転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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対話〜悪魔の浸食〜

Side翔

 

「邪神教義ー疑」の呪玉による影響を受けた翔は十代達から離れ1人荒野に来ていた…邪神教義には感情を増幅させる力があり、それにより心の闇を増幅していたのだ…。

 

「アニキの馬鹿…!考え無しにデュエルしたせいで遊海先生は…遊海先生は…!!」

 

 

翔は怒っていた…ジムから遊海が拉致され暗黒界の砦に連れていかれた事…十代とオブライエンが救出に向かった事を聞いた翔達はすぐさま砦に向かった、警備兵を翠や精霊達が吹き飛ばし、闘技場に辿り着いた翔が見たのは苦しみの絶叫をあげる遊海の姿だった…。

 

どんな大怪我をしても軽く流していた遊海が苦しみに堪えきれず叫んでいる…それだけでも事態の異常さを伺い知れた、その直後遊海は消滅した…その身に受けていた「邪神教義」の呪玉に心の闇が増幅され、その体は「超融合」なるカードの生贄になってしまった…その原因は十代にある…翔はそう思い込んでいるのだ…。

 

「なんで僕はあんな奴をアニキなんて呼んだんだ…!」

 

翔は十代の事を忘れようとする…しかし浮かぶのは十代や仲間達と過ごした日々ばかりだった…。

 

「なんで…なんで!なんで忘れられないんだ!!…そうか…コレのせいか…!こんな物着けてるから!!」

 

翔は腕に着けていたデュエルディスクを外す…アカデミアでの思い出の象徴…デュエル、これさえなければ十代の事も忘れられるんじゃないか?疑念に支配された翔には正しい判断能力は残っていなかった…。

 

「こんな…こんなモノーー!!」

翔はデュエルディスクを投げ捨てようとする…しかし

 

 

「あれーは!?セニョール翔!何をしてるノーネ!!デュエルディスクは初代機以外は投げちゃダメなノーネ!!?」

 

「へっ!?クロノス先生!?」

翔にストップをかけたのはここにはいないはずのクロノス先生だった…。

 

「先生!…どうしてこんなところに!?」

 

「アナータ達の世界移動?に巻き込まれたノーネ!まったくひどい目にあったノーネ!みんなは、セニョール十代達は何処なノーネ?」

 

「知らない…あんなわからず屋の事なんか知るもんか〜!!」

翔は十代の名前を聞いて先程の疑念を思い出し、激情のままデュエルディスクを投げ捨てた…すると…

 

《グオオォォ!!》

デュエルディスクの落ちたあたりから獰猛な鳴き声が轟く…

 

「「へっ…?」」

 

《ゴオァァァ!!》バサッ!

 

「「ギャアアア!『タイラント・ドラゴン』!?」」

岩場からオレンジ色の竜が飛び立つ、攻撃力2900を誇る最強の竜の1体が、怒りの籠もった目で翔達を見下ろしている…

 

「もしかして…デュエルディスクが…」

 

「当たったノーネ…?」

 

《ガアアア!!》

タイラントドラゴンはこちらに向かい突進してくる!

 

「「ごめんなさ〜い!!/なノーネ!!」」

翔とクロノスは大急ぎで逃げ出した…タイラントドラゴンはそれを追い滑空してくる

 

「ク、クロノス先生!『古代の機械巨人』でなんとかしてくださ〜い!!」

 

「無理なノーネ!ワターシ、ディスクを置いてきてしまったノーネ!!」

 

「ウソーン!!?」

 

《ゴアアアア!!》

 

「「誰か助けて〜!!」」

2人は大急ぎで逃げる、しかし現実は無情であるである…

 

 

 

 

「うわっ!?行き止まりッス!?」

 

「しまったノーネ!」

2人は崖下に追い詰められてしまう…

 

《グルルル…!!》

タイラントドラゴンは唸り声を上げ口を大きく開く…!

 

「セニョール翔!逃げるノーネ!…先生が…時間を稼ぐノーネ…!!」

クロノスは前に出る…その足は震えている…

 

「先生ダメっす…!!元々といえば僕のせいッス!逃げて〜!!」

 

「セニョール翔、教師…大人は未来ある子供達をを守る義務があるノーネ…!ワタシはその義務を果たすノーネ!」

 

「あっ…!」

翔はその瞬間ある風景を幻視した…クロノス先生の背中に重なるように…赤い帽子の決闘者の姿を…

 

「(そうか…遊海先生はあの時、既に覚悟を決めていたんだ…死ぬ時も…叫んでいたけど…弱音は言っていなかった!先生…僕は…!)」

その瞬間、翔はクロノスの隣に並び立つ…

 

「セニョール翔!?どうして逃げないノーネ!!」

 

「クロノス先生…僕はもう逃げない!!2人で生き延びるんです!!」

 

「セニョール翔…そうなノーネ!諦めるにはまだ早かったノーネ!!絶対に…生きてみせるノーネ!!」

 

《ガアァァァ!》

タイラントドラゴンが口を開き襲いかかる…!

 

「(遊海先生…力を貸してくれッス!)」

翔は覚悟を決める…

 

 

 

『避ケろ!少年!ハアっ!!』

 

「へっ?」

 

《グギャアァァァ!!…》

崖上から現れた人影が剣を抜いてタイラントドラゴンを両断する…そのままタイラントドラゴンは消滅した…。

 

「いったい…何が起きたノーネ…?タイラントドラゴンが真っ二つに…」

 

「あ…あなたは…?」

 

翔が自負達を助けてくれた人影…ボロボロのローブを着た人物に話しかける…

 

『我が名は…名乗れる名前が無い、ファントム…とデも呼ぶガいイ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セニョール遊海が…死んだ…?それは確かなノーネ!?」

 

「はい…僕達の目の前で…遊海先生…!」

翔とクロノスはファントムの拠点である洞窟で火にあたっていた…

 

「そうなノーネ…でも先生らしい最後だったノーネ、生徒を守って倒れる…教師の鑑なノーネ、でも満点では無いノーネ!」

 

「クロノス先生…」

 

「生徒を助けて…自分が生きてこそ満点なノーネ!!どうしてそれを実行できなかったノーネ!おーいおいおい…」

クロノス先生は涙を流す…

 

『…木の実ヲ採ってキた、食べてオけ…コの世界では体力ガ命ダ…』

 

食料調達に行っていたファントムが戻ってきた、黒い異形の左腕に器用に木の実を乗せている…

 

「ありがとうッス、ファントムさん…あの…一つ聞いていいッスか…?」

 

『ナンだ?少年?』

 

「ファントムさんは…『人間』ですか…?それとも『精霊』なんすか?」

 

翔は改めてファントムの姿を見る…体や顔はローブで隠れている、右腕は人間だが左腕は悪魔のような黒い色で鋭い爪が生えている…足元は黒い悪魔のような足になっている…

 

『…オレは元は「人間」ダ…でモ事故がアッてな…「精霊」に近い姿にナっテいる…ソの内に完全にモンスターにナルだろう…』

 

「そんな…いったいなんでそんな事に…!」

 

『自分デもわからナい…しいテ言うなら、人助けの結果かナ…悲しマないでクレ…覚悟は決メていたんダ…覚悟…はな…』

 

ファントムは遠くを見る…顔は見えないがたぶん悲しい表情をしているのだろう…

 

『オレはヤスむ…何かアッたら教えテくれ…』

そういうとファントムは洞窟の奥に消えていった…

 

 

「セニョール?ファントム…なんだかどこかであった事がある気がするノーネ…?気のせいなノネ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『翔…どうしたんだ?そんな暗い顔をして…』

 

「お前らしくないぜ翔!」

 

「アニキ…遊海先生…」

 

これは…ジェネックスの時の夢…?

 

「お兄さんに負けちゃったんス…お兄さんに成長した

ところを見せたかったのに…それに…」

 

「それに?」

 

『ヘルカイザーのデュエルをやめて欲しかったんス…あんな怖いお兄さん…見ていられないッス!』

 

『翔…そうか、リスペクトデュエルをするカイザーが好きだから…相手を叩き潰すカイザーの姿を見ていられなかったのか…』

 

「うん…演技だって事はわかってるんス…でもあんな悪いお兄さん…見ていられないんッス!アニキならどうするッス…?自分の大切な人が悪い人になっちゃったら…それを元に戻せないなら…」

 

「う〜ん…俺ならずっとその人を見てるな…どうにもならないかもしれない…でもその人はどんなに変わっても大切な人なんだろ?ならどんなに嫌がられても…見守り続ける!それが…その人を大切に想ってる証だからな!」

 

「俺なら…何度でも挑んでいくな…その人の心に俺の想いが届くまで…何度でも!それが俺のやり方だ!」

 

「アニキ…先生…ありがとうッス!参考にするッス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ…!?夢か…十代…遊海先生…僕は…」

 

『グッ…アアアアアア…!?』

 

「?何の音ッス…?外から…?」

夢から目覚めた翔は音に耳を澄ませる…それは人の声…苦しんでいる人の声だった…

 

「この声…まさか!!」

 

『(そノ内に完全にモンスターになるだロう…)』

 

「ファントムさん!!」

翔は声を追い外に向かう

 

「ムギュ!?どうしたノーネ!?」 

 

 

 

 

 

 

 

『ガッ…ぐぅぅぅ…ガアアア!!?』

 

「ファントムさん!?これは…!?」

 

『少年!!オレに…俺にチカヅクナ…!!!』

外に出た翔が見たのは闇のオーラに包まれ苦しむファントムの姿だった

 

「ファントムさん!しっかりしてください!ファントムさん!」

翔はファントムに近付こうとする…

 

『ガッ…ク…来るナ…来ルな!翔!!』

 

「えっ…ファントムさん…僕の名前…なんで…!」

翔はファントムに名前を伝えていなかった…ただ少年と呼ばれていたからだ…

 

「何事だ!翔!?っ…これは…!」

 

「亮!待って…なんだアレは!?」

 

「お兄さん!?エド!?なんでここに!?」

荒野から現れたのはカイザーとエドだった、闇の気配を感じて駆けつけたのだろう…

 

「話はあとだ!アレは…あの人に何があった!!」

 

「お兄さん!あの人を…ファントムを知ってるんスカ!?」  

 

「何を言っている翔!お前は…自分の()()の事を忘れたのか!!」

 

「恩…師…?そんな…まさか…!?」

 

『ガ…あ…アアアアアアアアアアア!!!』

 

闇のオーラが膨れあがりローブが吹き飛ぶ…そして「ファントム」の正体があらわになる…

 

「そんな…あなたは…なんで…!!」

 

【『逃ゲろ…オレから…離レロー!!!アアアアアア!!!』】

 

翔の足元に赤い帽子が舞い落ちる、ファントム…その正体は死んだはずの…白波 遊海の姿だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

【見らレテしまっタか…このスガタを…】

闇のオーラが収まるとそこには異形の悪魔がいた…

黒く白いメッシュのはいった髪、黒く染まり胴体に模様のはいった肌、黒い2対の羽、鋭い爪、そしてかろうじて理性を残した瞳…それが今の遊海の姿だった…。

 

「先生!遊海先生!生きてたんすね!!よかった…良かったッス〜!!!」パリーン

翔は遊海に抱きつく…2度と会えないと思った人に会えた…それは翔の心を癒やすには充分過ぎた…

 

【翔…イマのオレに余り近づくナ…イツ暴走するかわかラなイ…】

 

「遊海先生…いったいあなたに何があったんだ?事情はクロノス先生(気絶)に聞いた…なんでそんな姿に…」

 

【この姿ハ…呪いでアり…オレの心の闇の姿ダ…正直…理性ヲ保つノで精一杯ダ…】

そして遊海は語り始める…あの時、何があったのかを…。

 

 

翔Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊海Side

 

十代とブロンのデュエルはアニメ通りに進んでいった…違うとすればブロンが十代の攻撃を誘って動いている事だろう…奴の墓地には「邪神教義ー怒」が落ちている…。

本来ならその時点で俺は怒りに呑まれ消えるはずだが…理性は残っている、ただし体…正確には魂が凄まじい激痛を放っている、正直泣いて叫びたいが…声がでないから意味がない…それにしても…痛いんだよ!!この野郎!!

ダメ元でオブライエンに読唇メッセージを送る…気付くかな…?

 

「十代!これ以上ダメージを与えるな!罠だー!!」

 

…なんとか伝わったか…でも、おそかった…っぐああああああああ!!?痛いいたいイタイ!!!魂が裂ける!!!体も痛みを叫び続ける…!何なんだよ!この痛みは!!?視界が明滅する…喉が裂ける!体を無理やり作り変えるような痛みが魂を蹂躙する!!!

 

【トキはキタ…心の闇よ…この者を蹂躙し…目覚めサセヨ!!】

 

突如頭に声が響く…それと共に痛みが倍になる…まるで本当に体を作り変えるように!…魂からドロリとした闇が溢れ出す…やめろ…やめてくれ…!!俺が…俺で無くなる!!?や、やめろ!!!!

 

「さぁお別れだ!生贄になるがいい!」

ブロンの声と共に意識が遠のく…そして意識は闇に包まれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ…ぐぅ…コこは…?』

俺が目覚めるとそこはどこかの荒れ地だった…なんだ?体に違和感が…頭がはっきりしない…水が飲みたい、俺は違和感を感じる体で水場を目指した…。

 

 

 

『…この…姿ハ…』

しばらく歩いて見つけた水場で俺は自分の姿を確認した、その姿は…異形の悪魔のようだった…。

 

【フハハ…モウ少しで貴様は王となる…破壊の王にな!】

 

『ッ!?誰だ!何処にいル!』

頭に声が響く…その声は邪神経典の生贄になる前に聞こえた声だった…。

 

【貴様の魂の中だよおマヌケさん!まったく気づかない

とはな!ああ、ユウスケとかいう奴は既に浸食済みだ、あとは貴様を乗っ取って完全に主導権を奪えばはれて新たな王の誕生さぁ!アハハハ!】

 

『させルと思うカ?貴様なンテ追い出シテ…!!グッ!?アアアアアアアアアアア!?』

 

【大人しくしてなよ白波 遊海!オレの覚醒まではまだ時間がかかる…それまでせいぜい最後の時間を楽しみな!アハハハハ!!】

それだけ言い残して声は消えていった…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

【オレは…もうスコシで俺じゃナクナる…ソウなれば…ドウなるかワカらない…】

 

「そんな…そんな…!翠さんはどうなるんすか!!」

 

【…オレは恐らくモトにはモドレない…翠には…俺の事は伝えないでクレ…悲しまセルだケだ…】

 

「そんな…そんなのって…!」

 

【ソレよりモ十代だ…あいつハ闇に沈んダ…】

 

「えっ…?」

 

「なんだって?」

遊海からの爆弾発言により翔達は硬直する…

 

【…コレは十代ヘノ試練ダ…ソレを乗り越えラレるかは…十代次第だ…ハヤク行ってヤレ…】

 

「先生は…先生はどうするんですか!?」

カイザーが遊海に問いかける

 

【可能な限リコノ『悪魔』ヲ押えル…モシ暴走したラ…カイザー…介錯を…頼厶…!俺ハデュエルいガイでは死ねないカラな…】

 

「わかりました先生…でも諦めないでください…!きっと…きっと方法があります!」

 

【ありがとう…丸藤 亮…翠と十代を…たの厶…!】

 

「はい…!」 

 

 

そして翔、カイザー、エド、クロノス先生の4人は十代達の元に向かった…。

 

 

【…行っタカ…サテ、邪魔モノはいなくなった…出てこいよ…「ユベル」!!】

 

 

《フフフ…醜い姿だねぇ白波 遊海?どうだい?ボクの呪いの味は?》

 

【アア…最悪だヨ!今かラデモお前に返品したイよ!悲しき竜!!】

遊海の前に黒幕たるユベルがその姿を現した…。


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