【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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パーティーも増えて賑やかになってまいりました。


第二話「砂漠を越えて」

 流石アリシアだ。

 ショックを受けると不死鳥のように舞い戻ってくる。

 

 そんな訳で今日はリベンジ戦だ。

 また『ミイラ男』と『地獄のハサミ』の混合チームが出てきてまず動いたのはアリシアだ。

 誤射の原因でありティナを一撃粉砕した憎き『地獄のハサミ』を殴りつけて、

 

「【ベギラマ】!」

 

 そのまま“ベギラマ”で消し飛ばす。

 

 なるほど、ゼロ距離でやれば他に被害はないな。

 でも前にやった投げつけるのと同じように自分もダメージを食らっている。

 戦闘終わったら叱っておこう。

 

 そして、『ミイラ男』は俺が囮でニーナと隊長で一体ずつ撃破。

 前回は武道家が入ったことに浮かれすぎて囮になる前に大惨事になったけど、今回は弱いと分かっているから大丈夫。

 でも戦う気はあるみたいで今朝無理をして『カサーブ』の『鉄の爪』を買って渡したらしっかり低い攻撃力でも『ミイラ男』をちょこまかこついてくれている。

 

「はぅっ」

 

 でもやっぱり躓いてこけた。

 これで会心の一撃でもだしてくれればありがたいのだが、そう上手くいくものでもない。

 まあ何はともあれ最後の『ミイラ男』に俺がトドメを刺して戦闘は無事終了。

 被害は0ですんだけど予定通りアリシアは叱っておいた。

 

 いつものように俺と顔を合わせようとしなくなったが、後ろからの視線を感じて隊長とニーナとステラの笑いを堪える声が聞こえる。

 

 だがこの暑さだ。

 そんな雰囲気もいつまでも続かない。

 これでは『イシス』に着く前にステラとティナあたりが倒れてしまいそうだ。

 

「くそ、まるで毒の沼地を歩いているようだな」

 歩くたびに暑い日差しで体力が奪われていく。

 どうしたものか。

 

「ああ、もう! 【トラマナ】!」

 不機嫌だった筈のアリシアが突然叫んだ。

 

 そんなんで暑さをしのげたら冒険者皆【トラマナ】使って常に冷暖房完備の快適な旅を送っている。

 

「って、【トラマナ】のオーラで暑いの防げてるしっ!」

 さっきまでの暑さが嘘のように消えた。

 

「やってみるものね。まだ覚えていない魔法だったからできるとは思わなかったわ」

 アリシアの機嫌が戻り嬉しそうに笑っている。

 それを見て隊長が俺に近付いてひっそりと話しかける。

 

「少年、【トラマナ】でこんな事が出来ると聞いたことがないのだが」

「アリシアは魔法自体のイメージ力はすごいからな。多分昨日の夜参考書を見て……ダメージ床が防げるなら自然現象のダメージも防げると思い込んだんだろ」

 

 単純といえば単純だが魔法は信じなければ使えない。

 ある意味アリシアの才能だ。

 このことは黙っておこう。うん、俺にその発想はなかった。

 

 冷暖房気温調節ありのオーラを身にまとってしまえばこっちのもんだ。

 暑さを気にせず戦闘できるし、仲間が暑さで倒れることもない。

 まあモンスターの戦いはそれなりに苦戦したし、アリシアは俺に【ベギラマ】を計3回ぶち当てたが無事に『イシス』にたどり着くことが出来た。

 

 店に『鉄の盾』があって魅力的ではあったが、『青銅の盾』が地味に丈夫でまだ壊れていない。

 【守備力】たったの7の盾なのによくもつことだ。

 金欠だからもったいない病が発動してしまったではないか。

 流石に【素早さ】のない俺は装備固めないと不味いのになんてこったい。

 

 とりあえず女王イシスに軽く挨拶しにいったら、俺の活躍は商人経由で砂漠を越えてここまできていたらしい。

 

 ニーナの仕業だろう。

 とてもありがたい。

 

 それで『魔法の鍵』は情報通り『ピラミッド』に安置されているらしい。

 旅の役に立ててくれるのならもって行っても構わないそうだ。

 

 『黄金の爪』も取っても構わないようだが地下は魔法が使えないし王家の呪いがあるから全滅する覚悟はしておいてと笑っていた。

 何でこう王や女王は軽い奴らが多いんだ。

 

 女王と挨拶をすませて皆の所に戻るとニーナとティナがご機嫌だ。

 

「アルス君アルス君アルスく~ん! ほらほらティナちゃんに『絹のローブ』を着せてみたよ。これはもう鼻血ものだねー♪ 姉御も大喜びだよ!」

 

 どうやらニーナがティナに『絹のローブ』を買い与えたようだ。

 『絹のローブ』の上から僧侶のよく分からない前掛けを着ている。

 やべぇ、なんか知らんが僧侶いいわ。

 

「あんた感想ぐらい言ってあげなさいよ」

 アリシアが俺をからかうように脇を肘で軽くこついてくる。

 隊長は「元の装備に戻すような発言をしたら殺るぞ」といわんばかりの笑顔で俺を見ていた。

 

「えっと……似合わないかな?」

「いや、似合ってると思うぞ。【守備力】も高くなって良い感じだな」

 とりあえずこう言うしかなさそうだ。

 

 なんとか「ありがとう」と嬉しそうな笑顔を返してもらって無事に切り抜けた。

 おだて過ぎもほんの少しけなすことも許されない俺に出来る最善の選択肢だ。

 というか俺、なんでこんなに気を遣わないといけないんだ。

 

「アルスさん八方美人で大変そうですね。やっぱり女の子ばかりのパーティーだと気を遣って大変ですか?」

「苦労していることをそうポンと言うのはこの口かぁぁぁぁっー!」

「はぅっ! ひっふぁららいでくらふぁい~」

 何かむかついたから両ほほをひっぱってやったら面白い鳴き声でないた。

 

 隊長の気持ちが少し分かった気がしたけどここらで勘弁してやろう。

 さて、皆で和んだところで今日もまた出発の準備と特訓だ。

 特訓はGが危ないので外の敵を狩ることにした。

 

 『火炎ムカデ』が出てきたがアリシアは【ヒャド】を下手糞ながら使えるし、ティナが【バギ】を使えたから楽に勝ててしまった。

 

 ティナは魔法の名前正しく覚えるだけで他の低級魔法も使えるんじゃないかと疑ってしまう。

 僧侶の魔法参考書でも後で買ってやるとしよう。

 アリシアの本はあくまで魔法使い向きの参考書だからな。

 

 でもやっぱり攻撃魔法に【MP】を使われるのは痛い。

 アリシアの【ヒャド】が俺の後頭部を強打したけど【MP】がなくなって【ホイミ】が出来なくなっていた。

 自分の【ホイミ】で癒される勇者ってどうかと思う。

 

 ステラの仕上がりは上場。

 一般人並には戦ってくれる筈だ。

 何だか泣けてきた。

 

 それでもティナが律儀に昨日ドタドタしていて出来なかったステラの歓迎会を宿で開いた。

 隊長が「私の時はなかったぞ」と少しひがんでいるようだが、そこまで気にしている様子はない。

 ただティナの困っている姿を見たかっただけだろう。

 

「じゃあちょっと遅いけどマリアさんも合わせて歓迎会しよ。ステラちゃんが入ってまた賑やかになったね、アルス」

「ちょっと増えすぎてきた気がするけどな」

 

 メンバーが増えたのに戦闘が楽にならないのはなぜだろう。

 泣けてくる。

 

「このさい馬車でも手に入れて皆で快適に旅をするというのはどうでしょうか」

 これは名案といわんばかりにステラがそんなことを言い出した。

 確かに馬車があれば便利だ。

 でも高いだろ。今金欠なんだよ。でも、もしも馬車が手に入るとしたら……。

 

「その時はステラ、お前ずっと馬車いきな」

「はぅっ!? それはあまりにあんまりではないでしょうか」

 いや、だって今一番戦力になってないのステラだし。

 それでも追い出さない出て行かない俺達はそれなりに楽しんでいるのだろうか。

 う~む微妙だ。

 

 まあとにかく俺の【くろうにん】は当分変わりそうもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書13―アルスの日記―

 ようやく『イシス』についた。これもアリシアが【トラマナ】を覚えてくれたおかげだろう。これからも冷暖房完備よろしく頼むな。

 女王イシスはボッキュバーンだったけどちょっと趣味とは違ったのが残念だ。むしろ付き人の方が可愛かったような気がする。

 女王イシスに軽く挨拶すると俺の噂がこっちまできていたらしく、『魔法の鍵』と『黄金の爪』を『ピラミッド』から借りていっていいらしい。

 明日はいよいよ『ピラミッド』突入なのでここ2日の特訓の成果を見せるように。

 とりあえず地下に備えて『薬草』は99個ふくろに詰め込んでおこう。

 

 




アリシアのベギラマはグループ攻撃が火炎エフェクト、収束ゼロ距離発射が『ダイの大冒険』式の閃光なイメージで書いていた気がします。
ダイ大のベギラマが大好きな作者でした。
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