【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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今度は道中あるあるなキラービー先生のご登場。


第二話「意外なところの強敵」

 『銅の剣』だとさすがに『さまよう鎧』にあまりダメージ与えられないなと考えながら戦っていたら『キラービー』に刺されていた。

 

 ああ、もちもん麻痺したとも。

 【くろうにん】だしそんな気はしていた。

 

「おやおや、少年はそんなところでおねんねかな」

 隊長が俺の顔を覗き込んでにやにや笑っている。

 ちなみに『満月草』を持っているのは俺と隊長だけだ。

 

 

 ティナは持たせない方が速く【キアリク】を覚えてくれると思って持たせてない。

 だから断じて渡し忘れたなんてことはないぞ、断じてな。

 

 

「ほうそうか。少年は私の手厚い介護がほしいか。ほらほしいと言え。お姉さんは素直な子が好きだぞ」

 だから唯一俺を回復できる隊長がここぞとばかりに俺をからかってくる。

 

 動けないと思ってコンチクショウ。

 頭なでるな。俺の頭を膝に乗せるな。嬉しいじゃないかコンチクショウ。

 

「はっはっは。そう照れるな。今『満月草』をやるからな。ほらあーんだ。あーん」

 

 俺の口に『満月草』が近付く。が、すぐにその手が止まる。

 こいつはまだ俺のことをからかうつもりか。

 

「すまない少年。少々からかうのに夢中になりすぎたようだ」

 『キラービー』の針がプスリと隊長を刺していた。

 こいつ、俺を治す前に麻痺しやがった。

 

「あんたら真面目に戦いなさいよっ。私まだ【ヒャド】使えないんだからっ!」

 アリシアが『さまよう鎧』をひきつけているから場が持っているが、アリシアと極端に相性が悪い。

 こっちは当たったら一撃、相手にはダメージを与えられないではそう長くはもたない。

 

「こないで~」

 ティナは『キラービー』に追いかけられて逃げ回っている。

 

「あははははー。アルス君姉御とラブラブだねー」

 ちなみにニーナは最初に麻痺して動けなくなった。

 つまり前衛全滅という最悪の状況だ。

 

 目の前……隊長の手に『満月草』があるのに届かないもどかしさ。

 

「少年よ。少しは動けるか?」

「……少し身体を捻ることと口くらいなら動くぞ」

 でもそれじゃあ『満月草』を使うことはできない。

「それで充分だ。幸いなことにお前の頭は私の膝の上。『満月草』は私の手の中だ。はっていけない距離ではなかろう」

「それはつまり隊長の身体を這って行く訳であって、ずいぶんと恥ずかしい行為だと思うのだがな」

「言うな……私だって今回の事は不覚だった」

 こんな筈ではなかったと隊長が苦悩していた。

 顔を反らし頬を僅かに染める隊長という素敵なシチュエーションだが、いざやるとなると男の俺も恥ずかしいものだ。

 

 

 

 やらなければ全滅だ。

 それだけは避けなければならない。

 とりあえず必死で身体を動かしてみる。

 

 

 

「んっ――――ぁ――――――」

 

 

 

 何か表現しにくい甘い声が出た。

 これは色々と不味い。

 今日の冒険の書は伏字が多くなりそうだ。

 勢いあまって押し倒す形になってしまった。

 

「少年、そこは胸だ」

「ないから気にするな」

「後で覚えてろ」

 

 色々と考えないように努力しよう。

 

「わー。これはもう心臓の鼓動が止まらないね。もうエロエロですね。アルス君は大胆にも顔をうずくめて――――――――――」

 

 モンスターよ、頼むから実況するニーナにトドメを刺してくれ。

 

「いちゃつくんならよそでやってよっ! あーもう! いらいらする!」

 

 アリシアの怒りが頂点に達してきたのか『さまよう鎧』のボディーが『ひのきの棒』でベコベコへこんできた。

 見なかったことにしておこう。

 

「こないで~」

 ティナはまだ追いかけられている。

 時間稼ぎにはなっているものの、冒険者の戦闘と呼べる光景とは程遠い。

 

 

 ようやく『満月草』を口でくわえることが出来た。

 すぐに隊長にも使って反撃開始。

 俺が憎き『キラービー』を殲滅して『さまよう鎧』を隊長が一刀両断した。

 そんな何とか全滅を避ける為に頑張った俺にアリシアが一言声をかけてくれる。

 

 

「変態」

 

 

 ちょっとアリシアには刺激の強すぎる光景になっていたみたいだ。

 だけど怒るなら隊長も怒ってほしい。

 もともと隊長の悪ふざけのせいだろ。

 

 その日は団結して盗賊を退治できそうな雰囲気ではなかったからそのまま『カサーブ』に帰還。

 その日アリシアは口を聞いてくれなかったし俺の部屋は一人部屋になった。

 まあ一人部屋の方が気を遣わずにすむから楽といえば楽なんだけど。

 

 久々に自由のみになった俺は一人孤独にヴァイオリンを弾きながらやはり宿から出て行くアリシアを窓越しから横目で見送ってこの日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書7―アルスの日記―

 塔に向かおうとしたら『キラービー』にしてやられた。

 それにしても隊長の身体は戦士というわりには服ごしの感触でも分かるくらい、とても柔らかかった。父さん、俺は一つ大人に近付いた気がするよ。しかし隊長もミスをするってことはやはり俺と同じ人間ということか。可愛いところを見れた気がする。

 いや、もしかするとこれすらも計画通りで俺と仲間達の絆を引き裂いて俺の花の楽園(苦労しかないが)を乗っ取るつもりなのだろうか。

 まあ久々の一人部屋だ。しばらくヴァイオリンにお世話になるとしよう。

 

 




麻痺攻撃をエロいと思ってしまうのは私だけではない筈(おい
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