転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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消滅〜王の目覚め〜

〈クエ〜ッ!!〉〈クエ〜ッ!!〉〈クエクエ〜ッ〉

 

 

「うわぁ〜っ!?これ早すぎないか!!?」

 

「『音速ダック』は音速で歩けるアヒルだからしょうがないですぅ〜!!」

 

「というかなんで『歩ける』なんだ〜!?思いっきり走ってるじゃないか〜っ!?」

 

「言葉のあやじゃないですかね〜!?」

 

〈クエ〜ッ!!〉

 

 

俺達は今、ソニックダックに乗って一路暗黒界の砦を目指している…一時バラバラになりかけた十代達の心も改めて結束しヨハン救出に向けての士気が高まっている…!

 

 

 

[ゆ、遊海…なんか気持ち悪い…!]

 

「(ユウスケ?どうしたんだ?ダック酔いか?というか…魂だけなのに酔うのか…?)」

 

[わ…わからねぇ…我の魂をかき回されるような感じが…ウェ…]

 

「(オイオイ…吐くなよ…?というか大丈夫か?)」

 

[わからねぇが…嫌な予感がする…気をつけ…ウェ〜…]

ダックに揺られるさなかユウスケが不調を訴える…原因は2人にもわからなかった…

 

 

 

「遊海さん!顔色悪いですけど大丈夫ですか〜!」

俺と並走する翠が声をかけてくる…おかしいな、体調は悪くないんだけど…?

 

「遊海先生〜少し休憩しましょう〜!翔君がダックから落ちかけてます〜!」

 

「助けて〜!?落ちる…あ…!」

 

「「「あ…」」」

 

ドンガラッシャン《クエッ!?》ガシャーン!!

 

明日香の後ろ辺りを走っていた翔がダックから振り落とされる、それにより後続にいた万丈目、剣山、吹雪が巻き込まれ総崩れとなった…。

 

「みんな大丈夫か!?」

遊海達はダックを止め万丈目達に声をかける…

 

「アイタタ…こら!翔!しっかり掴まっておけ!!」

 

「ゴメンッス〜…アイタタ…」

 

「丸藤先輩!何やってるザウルス!アニキ達においていかれたドン!」

 

「あっ!しまった…まぁジムとオブライエンがいれば大丈夫か…」

落馬(鳥)したメンバーは無事だったものの十代達は先に行ってしまったようだ…やっぱりダメだったか…?

 

 

「…ダック達も逃げられちゃったし…歩いていくか…」

 

「それしかないですね…アヤカちゃんがいれば纏めて運べるんですけど…」

 

「いないアヤカに頼ってもしょうがない…行こう、まぁアヤカならそのうち座標を見つけだして追い掛けてくるさ…」

 

十代を追い掛けて歩きだそうとするが…

 

 

 

 

 

 

『お困りかい?』

 

〈俺達がブロン様のところに7人連れてってやろうか…?〉

遊海達の前に現れたのは「暗黒界の武神 ゴルド」と「暗黒界の軍神 シルバ」だった…。

 

「生徒達…下がれ!」

遊海はデュエルディスクを展開しつつ生徒達の前に出る…

 

〈ほう…貴様がズールを倒した戦士か…、いい面構えだ…今からでも…〉

 

「お前達とつるむつもりは無い!」

 

『連れないねぇ…まぁブロンからのお達しでな…生きたまま連れてかなきゃならないのよ…!大人しく…眠っときなァ!!』

言うが早いかゴルドの斧が遊海に迫る…!

 

『ぜえぇいっ!!』

すんでのところで遊海はアーマーを纏い攻撃を防ぐ

 

『チッ!戦闘もイケるのかよコイツ…!?』

 

〈でも後ろはどうかな!〉

シルバが万丈目達に駆け出す!

 

『行かせるか!カタストロフレーザー!!』

 

〈ガッ!?貴様ァ!!〉

レーザーがシルバに直撃しふっ飛ばす…

 

「遊海さん加勢を!バトルドレス、セット…!」

 

『翠!生徒達とコレを持って逃げろ!!十代を追うんだ!』

そういうと遊海は一つのデッキを翠に投げ渡す

 

「うわっ!?とと…!これは…聖刻デッキ!?しかもフレアまで…!?」

 

 

《ユウミ!?なぜです!私達も加勢を…!》

 

《主殿!無茶だ!その二人は相当な手練…!主1人では!》

 

『フレア!トフェニ!生徒達を…頼む!!』

 

「遊海さん!!」

 

「「遊海先生!!」」

 

『早く行け!何度も言わせるなァ!!行くんだ!!』

 

『そこを退け貴様!』

 

『退いてたまるか!うおぉぉお!!』

遊海は果敢に暗黒界の2人を足止めする…

 

 

 

「いくわよみんな…!早く!」

 

「でも翠さん!遊海先生が!?」

 

「あの人は大丈夫!きっと私達に追いつくわ!だから今は十代君を追いかけるの!!」

 

「っく…!遊海先生、ごめんザウルス!!」

 

「先生…どうかご無事で…!!」

 

「遊海先生!絶対に戻ってきてくれッス!」

 

翠達は砦に向かって駆け出して行った…遊海の無事を祈りながら…

 

 

 

 

 

『キラーナックル!!』

 

〈くうっ!一撃が重い!本当に人間かコイツ!?〉

 

『ああ人間だ!ただしそれなりに強いけどなぁ!ぜりゃあ!!』

遊海はシルバとゴルドの攻撃を捌きつつ反撃を加えていく…!

 

『おのれ…!、!!ドラァッ!!』ズガーン

ゴルドの斧が岩盤を砕き砂埃が舞う…

 

『くっ…!目潰しか…!!どこから…』

 

【後ろが留守だぞ人間…】

 

『なっ!?ガッ!!…なん…だと…?あら…て…』

遊海は砂埃に紛れ近づいた新手に気付く事ができず岩に叩きつけられる

 

『〈今だ!やっちまえ!!〉』

ゴルドとシルバがここぞとばかりに殴りかかる…遊海の意識が無くなるのにそう時間はかからなかった…。

 

『助かったぜケルト!コイツ意外と強くてな、手に余ってたのよ!』

 

【武神と軍神と言われる2人が…情けないな…】

 

〈チッ!まぁこれでおしまいだ、さっさと砦に連れていくぞ!ブロンの奴が待ってる…たくっ…しかし本当なのかね…?コイツが邪神経典を全て吸収したってのは…?〉

 

【ああ、本来なら1人に一つを宿らせ心の闇を糧に「超融合」を完成させるという話だったが…この人間…どんな闇を抱えているのやら…】

 

『まぁ小難しい話はいいからさっさといくぞ!』  

 

 

こうして遊海は暗黒界に連行されたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた…ここにヨハンが…!ヨハン…すぐに!」

 

「ストップだ十代!遊海プロやダイノボーイ達がいない!少し待つんだ!」

 

「あっ!?」

十代・ジム・オブライエンは暗黒界の砦に到着した…しかし遊海達はダックの事故により付いてきていなかった…。

 

「しまった…先生と単独行動はしないって約束したのに…!」

 

「一度みんなが合流するまで待とう…その方が勝率は高くなるはずだ!」

 

「…ヨハン…!…そうだな…待つよ…!」

 

「十代…(遊海プロがブレーキをかけてくれたおかげで十代が冷静に戻っている…これなら大丈夫だろう…)」

 

オブライエンは安心していた…遊海の説得により十代が冷静さを取り戻していた事に…しかし…それは甘かったとしか言えなかった…その冷静さはイレギュラーにより崩れてしまうからだ…

 

「ビー クワイエット!静かに…砦に誰かくる!」

砦を見ていたジムが砦に来訪する者を確認し警戒する…

 

「あれは…軍神シルバと武神ゴルドに鬼神ケルト…?誰かを担いでいる…?」

 

「っ!?アンビリバボー!あれは…馬鹿な…!」

 

「そんな!?遊海先生!!」

 

十代達の視線の先には意識を失いぐったりとした遊海が砦に連行される姿があった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは…何処だ…?俺はゴルド達と戦って…それから…?

 

《目が覚めたかねぇ?愚かな人間よ》

 

「…!…!?(声が出ない…!なんでだ!)」

遊海が目覚めると石柱に「闇の呪縛」の鎖で雁字搦めに拘束され、さらに鎖の上から「スキルドレイン」を張られていた…そして目の前には狂王ブロンがいた…

 

「…!!…!(俺をどうするつもりだ!!)」

 

《フフフ、声を出せないのは魔術で声を出せなくしたからさぁ!余計な事を喋られても困るからだ!なんせ貴様は「超融合」を作り出す生贄になるんだからなァ…!!》

 

「…!?(なんだと!?)」

 

《フヒヒヒ!貴様の心には闇が大量にある!それを生贄に「超融合」を完成させるのだぁ!!》

 

『ブロン様…侵入者です!あの十代という小僧です!』

 

《そうかぁ!来たか〜!さぁ儀式を始めるぞ…えひゃひゃひゃ!!》

 

「…!…!?(待て!ブロン!!…くそっ、だめだ…力が抜かれる…!)」

ブロンは笑いながら去っていった…

 

 

 

 

 

(俺を生贄だと…?冗談じゃない!こんな鎖…!!精霊アーマー!!)

遊海は鎧を着ようとするが…反応はない…スキルドレインによって力が無効になっているようだ…

 

(くそっ…打つ手無しか…生徒達は守れたが…これじゃあな…おい、ユウスケ…なんとかならないか?)

 

[]

 

(ユウスケも反応無しか…まぁ…死ぬわけじゃないのはわかってる、翠もいる…なんとかするだろう…)

ゴゴゴ…!!

 

(っ!?なんだ!床が…!)

床がせり上がる…そしてしばらくすると外へと浮き上がる

 

「遊海先生!!無事か!?」

 

「…!…!(十代!)」

俺は砦の闘技場に見せしめのように縛られていた…くそっ…声が出れば…!

 

十代はブロンと向き合いデュエルを始めていた…十代の後ろにはオブライエンの姿がある、2人して助けに来てくれたのだろう…。

 

《さぁ!奴を開放したければ我を倒してみせよ!ターンエンドだ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十代Side

 

「遊海先生が捕まった!は、早く助けに行かないと!!」

 

「落ち着くんだ十代!遊海先生は今捕まったばっかりだ!すぐに何かをされる訳じゃないはずだ!」

 

「でも!先生が!先生が!!」

 

遊海の連行されるところを見た十代は取り乱しオブライエンの静止も無視し砦に突っ込もうとしていた…。

 

「十代!マイフレンド!落ち着くんだ!冷静になれ!!遊海プロの言葉を思い出せ!単独行動をしたらだめだ!!」

 

(がうがう!)

 

「オブライエン…ジム…!でも遊海先生は俺の大事な人なんだ!俺の憧れの決闘者なんだ!そんな人がピンチなのに落ち着いてられるかよ!!」

 

十代にとって遊海は既に先生では無く年の離れた兄のように感じていた、幼少期から自分の事を見守り…アカデミアでもいつも気をかけてくれた…ヨハンと同じくらい大切な人間になっていた…

 

 

「…ジム、ミッション変更だ…俺と十代で砦に急襲をかける…お前はここで他のメンバーを待ってあとから来てくれ…!」

 

「オブライエン…いいのか?」

 

「ああ、俺も遊海プロには借りがある…それを返すのは…今だ…!」

 

「…オーケー相棒!幸運を祈る!」

 

「オブライエン、ごめん!お前の力を貸してくれ…!」

 

「ああ!いくぞ十代!ヨハン並びに遊海プロ救出作戦開始だ!」

そして十代とオブライエンは砦へと潜入した…

 

 

 

 

 

 

 

 

《よく来たな小僧共!我が名はブロン!暗黒界の王だ!》

 

「貴様がブロン…!貴様…ヨハンを遊海先生を…フリードの仲間達をどこにやった!!」

 

砦に潜入した十代達は闘技場にて暗黒界のボス・ブロンと相対していた…この潜入は予測されていたようだ…

 

《フフヒヒ…戦士達はとっくに死んだよ!奴らの血はこの闘技場に吸い込まれ地面を染めているのさ!ギャハハハ!!》

 

「まさか…ヨハンも…!?」

 

《さぁな?調べたければ調べるがいい!ただし我を倒してからだがなぁ!!》

ブロンはデュエルディスクを構える

 

「貴様…俺はヨハンを助けるためなら…なんだってやってやる!」

 

「十代!用心しろ!何が起きるかわからない!!」

 

 

 

 

 

     「《デュエル!!》」

 

 

 

 

 

ブロンLP4000

十代LP4000

 

 

 

 

 

 

《我のターン!ドロー!》

 

《「暗黒界の狩人 ブラウ」を召喚!》

茶色腕を持った弓兵が現れる ATK1400

 

《さらに永続魔法「邪神経典」を発動!ターンエンドだ!》

 

ブロンLP4000

ブラウ 邪神経典 手札4

 

 

 

 

《そして…見るがいい!》

ブロンの言葉と共に闘技場の床の一部がせり上がる…そこにはボロボロになり、鎖で拘束された遊海の姿があった…

 

「遊海先生!無事か!?」

思わず十代は声をかける…見た目で無事でないのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった…。

 

「…!…!!」

しかし遊海の声は聞こえなかった…喉を潰されたのか、それとも他の原因か遊海は声を発する事ができなかったのだ…。

 

「貴様…!遊海先生に何をした!!」

 

《何…毒を飲ませただけよ!ついでに解毒剤はここだぁ…!》

 

そういうとブロンは「ご隠居の猛毒薬」をみせる…

 

《さぁ奴が死ぬのが早いか…貴様が勝つのが早いか…勝負といこうか!アヒャヒャ!!》

 

「貴様ァ!!!」

十代は怒る…その怒りは本気の遊海に匹敵する程だった…!

 

「遊海プロ!今助け…!くそっ…無理か…!!」

「「へっへっへっ…!」」

秘密裏に動こうとしたオブライエンはゴブリン達に囲まれてしまう…遊海を助け出す手段はデュエルしかなかった…。

 

 

「俺のターン!ドロー!」

「来い!『スパークマン』!」

光を纏うHEROが現れる ATK1600

 

「バトルだ!『スパークマン』で『ブラウ』を攻撃!スパークフラッシュ!」

 

《ぐうっ!》

ブロンLP4000→3800

 

 

《「邪神経典」の効果発動!自分がダメージを受けた時!デッキから「邪神教義ー怒」を墓地に送る!》

 

「…!?…!!!」

ブロンのデッキからカードが墓地に送られた直後遊海が苦しみ始める、口を大きく開き叫んでいるが声は出ていない…

 

「先生…!まっていてください!今助けだす!!ターンエンド!!」

 

十代LP4000

スパークマン 手札5

 

 

 

 

 

 

《我のターン!ドロー!》

 

《来い!「暗黒界の騎士ズール」!》

剣を持った暗黒界の騎士が現れる ATK1800

 

《バトルだぁ!「ズール」!「スパークマン」を切り裂けぇっ!》

騎士の一撃でスパークマンは両断される

 

「くうっ!すまないスパークマン!」

十代LP4000→3800

 

《カードを2枚伏せてターンエンドだぁ!》 

 

ブロンLP3800

ズール 邪神経典 伏せ2 手札2

 

 

 

 

《さぁ…お前のターンだぁ!早くしないと貴様の先生が死んじまうぞ?フハハハハ!》

 

「!…!!…!!?…」

遊海は声を出そうと口を開くが…それは叶わない…、少しづつ顔色が悪くなっていく

 

「遊海先生!くそっ…早くコイツを…!」

 

「(遊海プロの様子がおかしい…?何を伝えようとしている…?)」

オブライエンは遊海の読唇を試みる…

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

《十代!気をつけるんだ!君は今、敵の策に嵌っている!慎重に行動するんだ!》

ドローカードはネオスだった、ネオスは十代の隣に現れ注意を促す…

 

「わかった…ありがとう『ネオス』…!(手札に『ズール』を超えられるカードは無い…今は耐えるんだ!)」

 

「『フェザーマン』を守備表示で召喚!」

翼を持った緑色のヒーローが現れる DEF 1000

 

「これでターン…」 

 

《その瞬間、リバースカード発動!「ダークネス・ハーフ」を「ズール」に装備!攻撃力を半分にしお前の場に攻守1000の「ダーク・トークン」を2体特殊召喚する!》

ズールの力が奪われるATK1800→900

 

そして十代の場に黒い人形が現れる ATK1000

 

「俺の場にモンスターだと…?ターンエンドだ…!」

 

十代LP3800

フェザーマン Dトークン Dトークン 手札5

 

 

 

 

「(…わ…な…だ…や…め…ろ…お…れ…し…ぬ…『罠だ、やめろ、俺、死ぬ』…!!)十代!ブロンにこれ以上ダメージを与えるな!!罠だー!!」

 

「なんだって!?」

 

遊海の言葉を読んだオブライエンが十代に叫ぶ…しかし遅すぎた…

 

 

 

 

 

《アヒャヒャヒャ!!今さら気づいても遅いわァ!我のターン!ドロー!》

 

《リバース罠「暗黒舞踏会」!このターン、フィールド上のモンスターは全て攻撃表示になり、我のモンスターは全てのモンスターと戦闘をしなくてはならない!さらにこのターン、我のモンスターは戦闘では破壊されない!》

 

「何っ!?」

フェザーマンが強制的に攻撃表示になる ATK1000

 

《バトルだぁ!「ズール」!全てのモンスターに攻撃しろ!!》

ズールは十代の場のモンスターから返り討ちにあう…しかし黒いオーラにより破壊はされなかった…

 

ブロンLP3800→3700→3600→3500

 

《フハハハハ!そして「邪神経典」の効果を発動!デッキから「邪神教義ー憎」「邪神教義ー悲」「邪神教義ー苦」を墓地に送る!…そしてコイツの最後の声を聞かせてやろう!》パチンッ

 

ブロンが指を鳴らす、それを合図に遊海の声が聞こえるようになるが…

「あああああああああ!!や、やめろ!やめてくれえええええええ!!!ぐああああああああああ!!!?」

 

「遊海先生!!どうしたんだ!?しっかりしてくれ!!」

遊海は狂ったように叫び続ける…それはまるでこの世全ての痛みを受けているようだった…

 

 

「遊海さん!!…ああ…そんな…!!」

 

「「「遊海先生!!」」」

そしてタイミング悪く翠達も闘技場に到着する…

 

「遊海先生!どうしたんだよ!!遊海先生!!」

 

《ギャハハハ!成功…成功だ!これ程の心の闇があれば「超融合」が手に入る!!》

 

「なんだと!?」

 

《種明かしをしてやろう小僧!ソイツには最初から毒など飲ませてはいない…!単に声を出せない魔術をかけていただけだったんだよぉ!そしてコイツは魂に邪神教義の生贄の玉を刻んでいたのさ…ズールが持っていたなァ…!》

 

「な…に…?」

 

《本来であれば5人の生贄の必要な生贄をコイツは1人で賄ったのさぁ!コイツはその代わり、魂を引き裂く痛みに襲われているがなぁ!!そして我へのダメージは経典を描く血文字の代償!綴られるのはコイツ自身だぁ!!お前がコイツを救おうとすればするほど、コイツの首を絞めていたのさぁ!ギャハハハハハハハ!アハハハはハハハ!!》

 

「そ、そんな…お、おれのせいで…せ、先生が…!」

十代は膝をつく…救おうとした憧れの人を逆に苦しめていた…その絶望は測りしれない…

 

《さぁ…お別れの時間だ!生贄となれ!!》

 

「がっあ…あああああああああああ!!うああああああああああああああああああああ!!!!」

 

遊海の腕から「怒」「苦」「悲」「憎」の玉が飛び出す…そして遊海は()()粒子となり完全消滅した…邪神経典のページが黒く染まりそれぞれのページに「怒」「苦」「悲」「憎」の文字が刻まれていく…

 

 

 

「あ…遊海…さ…ん…そんな…そんなぁ…!」

 

「あっ!み、翠さんしっかりしてください!翠さん!!」

翠は体の力が抜け座り込む…遊海が消えた事で心が折れてしまったようだ…

 

「遊海先生…嘘だろ?アンタ…不死身だって言ったじゃないかよ…!」

 

 

 

 

 

 

『十代、自分の精霊を大切にするんだよ…!』

 

『十代…お前は今、『恐怖』を…『自分の弱さ』を知った、それは恥ずかしい事じゃない…俺も人形にされた時は怖かった…でもそれが人間なんだ…巨大なモノ、未知なるモノに恐怖する…それが人間であり決闘者なんだ…!』

 

 

『俺も命がけのデュエルで楽しむ事を忘れて戦ってしまう事もあった…十代、デュエルモンスターズはな…人を傷つけるためにあるんじゃない、相手と心を通わせ…相手を楽しませ…自分が楽しむ為に作られたんだ。もちろんセブンスターズの時みたいに何かを背負って戦わなきゃならない事もある…それでも俺は…楽しむ事を忘れずにデュエルをしていきたいんだ…』

 

 

『デュエルは互いの力を見せつける戦争じゃない…互いの力を認め合い、心を繋ぐ闘いだ…そうは思わないか?』

 

 

 

十代の脳裏に遊海の言葉が現れては走馬灯のように消えていく…自分の憧れが消えた…それは十代にとてつもないダメージを与えた…!

 

 

 

 

《さぁ!デュエルを続けるぞぉ!我は「邪神経典」の効果を発動!このカードと墓地の「邪神教義ー怒」「憎」「悲」「苦」を除外し…いでよ!「超融合」!》

 

シーン…

 

《何ぃ?何故だ、何故カードが現れない!!チッ…あれだけの闇でも足りないかぁ…?》

 

「貴様…キサマまさかたった1枚のカードのために遊海先生や戦士達を…!」

 

《ああ!そうだよぉ…まぁ失敗したがなぁ…抜け殻のようなお前を始末するならコイツで充分だ!「邪神経典」の効果により我はレベル8までの「暗黒界の混沌王カラレス」の融合素材モンスターをデッキから特殊召喚できる!いでよ「暗黒界の魔神レイン」!》

胸に黒い宝玉をはめた魔神が現れる ATK2500

 

《我はこれでターンエンドだ!》

 

ブロンLP3500

ズール(ダークネス・ハーフ)レイン 手札3

 

 

 

 

 

 

「…ユルサネェ…」

 

《ん〜?何か言ったか小僧?》

 

「絶対に許さねぇぇぇぇ!!!」

怒りに燃えた十代の瞳が金色に変わる…

 

 

 

 

 

「オレのターン!!ドロー!!!」

「『強欲な壺』で2ドロー!(この…カードは…)」

 

 

 

 

 

「十代!これやるよ!お前のフェイバリットが写ってるぞ!」

 

「先生ありがとう!お〜!すげぇ!しかもつえー!!大事にするぜ!」

 

「ああ!喜んでくれたならよかった!強くなれよ!十代…!」

 

 

 

 

 

 

「あ、あああああああ!!手札から「融合」を発動!!手札の「バーストレディ」とフィールドの「フェザーマン」を融合!来い!『フレイム・ウィングマン』!!」

十代のフェイバリットカード、赤い竜の腕を持つ戦士が現れる ATK2100

 

 

「そして発動せよ!魔法カード『スカイスクレイパーシュート』!!」

 

《何…なんだそれは…?》

 

「このカードは自分フィールドの「E・HERO」融合モンスター1体を対象として発動できる…そのモンスターより攻撃力が高い相手フィールドの表側表示モンスターを…全て破壊する!!俺のフィールドにいるのは攻撃力2100の『フレイム・ウィングマン』!消え去れ!『レイン』!!」

 

《何!?》

フレイムウィングマンの腕から炎が放たれる…その炎はレインを焼き尽くした…

 

 

「そして!!この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える!」

 

《なんだと!?ごうわぁ!!》

レインを破壊したフレイムウィングマンが竜口をブロンに向けて炎を放つ!

 

ブロンLP3500→1500

 

「バトルだ!!『フレイムウィングマン』で『ズール』を攻撃!『フレイムシュート』!!」

フレイムウィングマンの火球がズールを燃やし尽くす

 

ブロンLP1500→300

 

「そして…『フレイムウィングマン』は破壊したモンスターの…元々の攻撃力分のダメージを与える!!消え去れ!!!」

 

《でぇぇぇ~~ひゃああああ~~!!?》

 

ブロンLP0

 

十代 WIN…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブロン!フリードの仲間達を…!ヨハンをどこにやった!言え!!言うんだ!!!」

十代は倒れ伏したブロンを掴み上げヨハン達の居場所を聞き出そうとする…しかし…

 

《ギャハハハ…いい表情だぁ…怒りと悲しみ、憎しみと苦しみが混ざり凄まじい負の感情の渦を作り出している…!》

 

「黙れぇっ!!ヨハンは…ヨハンは何処にいる!!」

 

《フハハ…最初に言っただろう…戦士の血が大地を染めたと…ヨハンとかいう奴も…死んだよ!!》

 

「う…嘘だ…嘘だ!!!」

 

《フハハハハアハハハ…ギャハハハハハハハハハ…!!》

そしてブロンは消滅した…十代の心にトドメを刺す一言と…笑い声を残して…

 

 

 

 

「嘘だろ…ブロン様が負けただと!?」

 

「あんな餓鬼に…ありえねぇ…!」

 

《おい…アイツ殺っちまおうぜ!》

 

『それが良さそうだ!者共!かかれ!!』

ギャラリーにいた暗黒界軍のモンスター達が無防備な十代を狙い襲いかかる!

 

 

 

 

『うおぉぉぉ!…アチッ!?なんだ!?』

十代に襲いかかろうとしたゴルドが熱さを感じ動きを止める…そこには…

 

「フレアさん…私のお願い…一度だけ聞いてくれます?」

 

《ええ…いいですよ翠…!》

 

十代の前に1人の女性と金色に輝く鳥がいた…女性はうつむいていて顔は見えない…

 

「私の魂を糧に…敵を焼き尽くせ!『ラーの翼神竜』!!」

 

【ギュアアアアア!!!】

《…ユウミの…我が主の仇共…!消え去れ!!!》

翠の祈りに応え…神話が降臨する…!

 

『バカな…神…だと…?』

 

「《ゴッドフェニックス》!!」

翠が顔を上げ裁きの言葉を紡ぐ…それにより暗黒界軍は壊滅した…そして翠は…泣いていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…遊海先生…俺は…俺は…」

 

「十代…悪いのはお前じゃない!遊海先生はオレ達を守って捕まったんだ…オレ達も…同罪だ…!!」 

 

「…万丈目サンダーの言う通りだドン…俺達がもっと強ければ先生は…!」

 

「翠さん…気をしっかり持ってください…!」

 

「私が…私があの時残っていれば…遊海さんは…遊海さんはぁ…!!」

 

「…俺は悲しい…あの人は…いい先生だった…!」

 

 

残されたメンバーは悲しみに沈んでいた…いつも皆を導き守ってくれた偉大なる決闘者の消滅…それは何よりも辛かった…

 

「ジム…俺は…俺にできる事は無かったのか…?遊海プロを助ける方法があったんじゃ無いのか…!」

 

「オブライエン…ミーからは何も言えない…とにかく前に進もう…遊海先生もそれを望んでいるはずだ…。」

 

 

「アニキは勝手すぎる……アニキはみんなを元気にしてくれる……不可能を可能にする事が出来る……太陽の様な存在だと思ってたんだ…!」

 

「翔…?」

落ち込む十代に翔が話しかける…その瞳には疑いが宿っていた…

 

 

 

「でも、それは大きな勘違いだった…!アニキは自分さえよければそれでいいんだ。目的の為なら、誰がどうなろうと一切お構いなしなんだ!!カタキなんか討っても、遊海先生は戻らない!!アニキは、自分が満足する為だけにデュエルをしてるんだ!」

「翔……」

 

「気安く呼ぶなスットコドッコイ!アニキなんか!アニキなんか!!十代のバカヤロー!!」

 

「おい!翔!何処に行くんだ!」

 

「翔!単独行動は危険だ!待て!!」

翔は万丈目やオブライエンの静止を振り切り何処かへと走り去ってしまった…。

 

 

「…とにかく…町の砦まで戻ろう…あそこなら拠点になる…そこでこれからの事を考えよう…」

 

オブライエンはみんなを導く…せめてこのメンバーだけは無事に帰す…その思いを胸に…

 

「十代…いくぞ…立て!」

 

「ああ…すまない…」

十代はフラフラと立ち上がり歩き出した…その手には未完成の超融合が握られていた…。

 

 

 

『遊城十代…悪を倒す為なら悪にでもなる…、この弱肉強食の世界を力により支配しなければならない…その手に在るのは超融合のカード…。抗う精霊達を斃し、その生命の息吹を…心の闇を注ぎ込み、そのカードを完成させるんのだ…我が名は覇王…この世界を支配する者なり…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの荒野

 

 

 

『…ミドリ…オレは…もウ…戻レない…』

 


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