転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「…おれ…は…?」
眠っていた十代は目を覚ます、長い悪夢はようやく終わったのだ…。
「十代、目が覚めたか…」
「オブライエン…俺は何を…?」
十代が目覚めるとベッド脇にはオブライエンが座っていた…
「何があったか覚えているか?」
「何が…あったか?…ブロンとデュエルして…っつ!?」
頭痛と共に十代の記憶が蘇り始める…
「うわああああ!!」
《ヨハンとかいう奴は…死んだよ!》
ブロンとの決闘の末…遊海が消滅しヨハンも死んだと言われた事…
「アニキは身勝手過ぎるんだ!バカヤロー!!」
翔に失望され…見放された事…
『我が名は覇王…この世を支配する者…!』
心の闇に飲み込まれた事…
《うぎゃァァ!?》
『ガッ…なんで…こんな…』
『ついに完成した…これが「超融合」…!』
数多の命を犠牲に…『超融合』を完成させた事…
「十代!マイフレンド戻って来い!!」
『心の闇が作りだした…最強にして最凶・最恐の力の象徴!究極の力を解き放て!『超融合』!!」
ジムとデュエルして…
【GAaaaaaa!!!】
黒い…悪魔…!!
「あ…ああ!俺は…俺はなんて事を…!?」
「…」
「オブライエン…ジム…ジムは!?」
「…ここだ…」
オブライエンは砕け散った破片…オリハルコンの瞳の成れの果てを見せる…
「そんな…!ジム…俺の…俺のせいで…!!」
「勘違いするな十代…ジムはお前に倒されたんじゃない…」
「えっ…?」シャラン
十代は起き上がりオブライエンを見る、それと共に胸に置かれたカルトゥーシュが布団の上に落ちる
「これは…」
《十代、お前には闇の衣は必要ないんだ…》
『さぁ行け!十代!みんなが待っている!』
「遊海…先生…?」
「状況はとても悪い…特にお前にとってはな…」
「オブライエン…?いったい何が…」
「それが…」
オブライエンが語ろうとする…しかし
「オブライエン!大変ッス!お兄さんが…アニキ!目が覚めたんッスね…!!」
翔が部屋へと駆け込んでくる、そして十代が目覚めたのを見て目を潤ませる…
「翔!!ごめん…俺…!」
「アニキ…ボクこそごめんなさいッス!!あの時のボクはどうかしてたんす!!」
「話は後だ!翔、何があった!」
「そうだった!?お兄さんが悪魔を…遊海先生を倒しに行っちゃったんス!!!」
「なんだって!?」
「翔、オブライエン…?遊海先生を倒すって…どういう事なんだよ…!?」
十代は突然の言葉の意味がわからずにいる…
「十代、遊海プロは消滅していなかった…しかしその身は伝説の決闘者では無く、全てを壊す…悪魔になってしまったんだ…!!」
「えっ…何が…何があったんだよ…!?」
「亮…よかったのか?」
「ああ…背負うのはオレだけで充分だ…」
カイザーとエドはサイバー・エンド・ドラゴンの背中に乗り悪魔の元に向かっていた…
「まさかあの激戦の中、悪魔…遊海さんに発信機をつけるなんて…」
「たまたま持っていた物が役にたった…それだけだ…」
「(遊海先生…)」
【カイザー亮…オレは可能な限リコノ『悪魔』ヲ押えル、モシ…暴走シたら…介錯を…頼厶…!俺ハデュエルいガイでは死ねないカラな、そレに…翠ニ…この姿ヲ…見られタク…ナい…!】
「(先生、今…あなたを倒しにいきます…!!)」
「遊海先生がユベルの呪いに…!?」
「ええ…遊海さんは、ユベルの呪いでその姿を悪魔のような姿に変えられてしまった、翔君達が会った時はまだ意識があったらしいわ…でも今は…」
「…全てを破壊する悪魔へと変貌してしまった、しかも決闘者としての本能…力をそのままに…!」
「そんな…!!」
回復した十代は翠、そしてオブライエンから遊海に関する状況を聞いていた…。
「何か…何か方法は…、元に戻す方法はないのかよ!?例えば俺みたいにデュエルで倒せば…!」
《十代、それは無理なんです…》
「アヤカ!?どうして…!」
《私が悪魔と遭遇した時、あの悪魔からマスターの気配を感じませんでした…実を言うと私は最初アレをマスターと認識できなかったんです…、あの悪魔の魂はマスターの魂とは別物、救う以前に…倒してもマスターが戻ってくるかどうかも…》
「そんな…!」
アヤカは冷静に分析した事を告げる…その声色は悲しみを我慢しているようだった…。
「とにかく…亮君を追わないと!彼でも今の遊海さんには敵わないかもしれない…!」
《場所は捕捉してます!町はずれの旧収容所…そこに悪魔の反応があります!》
「ありがとうアヤカちゃん!行くわよ!お願いウィンダ!」
《了解!超特急でいくわ!》
「翠さん…俺も連れて行ってくれ!遊海先生がそんな事になってるのに…じっとしてられない!」
「僕も行くッス!お兄さんが心配なんッス!」
「…わかったわ、ウェン!2人をお願い!」
《わかった!》
「オレは砦に残る、逃げてきた人達を守らなければ…十代、遊海プロを頼む!」
「わかった!」
「亮君…無事でいて…!」
翠、十代、翔は砦を飛び出し遊海と亮の元へ向かった…。
「ここか?」
「ああ、発信機はここで止まっている…この近くにいるのは間違いない…!」
エドと亮は発信機を辿り暗黒界軍の使っていた収容所に到着した…辺りにモンスターの姿は無く、不気味なほど静まりかえっている…。
「どうする?手分けして…」
「いや、正面からいく…!」
そういうとカイザーは一歩前へ出る…
「黒き悪魔よ!我が名は丸藤 亮!!羅刹に墜ちる以前の貴方からの依頼を果たしにきた!尋常にデュエルを申し込む!!」
カイザーは大声で名乗りをあげた…その声は周囲に響き渡る…
「亮…話を聞く限り今の遊海さんには理性が無いんだろう?名乗りをあげたところで…」
「いや、理性は無くとも…本能がある、デュエリストとしての…闘いを求める本能が…!」
「そんな根性論のような事をお前がいう…【Grrr…!!】!?」
エドの声を遮るように唸り声が響く、そして…
【GOAAAaaaaa…!!】
心を脅かす咆哮と共に暴走せし遊海、否…破壊の悪魔が現れる、その身体には無数の傷が刻まれている…先日のアヤカとの戦闘で負ったのだろう。
「嘘だろ…?本当に出てきた…!?、でも信じられない…あれが遊海さんだなんて…!」
「オレも信じられないさ…意識のある遊海先生と会っていなければの話だが…」
カイザーは悪魔を見据え呟く、悪魔からは凄まじい殺気…破壊の意思が放たれている…
【du…デュ…エル…!】
[デュエルモード起動…]
悪魔のデュエルディスクが起動する…理性が無くとも決闘者の本能がそうさせるのだ…
「エド、下がっていろ…オレがあの人を止める…!」
カイザーもデュエルディスクを構える…
「亮、勝ってくれ…ボクにはわかるんだ、あの人は苦しんでいる…だから遊海さんを…」
「ああ…遊海先生はオレに新たな道を示してくれた…!あの人が悪鬼に堕ちたというなら…オレは地獄からでもあの人を救いだす!!」
「【デュエル!!/duel…】」
悪魔LP4000
亮LP4000
【Gaarrr…!】
[ドロー、ライトペンデュラムスケールにスケール5『アモルファージ・ルクス』、レフトペンデュラムスケールにスケール3『アモルファージ・オルガ』をセッティング]
悪魔の両隣に光の柱が現れその中に身体に結晶の刺さった狼と黒いサソリが現れる
「ペンデュラム…?聞いた事が無いカードだ…!」
「異世界のデュエルモンスターズ…!」
カイザーは警戒を強める、未知のカード…それが何を起こすのか…
[フィールド魔法『アモルファスP』を発動、それによりフィールドの『アモルファージ』モンスターの攻守は300アップする]
フィールドに不気味な顔の杖が突き刺さる…そして周囲に瘴気が満ちていく…
【Gaaaa!!】
[フィールドにスケール3、5のペンデュラムカードがある事により手札からレベル4のモンスターを特殊召喚できる]
「「なにっ!?」」
[全てを浸食せし破滅の力…現れよ…ペンデュラム召喚…レベル4『アモルファージ・ヒュペル』]
悪魔の頭上に黒い孔が開き1羽の鷲が現れる…
「鷲のモンスター…?」
エドはその姿を見て戸惑う…悪魔の見た目とは違うモンスターが出てきたからだ、しかし…まだ終わりではない…
【Goo…aaa!!】
悪魔は手に現れた結晶の杖を鷲に投げつける…それは鷲の胸に突き刺さり変化をもたらす…!
《ピュ…キュイィィィ!?》
「なんだ!?」
「鷲の身体が…!?」
鷲の身体が肥大化し不気味に蠢いていく、そして…
《ギュラアアア!!》
肥大化した肉は緑色の竜の形をとる、それこそが「アモルファージ・ヒュペル」の姿だった…
ATK1750→2050
「…なんと醜悪な…!!」
「遊海さんがこんなモンスターを使うなんて…!」
エドもカイザーもその醜悪さに顔を背けてしまう、遊海がこんなモンスターを使うとは考えていなかったのだろう…そして確信する、自分達の知る遊海と悪魔は別人なのだと…
【Giiaaaa!!】
[『ヒュペル』を生贄に手札から『アモルファージ・ノーテス』をアドバンス召喚、フィールド魔法の効果により1ドロー]
緑色のドラゴンが崩れ去り、1頭の熊が現れる…その身体にも杖が突き刺さり黄色のドラゴンに変化する…
ATK2250→2550
[そして永続魔法『アモルファージ・インフェクション』を発動、効果によりフィールドの『アモルファージ』カード1枚に付き攻守を100アップする]
ノーテスがオーラを纏い攻撃力があがる
ATK2550→2950
[カードを1枚伏せてターンエンド]
悪魔LP4000
ノーテス Pスケール ルクス、オルガ インフェクション 伏せ1 手札2
「遊海先生…!貴方がどんなに変わろうと、オレは貴方を倒し…開放してみせる!!」
「オレのターン!ドロー!」
「オレは手札から『融合』を発《ビーッビーッ》なに!?発動できないだと…?」
[ペンデュラムスケールの『ルクス』の効果を発動、自分フィールドに『アモルファージ』モンスターがいる時、お互いに『アモルファージ』カード以外の魔法カードを発動できない]
「くっ…ならば手札から『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在する時特殊召喚できる!」
カイザー亮を象徴する機械竜が現れる ATK2100
「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
亮LP4000
サイバードラゴン 伏せ2 手札3(内1枚融合)
「(伏せたのは『アタック・リフレクター・ユニット』と『サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー』…遊海先生の場には攻撃力2950の『ノーテス』がいる…今は耐えるんだ…!)」
【Gaaa…!】
[ドロー、スタンバイフェイズ、スケールの『オルガ』『ルクス』の効果を発動、さらにリバース罠『アモルファージ・ライシス』を発動…逆順処理開始、『ライシス』効果により相手フィールドのモンスターの攻守はフィールドの『アモルファージ』カード1枚につき100ポイントダウンする]
瘴気がサイバードラゴンに纏わりつき力を削いでいく
ATK2100→1600
「くっ…」
[そして『ルクス』のペンデュラム効果を発動、フィールドの『ノーテス』をリリースしスタンバイフェイズに破壊されるこのカードを破壊しない]
フィールドのノーテスが腐り果て、破壊される…
「うぐっ…ひどい匂いだ…!」
「遊海先生…いや悪魔、お前は…モンスターをなんだと思っている…!」
亮は怒りをあらわにする…普段の遊海であれば使用しないであろうデッキを平然と使う、モンスターを駒のように使い捨てる…それは普段の彼の姿からは考えられない姿だった
[永続魔法『インフェクション』の効果、『アモルファージ』モンスターがリリースされた事によりデッキから『アモルファージ・イリテュム』を手札に加える、さらに『アモルファスP』の効果を発動1ドロー…さらにスケールの『オルガ』の効果を発動…コストを払わず自壊する]
光の柱の中の狼が腐り落ちる…しかしそこに新たにハリネズミが現れる
[『ライシス』の効果、ペンデュラムゾーンのカードが破壊された時、デッキからスケール3『アモルファージ・プレスト』をペンデュラムゾーンに置く]
「しまった!また条件が揃って…!?」
「これがあの人の本能だと言うのか…!?上手すぎる…!」
2人は戦慄する…理性が無いはずの遊海のプレイング…、その余りの無駄の無さに…!
【Grrrr!】
[スケール3、5の『プレスト』『ルクス』でペンデュラムスケールをセッティング…ペンデュラム召喚、手札より『アモルファージ・キャヴム』『アモルファージ・プレスト』エクストラデッキから『アモルファージ・オルガ』『アモルファージ・ヒュペル』]
空間の孔が開きハリネズミ、巨大イカ、狼、鷲が現れ、それぞれが竜化する
DEF1950→2750→3050
DEF2050 →2850→3150
ATK1650→2450→2750
ATK1750→2550→2850
「モンスター4体の同時召喚だと…!?」
「破壊されたら融合デッキにいく…それがペンデュラムモンスターの力か…!」
【GOoooaaa!!!】
[『ガストル』と『プレスト』をリリース、『アモルファージ・イリテュム』をアドバンス召喚、アモルファスP』の効果で1ドロー]
狼とハリネズミが砕け散る…そして紫色の鱗を持つ虚飾の竜が現れる
ATK2750→3550→3850
「…オレでは貴方の足元にも及ばないという事ですか…?」
「亮!ダメだ…諦めるな!!」
「エド…、諦めなどしない!!最後まで…足掻いてみせる!!」
【ハカ…イ…!】
[バトル、『イリテュム』で『サイバードラゴン』を攻撃]
イリテュムの口にエネルギーが溜まり始める…
「リバーストラップ発ど《ビーッビーッ》なっ…!?」
伏せカードを発動しようとしたが再びエラー音が鳴り響く
[ペンデュラムスケールの『プレスト』の効果、フィールドに『アモルファージ』モンスターがいる時、お互いに『アモルファージ』カード以外の罠カードを発動できない]
黒き瘴気の息吹が機械竜を飲み込んだ
イリテュムATK3850 VS サイドラATK2100→1300
亮LP4000→1450
「ぐっ…遊海先生…約束を果たせないオレを…許してください…!」
[『ヒュペル』でダイレクトアタック]
緑色の竜が尾で亮を弾き飛ばした…
亮LP0
悪魔 WIN!
「ガッ…あ…ぐっ…」
「亮!!!」
エドは弾き飛ばされたカイザーに駆け寄る…その身体からは金色の粒子が漏れ出していく…
「遊海先生…オレは…約束を…」
「亮!しっかりするんだ!」
「亮君!エド君!!…そんな…」
「お兄さん!!」
「カイザー!?」
決着より一足遅く翠達が駆けつける、そしてカイザーを見つけ駆け寄った…
「お兄さん…お兄さんなんで!!」
「翔…翠さん…すまない、オレはあの人との約束を果たせなかった…」
「遊海さんとの約束…?」
「オレはあの人から…『悪魔に呑まれた自分』を倒してほしいと依頼を受けていた…でもやはり、あの人は強すぎた…完敗だ…」
「そんな…お兄さん…!」
「翔…生き延びろ…お前は…お前だけは…」
「カイザー…あんたはどうして…!」
「十代…オレはあの人に届かなかった、でもお前なら届くかもしれない…無限の…可能性を持つ…お前…な…ら」
そこまでだった…カイザー亮は十代に跡を託し…消えていった…。
「亮!!」
「亮君!」
「カイザー…!」
「お兄さん…兄さぁぁぁん!!!」
翔の悲しみの声が周囲に木霊した…。
「…遊海さん、いえ…悪魔、貴方は…私が倒します…!」
「翠さん…!?」
「なんて殺気だ…!これがあの翠さんの本気…!?」
カイザーの消滅を見届けた翠は静かにこちらを見ていた悪魔に宣戦布告する…その殺気は遊海に匹敵するレベルだった。
【…!】ニイッ
「悪魔が…笑ってる…!?」
翠の宣戦布告を聞いた悪魔はその顔を歪ませる…それは獲物を前にした狩人のようだった…
【コロシアム…マツ…コイ…!】
それだけを伝えると悪魔は空へと飛び立った…
「待ちなさい!悪魔…!!」
「…ダメッス…逃げられたッス…」
「コロシアム…闘技場…?こんな世界に…?」
エドは首を傾げる…こんな異世界に闘技場があるのかと?
「心当たりはあるわ…元暗黒界の本拠地、たぶんあそこよ…!」
「翠さん…本当に遊海先生と戦うのか…?」
十代は心配そうに翠に問い掛ける…
「ええ…あの人との決着は私が着けるわ…絶対に遊海さんを…止めてみせる…私の命を賭けてでも…!!」
翠は涙を流しながら決意を伝える…愛する人を
「翠さん…」
十代はその決意を拳を握りしめ聞いているしかなかった…自分の無力さを呪いながら…
「ついてこれる人だけついて来て…!暗黒界の砦に向かうわ!!」
「「「はい!」」」
そして翠、十代、翔、エドは暗黒界の砦へと向かう…遊海との決着を着けるために…