【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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女勇者は強い。


第八話「ボッキュバーン」

 朝起きたら胸がついていて下の息子がいなかった。

 夢だろう。

 

 ぽっぺをつねってみた。痛かった。

 胸をつねってみた。柔らかかった。

 

「夢だな」

 

 とりあえず寝よう。

 きっと次に起きた時俺の息子は立派にそびえ立っている筈だ。

 

 

「少年よお姉さんが起こしに来てやったぞ」

 隊長の声だ。

 これでようやく夢も覚めるだろう。

 

「ほーら、お姉さんが布団をはいでやるぞー」

「はがんでも自分で起きれる。つうか人の尻さわるなっ。セクハラで訴えるぞ」

「はっはっは。前にお姉さんの身体を這って回られたからな。そのお返しと考え……」

 

 隊長の言葉が途中で止まった。

 俺の身体を見て表情も固まる。

 そして頭まで抱えだした。

 だがすぐににこやかな笑顔をつくってみせた。

 

「よかったな。モテすぎて血みどろの戦いを生むことはなくなったぞ。むしろ人気アップ間違いなしだ」

 

 訳の分からないことを言っている。

 いや、実際は理解しているが認めたくない。

 なぜこうなった、こんな事がありえるのか。

 もしあるとすれば冒険の書の改ざんしか理由が思いつかない。

 だがいくら冒険の書といえどこんな事が可能なのだろうか。

 

 俺は恐る恐る冒険の書を開いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書10―アルスの日記―

↓中略

 やめろと言われたらやるのが人というものだ。それにしても前に私の胸について書いていたな。冒険の書6だ。アリシアも激怒していたぞ。そこで私達は少し反撃をさせてもらうことにした。

 

アルスの性格が【セクシーギャル】になった。

 

 この冒険の書は割りと君に影響を及ぼすことが多い。そんなにボッキュッバーンがいいのなら自分でなるのだな。ふはははははははは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐ろしいものだな、若さゆえの過ちというものは。自分でやってしまったものは仕方がない。女としての第二の人生を堪能してくれたまえ」

「どうみてもあんたの文面だろ!」

「いいではないかステータス大幅アップだ。それに元に戻せばいいことだろ」

 

 こいつは人事だと思って。

 とにかく日にちが変わったら前の日の冒険の書に手を加えることは出来ない。

 ここは今日の冒険の書に男専用の性格【むっつりスケベ】か【ラッキーマン】と書くしかない。

 

 【むっつりスケベ】は何か嫌だから【ラッキーマン】にしておこう。

 

「……」

 姿が変わらない。

 ステータスを確認してみると性格が【お嬢様】になっていた。

 

「おい」

「お嬢様っぽく喋ってくれ」

「こら」

「しかし少年……いや、今は少女か。私がやっておいてなんだがうらやましいくらい胸があるな。ええい、私に少し分けろ!」

「っ。もむなっ!」

 

 俺の性別が何であってもこいつはちょっかいを出してくるらしい。

 むしろ女になったことで遠慮のないセクハラという選択肢が追加されたようだ。

 性別が変わったのにまた性格だけが【くろうにん】に戻る。

 

「ちょっとあんた達朝からうるさい!」

 アリシアが勢いよくドアを蹴飛ばして入って来た。

 

 俺と目が合う。

 アリシアの目線がそこからまっすぐ下に下りる。

 俺の山二つが谷間を作っている。

 

「……部屋を間違えたみたい」

 バタンとドアが閉められた。

 どうやら現実が受け入れられなかったようである。

 

「って、どうなってるのよそれは!」

 が、すぐ戻って来るなりアリシアは俺の胸ぐらを掴んで強引に立ち上がらせて壁にたたきつけた。

 

「あんたどういうつもり。そこまでして私のむむむむむ胸をバカにしてっ!」

「ツッコムところそこ!? まず女になってるところ突っ込めよ!」

「うるさいうるさいうるさい! どうせシリコンでしょ! シリコンくっつけただけなんでしょ!?」

 

 今度は俺の胸を強くつかむ。

 ふに。

 

 

「……部屋を間違えたみたい」

 

 

 アリシアが静かに去っていった。

 現実逃避したいのは俺のほうなのだが。

 お前仮にも魔法使いなんだから魔法の薬でも魔法でも良いからご都合主義で俺の体元に戻してから帰ってくれ。

 

「今アリシアちゃんが頭を抱えて部屋に戻ってきたけど何かあったの?」

 今度はティナが来た。

 

 俺と目が合う。

 目線が下に行く。

 俺の山二つが谷間を作っている。

 

「わ、大きい」

「お前もまず胸か! 女であることを認める前に胸か!」

「あ、えっと……どうしたの、それ?」

 

 ティナは苦笑しながらも現実を受け止めてくれた。

 さすがティナだ、頼りになる。

 

「実はアルスは元から女だったのだ。今朝起きたら胸がレベルアップしてしまったらしい」

「え、そうだったの!?」

「お前何年俺の幼馴染やってんだ。俺は男だったぞ」

 残念ながら過去形だ。

 というか隊長話をややこしくしないでくれ。

 

「胸がレベルアップ……」

 だがティナは聞いていない。

 

 自分の胸と俺の胸をみくらべる。

 ティナの胸は小さくはない。

 だが今の俺がそれを言ってもただの嫌味にしかならないだろう。

 

「……ちょっと経験値かせぎに行ってくるね」

「ちょっと待て、お前は何を倒して胸の経験値をかせぐつもりだ。つーか待て。俺が元に戻れるよう何か手伝えよ。おーい」

 ティナは行ってしまった。

 

 どうやら現実を受け止めきれずにやはり混乱してしまったらしい。

 

「アルス君アルス君アルスく~ん。アリシアちゃんが絶望してティナちゃんが旅立った理由教えてー」

 元気な奴が来た。

 ニーナは割りと胸が大きい。

 ニーナなら現実を受け止めて俺の助けになってくれるだろうか。

 

 俺と目があった。

 目線が下に下りた。

 

「ナイス鎖骨ですヨ」

「ちょっと待て、お前が一番ツッコミどころ多いぞ。なんで鎖骨だよ。他のところツッコめよ。親指立てんな。俺女になってるぞ。関係ないけど巨乳だぞ。声も何か変わってるぞ。つーかなんで俺はツッコまれなかった部分に自分で突っ込みを入れてるんだ!」

「あはー。私と同じくらい今日のアルス君は息続くねー。これも女の子パワーなのか。はたしてアルスの運命はいかに。男に戻れるのか。次回ドラゴンクエスト第9話「アルスは女子高生」におたのしみにーって感じだねー。もうキャピキャピではだけた胸が色っぽいですヨ」

「次回予告のネタばれで絶望させないでくれ」

 

 一体これは何の嫌がらせだ。

 ツッコミつかれて息が切れてきた。

 

「少女よ、今思いついたんだが」

 なんだかんだ言っても隊長は頼りになる。

 何か思いついたらしい。

 

「「お兄ちゃんもう我慢できない」って子供っぽくなおかつ色っぽく言えば人気がでるんじゃないか?」

「【ベギラマ】放つぞ」

「ほんの冗談だ。冒険の書についての噂なんだが、ある音楽を奏でるとなかったことになるらしいぞ」

「ある音楽? どんなんだよ」

 

 

「デレデレデレデレデンデンって感じの奴だ」

 

 

「それ悲しい音楽だよ! 聞いたらいけない音楽だよ! 何人の子供泣かす気だあんたは!」

「だが冒険の書はなかったことになるぞ?」

「初めからやる人間のみにもなれ! 全国の人にあやまれ!」

 

 あー、もう何だか疲れてきた。

 この際女でもいい気がしてきた。

 装備は女性専用防具が強いし、性格は転職できない勇者は【セクシーギャル】ありがたいし。

 

「あわ、アルス君がなんだかあきらめかけてる! 姉御姉御あ~ね~ご~! 何とかしてあげてくださいヨ」

「ほら少女。私がやってやる。ギターを貸せ」

 

 隊長は俺のギターを奪い取る。

 もう疲れたんだ。

 

「ほら123,123,123デレデレデレデレデンデン。デレデレデレデレデンデン」

 

 意識が遠のいていく。

 

「デレデレデレデレデンデン」

「デレデレデレデレデンデン」

 

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デレデレデレデレデンデン

 

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おきのどくですが

ぼうけんのしょ10は

きえてしまいました。

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これでいて伏線だったりするホラー?回でした。
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