【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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何もできないと思っているけど、皆の日向であるティナのお話。


支えてあげたい彼方の為にNo.2ティナ

 せっかく『ノアニール』の皆が起きたのにアルスの元気がない。

 困ったことも一人で抱え込むのはアルスの悪い癖だと思うな。

 

 どうやったら元気でるかアリシアちゃんとニーナちゃんに相談しようと思ったけど、二人とも模擬戦で特訓中みたいだから後で相談しよう。

 

「マリアさんちょっと良いですか?」

 まずは町外れで夕焼けを眺めているマリアさんに相談してみることにした。

「ああ、ちょっと待っててくれ。すぐすむ」

 マリアさんはビタミン剤を飲んでる最中だったみたいだ。

 いつもどおり5粒ほどを水で流し込んでいる。

 

「ふぅ。それでお姉さんに恋の相談かな?」

「ち、ちがいます!」

 マリアさんは私とアルスをよくからかう。

 もしかしたらニーナちゃんやアリシアちゃんもからかわれているかもしれない。

 あれ、今思えばこれって恋の相談なのかな。

 どうなんだろ。やっぱりそうなっちゃうのかな?

 

「顔を赤くして可愛い奴め」

 

 マリアさんが優しく笑いながら私の頭をなでてくれる。

 ちょっと恥ずかしいけど、アルスと同じで優しい気持ちがたくさん詰まっている。

 そんな気がした。

 

「アルスのことだな。少年の元気がないとお姉さんもからかいがいがなくって困ってたところだ」

 マリアさんは「退屈だ」と最後に付け足しながらからかうように笑う。

「そっとしてもらう事を望んでいるようだから私は何もしない。それが私のやり方だ。ティナはティナらしいやり方をすれば良い。それだけだ」

 

 私らしいやり方……あったかな。

 料理が得意だからご飯を作ってあげればいいのかな。

 

「笑顔でそばにいてやれ。みんなが笑っていれば……あいつは、あの親子は幸せなんだ」

 日がほとんど落ちてきたからなのか、マリアさんが一瞬だけ悲しそうな顔をしているように見えた。

 

「ほらほら、まずはみんなで食事だ。特訓している二人を切り上げさせてみんなで食べるぞ。なんと言っても呪いを解いた勇者一行様の歓迎パーティーだからな」

 『ノアニール』の皆がお礼としてパーティーを開いてくれる予定になっている。

 

 このままだとアリシアちゃんとニーナちゃんがパーティーに特訓した後の汚れた格好で出ることになって、それはちょっと恥ずかしい思いをさせて可哀相だと思う。

 今ならまだシャワーを浴びる時間もあるからみんなで一緒にお風呂に入ろう。

 

 アリシアちゃんとニーナちゃんは特訓に夢中でパーティーのことを忘れていたみたいで大慌てだった。

 

 お洋服を用意してあげよう。

 

 パーティーでアルスは元気に振舞ってパーティーを着飾る音楽団体に乱入してヴァイオリンを弾き始めた。

 見てるこっちが恥ずかしいよ。

 でも村のみんなには高評だったみたいで「アルス」コールが続いていた。

 

 お料理は私のより美味しい。

 やっぱりまだ本格的な味には勝てないみたい。

 

「へぇ、アリシアちゃんって言うんだ。やっぱり勇者さんと同じでアリアハン出身?」

「え、えぇ。そうなる……かな」

 アリシアちゃんは団体に慣れてないからちょっと居心地が悪そう。

 私もちょっと苦手だけどにぎやかなのは好き。

 

「姉御姉御あ~ね~ご。アルス君ばっかり目立ってずるいと思いませんか。ここは一つ私達がさらにあの場をジャックするべきだと思いますヨ」

「ふむ。それもそうだな。よし、私が活路を開く。ニーナは自慢の歌声を存分に披露してくれたまえ」

「了解しました。もうみんな聴き入って口から泡耳から脳みそが出るようなハングリーボイスでみんなのハートをゲットだぜぇしてきますヨ!」

 

 ニーナちゃんとマリアさんはとても居心地がよさそうだった。

 

「ここは俺のステージだ! やらせはせん、やらせはせんぞー!」

「ふはははは! この私を止めてみろ勇者よ!」

 マリアさんが『ひのきの棒』で襲い掛かっている。

 それをアルスはヴァイオリンからオカリナに持ち替えて、片手で簡単な曲を吹きながら同じく『ひのきの棒』でマリアさんと対峙した。

 その曲に合わせてニーナが歌いだす。

 

 『ノアニール』の皆の歓声の大きさがまた上がった。

 

「ほらほらアリシアちゃんもティナちゃんも歌おー! もう皆の目線がすごいよ!」

 その言葉に私とアリシアちゃんは前に出ていかなくちゃいけない雰囲気になってきた。

 

「ちょっとニーナ何勝手なことっ。ティナも何とか言って」

 アリシアちゃんの顔は真っ赤だ。

 でもいつものように嫌そうではない。

 私も恥ずかしいけど、アルスが「せっかくだから楽しめ」という目で私をみていた。

 

「アリシアちゃん行こう」

「ちょっと、それ本気!?」

 

 アリシアちゃんの手を引いてステージに上がる。

 『ノアニール』の皆の歓声が一段と強くなった。

 恥ずかしい。

 きっと私の顔はアリシアちゃん以上に真っ赤になってるかな。

 でもニーナちゃんもマリアさんも楽しそうだったから、村のみんなも楽しそうだったから、私も歌った。

 

 アリシアちゃんも観念して歌いだす。

 とても恥ずかしくって、それでも楽しくって、アリシアちゃんと一緒に笑ってた。

 気付いたときは周りが見えなくって、いつものみんなではしゃいでるだけになって、アルスは笑っていた。

 

 

 大はしゃぎして村の人がみんな寝静まった後にアルスは勝手に宿の屋根に上ってヴァイオリンを弾いていた。

 最近ヴァイオリンを弾くことが多いのはアリシアちゃんが頑張ってるからかな。

 私はそっとアルスの隣に腰を下ろした。

 

「うるさかったか?」

「うんん、大丈夫だよ」

 

 うるさくなんてない。

 ただそばで聴きたかった。

 

「元気になってよかった」

「分かってるんなら空気を読め」

 

 そういうのはよく分からない。

 アルスがこう言う時は「言わない方がカッコいい」事のようだ。

 やっぱりよく分からない。

 

 ヴァイオリンの音は止まらない。

 

「あんたらねぇ、夜こんな所に上って風邪引いても知らないわよ?」

 アリシアちゃんも屋根に上ってきてアルスの隣に腰を下ろした。

「そんなくっつくとヴァイオリン弾きにくいだろ」

「寒くないようにしてあげてるんだから文句言わない」

「さいですか」

 アルスは苦笑いしてるけどヴァイオリンの音色は変わらない。

 

「ニーナクロスチョーップ!」

「ぐわっ!」

 

 いきなりニーナちゃんがアルス君に突撃してきてみんなで落ちそうになって音は止まる。

 

「パーティーを全滅させる気か!?」

「だってだって。私をのけものにしてみんなで楽しいことしてるんだもん。私にもアルス君を突き落とす手伝いさせてー。保険金の取り分は一番少なくって良いから」

「ニーナ、あんたのおふざけたまに本当に死にそうになるからシャレにならないんですけど」

 

 一度だけアリアハンのアルスの家の屋根で同じことがあってアリシアちゃんが棺おけになった事があったからトラウマになってるみたい。

 アリシアちゃんの顔色が悪い。

 

「ごめんごめん。ほらこれで寒空の下も暖かいのだー」

 ニーナちゃんが腰を下ろして背中をアルスの背中にくっつける。

 

 一度止まったヴァイオリンがまた鳴り出す。

 

「くそ、弾きにくい。こらそこ押すな。俺だけ落ちるだろ」

「はっはっは。贅沢を言うなモテモテなくせして。お姉さんもまぜろ寂しいだろ」

 いつの間にかマリアさんがニーナちゃんの隣に座っていた。

「姉御やっちゃえー!」

「こらバカっ。私も落ちちゃうじゃないっ!」

「わ、わ、わ、アルスが本当に落ちちゃうっ」

「俺には安息の地はないのか」

 アルスは溜息をついてたけど、いつものアルスだった。

 

 私一人だとまだアルスの不安を和らげて上げることは出来ないけど、皆でなら出来る。

 いつか私一人でも…やっぱりみんなでアルスを支えていこう。

 アルスもきっとそれを望んでいる筈だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書10―アルスの日記―

 今日はエルフの里を見つけた。

 洞窟には残念ながら駆け落ちした二人はいなかったが『夢見るルビー』は置いていったようだ。

 エルフの女王に『夢見るルビー』を返すと『ノアニール』の人々の呪いを解いてくれた。話せば分かる人だ。結婚しようといったら断られたのが残念だ。

 とりあえず俺の『鋼の剣』とアリシアの『身かわしの服』は購入しておこう。

 『ノアニール』を救ったということで村の人がパーティーを開いてくれた。これでまた一歩我が野望に近付いたな。

 しかし音楽がいまいち乗り悪かったので俺が指導しておいた。これで次ぎ来た旅人は感動に胸を躍らせて不思議な踊りを踊りだすことだろう。

 それと冒険の書に落書きするのやめい。

 

 やめろと言われたらやるのが人というものだ。それにしても前に私の胸について書いていたな。冒険の書6だ。アリシアも激怒していたぞ。そこで私達は少し反撃をさせてもらうことにした。

 

アルスの性格が【セクシーギャル】になった。

 

 この冒険の書は割りと君に影響を及ぼすことが多い。そんなにボッキュッバーンがいいのなら自分でなるのだな。ふはははははははは!

 

 




マリアの姐御による反撃で、次回当時の作者ですら問題あり過ぎだろうと膝をついた話がやって来るっ!
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