せっかくですので高校時代の黒歴史を晒していきたいと思います。
黒歴史を晒していく勇気もとい無謀で滑稽な物語をどうぞご堪能して下さい。
プロローグ
大きな岩をひたすら運ぶ夢を見た。
老人に指定された場所へ岩を運び、戻るとまた岩が復活していて同じ頼みをされる。
俺はそれを断ることが出来ずただただ岩を運び続ける夢だ。
永遠とそれが続き心身ともに疲労困憊になったところで覚めたのが16歳の誕生日の朝である。
変な悪夢を見たものの、天気も良く今日もすがすがしい朝を迎えられるに違いない。
どこまでも続く青空の中、二度寝するにはもったいないと思うのは健康な証である。
鳥のさえずりが俺を祝福してくれているようにも感じる良い誕生日のスタートだと気を取り直しておこう。
俺はベッドから体を起こし、母さんに朝食を作ってもらい気分よく朝の散歩にでも出掛けるつもりだった。
「今日はとても大切な日。アルスが王様に旅立ちの許しをいただく日でしょ?」
母さんの言葉に前言撤回。
今日は最悪のスタートだ。
俺の親父であるオルテガはここ『アリアハン』の勇者で、魔王『バラモス』を倒しに出かけたけどなぜか火山で行方不明になったらしい。
そこで息子の俺の出番って訳だ。
当時幼かった俺を旅に出しては不味いと倫理的道徳的な判断を王がしてくれたおかげで、俺はのんびりと過ごせていた訳だが、そういえば16歳になったら旅に出そうとか何とか母さんと笑いながら話していた気がする。
こんな事なら普通の家に生まれて『アリアハン』に来る旅人に「ここは『アリアハン』城下町です」と言い続ける人生の方がずっと気が楽だ。
ごめん、やっぱりそれ退屈だわ。
じいちゃんに助けを求めようとアイコンタクトを送ってみたけど「お前の父親オルテガはりっぱな勇者じゃった。このじいの息子じゃ!」なんてくだりから始まる親父の武勇伝を自分のことみたいに自慢し始めた。
そして俺は母さんに強引に連れられて王に頭を下げて要らない旅立ちの許可をもらった訳だが、王に自分の強さを数値化してもらうと性格が【くろうにん】になっていた。
きっとこの苦労は朝の夢から始まったに違いない。
「ちくしょぉぉぉぉぉぉ~。どうせなら【セクシーギャル】になりたかったっ!」
「あんたギャルって女だから」
ボケをすると期待通り後ろから即座に突込みが返ってきてくれた。
「それとその格好で騒いでるとどう見てもただの不審者なんだけどねぇー、自称勇者君」
「そう言うお前は顔なじみで城の科学者の娘のヒンヌーじゃないか」
笑顔で挨拶を返すと無言でグーパンチされた。
この胸をえらく気にしてる奴はアリシア。
俺の幼馴染で、このように冗談をパンチで返す良き友人だ。
「先に勇者扱いしたのはお前だろっ。それにこの格好だって親父が旅立った格好で俺に選択の余地は無かった! こちとらマントが邪魔で歩きにくいんでぃ!」
「はぃはぃごめんなさいねぇー」
全然謝る気の無い人をからかうような返事は今日も変わらずである。
「まあ、それはともかくとして誕生日おめでとう」
「ありがとよ。普通に誕生日を祝ってくれるのはお前らだけだ」
他の街の奴らは祝勇者誕生だ。
なんだか泣けてくる。
後二人幼馴染で教会の孤児ティナと道具屋の一人娘ニーナがいるが、まだ姿をみせないということは誕生パーティーの準備でもしてるのだろう。
そういう良い奴らだ。
「はぁ……このハーレム状態も今日でおさらばか」
「そうそう。だから最後の晩餐は派手に盛り上がろう」
「人事だと思って」
「だって人事だもん」
本当に嬉しそうにものを言ってくれる。
「で、ルイーダの店で一緒に旅をしてくれる人は見つかったわけ?」
「それがな。旅の最中もハーレムにしたくて女性を募集してみたわけさ」
「あー、もうあんたの性格【むっつりスケベ】でよくない?」
「まあ聞けって」
話の本題はここからだ。
「考えたら当たり前だったんだけど鎖国状態のこの国に旅人なんているかっつうの。妥協して普通に戦える人を探してみたけど誰もいないって訳さ」
いるのはどう見ても戦士から転職したと思われる筋肉質な遊び人3人だけで、関わるとひどい目に合いそうだったから目が合わないように逃げ出して今に至るわけだ。
「苦労してるわね、あんたも」
「まあ【くろうにん】だしな」
これは一人で旅立って一人でバラモス倒して帰ってこいってことだろうか。
なんていうか親父と同じ結末になりそうで嫌だな。
「そっか……じゃあちょっと待ってて。みんな呼んでくるから♪」
俺が落ち込んでいる中、嬉しそうにアリシアが道具屋の方に駆け込んでいった。
待ち時間が暇だったのでオカリナを奏でるとしよう。
誰かがハーモニカは青臭くて哀愁漂っていてダメだというからオカリナだ。
「オカリナなら楽しい曲だってCユニットの上下左右で簡単にできてしまうのだ!」
どこかの森で流れそうな曲を吹いて吹いて吹きまくる。
馬が来そうな曲も吹いて吹いて吹きまくる。
子守唄も吹いて吹いて吹きまくる。
「何涙流しながしてんのよ、あんたは」
戻ってきたアリシアに早速突っ込まれた。
いつの間にかポロリと目から汗が出ていたらしい。
「やっぱり子守唄はダメだな。この曲調はダメなんだ。汗がとまらねぇ」
「あんたはも~何やってんだか」
アリシアが呆れたように溜息をついた。
「アルス君アルス君アルスく~ん!」
道具屋の方からニーナがいつも通り元気に叫びながら走ってきた。
「お誕生日おめでとう。いやーお誕生日に勇者になるなんてさすがアルス君だね。有名になったらサインとか頂戴。そうすればそのサインを売って私はもうハッピーハッピー! あ、そうそうこれお誕生日プレゼントだから受け取ってね!」
「相変わらず元気な奴だな。お前一人の元気を集めれば魔人を倒せそうだぞ」
「やだなぁやだなぁ。私の元気集めればそりゃあもう邪悪龍も一撃だって♪」
それは恐ろしいくらい元気だ。
ニーナからのプレゼントを見てみるとそれは『くじけぬ心』だった。
俺はもう『くろうにん』なんですけど。
「アルス。お誕生日おめでとう。またアルスの方が1個年上だね」
そんな元気の塊の後ろでティナが嬉しそうに笑っている。
「えっとね、アルスはお昼まだだよね?」
「それどころか朝も抜きだ」
起きたらすぐに城に連行されたからまだ何も口にしていない。
今も俺の腹が物干しそうにギュルギュルと悲鳴を上げている。
「本当だ。アルス君のお腹が「ぐごごごご、誰だ我が眠りを妨げる者は」って言ってるよ。7ターン以内にアルス君のお腹を満たすことができるのか~!」
「ニーナ、それはどこの隠しボスよ」
アリシアが軽く苦笑して突っ込みを入れる。
まあここまではいつも通りの馴染みある会話だ。
ただ一つだけいつもと違うところがある。
「で、お前らのその格好はなんのコスプレだよ」
変な格好をしている俺が言うのもなんだが彼女達はかなり変な格好をしている。
「まずニーナ。その格好は何だ」
「何って商人に決まってるじゃん。私道具屋の娘だよ。魔法使いや戦士や僧侶なんて似合わないって」
まあニーナの格好はまだマシな方だ。
「ティナ、その格好は何だ」
「僧侶だよ」
笑顔で答えてくれた。
確かにティナは教会で育ったから問題ないと言えば問題ないが。
「お前回復魔法できたか?」
「できないよ」
当然のように笑顔で答えてくれる。
【ホイミ】の使えない僧侶なんて誰も望まないと思うのは俺だけじゃないよな、うん。
俺って普通だよな。
「……最後にアリシアは魔法使いのコスプレだが」
「コスプレじゃない。これでもちゃんと【メラ】くらいなら使えるんだから」
らしい。
でも問題はそこじゃない。
「だとしてもその衣装はヒンヌーに似合わないからやめておけ」
「だから貧乳って言うな!」
「ぐふ」
また殴り飛ばされた。
いい一撃だ、正直武道家のほうが向いてると思う。
ティナが「大丈夫!?」と慌てて駆け寄ってくるけど【ホイミ】はこないので自分でかけておくとしよう。
「まったく、せっかく人が心配してついて行ってあげようかって思ったのに……ことあるごとに貧乳貧乳って……このセクハラ男!」
「いや俺は一友人としてのアドバイスをだな。だから親しみをこめてヒンヌーという言葉に……」
「どっちも同じよっ」
また拳が俺の顔にめり込んだ。
「アリシアちゃん落ち着いて」
「ティナはこいつに甘すぎるのよ」
「そんなことよりご飯食べようよ。私のお腹は既に15ターン経ってるから倒しても威張れないし戦利品ももらえないぞー。ぶーぶー」
幼馴染3人と旅ができるのは気楽で良いけどなんていうか先が思いやられる。
誕生日に魔王狩りに借り出されて幼馴染3人に捕まった。
と言うわけで、これが俺の旅立ちの1ページ目だ。
武道家向きの魔法使いアリシア。
【ホイミ】の使えない自称僧侶のティナ。
ただの道具屋の娘ニーナ。
俺ってばなんて苦労人なんだ。
だけど魔王を倒した後、伝説になったらそれっぽく書かれているんだろうな。
なんだかやるせねー。
このようにメタとネタが多い作品ですが、少しでも楽しんで下さる方がいれば幸いです。