転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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破壊の悪魔対翠〜悲しき戦〜

《翠…着いたわ…》

 

「ありがとうウィンダ…」

 

《翠…ここで合っています、中に反応が…》

 

「ええ…わかってるわ」

 

精霊達と共に翠達は暗黒界の砦に到着した、砦はラーによる殲滅の影響で焼け焦げている…。

 

 

 

「翠さん、遊海先生に…勝てるのか…?」

十代は翠に尋ねる…自分達を導き窮地を救われてきた伝説のプロデュエリスト、そして翠の夫である彼を倒せるのか?と

 

「戦績で言えば私に分が悪いわ…だいたい20戦8勝12敗というところかしら…」

 

「えっ!?勝った事あるッスか!?あの遊海先生に!?

」 

翔は驚きの声をあげる、普段デュエルする姿をほとんど見ない翠が遊海に勝った事がある事に驚いたのだ

 

「ええ!普段はあまり見せないけど…私だって強いんだから…!」

 

「…翠さん…」 

十代は心配そうに翠を見る…

 

「大丈夫よ十代君!絶対に遊海さんを開放しましょう!そうしたら次はあなたの番よ?」

 

「えっ…?」

 

「あなたとユベルとの決着よ、それはあなたにしかできない事だから…」

 

「…はい…!」

 

「さぁ…行きましょう、悪魔のところに!」

 

「「「はい…!」」」

 

 

 

 

 

「と、その前に…お花を摘んでくるから…ちょっと待っててね」

 

「花…?この辺りに花なんて…アグッ!?」

エドが十代を小突く

「わかりました、少し待ってます…ごゆっくり…」

 

「ありがとうエド君…ちょっと待っててね」

 

そう言って翠は少し離れた岩陰に消えていった…

 

「翔?花を摘むって…この辺りに花なんて無いよな??」

 

「アニキはデリカシーが無いっスね〜…」

 

「???…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…嫌だよぉ…こんな形で貴方と戦うなんて…私…わたし…!」

 

岩陰に隠れ…翠は涙を流していた、生徒達の手前…そして生徒達を傷つけた悪魔を許せずに啖呵を切った…しかし…

 

「遊海さん…!遊海さん…!!」

翠は翔から返してもらったボロボロの赤い帽子を抱き泣き続ける…

 

《翠…マスターもいつもそうでした…》

 

「アヤカちゃん…?」

アヤカが泣いている翠に声をかける

 

《マスターは以前斎王に洗脳された貴女と戦いました…その時マスターは全力で戦って貴女を止めました…それこそ自分の身体を二の次にして…戦いが終わって貴女が目覚めるまでマスターはずっと泣き続けてたんです…。『翠に痛い思いをさせてしまった』…『助けるもっと良い方法があったんじゃないか?』…『嫌われてしまったんじゃないだろうか』って…身体も大怪我をしているのに…》

 

「遊海…さん…!そんな…!嫌うなんて…!」

 

《マスターは表面ではポジティブな考えをしてますが…内面では結構ネガティブなんです…昔の後遺症という事もありますが…それでもう一つの人格ができかけてしまう程に…》

 

「そんな…」

 

《翠…転生前のマスターは親友と呼べる人も数人しかおらず、遊戯王を心の糧にして生きていたんです…でも今は貴女がいる…!》

 

「え…?」

 

《私…2回だけマスターの心の部屋に入った事があるんです一度は転生直後に…その時は殺風景な部屋でした、でも翠と出会った後に再び入ったら…とても綺麗な部屋に変わっていたんです、そこには小さな貴女の写真が飾られていました!遊海さんは貴女に救われていたんです!》

 

「遊海さん…!」

 

《翠…あの悪魔はマスターを浸食して存在しています…マスターを救うために…力を貸してください!!》

アヤカは翠に頭を下げる…マスターを…遊海を助けるために…

 

「アヤカちゃん…ありがとう!私が絶対に救けてみせる!!」

翠は赤い帽子を被り涙を拭いた…その瞳には力が戻っている…

 

「みんな…お待たせ!…行きましょう!!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

そして翠達は砦へと入っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Grrrr…】

 

悪魔は砦の中央…闘技場の中央に佇んでいた、その体からは黒いオーラが揺らめいている…

 

「悪魔…いえ遊海さん!貴方を倒します…!」

翠は悪魔を睨めつけ言葉少なにデュエルディスクを構える…倒すと決めたからには絶対に彼を止める…そのために翠は情けを捨てた…! 

 

【デュエ…ル…!】

[デュエルモード起動…]

 

悪魔もデュエルディスクを構える…

 

 

「翠さん…!!」

 

「翠さん!お願いッス!勝ってください!!」

 

「翠さん…!遊海さんを頼みます!」

 

十代達もその様子を見守る…

 

「大丈夫…!いくわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【デュエル!!/デュエル…】」

 

 

 

 

翠LP4000

悪魔LP4000

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

「『おろかな埋葬』を発動!デッキから『シャドール・ビースト』を墓地に送り効果により1ドロー!(このカードは…!)」

 

「私は魔法カード『影依融合』を発動!手札の『シャドール・リザード』と『メガロック・ドラゴン』を融合!影のトカゲよ!想いつまりし岩石竜と交わりて…王の玉座を呼び出さん!融合召喚!レベル10『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

身体を拘束された影の女王が現れる DEF3000

 

「守備力3000…!守りを固めたッス!」

 

「墓地へ送られた『リザード』の効果を発動!デッキから『シャドール・ファルコン』を墓地に送る!そして効果により『ファルコン』を裏守備で特殊召喚!…カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

翠LP4000

シェキナーガ 裏ファルコン 伏せ1 手札2

 

 

 

「翠さんはしっかりと守りを固めてる…!守備力3000ならそう簡単には倒されないはずだ…!」

 

「でも…遊海先生がなにを使ってくるかわからないッス…!」

 

 

 

 

 

 

【Gaaaaa!!】

[ドロー、手札の『クリムゾン・ノヴァ』2体、『方界胤ヴィジャム』を公開し『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を特殊召喚]

無数のキューブが集まり紫色のキューブを被った邪神が現れる ATK3000

 

「『クリムゾン・ノヴァ』!?まずいわ…ライフ4000のこのルールじゃ…!」

 

【Gaaoooo!!!】

[バトル、『クリムゾンノヴァ』で裏守備モンスターを攻撃]

 

邪神のビームが鳥の人形を砕く…

 

「くうっ!?『シャドール・ファルコン』のリバース効果!墓地の『ビースト』を裏守備で特殊召喚!」

 

【GAaaaaa!!】

 

[『クリムゾンノヴァ』は相手モンスターを破壊した時もう一度だけ攻撃できる、裏守備モンスターを攻撃]

 

再び放たれたビームが獅子の人形をバラバラにする

 

「『ビースト』のリバース効果!デッキから2枚引いて1枚捨てる…ドロー!…手札の『シャドール・ヘッジホッグ』を墓地に送り…効果発動!デッキから『シャドール・ドラゴン』を手札に加える!」

 

【Guuu…】

[カードを1枚伏せてターンエンド…『クリムゾンノヴァ』の効果、お互いに3000ダメージを受ける]

 

クリムゾンノヴァがビームを乱射し闘技場全体を吹き飛ばす!

 

【GAAAA…】

 

「きゃああああああ!!」

 

「翠さん!!」

 

翠LP4000→1000

 

 

悪魔LP4000→1000

 

クリムゾンノヴァ 伏せ1 手札4

 

 

 

 

 

「あ…ぐ…痛…い…!」

翠は爆風で吹き飛ばされ壁に叩きつけられる、悪魔は微動だにせずその場に佇んでいる…

 

「翠さん大丈夫か!?」 

 

「十代君…ありがとう、大丈夫…よ!これぐらい…いつもの遊海さんが感じる痛みに比べれ…ば…!」

 

翠は気合で立ち上がる…既に足は震え体は傷だらけになっている…

 

《翠姉…!無理しちゃダメ…!》

ウェンが実体化し翠の身体を支える…

 

「ありがとうウェン…でも、今無理をしないで…いつ無理をするの…!!私は…遊海さんを助けるんだからぁぁぁ!!」

 

《翠!私達も付いてる!!みんなで助けだそう!》

ウィンダも翠の身体を支え励ます

 

「いくわよ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロー!」

 

【Guuaaaaa!!】

[リバース罠『方界合神』を発動、3体の『クリムゾンノヴァ』を融合…『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を融合召喚]

 

「やっぱり来ちゃった…!!」

悪魔のフィールドに異形の邪神が現れる…邪神は凄まじい闇のオーラを纏っている ATK4500

 

「攻撃力4500…!ジムや万丈目達がやられたモンスターだ!」

 

「くっ…!(ダメだ…シャドールにはアレを超えられるカードが無い…!今は耐えなきゃ…!)」

 

「手札から魔法カード『神の写し身との接触』を発動!手札の『シャドール・ドラゴン』と『裏風の精霊』を融合!影の竜よ!優しき風と交わりて…全てを守る防壁とならん!融合召喚!お願い!『エルシャドール・ウェンディゴ』!」

《了解!頑張るよ〜!!》

翠を支えていたウェンがフィールドに飛び出し守りを固める DEF2800

 

「私はターンエンド…!」

 

翠LP1000

シェキナーガ ウェンディゴ 伏せ1 手札2

 

 

 

 

 

「翠さん!耐えられるのか…!」

 

「翠さん!!勝機はあるはずだ!頑張ってくれ!!」

 

 

 

 

【AAAAA!!】

[ドロー、バトル『トリニティ』で『ウェンディゴ』を攻撃、攻撃宣言時相手ライフを半分にする]

 

「その時!『ウェンディゴ』の効果を発動!このターンこのカードは特殊召喚された相手モンスターとの戦闘では破壊されない!《ウィンド・カード》!」

《防壁展開!耐えて!翠姉!!》

 

「耐えるわ…!遊海さんを助けるんだもの!!ああああああああ!!」 

ウェンは自身と翠を風の防壁で守る…破壊こそされなかったものの翠は光線がかすりダメージを受ける

 

翠LP1000→500

 

 

【Guuu…】

[ターンエンド]

 

悪魔LP1000

トリニティ 手札3

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…うぅっ…!?」

 

《翠!?》

トリニティの攻撃を耐えきった翠は地面に倒れ伏す…邪神により精神力を削られ身体はボロボロ…ライフこそ残っているものの既に限界を超えていた…

 

《翠!しっかりして翠!》

 

「翠さん!しっかりしてくれ!!」

 

「翠さん!翠さぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…身体が動かない、遊海さんを助けたいのに…指すらも動かせない…

 

今どんな盤面だったっけ…?意識がはっきりしない…眠い…ここで寝ちゃえば…気持ちいいかな…?

 

 

翠の意識は深く沈んでいく、それと共に体から金色の粒子が漏れ始める…

 

 

「翠さん!ダメだ!気をしっかり持ってくれ!!」

 

「翠さん起きて!起きてくれっス!!」

 

《翠姉!起きて!!翠姉!!》

 

 

 

 

…みんなが呼んでる…でもダメだ…意識…が…

 

 

 

 

 

 

 

『翠…いつまで寝てるんだ…?』

 

 

懐かしい声がする…

 

 

 

『少しだけ力を残しておいて本当によかった、翠…いつかの約束はどうしたんだ?「俺の背中を守るデュエリスト」になるんだろう?』 

 

 

意識の降下が止まる、まるで誰かに受け止められたように…

 

 

『この決闘が終わっても本体が戻るかどうかはわからない…でも、やれるだけやってくれ…ダメージに慣れてないお前には少し酷だけど…頼んだぞ…翠!!』

 

 

意識が浮き上がる…暖かい力に押し上げられていく…今のは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ…私は約束を守らなきゃ…!遊海さんを助けるんだー!!」

翠は起き上がる…その胸には2つのカルトゥーシュが輝いていた…!

 

《翠!よかったぁ〜!!》

 

「翠さん!!」

 

 

「いくわよウェン!ウィンダ!遊海さんを止める!!」

 

《うん…!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のターン!ドロォー!!!」 

「(このカードは!?)」

 

翠は十代を見る…そのカードは十代に1番関係の深いカードだった…

 

「(十代君…ごめん、トラウマを抉る事になるかもしれない…でも使わせて…!!)」

 

「私は手札を1枚捨ててこの魔法カードを発動します!!」

翠は発動するカードを高く掲げる

 

「そんな…あのカードは…!?」

そのカードを見た十代は急いで自分のデッキを確認する…そのカードは現時点で世界に1枚しかないカード…その名は…

 

 

 

 

「正しき闇よ集え!悪に囚われし者を救うために発動せよ…『超融合』!!」

翠の背後に暗雲の渦巻きが現れる

 

「馬鹿な!?『超融合』だって!!」

 

「まさか…異世界の…!」

 

「私はフィールドの『シェキナーガ』と『トリニティ』を…融合!!」

クリムゾンノヴァトリニティが融合の渦に吸い込まれる…そして纏っていた闇が翠を覆い尽くす…!

 

 

「っあ…!?あ"あ"あ"あ"あああああ!?」

その瞬間、翠に今までにない痛みが襲いかかる…魂を引き裂く痛み…それは遊海が邪神経典の生贄にされた時に感じていた痛みだった

 

(やめろ!やめてくれぇぇぇ!!!)

 

「(遊海さん…こんな…痛みを…!!)」

闇に紛れ遊海の想いが翠に伝わる…凄まじい痛みが精神を蹂躙していく…

 

「(遊海さんが…耐えたのなら…私だって…!)融合召喚…!来て!私のパートナー!『エルシャドール・ミドラーシュ』!!」

《翠!!》

竜に乗った少女がフィールドに現れる ATK2200

 

 

「これで…フィールドはガラ空き!!これで…終わりよ!!バトル!『ウィンダ』!!お願い!遊海さんを…倒して!!!」

翠は痛みに耐えながらウィンダに支持を出す

 

《うあああああ!!『ウィンド・ストライク』!!》

濃縮された風の魔力弾が悪魔に直撃した!!

 

 

【ガッ…アアアアアアアアアア!!?】

 

 

悪魔LP0

 

翠 WIN!

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…やったよ…みんな…遊海さんを止められた…うっ…」

 

「「「翠さん!?」」」

 

決闘の直後、翠は再び倒れる…体は余すところ無くボロボロ、精神・魂すらも削った戦いだった…

 

「ウィンダ…遊海…さんは…?」

 

《最後の攻撃で飛ばされて倒れてるわ…金色の粒子も出てる、私達の戦いは終わったわ…》

 

「そう…ありがとうウィンダ…ごめんなさい遊海さん…!!」

 

翠は泣いていた、戦いが終わった安心感と…愛する人を手にかけてしまった悲しみ…本当に胸が裂けてしまいそうだった…。

 

「翠さん!大丈夫か!?」

 

「翠さん!よかったッス〜!!」

 

「十代君、翔君、エド君…私も少しは強かったでしょう…?」

翠は駆けつけたみんなに問い掛ける…

 

「翠さんスゴかった!!すごい強かった…でもなんで『超融合』が…!」

 

「あれは私達の世界のカード…あなたにとっては辛い象徴かもしれない、でもそれは使う人の心次第で変わるの…人を傷つけた邪悪な力なのか…人を助ける事のできる正しい力なのか…それは変わるのよ…」

 

「翠さん…はい…!!」

 

 

 

 

 

 

 

《ミドリ!無事ですか!!》

 

「十代!翔君!!」

 

「アニキ〜!」

 

「明日香!剣山!?みんなどうして!?」

決闘の終わった翠達の元に砦に残っていたはずの明日香・剣山・オブライエン、そしてフレアとトフェニが駆けつける…

 

「フレアさんから翠さん達が遊海先生と戦ってるって聞いて追いかけて来たんだドン!」

 

「砦はフリード達が守ってくれている…やはり遊海プロを放っておけなかったんだ…!」

 

 

 

《ミドリ…!ひどいダメージを…!》

フレアは傷ついた翠を見てすぐに治療を開始する…暖かい太陽の光が傷を癒やしていく

 

「ありがとうフレア…遊海さんに勝てたよ…でも…こんな解決の仕方しか無かったのかな…?」

 

《ミドリ…貴女の判断は正しいものだった、悪に呑まれてしまったユウミを救うには倒すしかなかった…》

 

「フレア…ありがとう…」

 

翠は涙を流しながらフレアに問いかけた…フレアはそれを是とした、それが最適の手段だったと…

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば…倒した遊海さんは…どこに…?」

 

「それなら…俺達の反対側に倒れて…」

明日香の疑問を聞いた十代は遊海の倒れていた場所に目を向ける…そこには()()()()()()

 

「何も無い…、もう消えちまったのか…遊海先生…!」

 

「…待って十代…どうして何も無いの…?」

 

「えっ?」

 

「この世界で消えてしまった人達はみんな()()()()()()()()()()()()()()()()()…?」

 

「あっ…!?」

十代は思い出す…ラーズが消えた時も、自身が倒してしまった決闘者達もみんな…デュエルディスクが残っていたと…!

 

「そんなま…【ガァ"ァ"ァ"ァ"!!!】」

 

 

 

 

 

全ての動きがスローモーションになる…上から金色の粒子を振りまきながら炎の剣を振り下ろす悪魔…その切っ先は十代を確実にとらえていて…

 

「(…死ぬのか…俺…?)」 

 

十代は死を覚悟した…周りの精霊達の防御も間に合わない…明日香が何かを叫んでいる…オブライエンがカード銃を構える…でも遅すぎた…

 

「(あっけない終わり方だな…俺…まだ罪ほろぼしもできてないのに…)」

十代は目を閉じ腕でガードの体勢をとる…あの剣を前にしては気休めだが…少しでも命を繋ぐために…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

 

 

暖かい液体が顔にかかる…痛みは不思議と無い…死ぬ直前だからだろうか…?

 

 

 

 

 

「言ったでしょう…貴方にこれ以上人を傷つけさせないって…切り裂け!!『影の刃』!!」

 

ザザシュッ…

 

【ガッ…!?】

 

翠の声…何かを切り裂く音…悪魔の叫び声…そして静寂…十代は目をあける…

 

 

 

「いったい…何が…なっ…!?」

 

十代の目に映った光景…それは身体を斬り裂かれた翠…そして、胸を切り裂かれ穴の空いた悪魔の姿だった…

 

「み、翠さん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「う、迂闊だったわ…遊海さんの…生命力の強さを…忘れて…コフッ」バタッ

 

「「「「「翠さん!!」」」」」

 

十代達は切り裂かれてしまった翠に駆け寄る…傷は深く助からない事は誰の目でも明らかだった…

 

「翠さん!なんで…なんで俺なんかのために…!!」

十代は涙を流しながら翠に問い掛ける

 

「十代君…言ったでしょう…『次はあなたの番』って…ユベルを倒…るの…あなた…だけ…」

 

「翠さん…でも…でも…!!」

 

「泣かないで…私は役目…果たした…遊海さんは止まった…」

 

「翠さん!大丈夫ですよね!?遊海先生も翠さんも不死だって聞きました!!だから治りますよね…!!」

明日香が翠の服を脱がして止血しようとする…  

 

「…傷の再生が始まらないわ…炎の剣で焼かれてしまったからか…それとも…」

翠は倒れている遊海に目を向ける…その腕には焼け焦げた「破邪の大剣 バオウ」が握られていた…破壊した相手モンスターの効果を無効にする剣…それは不死である翠を倒しうる武器だった…

 

「ダメみたい…気が遠くなってきた…」

身体から金色の粒子が漏れていく…その量は加速度的に量を増やしていく…

 

「翠さん!!フレアさん治療は…!!」

 

《無理です…ここまでの傷を治す手段を私は持っていません…!それこそ死者蘇生レベルの力じゃないと…!》

 

「そんな…こんな事なんでおきるザウルス!なんで愛し合っている先生達が死ななきゃならないドン!!!」

 

剣山は地面を殴りつける…普段から遊海と翠のおしどり夫婦を見てきたからこそ…悔しさを抑えられなかった…。

 

「ハッ…ハッ…ウィンダ…私を、遊海さんのところ…に…」

 

《うん…ヒグッ…わかった…》

ウィンダは風の魔法で翠の体を浮かせ静かに遊海の隣に降ろす…

 

「遊海さん…ごめんなさい…!こんな形でしか貴方を救え無かった…!」

翠は意識のない遊海に声をかける…

 

「また会えたなら…謝らせて…くださ…」

 

翠は遊海の手を握りながら…消滅した…。

 

「「「翠さん!!」」」

 

 

 

 

 

《翠…こんな事って…あっ…!》

翠の消滅後、精霊達にも変化が始まるアヤカ以外の精霊の身体が薄くなっていく…楔である翠が消えた事でこの次元に居られなくなったのだ…

 

《十代…私達はここまでです、あとの事は頼みます!アヤカ!十代達を…!》

 

《わかりました!マスターの分まで彼らを守ります!!》

 

《十代殿…気を落とすな、2人は…翠殿は己が使命を果たした…次はお主の番だ!》

 

「フレア…トフェニ…!」

 

《十代、一つ助言を…翠も…消滅した他の生徒達も死んではいません!!》

 

「えっ!?本当か!」

十代はフレアの言葉を聞き目を見開く…!

 

《詳しい事はわかりません…しかし精霊達と翠のラインは完全には切れていません!あなたがユベルとの決着をつければきっと…!頼みます…十代!!》

そこまでを伝え精霊達は退去する…最後の希望を残して…

 

「フレア…ありがとう!まだ終わりじゃない…!皆を助けられるんだ!!」

 

「十代…!行きましょう!」

 

「アニキ!オレも手伝うドン!!」

 

「行こうアニキ!!」

 

「十代…ボクも力を貸そう!」

 

フレアからの言葉を聞いた十代達は決意を新たにユベルを探す旅を始める…皆を救うために…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ダメージ量が規定値を突破…拘束封印を破棄…魂の浸食率100%…実行コード・ティエラ…起動します]


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