転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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断章 英雄深層領域 深淵
目覚めぬ者〜英雄の闇〜


アカデミア・校長室

 

「…以上で異世界に関する報告を終わるノーネ、鮫島校長…」

 

「…デュエルモンスターの精霊達が存在する異世界…遊海さん並びに十代君の暴走…全ての元凶たるユベルとの対峙…あなた達の居ない3週間にそんな事があったとな…」

 

翔達が異世界から帰還して1週間が経った、教師であるクロノスは報告書をまとめ鮫島校長に異世界での出来事を報告していた…。

 

 

 

「私は全員が無事に帰ってくる事を願っていましたが…大切な生徒達が戻っていない事が…残念でなりません…!」

 

「遊城 十代・三沢 大地…この両名のみ異世界から帰還してないノーネ、2人の…特にセニョール十代の活躍があったからこそ他の生徒達もワタシも無事に帰ってくる事ができたノーネ!ヨヨヨ…!」

 

「いえ…悲観的な事を言うのはやめましょう…十代君も三沢君も優秀な生徒です、必ず戻ってきます!…そう信じて待ちましょう…。」 

そう言いながら鮫島校長は2人の書類をまとめる…

 

「クロノス先生、このファイルを旧特待生寮で行方不明になった生徒達と同じ所へ…」

 

「わかりましたまシータ…失礼しますノーネ!」

 

クロノス先生はファイルを持って校長室を出ようとする…

 

「そうだ…クロノス先生?」

 

「なんでしょうか?」  

 

「彼は…遊海さんはまだ目覚めないのですか?」

 

「はいなノーネ、身体は疲労が残っているけど健康そのものだと鮎川先生が言っていたノーネ…」

 

「そうですか…呼び止めてしまってすまなかった…」

 

「大丈夫なノーネ、ワタシもセニョール遊海が心配なノーネ…では…!」

 

 

 

 

「遊海さん…生徒達も心配しています…早く元気な姿を見せてください…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アニキ…早く戻ってきて欲しいっす、約束したじゃないッスか…」

 

翔は丘の上で1人十代を待ち続けていた、遊海…否、破王ティエラを倒した十代達はアヤカの案内の元ユベルそしてヨハンの行方を追った、そしてついに十代達はヨハンとの再会を果たす…しかしヨハンはユベルに憑依され闇の力を得たA宝玉獣…そしてレインボー・ダーク・ドラゴンと共に襲いかかってきた、そして十代は自身のトラウマを振り切り「超融合」を発動、レインボーダークに封じられていたヨハンを開放する事に成功した。

 

 

そして十代とユベルの最終決戦…歪んだ愛を持ってしまったユベルと十代の激しい戦いの末、十代はユベルと魂の超融合を果たした。

そして十代は自身の使命…破滅の光との決着をつけるために旅立っていった…それから1週間が経った。

 

「オブライエンやヨハンも自分の学校に戻っちゃったし…ナポレオン教頭とマルタンもいなくなっちゃった…みんなはアニキが死んじゃったって思ってるんスよ…!」

 

翔は涙を流す…

 

「アニキ…今日は月に一度のエビフライの日ッスよ…!帰って来てよ…アニキィィ!!」

翔は無意識に空に向かって叫んでいた…

 

《何やってるの翔君?》

 

「あっ…ウィンダさん…」

翔の隣には実体化したウィンダの姿があった、食堂から飛び出した翔を追ってきたのだ。

 

《大丈夫よ!十代君は新しい自分を探しにいってるだけ…きっと帰ってくるわ!それよりも翠が心配してるから早く戻ろう?万丈目君も謝りたいって!》

 

「万丈目君が…わかったッス…あっ!…流れ星!!」

 

《あっ…本当だ!》

翔が夜空を見ると赤く光る流れ星があった…

 

「そうだ!お願い事しなきゃ!アニキが早く帰ってきますように、アニキが早く帰ってきますように…!!」

 

《翔君…、アレ?なんか近づいてきてるような…!?》

 

宙の彼方から現れた流れ星…流星は翔達に向かって落ちてくる…!

 

《あ、危ない!!》

 

「ギャン!?」

ウィンダは咄嗟に翔を抱えて飛び退く、流星は2人のいた所を掠め森に落下し爆発を起こした!

 

「ほ、星が落っこちて来たッス!?」

 

《行ってみましょう!》

ウィンダと翔は隕石の落下地点へ向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ…うわ…すごいッス…」

 

《すごいクレーターね…》

 

2人が落下地点に着くと周囲は砂ボコリに覆われ、10メートル程のクレーターが出来ていた…。

 

《!!翔君…下がって、何かいるわ…!》

ウィンダは杖を顕現させながら翔に注意を促す

 

「ふぇっ!?宇宙人すか!?…あっ…!」

 

そして砂ボコリが晴れる…そこには…

 

「アニキ…!」

 

「翔、ウィンダ…今日はエビフライの日だっけ?ヘヘッ!」

自分探しの旅を終え一回り成長した十代の姿があった…。

 

「う…うわぁ〜ん!アニキ〜!!」

 

《おかえりなさい!十代君!》

 

「ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッド寮・食堂

 

 

「翠さ〜ん!みんな〜!大変ッス〜!!」

 

「翔君!どうしたの?」

 

「翔…さっきはすまなかったな…」

十代の思い出話を続けていた翠、万丈目、明日香、吹雪、剣山の元に翔が息を切らして駆け込んで来た

 

「そ、それよりもアニキが!アニキが!!」

 

「「「えっ?」」」

 

 

「ただいま!待たせちまってごめん!」

 

「「「じゅ…十代が帰って来た〜!!」」」

 

「十代!貴様…オレを置いてどこに行ってたんだコノヤロー!!」

 

「万丈目ごめんって!」

 

「もう!心配したんだから!」

 

「そうザウルス!!アニキが帰ってきてくれて俺…オレ…うおぉぉ!!」

 

「おかえり十代君!少し大きくなったか?しかし…明日香に心配をかけるとは許せないかな〜!」

 

「うわぁ!?ごめん!みんなごめんって!!」

十代は皆に揉みくちゃにされる…

 

 

「おかえりなさい十代君!無事でよかったわ!」

 

「翠さん!!体は大丈夫ですか!?」

ひとしきりみんなに揉まれた十代の所へ翠がやってくる

 

「ええ!もう大丈夫よ!少しヒリヒリするけど問題ないわ!はい!エビフライよ!お腹すいたでしょう?いっぱい食べてね!」

 

「うわぁ…!ありがとう翠さん!いただきます!」

 

十代は嬉しそうにエビフライにがっついた…

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした!美味しかった〜!」

 

「ふふ、よかったわ…そういえば旅の間のご飯はどうしてたの?」

 

「それは…その…内緒で!!」

 

「アニキ…いったい何を食べてたんすか…?」

 

「アハハ…そういえば遊海先生は?翠さんがいるって事は帰ってきてるんだろ?」

 

「あっ…」

 

「「「…」」」

 

「えっ…みんなどうしたんだよ…?」

 

十代のから遊海の事を聞かれたみんなは下を向いてしまう…

 

「まさか…戻ってきてないのか…!?」

 

「アニキ…戻ってきてはいるんだドン…ただ…」

 

「ただ…?」

 

「剣山君、今はいいわ…十代君、今日はもう休みなさい…明日、一緒に会いに行きましょう」

 

「翠さん…わかった…」

 

そして少し暗い雰囲気を残したままその日は解散となった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝・アカデミア地下隔離病室

 

 

 

 

翌日クロノス先生や校長に帰還の報告をした十代は翠と共に病室を訪れていた…。

 

コンコンコン

 

「…入るわねアヤカちゃん!」

 

病室ではアヤカ・フレア・トフェニの3人が眠り続ける遊海を看病していた…。

 

《翠さん…十代君おかえりなさい!あなたなら無事に帰ってくると思ってました!》

 

「アヤカ…どういう事だよ、遊海先生が目覚めないって…!」

 

《原因はわかりません…身体は健康そのものなのに異世界から帰還して…一度も目を覚まさないんです…》

 

「そんな…」

 

 

 

遊海はユベルとの決着により皆と一緒のタイミングで異世界から帰還した…しかし意識が回復する事なく眠り続けていた…。

 

《私とマスターは魂が繋がっていてある程度状態がわかるんです…でも今回はマスターが悪魔化してしまった影響でその回路が切れてしまって…魂がマスターの中にある事はわかるのですが…》

 

《ユウミは先の戦いでとてつもないダメージを受けました…肉体的にも、精神的にも…それが原因だと思うのです…》

 

アヤカもフレアも遊海を救う事ができず気落ちしているようだった…。

 

「遊海さんとの決戦の事はみんなから聞いたわ…まさか破壊神に浸食されていたなんて…しかも私が遊海さんに…」

 

「翠さん!遊海先生は自分で言ってたんだ『全部自分の責任だ』って…先生も翠さんもティエラに利用されただけなんだ!だから…!」

 

「ありがとう十代君…フフ、見た目もだけど心も成長したみたいね!」

そう言いながら翠は遊海のベッドの隣に座る…

 

「遊海さん…十代君が帰ってきましたよ!あとは遊海さんの目が覚めれば全員無事なんです!目を開けてくださいよ!…遊海さん!!」

翠は遊海の手を握りながらポロポロと涙を流していた…。

 

「翠さん…」

《クリクリ〜!》

 

「ハネクリボー?どうした?」

《クリクリクー!!》

 

姿を現したハネクリボーは何かの気配を感じたようだ

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

「はい…どうぞ!誰かしら?」

病室の扉がノックされる…すると…

 

『入るぞ翠、久しぶりだな!』

 

「かッ…か…!?」

 

「海馬さん!どうしたんですか!?」

 

『フン、遊海がまた倒れたと聞いてな移動の合間に見舞いにきたのだ!』

 

病室に現れた人物…それは海馬だった。

 

『まったく…伝説の決闘者といわれるお前が…情けないな遊海…!』

海馬は意識の無い遊海に話しかける…

 

『貴様は何度人に心配をかければ気が済むのだ!遊戯もお前の事を心配しているのだぞ!…早く目を覚まさんか…馬鹿者…!』

海馬は厳しくも遊海を心配した言葉を投げかける

 

『時間か…邪魔をしたな翠、オレはまた童実野町に帰らねばならん…最新の医療班も待機している、早くコイツを目覚めさせろ!』

 

「海馬さん…ありがとうございます…!」

 

『礼などいい…遊海が目覚めればそれでな、それから…遊城 十代!』

 

「は…はいッ!?」

海馬の気迫に呑まれていた十代は返事を返す

 

『鮫島校長から異世界での話は聞いた、暴走したと聞いたが…その様子なら大丈夫だな!異世界における活躍、見事だった!そのまま修行を積みオレや遊戯のような決闘者になるがいい!…さらばだ!』

 

そのまま海馬は去っていった…。

 

「あ、ありがとうございます!!」

十代は深く礼をしてそれを見送った…。

 

 

 

 

 

 

「あ、あれが海馬 瀬人…初めて近くであったけど…オーラが半端ない…!!」

 

海馬が去った病室では十代が座りこんでいた…海馬の放つ強者のオーラに当てられたようだ…

 

「フフフ、海馬君は昔からあんな感じよ?学生の頃から頑張って軍需産業の会社だった海馬コーポレーションを今のカードゲームの会社に変化させたの、自分の夢…世界中の子供達を笑顔にするために!」

 

「すごい…流石海馬社長…スケールがデカイなぁ…ん?」

 

「十代君?どうしたの?」

 

「いや…遊海先生のデッキケースが光った気がして…」

 

「デッキが?」

翠はハンガーに掛けてある遊海のデッキケースを手に取る

 

「これが遊海先生のデッキケース…何個デッキが入るんだ…?」

 

「大体10個くらいかしら…遊海さんはどんな相手にも対応できるようにたくさんのデッキを持っているの…」

 

「三沢みたいだな先生…」

 

「十代君どの辺りだった?」

 

「えっと…左側の2つ目…かな…?」

 

「ここね…あらっ?」

 

「どうしたんですか?」

 

「小さな封筒が…中に何が…?」

デッキケースの中には小さな古ぼけた白い封筒が入っていた…翠は中身を取り出した。

 

 

 

「…ひでぇ…破かれたカードだ…遊海先生がこんな事を…?」

封筒に入っていたのはバラバラに破かれたカードだった

 

「このカード…まさか!」

翠はカードの破片をテーブルの上に並べ始める…そして自分のデッキから1枚のカードを取り出す

 

「…やっぱり…このカードは…あの時の…!」

 

「これ…『メガロック・ドラゴン』?翠さん…知ってるのか?」

 

「ええ…幼い頃の私と遊海さんが別れる時に渡してくれた『約束のカード』…昔に破かれたって言ってたけど…大事に持っててくれたんだ…」

 

「遊海先生と翠さんを繋いだカードかぁ…でもそんなカードを破くなんて…許せねぇ…!」

十代は拳を握りしめる…

 

「遊海さんの今の切り札はアヤカちゃんなんだけど、私が出会った時はこのカードが切り札だったの…懐かしいな〜…あれ?…カードが…!」

翠が自分のメガロック・ドラゴンを見ると弱々しい光を放っている…

 

「おかしいな…このカードには精霊は宿って無いはずなのに…?ハッ!?まさか遊海さんの中で何かあったんじゃ!?」

 

「翠さん!もしかしてそれ先生からのSOS…!?」

 

「かもしれないわ…!アヤカちゃん!『千年玉』は使える!?」

 

《はい!使えます!》

 

「私を遊海さんの心の中に連れて行って!」

 

「翠さん!俺も連れて行ってくれ!遊海先生がピンチなら助けになりたいんだ!」 

 

「…わかったわ、でも気をつけて人の心の中には何があるかわからないから…!」

 

「わかった!」

 

《翠殿、拙者もお供します!主を救う手助けが出来るかもしれない!》

 

「ありがとうトフェニさん!…アヤカちゃん!お願い!」

 

《了解です!…千年玉起動…マスターの精神世界への同調開始…アンサモンプログラム起動…精神ダイブ…実行!》

 

アヤカが強い光を放つ…そして翠と十代の意識は遊海の精神世界へと吸い込まれていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!?落ちる〜!?」

 

「十代君大丈夫!心の中心に吸い込まれてるだけだから!」

 

翠と十代はトンネルのような空間をひたすらに落ち続けていた…

 

「翠さん!これどこまで落ちていくんだ〜!?」

 

「わからないわ!でも…あの光まで行けば!」

翠達の足元には小さな光があった、あれが出口なのだろう…

 

「十代君!しっかりと意識を保って!遊海さんの意識に呑まれないように!」

 

「わかった!」

 

そして翠達は光の中に落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光を通り抜けた3人はゆっくりと地面に降り立つ…そこは真っ暗な空間だった…

 

「着いた…でもおかしいわ…?心の部屋がこんなに暗いなんて…?」

 

「ここが遊海先生の心の中…でも何も見えない…」

 

「トフェニさん、周りを照らせる?」

 

《御意!太陽神の加護をここに!》

トフェニの魔法陣から光の玉が飛び出し周囲を照らしていく…

 

「これは…」

 

「酷すぎる…どうして…!」

 

照らされた空間は…破壊された心の部屋だった、そこにあったであろう家具は砕け内装もボロボロになっている…

 

「まるで嵐が直撃したような荒らされ方だ…それに、遊海先生がいない…」

 

「ええ…本来ならこの場所に遊海さんはいるはずなんだけど…」

 

心の部屋には人気が無く静まりかえっている…

 

「翠さん!奥にドアがある!」

 

「…行ってみましょう!」

2人は足元に気をつけながら部屋を進みドアを開いた…

 

「階段?」

 

「階段ね…たぶん心の深層…魂の近くまで続いているはずよ…」

 

ドアの先はひたすらに続く螺旋階段だった…下は見えず無限に続いているように見える…

 

「行ってみましょう…ここに遊海さんがいないって事は深い所にいるはずだから…!」

 

「わかった!行こう翠さん!」

 

そして3人は階段を降り始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

ひたすらに階段を降り続けて30分?程が経った…風景が変わる事無く続いていたが…一つの変化が訪れる…白い靄が目の前に現れたのだ。

 

「こんな場所に霧…?」

 

「十代君…一応手を繋ぎましょう、何があるかわからないわ…!」

 

「…わかった」

十代は少し躊躇しながら翠と手を繋ぎ霧の中に足を踏み入れた…その時!

 

「っつ!?なんだ…!?」

 

「何かが…流れ込んでくる…!」

 

《翠殿!十代殿!どうしたのだ!?》

 

2人の頭の中に何かが入り込む感覚が襲いかかる…そして2人の意識は暗転する…

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

『バトルだ!「暗黒騎士ガイア」で裏守備モンスターを攻撃!』

 

「リバース効果発動!『メタモルポット』!」

 

2人が気がつくとそこは公園のテーブルだった…そこでは小学生くらいの少年達がデュエルをしていた…

 

ーこれは…もしかして、遊海さんの記憶…?ー

翠は一目で気づいた、目の前でメタモルポットを使った少年…それが遊海…否、優介であると…

 

「おれのターン!墓地の岩石族10体を除外して…来い!攻撃力7000の『メガロック・ドラゴン』!!」

 

『なっ!?マジで!?』

 

「『暗黒騎士ガイア』を攻撃だ〜!」

 

『ああ…負けちゃった…』

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

 

ーえっ!?俺のセリフ!?遊海先生がどうして…?ー

 

 

「ねぇ!お兄ちゃん達何やってるの?」

デュエルをしていた2人に1人の少女が話かける

 

「ん?カードゲーム…遊戯王だよ!」

 

『お前も興味あるの?』

 

「うん!この石みたいなのかっこいい!」

 

「おっ!コイツの良さがわかるか!じゃあおれが教えてやるよ!」

 

「ありがとう!」

 

「君の名前は?」

 

「わたしは春美!」

 

「おれは優介!よろしくな!」 

 

 

そして再び暗転する…

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

「バトル!『究極宝玉神レインボー・ドラゴン』で『メガロックドラゴン』を攻撃!効果で攻撃力を4000ポイント上げて攻撃力7000の『メガロック』を倒すよ!」

 

「あっちゃ〜負けた〜!」

 

「勝った!」

 

「強くなったな~春美」

 

「ううん、優介兄が教えてくれたからだよ!」

 

「そっか…、ねぇ話があるんだ…」

 

「どうしたの?」

 

「おれ、明後日引っ越すんだ…」

 

「嘘!?」

 

「本当…、だから二人で決闘するのもこれで最後!」

 

「そんな…、寂しいよ優介兄…!」

 

「…よし!ならお前にこれをあげる!」

 

そう言って遊海はメガロック・ドラゴンのカードを渡す

 

「えっこれってお兄ちゃんのお気にいりの!?」

 

「うん、そうだよ!でも大丈夫そのうち返して貰うから!」

 

「?」

 

「おれ引っ越すの同じ東京の中なんだ、だからお互いに大きくなったらどこかのカードショップで会えるかも知れない…だからそれまで預かってくれるか?」

 

「うん!わかった!」

 

「じゃあ指切りだ!」

 

「『指切りげんまん~…』」

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《翠殿!十代殿!大丈夫か!?》

 

「はっ…!?今のは…」

 

「転生前の遊海さんの記憶…」

2人の意識が戻ると階段を一段降りたところで立ち止まっていた…白い靄は消えている。

 

「…あれが遊海先生と翠さんの出会いなのか?」

 

「ええ、公園で楽しそうに遊んでいたあの人を見て一目惚れだったの…私の初恋だったわ…」

 

「そうだったんだ…というか翠さん『レインボー・ドラゴン』使ってたような…!?」

 

「…私達のいた世界では『レインボードラゴン』や『ネオス』はありふれたカードだったの…たくさんの種類のカードがこの世界より安く手に入る…そんな世界だったの…!」

 

「そんな羨ましい世界があるんだ…!いいな〜!」

 

「でもデュエルディスクも無いし…ソリッドビジョンシステムも無かった、テーブルデュエルが一般的な世界だったの」

 

「それは…少しつまらないかな…」

 

「十代君、先を急ぎましょう…遊海さんの記憶が見えたっていう事は居場所に近づいてるって事だと思うから…」

 

「はい!行きましょう!」

 

再び3人は階段を降り始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして階段を降り続けると再び霧が現れる…その色は黄色だった…。

 

 

「また霧が…」

 

「これも遊海さんの記憶みたいね…気をつけて行きましょう…!」

 

「はい…!」

そして2人は霧の中へと踏み込んだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「やめてよ…!本を返して!」

 

「返すかよ!根暗女!こんな本ばっかり読みやがって!」

場面は中学らしいところへ移る、そこでは1人の少女が数人の男子にいじめられていた…そこに…

 

『やめろよお前ら!そんな事して楽しいのか!』

 

「ケッ…チクリ魔の優介か…ほら!返してやるよ!じゃあな!」

男子達は少女に本を返すと立ち去っていった…

 

「あ、ありがとう…どうして…?」  

 

『女の子をいじめる奴が許せなかった…それだけだよ』

 

「ありがとう…」

 

 

ー遊海さん…昔から優しかったんだ…ー

 

ー昔から人助けが好きな人だったんだな…ー

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

『…』

場面が変わると優介は廊下を歩いていた…そして階段に行き当たる…と

 

「…!」ドン

 

『うあっ!?』

 

ーあっ!?ー

 

ドンガラガシャーン

 

いじめっ子が優介にわざと当たり、階段へと突き落とした!優介は階段を転げ落ち呻き声を上げる…

 

『うぐぅ…!誰だよ…!俺を突き落としたのは…!』

 

「あっ、わりぃわりぃ!躓いちまった!」 

 

『次は気をつけてくれよ…!アイタタタ…』

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

場面が変わると体育の授業…プールの場面だった…

 

『はっ…はっ…!』バチャバチャ

優介はクロールで泳ぎ続けている…と

 

「ニヤッ…えい!!」

 

『ガッ…ゴバガッ!!?』

 

前を泳いでいたいじめっ子が優介の頭を蹴飛ばし水中へと沈める…そして優介を抑え込んだ!

 

『ガッ…ゴボボ…!!』

 

「コラッ!そこ!何やってる!!」

 

「すいません!足が彼の水泳帽に引っかかっちゃって!」

 

「何!?優介!大丈夫か!!」

 

『…』

優介は水を飲んでしまい気絶していた…

 

「いかん!」

 

その後救命処置を受けた優介は病院へと運ばれた…

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

「聞いたかよ…アイツ水泳の授業で溺れたんだってよ!」

 

「聞いた!体育の先生にキスされたんだろ?気持ちわりぃ…!」

 

「おい!アイツが来たぜ!」

 

 

『…おはよう!』

 

「近づくなよ〜先生にキスされた優介菌が移るから〜!」

 

『なっ…そもそもそれはお前が俺を蹴ったから…!』

 

「うっせえんだよ!近寄るな!バイ菌!」

 

『バイ菌だとこのやろう!』ガシッ

優介はいじめっ子の襟を掴む

 

「うわぁ〜!誰か助けてくれー!優介に殴られる〜!!」

 

「コラッ!何やってる!」

 

『先生!コイツが!』

 

「優介!暴力はダメだと言っただろう!」パチーンッ

 

『あっ…』

担任らしき先生は遊海を平手打ちする…

 

「ほら優介!謝りなさい!」  

 

『えっ…あっ…』

 

「謝れ!!」

 

『…ごめんなさい…』

 

「…!」ニヤニヤ

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ひでえ…遊海先生辛そうだった…」

 

「遊海さん…どうしてあなただけ辛い目に…」

 

《…今の記憶は拙者にも見えました…主をいじめていた者共…許せん…!!》

トフェニは拳を握りしめる…いつも明るく振る舞っていた遊海の闇…それを目の当たりにしたからだ…

 

「…先に進みましょう…」

 

再び3人は階段を降り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を進む3人の前に再び霧が現れる…その色は赤色だった…

 

 

「翠さん…嫌な予感しかしないんだけど…」

 

「それでも進むしかないわ…!行きましょう!」

 

3人は再び霧へと足を踏み入れた…

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

『…これは俺じゃない…これは俺じゃない…』

 

優介は自分の部屋らしきところで頭を抱えていた、顔には出さないが身体は傷だらけになっている…

 

『アイツらにも人の良いところはあるはずだ…だから…まだ…!』

優介は1枚のカードを持って自分の怒りを抑え込んでいるようだった…

 

『…あの子は元気かな…?また逢えるといいな…』

そのカードはメガロック・ドラゴンだった…

 

『力を貸してくれ…メガロック…!』

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「おい優介!金寄越せよ!」

 

「おい!このオタク!」

 

「なんでお前みたいに弱い奴が遊戯王やってるんだ?」

 

「シャーペンなんていらないだろ?貰ってやるよ!」

 

『やめて!返してくれよ!』

 

この頃には優介に対するいじめは悪化しカツアゲまでされるようになっていた…そして

 

『やめてくれよ!俺は…!』

 

「うるせぇ!口ごたえするな!」バキッ

 

『ガッ!?』パサッ

優介は殴られ生徒手帳が床に落ちる

 

「生徒手帳か…どれどれ…あっ!コイツカード持ってきてやがる!」

 

「『メガロック・ドラゴン』…使いにくい雑魚カードじゃないか?」

 

「こんなカードいらねーな…!」

 

『や、ヤメ…!』

 

びりびり!ビリッ!

 

『あっ…』

 

「「ギャハハハハ!」」

 

 

『あ…アアア!!!』

 

(優介…怒りを開放しろ!我が殺る!!)

 

『グッ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』

 

「なんだよコイツ!?いきな…うわぁ〜!!!」

 

その日優介は初めて本気で人を殴った…それは蹂躙とも言えるもので周囲は血に染まっていた…

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

「優介!なんであんな事をしたの…!」

 

『…』

 

「優介!なんとか言いなさい!」

 

『いじめられてた…我慢できなかった…!自分を抑えられなかった…!!』

 

「優介…でもそれは友達を殴る…傷つける理由にはならないわ!なんでお母さん達に相談しなかったの!」

 

『…先生にも信じて貰えなかった…だから…!』

 

「優介…」

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…こんな心の傷を抱えて…私…知らなかった…だからドーマの時…!」

 

『やめろ!!やめてくれ!俺に悪意を向けないでくれ!…頼むから…やめてくれ!』

 

 

「翠さん…俺は遊海先生の過去を見ても何も言えない…でも先生はこれを乗り越えて今の先生になったんだよな…」

 

「ええ…」

 

「やっぱり遊海先生はすげぇよ…!」

 

「…ありがとう十代君…さぁ…進みましょう…」 

 

遊海の闇を目の当たりにした翠達は再び階段を降りる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…また霧が…今度は…普通に白?」

 

「…たぶんそろそろ着くのね…行きましょう…!」

 

《御意》

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

場面は変わり高校生になった優介がいた…そして…

 

 

 

『バトル!「スターダスト・ドラゴン」でダイレクトアタック!』

 

『なんの!「リビングデッドの呼び声」!蘇れ『レッドデーモンズ・ドラゴン』!』

 

 

「…ねぇ…」

 

『ん?ああ優介か!どうしたんだ?』

 

「弱いんだけど俺も遊戯王やってるんだ…俺も仲間に入れてくれないか?」

 

『いいぜ!仲間が多い方が楽しいからな!よろしくな優介!!』

 

「うん…!!」

 

ー遊海さんよかった…ちゃんと仲間を見つけられたんだ…!ー

 

ーこれが先生の新しい出発だったんだ…ー

 

そして場面は目まぐるしく変わっていく…新たな仲間と共に青春を取り戻し楽しい学生生活を過ごす遊海の姿…そして…卒業した遊海は引越しのアルバイトを始める…。

 

 

「優介先輩!冷蔵庫お願いします!」

 

『OK!いくぞ!せーの!』

 

 

『しかし…なんでこの建物エレベーターがないんだ…?』

 

「そういう事もありますよ!ラスト一階行きましょう!」

 

『よっしゃ!いくぞ!…落とすなよ?』

 

「はい!…せーの…ヨイショ…よっしょ…よっしょ…あっ!?紐が!」

 

『なっ!?何して!うわあああああ!!?』

ドンガラガシャーン!ザクッ!グシャ…

 

 

 

『なんだよ…この映画みたいな…死に…かた…』

 

 

 

 

 

ジジッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊海先生…ドンマイすぎる最期だったんだな…痛そう…」

 

「まぁ神様のせいだから…あっ出口が見えた!」

 

「本当だ!行こう!」

翠達は階段の出口へと辿り着いた…そして…

 

 

 

「うわ〜…すげぇデカイ扉が…」

 

「本当…こんなの初めて見たわ…」

 

辿り着いた先は広場だった…先の壁には人の10倍程の大きさの扉がある…

 

「あの先に遊海先生が!」

 

《待て!十代殿!何かいる!》

トフェニが前に出る…すると…

 

『…反応がひどいな…まったく…敵ではねぇよ…』

そこには黒いキャップと黒いジャケットを着た遊海の姿があった…。


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