朝起きたら性格が【命知らず】になっていた。
またティナよりと書かれていたから叱っておいた。
しかし皆眠そうだ。
皆一体いつまで外で騒いでいたのだろうか。
ちなみに俺はあの後ぐっすり寝たから絶好調だ。
『シャンパーニの塔』に無事たどり着き、難なく盗賊のリーダーカンダタを追い詰める。
うむ、絶好調だ。
「さあ王冠を返してもらおうか」
「貴様のものでもあるまい」
「なら勇者らしくいただいていくっ!」
俺がそう叫ぶと皆に白い目で見られた。
いや、テンション的に言いたくなるだろ今の台詞返されたら。
とにかく、さっさと王冠取り返しておくとしよう。
俺が大いなる一歩を踏み込むと見事に落とし穴にはまった。
それに続いてカンダタとその子分達が降りてくる。
多分落とし穴にはまったのが俺だけだったからこっちに逃げた方が安全だと思ったのだろう。
それを追って皆も降りてくる。
「ちくしょう。しつこい野郎だぜ」
逃げ切れないと判断したのかカンダタ達は勝負を仕掛けてきた。
カンダタとカンダタの子分が四人。
数は同じだ。
だが厄介なことに三角に取り囲まれた状態での戦闘。
俺がカンダタを押さえてる隙に一人ずつ何とか倒してもらおう。
カンダタは思った以上に強い。
正直【スクルト】が欲しい。
『青銅の盾』と『鎖帷子』、ティナの【ホイミ】のおかげで何とかもっているが長期戦は不利だ。
「【ギラ】」
アリシアのギラの命中率が上がっているが、このフォーメーションだと一人にしか攻撃できないのが痛い。
ニーナがいつ買ったのか『鉄の槍』を振り回して牽制してくれているおかげで、何とか俺の方には子分はこない。
まあ隊長が二人をひきつけてくれているのが一番大きいか。
そろそろ集中攻撃で一人ずつ倒してもらいたい。
女の子に手をあげるのが嫌なのかカンダタ一味は俺を狙ってくるようになってきている。
お前ら攻撃力高すぎだ。
3発目のホイミでティナは打ち止め。
それとほぼ同時にカンダタの子分一人が戦闘不能になった。
これで数は同じだが、俺もそろそろ戦闘不能だ。
薬草だと回復が間に合いそうにない。
「アルス!」
アリシアが何かする気だ。
声を掛けた、ということはあまり自身がない魔法だろう。
「何がきても避けてみせる」という気持ちをこめて頷いておく。
「【イオ】」
魔力のこもった小さな球体が4つほど手のひらから放たれ、それが小さな爆発を起こした。
俺はそれを上に飛び上がり回避してかすかな爆風は盾で防ぐ。
カンダタはまだ立っているが子分達はもう戦う力は残っていない。
「カンダタ」
俺の声にカンダタは俺を見上げた。
天井に足をつける。
爆発で一瞬周りが見えなくなった今がチャンスだった。
でも俺は声をかけた。
居場所を知らせた。
これが俺の放てる最後の攻撃だけど知らせた。
ただの盗賊とは違う強い力を持ったこの男に敬意を込めて。
「あんたは強かった」
足のばねで思いっきり天井を蹴る。
それに対してカンダタは笑っていた。
反撃ではなく回避という選択肢を選べば勝敗が変わるかもしれない。
それでもカンダタは斧をしっかりと握り締める。
攻撃が交差する。
俺の『青銅の盾』はカンダタの斧を弾き飛ばし、それでも勢いは止まらない。
止めて引き分けなんかにしたくない。
俺が強いと認めた男だ。
ここで決着をつける。
きっとこいつと同じ村に生まれていれば、いい友になれただろう。
――――――願わくばこの男と次は一対一の決闘を
カンダタは子分の為に命乞いをした。
恥をしのんで頭を下げている。
俺と同じで仲間の為ならなんだってする男だ。
俺だってそうする。
それが分かるのはきっと武器を合わせて戦った者同士と、敗北者の仲間達だけだ。
でも、それだけで充分だ。
王冠は取り戻したんだ。
なによりもこの男の命が惜しい。
俺はカンダタを許した。
今日はカンダタと勝負をして王冠を取り戻した。
カンダタは俺の出会った男の中で誰よりも強く、誇りを持った男だ。盗賊にしておくのは惜しい人材だろう。
それにしてもアリシアが早くも【イオ】を覚えていたのは驚きだ。あれのおかげで今回は助かったし、ティナの【ホイミ】が3回に増えていたのも助かった。
ニーナも地味に槍捌きが上手くてみんな頑張っているようだ。関心関心。
ロマリアに戻ると王冠を取り戻したお礼は王様になれることだった。せめてアイテムかGにしてもらいたかったところだ。俺はぶっちゃけ王様よりも王様ゲームの方が興味あるしやりたい。
カンタダさんがただの盗賊ではなく、漢らしい盗賊に改変されております。
今後のカンタダさんの武勇をご期待ください?
そして毎度「ティナより」の一文で叱られるティナ。
ティナではなく他の二人が散々なことを言っているのに気付きながらも、ついティナに意地悪をしたくなるアルスだったりします。
ちなみに叱られる方のティナも満更でもなかったり(ゲフンゲフン