【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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毎日夜遅くまで魔法の練習をするアリシアの話。


支えてあげたい彼方の為にNo.1アリシア

 許せなかった。

 新しく加わったマリアさんは強い。

 

 私が魔法ではなく打撃を選んでいたら、マリアさんみたいにアルスと肩を並べて戦えたかもしれないと考えるが、すぐにその考えを自分で否定する。

 無理だ。アルスには打撃で勝てない。

 

 それに私はいままでアルスと一緒に戦ってきたのに、マリアさんは影ながらアルスをサポートして息がぴったり合っている。

 あんなに息をぴったり合わせることなんて私には出来ない。

 やっぱり私には魔法しかない。

 だから私は夜特訓をするしかなかった。

 

 才能がないから努力で補うしかない。

 アルスが可愛いキーホルダーをくれたからきっと頑張れる。

 そう思っていたのに私では無理だった。

 

「何も出来なかった」

 

 今日の戦いは皆ピンチになっていた。

 私が皆を補助しきれなかった。

 火力で押し切る魔法使いが敵を倒せなかった。

 情けない。

 

 『ロマリア』で買った魔法の教科書を見ながら頑張っても、地面に置いたビンに【メラ】が当たるのは10発中3発だ。

 この命中率を何とかしないと新しい魔法を覚えてもみんなに当ててしまうかもしれない。

 

「このっ」

 

 何回撃っても当たらない。

 『いざないの洞窟』みたいにうまくいかない。

 いや、あれは偶然だったのかもしれない。

 ただ運がよくってアルスに当たらなかっただけなのかもしれない。

 

「当たってよ」

 

 マリアさんが嫌いな訳ではない。

 むしろ会ったばかりのアルスをあそこまでサポートできて、からかうこともできて、色々な意味で私の憧れだ。

 

「当たりなさいよ!」

 

 皆だってそうだ。

 少しでもアルスの役に立ちたくて、それができてカッコいいマリアさんを慕ってる。

 

 ニーナはこの大陸でも戦えている。

 ティナは【ホイミ】がある。

 私は命中率のない【メラ】と【ギラ】だけで、効かない敵には何もできない。

 

 

 アルスにむかついた訳じゃない。

 マリアさんに嫉妬したわけでもない。

 一番許せないのは私の無力さ。

 

「うぅ……なんで……」

 何もかもがうまくいかない。

 私の性格と同じで魔法もまっすぐ飛んでくれない。

 

 

 

 いつの間にか膝をついていた。

 

 

 

「アリシアちゃん、少し休憩にしよ」

 ティナがいつのまにか居た。

 情けない姿を見られてしまった。

 

 もしも来たら意地を張って追っ払おうかと思っていたのに、笑顔が、温かすぎて、泣いていた。

 

 私に優しくしないで。

 惨めな私なんか放っておいて。

 私なんか居てもいなくても同じだ。

 私の居ない4人パーティーでも今と変わらずに戦っていける。

 

「私もね。役に立てなくって。ほら、【ホイミ】しかできないのに【MP】ないし。それにキアラクだって使えないし」

 魔法の名前すら間違っている。

 でも私と同じ気持ちだと、思う。

 

「だから一緒に頑張ろうね」

 差し入れで持ってきてくれたココアが温かかった。

 

 

 泣き虫なティナの胸で泣いちゃったから、多分これから私は、泣いたらダメだと思う。

 何倍にもして返さないとダメだから、ティナが泣いちゃった時私も泣いていたらダメだから。

 だから私は皆が居る限りもう泣かない。

 そう決めた。

 

「あー。二人だけでココアなんてずるいー。ココアは私の大好物でもうそれはそれはココアと言ったら私むしろ私がココアな訳で、私にもよこせー」

 不意に後ろからニーナに抱きつかれた勢いで私とティナは一緒に倒れた。

 

 ニーナにも心配されていたらしい。

 いや、それどころかニーナも何かの特訓していたのか服が泥だらけだった。

 

「ああ、これねー。アルス君に秘密で『鉄の槍』買ったんだ。いいでしょいいでしょー。これでもー後はブラッティースクライドーとかニーベルンヴァレスティーンとか必殺技編み出せば完璧ですヨ」

 

 皆気持ちは同じだ。

 強くなりたい。

 アルスの力になりたい。

 悔しいけど私達が友達になれたきっかけはアルスだ。

 あいつがいなかったら私は……きっと一人だった。

 

 今日も夜空は綺麗で、倒れたままの私達は川の字で寝そべっていて、それを眺めている。

 

「あれ……」

 宿の方からヴァイオリンが聞こえてきた。初めに気づいたのは珍しく私だ。

 いや、私が最初に気付かなければいけない音色だ。

 アルスのギターがどういう思い出の品なのかは知らないけど、ヴァイオリンは知っている。

 

 確か恥ずかしいのを我慢して、アルスと出会った年のアルスの誕生日にプレゼントしたものだ。

 別の部屋にしたから私達が宿を抜け出した事に気付いていない筈だから、ただの偶然だと思うけど、プレゼントした時のあの気持ちが、勇気が少しだけ湧いてきた気がした。

 

 私は皆ともう少しだけ頑張っても、いいよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書7―アルスの日記―

 

 塔に向かおうとしたら『キラービー』にしてやられた。

 それにしても隊長の身体は戦士というわりには服ごしの感触でも分かるくらい、とても柔らかかった。父さん、俺は一つ大人に近付いた気がするよ。しかし隊長もミスをするってことはやはり俺と同じ人間ということか。可愛いところを見れた気がする。

 いや、もしかするとこれすらも計画通りで俺と仲間達の絆を引き裂いて俺の花の楽園(苦労しかないが)を乗っ取るつもりなのだろうか。

 まあ久々の一人部屋だ。しばらくヴァイオリンにお世話になるとしよう。

 

 ちょっと私達も見るんだから少しは内容をつつしんでよね#

ちゃららら~アルスの性格が【いのちしらず】になった♪

 また勝手に見てごめんね               ティナより

 

 




中々上手くいかず、それでも頑張り続けるアリシア。
皆ゆっくりですが大切な人の為に強くなっていくことでしょう。
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