転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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覇王を呑む破壊の闇〜壊れし者〜

「うう…遊海…さん…なんで…」

 

「…翠さん…」

 

十代によるブロン撃破から1週間が経った…、残されたメンバー達は最初に訪れたフリード達の砦を拠点としてヨハン、並びに行方不明の翔の捜索を行っていた…。

 

翠は遊海の消滅により体調を崩し寝込んでいる…本来、特典により病気にはならないはずだが…精神のバランスを崩した翠には意味を成していなかった…。

 

 

「明日香先輩…翠さんはどうザウルス?」

 

「剣山君…ダメね、気力が弱まってる…ウィンダちゃんも励ましてはいるんだけど…」

 

「そうかドン…こっちも手がかりは無いザウルス…ヨハンも丸藤先輩も…アニキも…」

 

「そう…十代…、あなたはどこにいってしまったの…?」

 

ブロンを撃破した2日後、十代は突如として姿を消した…、最後に目撃されたのは戦士の墓場の遊海の墓の前で力無く項垂れる姿だった…。

 

「大丈夫ザウルス!ジムとオブライエンが探してくれてるザウルス!きっとひょっこり帰ってくるドン!」

 

「そうよね!大丈夫よ!まったく、十代はいつもこうなんだから…」

 

剣山と明日香は頷きあう、十代はいつもこうなんだからと…。

 

 

《失礼する…食料を採ってきた、食事にしよう》

翠の部屋に入ってきたのはトフェニだった…主無きいまでも精霊達を纏めて食料調達などをしている。

 

「ありがとうトフェニさん…あなたも辛いはずなのに…」

 

《拙者は大丈夫だ…主は生徒達を守りきった、ならば今の使命は主の守った生徒達と翠殿を護るのが我が務め…悲しんでいる暇…など…!》

 

そう言いながらもトフェニは拳を握りしめる、遊海の…主の危機の前に何もできなかった…だからこそ彼らだけは守りきる…その想いが彼を動かしていた…。

 

「トフェニさん…」

 

《湿っぽくなってしまいましたな…今日は川で「ジェノサイドキングサーモン」が採れました、今のうちに体力をつけておきましょう!》

 

「えっ!?攻撃力2400の大物ザウルス!?どうやって!?」

 

《フフフ、内緒です…コツがあるのです!》

 

「な、なるほど…流石トフェニさんザウルス…」

 

 

 

 

 

 

 

「美味いなコレ!?誰が作ったんだ!?」

 

「トフェニさんが作ったの…まさかここまで美味しいなんて…」

 

《エジプト風キングサーモンのムニエルだ、拙者はエジプト由来の精霊…最低限の料理はできる!》

 

「…精霊とは…」

 

「吹雪先輩、あまり深く考えない方がいいドン…」

 

 

 

 

 

 

 

食事を摂ったアカデミア組…万丈目、明日香、吹雪、剣山とトフェニ達は今まで得た情報を整理していた…。

 

「では状況を整理だ…明日香、今までの動きをおさらいしよう…」

議長の吹雪が明日香に話を振る

 

「ええ…まず私達が精霊世界に来て約2週間が経ったわ、その間に私達はバードマンの支配していた世界の反乱を成功させてこの世界…暗黒界のモンスター達が支配していた世界に来たわ。」

 

「そしてアニキが暗黒界の斥候スカーを倒してカイルを助けたんだドン!」

 

「そう、そして遊海先生が狩人ブラウを倒して私達はフリード達が潜んでいた砦に向かったわ、そこでラーズさんからヨハン君に似た少年を見かけたという情報を得たわ…」

 

「そしたら十代の奴が先走りやがって…遊海先生が居なけりゃどうなってたか…収容所で暗黒界の騎士ズールを遊海先生が倒したんだよな」

 

 

「ええ、そして暗黒界の砦の位置を掴んだ私達はフリードの仲間、そしてヨハンを助けるために暗黒界の砦に向かった…」 

 

「そして…道中で武神ゴルド、武神シルバに襲われた僕達を守って遊海先生は捕まってしまった…先行していた十代君は砦に連れ込まれた遊海先生を助けるためにオブライエン君と救出に向かったが…」

吹雪は言葉をきる…

 

「…遊海先生はカードを生み出す生贄として…死んでしまった…ブロンは倒したけど…ヨハンの死を告げられた十代君は、見ていられなかった…かけがえのない親友と尊敬する決闘者、その二人を同時に失ったのだから…無理もないだろう…。」

 

「…そして翠さんがフレアさん…信じられないけど『ラーの翼神竜』と共に暗黒界軍を文字通り殲滅…その後翔君が行方不明になって…私達はこの砦に戻ってきた、そして5日前十代が姿を消してしまった…こんなところかしら…」

 

「ありがとう明日香、そして今の僕達の状況だが…とりあえずこの世界からの帰還の目処がたっていない、とにかく行方不明の翔君、そしてブロンが死んだと言っているヨハンの捜索を最優先に、そして生き延びる事を優先して行動していこう…十代君については別行動をしているジム君とオブライエン君、そして精霊のウェンちゃんに任せよう…異論はあるかな?」

 

「異論は無い…とにかく帰る方法を見つける事と行方不明になってる翔とヨハンを探し出すんだ、十代の馬鹿は…」

 

「アニキは馬鹿じゃないザウルス!きっと傷ついて気分転換に行ってるだけザウルス!絶対に帰ってくるドン!」

 

「剣山君落ち着いて!万丈目君も言い過ぎよ!」

 

「すまなかった…」

 

 

 

 

 

 

「さて、僕達が今置かれている状況だけど…万丈目君、周囲の状況は?」

議長の吹雪が万丈目に周囲の状況を尋ねる。

 

「ああ、おジャマ達と共に町に降りたんだが、少しづつ人が戻ってきているみたいだ、ブロンと暗黒界軍が殲滅されて安心したからだろう…少しづつお店も開いてきた、お金があれば食料の入手もしやすくなるはずだ」

 

「なるほど…他には?」

 

「妙な話を2つ聞いた…『覇王』と『悪魔』についてだ…」

 

「覇王?悪魔?何の事ザウルス?」

 

「ああ…まず覇王についてだ、ここ数日に突然現れた勢力で北にある『覇王城』を拠点に凄まじい勢いで領土を広げているらしい…、そして決闘者狩りをして…逃れた者はいないとの話だ…。」

 

「暗黒界の脅威が無くなってすぐにか…十代君が巻き込まれてなければいいが…それで悪魔とは?」 

 

「…これは本当に噂話だ、東の荒野が青い炎で覆われて燃え尽きた…突然たくさんの異形のモンスターが現れて町が消えた…それを率いる黒い翼の悪魔を見た…そんな話だ、幸いこの近くでの目撃情報は無いが注意はした方がいいだろうな…」

 

「…青い炎を率いる悪魔…聞いただけでも恐ろしいザウルス…恐竜に火は大敵だドン」

 

「十代…大丈夫…よね…?」

 

「…状況は僕達にとって不利な事ばかりだ…遊海先生がいなくなり、翠さんも動けない…そんな中だけど僕達はやれる事をやろう!絶対にヨハン君と十代、翔君を見つけだして…《万丈目の兄貴〜!!大変よ〜!!?》どうした!?」 

 

会議をしている部屋におジャマイエローが飛び込んでくる

 

「どうしたイエロー?今は作戦会議中だ、くだらん事だったら!」

 

《ヤバイのよ!空に気持ち悪いモンスターが!》

 

「そんなのここは精霊界だ、デビルドーザーもいるんだら何がいても…」

 

《違うの!気持ち悪いうえに超デカイのよ!?》

 

「「「「なんだって!?」」」」

 

 

 

 

 

 

イエローから話を聞いた万丈目達は外に飛び出した…そこには…

 

「なんだよ…アレ…!」

 

「機械仕掛けの赤い鳥…?」

 

「デカすぎるザウルス!?」

 

そこにいた…否飛んでいたのは機械でできた赤い鳥のようなモンスターだった…ただしその大きさはジェット機の数倍以上の大きさがある、だいぶ高い場所を飛んでいるはずなのに相当な大きさがあり、翼はところどころが色々な色の光を放っている…。

 

「…いったい…何が起きようとしているんだ…?」

 

万丈目達はその様子を見ているしかなかった…。

 

 

 

《そんな…あのモンスターは…!怖い…怖いよ…!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覇王…いや十代!出てこい!ミーと…俺とデュエルしろぉぉぉ!!」

ジムは覇王城の門前にて叫んでいた、覇王…十代を救うデュエルをするために…。

 

ジムとオブライエン、そしてウェンは十代を探して各地を巡っていた…、その中覇王の話を「絶対防御将軍」ことバーガンディから聞き3人は旧覇王城へと訪れ、そこにいたコザッキーから覇王の所業を聞き怒りを抱く、そして町に戻ると既に覇王軍に破壊されバーガンディも消滅してしまった…。

 

怒りに燃えたジムは覇王城に突っ込む…そこにいたのは覇王の部下たる5人のモンスター達と覇王…変わり果てた十代の姿だった、一度は退散したジム達であったがジムは魂の友達である十代を正気に戻すため、覇王にデュエルを挑んだ!

 

『全員邪魔はするな…いいだろう受けて立つ』

 

感情の籠もっていない声で覇王は決闘を受け入れた…そこに元の十代の面影はなかった…

 

「十代…!君を闇の中から救いだしてみせる!!」

 

「ジム…!頼んだぞ…!」

 

《ジムさん!頑張って…!》

オブライエンとウェンは見守るしかなかった…

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…十代の闇はここまで…!」

 

ジム LP50

モンスター無し フィールド魔法 聖地の守護結界 手札0

 

 

覇王LP50

 

EーHEROダークガイア 攻撃力4400 手札0

 

 

十代とジムのデュエルは熾烈を究めた…ジムは十代を元に戻すために全力を尽くした…しかし十代は究極の融合カード「超融合」を発動ジムの切札「地球巨人ガイア・プレート」と「ヘルゲイナー」を融合し攻撃力4400を誇るダークガイアを召喚した…ジムにそれを防ぐ手立ては…無い…

 

 

『バトルだ…「ダークガイア」でダイレ…[乱入ペナルティ2000ポイント!!]…なんだと?』

トドメを刺そうとしたまさにその時…その場に似合わない機械音声が響き渡る…そしてソレは現れた…!

 

 

【GAaaaaaa!!!】

ジムと覇王の中間地点に現れたのは悪魔だった、その後ろには紫色の箱を被ったモンスターが召喚されている…。

 

悪魔LP4000→2000(乱入ペナルティ)

クリムゾンノヴァ 伏せ1 手札4

 

「な、なんだコイツは…!」

覇王のダークガイアに腰を抜かしていたオブライエンはさらに後ずさった…覇王から感じるのが圧倒的殺意だとすれば悪魔から感じるのは…「死」そのものだった…。

 

 

《あ…わ…》

(キュイ〜…!)

ウェンとペトルフィンは身を寄せあう…端末世界でも感じた事のない圧倒的恐怖…それはティエラとの戦い以来の事だった…

 

『貴様…何者だ?オレのデュエルに水を差すとは…覚悟はできているんだろうな…!!』

覇王は怒りの赤いオーラを纏う…その覇気は先程の倍以上になっていた…

 

【ハオう…コ…ロス…!Gaaaaa!!】

悪魔も威圧を以て覇王を睨み返す

 

「な、何なんだあのモンスターは…!?しかもアレは…あの闇は…!」

ジムはオリハルコンの瞳をもって乱入した悪魔を視る…その体は闇に覆われ伺い知る事はできない…

 

 

 

 

 

【Goaaaa!!】

[ドロー、リバースカード『方界合神』発動、フィールドの『暗黒方界神クリムゾンノヴァ』と手札の同名モンスター2体を融合、『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を融合召喚!]

 

悪魔のフィールドが闇に包まれる…闇が集まりそして邪悪なる意思の化身たる神が現れる ATK4500

 

『攻撃力4500…「ダークガイア」を超えた…だと?』

 

「闇の化身…!こんなモンスターが…!」

覇王もジムも驚きを隠せない…

 

【Garrr!!】

[バトルフェイズ、『クリムゾンノヴァトリニティ』で『ダークガイア』を攻撃、モンスター効果発動、攻撃時相手のライフを半分にする]

 

『「なんだと!?」』

クリムゾンノヴァトリニティから紫色の光線が四方八方に放たれる

 

「うわああああ!?」

 

『ぐおぉぉぉぉ!?』

 

ジムLP50→25

 

覇王LP50→25

 

 

【シ…ネ…!】

クリムゾンノヴァトリニティの一撃が大地の悪魔の体を粉砕した…

 

『がああああ!!』

 

「十代!!!」

 

覇王LP 0

 

 

《なっ…覇王様が…》

 

《負けた…だと?》

覇王は吹き飛ばされ覇王城の城門に叩きつけられ意識を失った…

 

「馬鹿な…覇王を一撃で…ハッ!?」

ジムが気付くと邪神がこちらを向いている…

 

[「クリムゾンノヴァトリニティ」の効果、モンスターを破壊した時、もう一度攻撃できる]

 

「なっ…!?」

 

【Gaa…!】

 

[クリムゾンノヴァトリニティでダイレクトアタック、モンスター効果発動]

再び紫の光線がジムを撃ち抜く…

 

「ああああああああ!!」

 

ジムLP25→12

 

「がっ…あ…クレイジー…すぎる…アンタはいったい…?」

ジムは改めて瞳で悪魔の心を覗きこんだ…

 

 

 

 

 

 

「ここは…なんだ…?」

ジムが見たのは一面の闇の世界だった…十代の精神世界のように鏡も無く一面の闇が広がっている

 

「こんな世界見た事も…あれは…?」

ジムは闇の世界に一粒の光を見つける…手に取るとそれは…

 

「写真…!?この人は!」

そこに写っていたのは顔の見えない紫色の髪の女性だった…しかしジムにはすぐに思い当たった…悪魔の正体を…

 

「嘘だろ…なんでユーまで…!」

 

 

 

 

 

 

 

「ジム!逃げろ!逃げるんだー!!」

 

「ハッ…!」

ジムが意識を戻すと眼前に闇が迫っていた…

 

ジムLP0

 

悪魔 WIN…

 

 

 

 

「ぐっ…あ…カレ…ン」

 

(が…う…)

 

ジムはデュエルに敗北した…彼を庇うように前に出たカレンも消滅している…

 

「ジム…そんな…!」

 

《ジムさん!!》

ウェンがジムに駆け寄る…

 

「ウェン…オブライエン…十代を連れて…逃げろ!…あいつには…あの人には…勝てない…!彼は…ユ」

ジムは言葉を最後まで伝える事なくオリハルコンの瞳とデュエルディスクを残し消滅した…

 

「ジム!ジーム!!」

 

《ジムさん!…そんな…!》

 

 

 

 

【Gaaaaaooo!!】

悪魔は勝利を宣言するように咆哮をあげる…すると

 

《見事です新たな王よ…》

 

《今の戦い素晴らしいものでした…!》

 

《然り…》

 

《我らも…》

 

《あなたの部下にして頂きたい…!》

 

覇王に仕えていたモンスター、「ガーディアンバオウ」「スカルビショップ」「カオスソーサラー」「熟練の黒魔術師」「熟練の白魔導士」が悪魔に臣下の礼をとっている…覇王を降した悪魔に取り入ろうとしているのだろう…

 

【…】

悪魔は腕をあげる

 

『『『?』』』

 

【ジャマ…ダ…】

 

【ギシャアアア!!】

 

『『『ギャアアアアア!!?』』』

臣下の礼をとったモンスター達は上空からの蒼い炎に焼き尽くされた…その跡には骨すら残っていなかった…

 

《あ…ああ…!オブさん!逃げよ!早く十代さんを!!!》

 

「!…ああ!逃げるんだ!!!」

硬直していたオブライエンはウェンにより正気を取り戻した…本来なら1人で逃げてしまうところだが、あまりの恐怖に一周回って冷静になっていた…

 

「十代!しっかりしろ!十代!!」

 

「……」

十代は消滅こそしていないが気絶していた…オブライエンは素早く十代を回収しウェンの元に戻る

 

「ウェン!頼む!!」

 

《了解!全速力で逃げる〜!!!》

《キュイ〜!!!》

ウェンとオブライエン、十代を乗せたペトルフィンは全速力でその場から離れ隠し砦へと向かった…覇王城は蒼炎に包まれていた…。

 

 

 

 

 

「あれは…!」

 

「一歩遅かったか!」

 

「覇王の城が燃えてる…蒼い炎なんて…!」

 

「ん?アレーは…セニョール十代!セニョールオブライエンなノーね!!ピンクのイルカと何処かに向かってるノーネ!」

 

「あの方向は…フリードの隠し砦の方だ!」

 

「とにかくみんなと合流する!『サイバーエンド』!頼む!」

 

「『エクスプレスロイド』!お願い!早く皆にあの事を伝えないと!!」

 

「急ぐノーネ!」

 

 

破滅へのカウントダウンは…始まった…


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