プロローグ
ロマリア王に挨拶しに行くといきなり王冠を取り戻してくれなんて頼まれた。
勇者の知名度を上げるのにもってこいだけど、自称勇者の男に王冠まかせていいもんかねぇ……いや、マジで。
そこの辺りの事は考えているみたいで王国の騎士一人同行してくるらしい。
「ロマリア王国騎士団長のマリアだ」
女戦士だったのは驚きだ。
始めはハーレムパーティーで行こうなんて馬鹿なことを言っていたけど、これ以上増えてもしょうがない。
いや、可愛くないとか美人じゃないとかそういうんじゃない。
マリアさんは戦士にしておくのはもったいないくらい綺麗だ。
長く綺麗な髪に整った顔立ちで美人でありながら気品を感じさせるカッコ良さがある。
アネゴって言葉がよく似合いそうな人だ。
ただ胸がアリシアといい勝負なのが少し残念か。
「どこを見ているんだ、君は」
「胸」
つい答えてしまった。
後ろからアリシアにかかと落としされた。
ロマリア王の前ではしたない奴め。
「まったく君という男は姿だけではなく中身までオルテガ殿にそっくりだな」
マリアさんはからかうようにそう笑っていた。
どうやら俺は泳いで大陸を渡った馬鹿親父と同類らしい。
かなりショックだ。
親父と何かあったのか俺だけ名前ではなく隊長と呼べと言ってきた。
ロマリア騎士団の隊長らしい。
若いのに隊長とはこれは即戦力……というかこのメンバーだと主力だ。
え、メンバー超えるって?
……いいんだよ、指揮しきれれば。
とりあえずまずは武器防具だ。
俺用に『鎖帷子』と『青銅の盾』、ニーナに『鉄の前掛け』。
とりあえず前衛の防御を上げておく。
どうせ後衛に行く攻撃は全部俺に行くことになるんだから。
マリアさん……いや、隊長って呼ばないとダメなんだっけ。
さすが隊長というだけあって装備が『鋼の剣』と『マジカルスカート』と豪華だ。
『マジカルスカート』にいたってはロングコートに改良されていて下には普段着。
ついでに長ズボン。
女戦士にあるまじき露出度の低さだ。
手袋もしているので露出しているのは首から上だけではないか。
多分露出が低いのは女ではなく自分は騎士だというこだわりだろう。
「アルス君アルス君アルスく~ん。盗賊ガンダダって人は『シャンパーニの塔』をアジトにしてるんだって」
さすが商人の娘でニーナは情報を仕入れるのが上手い。
きっと買い物ついでに色々ききまわったのだろう。
「長旅になるかもしれないから食料品確保しておいたよ」
ティナも気がきいている。
さらに朝に昼食べる弁当をこしらえていたみたいだから、冒険しながらまったりできそうだ。
アリシアの姿が見えないけどまあ一応女の子だ。
街で見て回りたいものは一杯あるだろう。
集合時間までまってやるか。
と、噂をすればなんとやらか。
「ごめん皆。待った?」
走ってきたのかアリシアは息を切らしていた。
もっとゆっくりしていてもいいのにな。
「うむ、なかなか良いチームだ」
隊長は手際のよさをほめているのかご機嫌そうに笑っている。
効率よく事が進むのが好きな人なのだろうか。
まあ一緒に旅をすれば隊長がどんな性格なのかすぐに分かるだろう。
という訳で今日は『ロマリア』から『カザーブ』まで行くのが目標だ。
「『軍隊ガニ』は【ギラ】で牽制、『アニマルゾンビ』と『ポイズントード』は優先的に倒すように。【ボミオス】と毒はうざい!」
アリシアが【ギラ】は使えても【ヒャド】が使えない問題児だが戦闘は順調だ。
俺から皆への指示も間に合ってるし、新戦力隊長の戦闘力は攻撃力だけなら俺以上。
攻撃の見切りも上手いし攻撃も回避も無駄がない。
ただ遅いのが難点だ。
いや、突進力と反射神経はあるのだがスタミナ配分がしっかりしている分無理な動きをしない。
ゆえに攻撃する間合いに入るまでに時間がかかる。
「私という人間がどういうものか少しは分かったかな、少年」
さらに彼女を分析しているつもりが逆に分析されているような気がする。
戦闘中にたまに振り返っては俺をからかうように笑ってくる。
掴みにくい人だ。
まあこれだけならミステリアスファイターとして優遇していたさ。
「姉御姉御~。私のハンバーグ上げますヨ」
ニーナがなついてるのは、まあ分からなくもない。どんな奴にもなつく奴だ。
「マリアさん、お茶いかがですか?」
ティナも誰にでも優しい。いつものことだ。
「マリアさん。今の戦いだけど私の立ち回り方どうだったかな?」
アリシアまで既に飼いならされて、ビニールシートのお弁当タイムで俺が端に追いやられているのは何故だ。
たまにティナが気を使ってお茶をくれたり話しかけてくれたりしてくれるだけで、俺は黙々と弁当を食べているだけだ。
弾んでいる話は皆向こう。
隊長がそんな寂しげな俺を見て「ふっ」と皆には気付かれない程度に不適に笑った。
まさかあいつは、俺の花の楽園(苦労の方が多いが)を乗っ取る気なのか!?
このままだと俺はいずれルイーダの店に追いやられてしまうかもしれない。
そして新聞で勇者一向魔王『バラモス』を倒すなんて記事を見ながら膝を突くかもしれない。
とにかく今の内に考察を冒険の書にまとめておこう。
戦闘能力は高め。
俺より劣る筋肉を踏み込みと体の捻りで完全にカバーしている。
スタミナ配分のためか間合いに入るまでの移動は遅めで間合いに入った瞬間に神業的な剣技を披露してくれる。
性格は【おとこまさり】とステータスには出ているがそれと同時に“きれもの”のふしあり。
掴みにくくまだ何も分かっていない。
親父のことを知っているらしいがそれも不明。
髪はロングで割りと俺好み。
胸はアリシア並み。
身長は割りと高め。
皆と打ち解けてくれるのは嬉しいが、俺の居場所を奪って楽しんでいるふしあり。
というか絶対楽しんでる。
だが憶測だけで物事を判断するのはあまりよくない。
彼女、マリアについての考察はまだこんなものだ。
休憩も終わったしここらで止めにしておこう。
ドラクエの女戦士にあるまじきロングコートの女騎士登場。
皆のアネゴポジションですが、まだまだアルスの【くろうにん】は続きます。