃん、授業は慣れたかい?高校レベルだから少し難しいかもしれないけど…」

 

「ぜんぜん大丈夫です!明日香先輩やクロノス先生が優しく教えてくれるので大丈夫です!」

 

「そうか!ならよかった!」

ついでにレイは超秀才である…レベッカを思い出すな…今はどうしてるだろうか…?

 

 

「おはようございます遊海さん!…あれっ?」

厨房から翠が歩いてくるが俺を見るなり首を傾げる

 

「おはよう翠!…どうした?」

 

「いえ…遊海さん、痩せました…?少しやつれたような…?」

 

「!?…気のせいだよ!朝少し夢見が悪くてな…そのせいだろう!」

遊海は明るく返す…内心翠に謝りながら…

 

「そう…ですか?ならいいですけど…さぁ朝ご飯食べちゃってくださいね!今日は塩鮭とキュウリの浅漬けですよ!」

 

「ああ、ありがとう翠!」

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・夕方〜

 

 

「ふぅ〜…仕事も一段落したしそろそろ戻ろうか…」

 

《お疲れ様ですマスター、体は大丈夫ですか?》

 

「ああ、精霊の力を使わなければ大丈夫だ…痛みもなかったしな…」

そう言いながら腕を捲りあげる…そこには朝と同じ位置に茨があった…

 

「とりあえず最初の異世界は十代達に任せるしかないか…とにかくデスベルトは最初の異世界が終われば消えるはずだし…」

 

《そう…ですね…マスター、いきましょう、翠さんがご飯を作って待っていますよ?》

 

「ああ…そうしよう!今日はなんだろうな!」

 

 

 

 

 

『…プロデュエリスト、白波 遊海…何か隠し事をしているな…少し探るか…』

 

逆立った赤髪の青年が遊海を見ていた…その瞳は怪しく光っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アカデミア・夜〜

 

 

 

「ぐっうう…!!」

疲れにより早く眠りについた遊海は魘されていた…。

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ…神の炎で燃え尽きなァ!「ゴッド・ブレイズ・キャノン」!!』

 

「ぐああぁぁあ!!」

 

 

 

 

『「シュロノス」よ「アポクリフォート・キラー」を攻撃!白波 遊海よ!その魂を我が神に捧げよ!』

 

「ガッ…アッ…!!」

 

 

 

 

【邪魔をするなら全てを消し去るまで!喰らえ!「カタストロフ」!!】

 

「お願い!『シェキナーガ』!遊戯さんを…ファラオを守って!!」

 

 

 

…身体が消えていく…魂の力が失われ砂へと還っていく、遊戯を…ファラオを守る事は出来た…悔いは無い…でも…翠ともう少し長く…過ごしたかったなぁ…

 

 

 

カランッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!!…ハァ…ハァ…夢か、嘘でも夢見が悪いなんて言うんじゃなかったな…」

 

遊海は汗をかきながら目を覚ます…今まで戦った強敵達…既にこの世にいないはずの彼らの夢を見ていた…。

 

「喉が乾いた…確か冷蔵庫にサイダーがあったな…」

 

遊海は立ち上がり冷蔵庫へ向かうが…違和感に気づく…

 

「翠がいない…?」

時計は夜の10時を指している…普段ならもう寝ているはずだが…?

 

「アヤカ…翠は?」

 

 

「アヤカ…トフェニ…フレア…?」

 

 

「ユウスケ…?」

 

 

「なんで…みんな反応がないんだ…?」

 

遊海は不安を感じながら部屋の外に出る…

 

メラメラ…

 

「なっ!?なんだよコレ!!」

遊海が外に出ると…アカデミアが炎に包まれていた…校舎も…森も…全てが燃えている…

 

「いったい何が!!」

 

【Grrooo!!】

 

「っ!?何だ!」

困惑する遊海の耳に獣のような唸り声が響く…その先には

 

「何だよ…アレ…」

 

そこには悪魔がいた…黒い髪…黒い体色、2対の黒い翼…瞳の無い不気味な白い眼…鋭い爪…その悪魔がアカデミアを燃やし尽くそうと炎を放っている。

 

「や…ヤメロォォ!!」

 

遊海は咄嗟に鎧を纏い悪魔の前に飛び出す

 

『貴様…!なんでこんな事を…!!』

 

【GuOOOO!!】

遊海は悪魔に声をかけるが悪魔は咆哮で返す…意思疎通はできないようだ…

 

『意思疎通は無理か…っ!?貴様…手に何を持っている…!?』

 

【Guu…Gaaaa!!】

悪魔は手に持っていたモノを遊海の目の前に転がす…それは…

 

『嘘だろ…?翠!しっかりしろ!翠!!』

遊海は投げられたモノに駆け寄る…それは全身がボロボロになった翠の姿だった…既に意識は無く、全身にヤケドを負っている…

 

『翠!しっかりしろ!起きてくれ翠!翠!いったい誰が!誰がこんな事を!!!』

 

【ナニヲイッテイル?】

 

『なっ!?』

悪魔はいつの間にか遊海の後ろに回り込んでいた…

 

【ソレヲヤッタノハ…キサマダロウ…?】

 

【なっ!?…えっ…?】

遊海は気づくと悪魔と瓜二つの姿に変化していた…

 

【オレハキサマダ…キサマハオレダ…!】

 

【ウソだ…ウソだああああ!!!?】

 

【ウケイレロ…ソレガオマエだ『■■』ノスガタダ…!】

 

【嘘だ…ウソだ…!ウソダァァァ!!!】

遊海は爪で悪魔を切り裂く…しかし…

 

「遊海さん…どうし…て…?」バタッ

 

【ミドリ?ナンデ…ナンデダ!?】

 

 

遊海が切り裂いたのは抱いていたはずの翠だった…

 

【ソンナ…ソンナ!!!ウッ……GAAAAaaaa!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヤカちゃん直伝!鉄・拳・聖・裁!!」

 

 

 

 

 

 

「ゴボっ!?…ぐ…なん…だ…?」

 

「遊海さん!気がつきましたか!?大丈夫ですか!?」

 

「ぐっ…あ…みどり…?」

 

「もう…部屋に戻ってきたら遊海さんがすごい苦しみ方してたのでパンチで起こさせてもらいました!…大丈夫ですか?」

 

「みどり…翠!!」

 

「えっあ…ちょ遊海さん!?どうしたんですか!?」

 

意識が完全に覚醒した遊海は翠を抱き寄せる…翠の身体は暖かかった…先程の出来事は夢だったのだと認識できた…。

 

「翠…ごめん、しばらくこのままでいてくれ…頼む…!」

 

「遊海さん…はい…わかりました!…よっぽど怖い夢だったんですね…大丈夫…夢は夢の中だけで終わりです…大丈夫…大丈夫…」

 

翠は遊海の背中に手を回し優しく擦る…そんな中で翠は考える、神や邪神をも恐れず戦った遊海を怯えさせた悪夢…いったいどんな夢だったのだろうと…。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…落ち着きましたか?」

 

「ああ…大丈夫だ、ごめんな…みっともないところを見せて…」

 

「良いんですよ遊海さん!私達夫婦じゃないですか!夫婦はお互いに助け合って生きていくものですよ!…それに私も安心したんです!」

 

「安心…?」

 

「ええ!、遊海さんも喜怒哀楽のある『人』なんだなって…ほらみんなの前だといつも冷静じゃないですか?」

 

「そうかな…冷静なつもりはないんだけど…少し気をつけるよ、ありがとう翠…」

 

「いえいえ!さぁ改めて寝直しま…」

 

パリーンッ…ドタバタ…

 

「っ!!なんだ!?」

 

再び寝直そうとした二人の耳にガラスの割れる音が聞こえてきた…そして…

 

「ちょ…何するのさ!?離してよ!?キャアアアアア!!!?」

 

「今の声は!」

 

「レイちゃん!?」

 

二人は慌てて部屋を飛び出す、すると…

 

「誰か助けて〜!!!」

黒い人影に連れ去られるレイの姿が…!

 

「レイ!!待て!誘拐犯!!!」 

遊海は駆け出す…しかし犯人は物凄いスピードで逃げていく…まるで訓練された人間のように…

 

「翠!クロノス先生と校長に連絡!!俺は追いかける!!」

 

「わかりました!!気をつけて!」

 

遊海は犯人を追いかけ森へと駆けて行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…追いつけない!!なんて速さだよ!?」

 

遊海は犯人を追いかけ森を進む…犯人は凄まじい速さで遠ざかっていく…

 

「くっ…しょうがない!精霊変身!モード太陽神!!ッ!!グアアアアアアアア!!」

 

遊海は無理を承知で変身する、それと共に右腕が…魂が悲鳴をあげる…!

 

《マスター!!なんて事を!?今の身体では!》

アヤカが実体化し遊海に声をかける

 

『アヤカ!!今まで何処にいたんだ!!なんで襲撃に気付かなかった!!』

遊海は怒鳴りつけるようにアヤカに問いかける

 

《申し訳ありませんマスター!!システムのアップデートをしていました!》

 

『くそ…追いかけるぞ!!アアアアアアッ!!』

 

遊海は痛みをかき消すように叫びをあげ滑空する…そしてすぐに犯人に追いついた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いたのは十代達が墓守の世界に転移した場所だった…犯人は黒いローブで脇にレイを抱え佇んでいた…。

 

「ゼェッ…ハァ…追いついたぞ誘拐犯…レイを…レイを開放しろ…!!」

 

「遊海先生!助けて〜!なんかコイツ怖いよ〜!!」

 

『久しいな白波 遊海…いやシュウよ!!』

 

「『シュウ』だと…?その名前は…」

 

シュウ…その名前はかつて遊海が王の記憶の世界にて乗り移った神官の名前だった…何故コイツがその名前を知っている…?

 

『キサマが我と同じように転生しているとは好都合…三千年前の恨み…晴らさせて貰おう!!』 

 

男は黒いローブを取り払う…その下には戦闘服を着た黒い犬…ジャッカルの顔があった…。

 

「キャアア!?化物〜!?」

 

『我が名はアヌビス!!三千年前の所業…忘れたとはいわせんぞ!!』

 

「アヌビス…だと!?」

 

 

 

アヌビス…映画「光のピラミッド」で登場した悪役だ、俺の記憶では闇の大神官・アクナディンが保険として数千年先で転生するセトのために生きながらミイラにした男…映画では復活したアヌビスが海馬を使い冥界の王になろうとして闇遊戯に倒されたはず…俺となんの関わりが…?

 

「俺はシュウじゃない!白波 遊海だ!俺が何をしたと言うんだ!」

 

『忘れたとはいわせんぞ!アクナディンが封印された後、生き残った貴様はミイラとなっていた我を見つけ破壊したではないか!そのせいで我は完全に死に!転生したのだ!』

 

「じゃあ…なんでここにいる!」

 

『我は生まれ変わり傭兵として生きていた!そしてある時死にかけた!その時に思い出しのだ!三千年前の記憶を!怒りを!!貴様を手始めにテフ!ファラオ!セトに我は復讐するのだああああ!!』

アヌビスから闇のオーラが溢れ出す…やはりコブラの…!

 

「あっ…遊海先…助け…!!」

 

「レイ!」

レイは闇に当てられたのか気絶する…俺の預かり知らない因縁だけど…やるしかない!

 

 

 

「デュエルだアヌビス!お前との宿命…ここで精算する!」

 

『やれるならやってみるがいい!貴様を闇に沈めてやる!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊海LP 4000

アヌビスLP 4000

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロ…ぐぅぅぅ!?この痛みは…!」

 

右腕に痛みを感じ袖を捲りあげる…そこには茨がその数を増やし右腕の7割を覆っていた…

 

「っぐぅぅぅ…早めに勝負を…決めないと…ドロー!」

 

「手札から魔法カード『召喚士のスキル』2枚を発動!デッキから『クリフォート・ツール』『クリフォート・アセンブラ』を手札に加える!さらにペンデュラムスケールに2枚をセッティング!」

決闘盤の外装が弾け飛び遊海の隣に光の柱が現れる。

 

『なんだその力は!?』

 

「『ツール』の効果により800ライフを払いデッキから『クリフォート・アーカイブ』を手札に!」

 

遊海LP4000→3200

 

「我が魂を守りし大いなる力よ!闇を祓う力を!ペンデュラム召喚!『クリフォート・ゲノム』!」

オレンジ色のコアの機械が現れる ATK1800

 

「そして『ゲノム』を生贄に『アーカイブ』を召喚!」

緑色のコアの機械が現れる ATK2400

 

「カードを2枚伏せてエンドフェイズ!『アセンブラ』効果で1ドロー!ターンエンド!」

 

遊海LP 4000

アーカイブ P ツール アセンブラ 伏せ2 手札2

 

 

 

 

 

 

『貴様…訳のわからん力を…しかし我は貴様を倒す!』

 

 

 

 

 

『我のターン!ドロー!フハハハ!我の勝ちは決まったぞシュウよ!』

 

「何っ!?」  

 

『手札から「トラップブースター」を発動!手札の『守護者スフィンクス』を捨てて効果発動!手札から永続罠「光のピラミッド」を発動!!』

 

アヌビスの背後に白いピラミッドが現れる

 

『さらに手札からそれぞれ500ライフを払う事で「スフィンクス・テーレイア」、「アンドロ・スフィンクス」を特殊召喚!』

女性の顔のスフィンクスと獅子の顔の獣人が現れる

ATK3000

 

ATK2500

 

アヌビスLP4000→3000

 

「マズい!?リバースカード『一回休み』!特殊召喚されたモンスターを守備表示にし効果を無効にする!」

 

2体のスフィンクスが守備表示になる

 

DEF2500

 

DEF3000

 

『甘いぞシュウ!さらに手札から魔法カード『大嵐』!魔法・罠カードを全て破壊する!』

 

「なっ!?リバースカード『機殻の凍結』を発動!このカードを守備力1000のモンスターとして特殊召喚!そしてこのターン、自分のクリフォート魔法・罠カードは破壊されない!」

氷結したクリフォートのコア部分が現れる DEF1000

そして嵐が一回休みと光のピラミッドを破壊する。

 

『そして「光のピラミッド」が破壊された事により効果発動!「テーレイア」と「アンドロスフィンクス」を破壊し除外する!』

 

2体のスフィンクスが砕け散る…

 

『そして我がライフを500払い…現われよ神に使えし獣の長!「スフィンクス・アンドロジェネス」!!』

砕け散ったスフィンクスの欠片が合体し前面にアンドロスフィンクス、後ろにテーレイアの顔の付いたモンスター…アンドロジェネスが現れる ATK3500

アヌビスLP3000→2500

 

「攻撃力3500…!」

 

『まだだぁ!我がライフをさらに500払い効果発動!このカードの攻撃力をエンドフェイズまで3000アップする!!』

 

「えっ…?」

 

ATK3500→6500

 

アヌビスLP2500→2000

 

『闇に沈めぇ!シュウー!!!』

 

アンドロジェネスの拳がアーカイブを打ち砕き…遊海を吹き飛ばした…

 

「ぐぅぅあああ!!!?」

 

遊海LP0

 

アヌビスWIN!

 

 

 

 

 

 

バキバキバキバキ…ドシャーン…

 

「ゴッ…ガッ…ゴブッ…」

アンドロジェネスに吹き飛ばされた遊海は木を何本かへし折りようやく止まる…その身体は骨が折れ、ひしゃげた姿になっていた…

 

『フフフ…いい眺めだなぁシュウ…我が三千年の恨み…憎しみ…思い知ったか…!!』

 

「ゴブッ…ガッ…ぐあぁぁ!?」

アヌビスは遊海の体を持ち上げ、首を絞め上げる…

 

『さぁ…冥府の闇に沈むがいい!!』

《マスター!!貴様…マスターを離しなさい!!!》

アヤカがアヌビスに体当たりを仕掛けるが闇のオーラに防がれダメージを与えられない…

 

「ぐっ…あぁ…!!」

 

『さぁ…ファラオの元に逝くがいい!…!?なんだ…力が…!』

 

遊海とアヌビスの着けていたデスベルトからデュエルエナジーが吸い出される…

 

『ぐっ…コブラめ…余計な事を…!フンッ!!』

 

「ゴブッ…ガ…ア…」

アヌビスは遊海を投げ捨てる…遊海は木に叩きつけられて崩れ落ちる…

 

『興が削がれた…その身体で生きられるなら無様に生き延びるがいい…次はテフだ…フ…ふははははは!!』

 

アヌビスは闇に紛れ姿を消した…

 

 

 

 

 

「う…ん、十代…はっ!?ぼくは!?」 

気絶していたレイが目を覚ます…周囲は荒れ果て、砂ボコリが舞っている…

 

「うわ…ナニコレ…どうやったらこんな事に…そうだ!遊海先生は!?」

 

レイは砂ボコリの中、遊海を探す…そして一陣の風が吹く…

 

「うわ…風が…わぶっ!?なんだ…コレ?赤い…帽子…?」

風に飛ばされた帽子がレイに直撃する…そして…

 

「コレ…先生の…?…!?嘘…先生…遊海先生!!」

レイは離れたところに転がる遊海を見つける…しかしその姿は…

 

「遊海先生!遊海先生しっかりして!!死んじゃってないよね!?先生!先生!!先生!!!」

 

「レ……イ…」

 

「先生!?」

遊海はかろうじて薄目をあけ、意識を取り戻す…

 

「ぶ…じ…か…?」

 

「うん!ぼくは大丈夫!それよりも先生が…!!?」

 

「みど…り……ごめ…ゴブッ…気を…つけ…ろ…狙わ…れ…」

 

「遊海先生!喋っちゃダメ!!」 

 

遊海はうわ言のように言葉を呟く…

 

「十…代……」

 

「遊海先生!遊海先生!?先生!!!」

 

 

その後レイと遊海は駆けつけた翠、クロノス先生により回収された…そして冒頭に戻る…。

 

 

 

 

 

 

 

「極度の過労状態に両腕の開放骨折…肋骨の全骨折に両足の粉砕骨折…肺に肝臓、脾臓の損傷…生きているのが不思議なくらいよ…前回のヤケドの件といい…彼、本当に人間なの…?」

 

鮎川先生は驚きを通り越して呆れたように呟く…遊海の状態はそこまでにヒドイものなのだ…。

 

「遊海先生…ごめんなさい、ぼくが拐われたりするから…!」

レイは意識の無い遊海に謝罪する…自分が拐われなければこんな大怪我をしなかったのにと…

 

「レイちゃん…気にしないで、遊海さんはそういう人なの…人を助けるために自分が痛みを背負う…そういう人なの…。大丈夫!遊海さんは不死身よ!明日になれば目は覚めるわ!さぁ…今日はお休みなさい…念のために保険室で寝る事になるけど…私もいるから…」

 

翠は泣いているレイを慰めながらベッドに導く…

 

「うん…でも寝られないよ…」

 

「大丈夫、私がおまじないをしてあげるわ…お休みなさい…『催眠術』発動…」

 

「あ……」

翠は催眠術を発動させレイを眠らせる…レイはそのまま寝息をたてはじめた…

 

「翔君…十代君はどう?」

 

「とりあえず大丈夫ッス…とても疲れているだけらしいッスから…」

遊海の隣のベッドで十代は静かに寝息をたてる…十代ならご飯を食べれば回復するだろう…。

 

「翠さんもカードの力、使えるんっすね…」

 

「ええ…あまり強いカードは使えないんだけど…すこしは…ね、翔君…あなたは寮に帰りなさい、外でクロノス先生が待ってるわ…また朝に会いにきてあげて…」

 

「…わかったッス…翠さんも無理はしないで欲しいッス…」

 

「ええ、ありがとう翔君…お休みなさい…」

 

「お休みなさい…」

翔はそのまま保険室を後にする…翠の気持ちを思いながら…。

 

 

 

 

「遊海さん…なんで…なんで全部一人で背負っちゃうんですか?私だって遊海さんの助けになりたいんですよ?」

 

「」

 

「目を開けてくださいよ…遊海さん…!」

 

翠は静かに涙を零す…意識無く眠り続ける遊海を心配しながら…翠は意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイ!コブラ!!我の邪魔をしやがって…貴様、覚悟はいいんだろうな…?』

 

『フッ…邪魔をした覚えはない…私の目的はあの方の復活…それだけだ…』

 

『ハン!しゃらくせえんだよキサマ!!』

 

《やめないかアヌビス…!!》

 

『ぐおあっ!?』ぐしゃ

 

《キミもボクのためにエナジーを集めればいいんだ…!》

 

『ケッ…わかったよ!最低限の事はしてやるさ…じゃあな…』

 

 

 

《フフフ、十代…楽しみだよ…さぁ…ボクの愛を受け取ってくれ…!》


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