王冠を取り戻した後、隊長とは『ロマリア』で別れる筈だった。
「はっはっは。そんな嬉しそうな顔をしてくれると照れるじゃないか」
ちなみに俺は嬉しそうな顔はしていない。
「面白そうだからついて行こうではないか」と隊長が言い出した時から俺の口は開いたままふさがらないでいるのに、どこをどう解釈すれば嬉しそうに見えるんだ。
確かに隊長は戦力になるけど扱いが難しすぎる。
というか『ロマリア』の仕事はいいのか。
「そう連れないことを言うな。身体を重ねあった仲ではないか」
「待て待て待て待て。確かにそうだが誤解を招くような言い方はやめてくれ。はいニーナはほほ赤めて妄想口走らない。ティナはあたふたしない。アリシア殴るな!」
また苦労が増えた。
まさかと思ってステータスを見てみると【くろうにん】に戻っていた。
どうあってもこれは舞い戻ってくるらしい。
諦めて5人で『ノアニール』を目指すことにしたけど、のんびりしすぎた。
もう日が暮れて夜だ。
夜はあいつが出るから嫌いなんだよ……って、ほら出た。
『こうもり男』4匹だ。
こいつは攻守が高いくせに【マホトーン】を唱えてくる厄介な敵だ。
俺の『銅の剣』じゃあ一発で倒せない。
「アリシア!」
「【ギラ】!」
だからやられる前にやれだ。
アリシアの【ギラ】が『こうもり男』を飲み込む……筈だったが、避けられた。
「ごめんっ」
いや、アリシアは悪くない。
今のは直撃コースだった。
数々の冒険者と戦ってこいつら場慣れしている。
当然のように一体が【マホトーン】をアリシアに掛ける。
だが逆に言うと隙だらけの奴が1体できた。
俺が飛び上がり『銅の剣』で空中からソイツを叩き落とし、ニーナがトドメを刺す。
残り3体。
回復役を潰しにかかったのか1体がティナに急降下してきたが、なんとか『鱗の盾』で防いでくれた。
買ってやっておいてなんだが防いでくれるとは思わなかった。
弾かれた『こうもり男』は隊長の間合いに入ったから一刀両断、当然お陀仏だ。
残り2体。
どうやら今までの行動はフェイクだったようだ。
本当の狙いは防御力のないアリシアを確実に仕留める事。
アリシアは魔法使いで打たれ弱い上に今までまともな防具を買い与えてすらいない。
だから狙われて当然だ。
当然だからこそ対処しやすいというものだ。
あらかじめ来る場所が分かっているならそこを守れば良い。
俺はアリシアの前まで後退して『青銅の盾』で『こうもり男』の攻撃を二発とも防ぐ。
その隙にニーナと隊長が仕留めてくれた。
「うむ、良い手並みだった。見事な盾っぷりだったぞ」
隊長がポンポンと俺の肩を叩く。
盾になるのは前衛の仕事だからいいのだが、隊長やニーナもたまには壁になってくれ。
このままだと俺の体力がもたん。
「まったく……あのくらい私一人でも耐え切れたんだから余計なことしないでよね。怪我なんかしてないわよね?」
アリシアは辛口だ。
たまには素直にお礼を言ってもらいたいものだ。
まあ無事『ノアニール』についたからよしとしよう。
しかしいくら夜だからって皆眠っているのはどうかと思う。
というよりも、明らかに異常である。
試しに外で寝ている女の子を軽くゆすってみたが全く起きる様子はない。
「アルス君が女の子にいたずらしようとしているー。ついに欲求不満が爆発してなりふり構わず女の子を襲う変体仮面スパイダーマになってしまったのかー」
「アルス……その……えっと……そういうの良くないと思うし、それにえっと……とにかくダメ~!」
「変態」
それにしたって幼馴染達のこの反応は無いと思う。
とりあえず唯一起きていた村長に話を聞いてみると、エルフと駆け落ちした男がいてエルフの女王が怒ったらしい。
「美少女エルフと駆け落ちとはなんてうらやましい男だ」
みんなに引かれた。
いや、だってエルフって男のロマンじゃないか?
勝手に宿屋を使うのもなんだし今日は村長の家で泊まらせてもらった。
俺は何の嫌がらせか外でテントだ。
それもテントから一歩でも出たらアリシアに魔法で撃ち抜かれるらしい。
試しに出てみたら本当に【ギラ】を窓から飛ばしてきた。
最近命中率が上がって来てシャレにならないから勘弁してもらいたい。
隊長がついてきたせいで戦力は上がったがからかわれる時間が二乗になり『ノアニール』についたのは夜だった。
だが『こうもり男』を苦戦せずに倒せたのは大きい。最近は皆頑張り過ぎてて俺の影が薄くなってきた。というか盾にしかなってなくないか、俺は。
最近俺の株が下がってきている気がする。人気投票を考えるとここらで活躍しなければ非常に不味い。
もう少し俺もスタミナ配分を考えず突撃した方がいいのだろうか。悩ましいところだ。
とりあえず、明日はエルフに会いに行くから気合を入れていこう。
人気投票どころか感想も評価もないのだよアルス君(血反吐
ただし構成的にはアルスのことを「なんだこいつ」と思い始める頃合だろうと読んで当時はこのメタ発言を冒険の書に入れていた気がします。