【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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皆のトラウマ宝箱。


第三話「ピラミッドにあるアレ」

 いよいよ『ピラミッド』だ。

「アルス君アルス君アルスく~ん! 宝箱があるよー。何が入ってるかな。もしかして早くも『黄金の爪』入手かなのー!?」

 ニーナがはしゃいで一階にある宝箱を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「/////////////\

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  | (●)  (●)    |  /|

 /△△√  舌  |△△△ |/  |

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   |

 ☆            ☆   |

 ☆  人食い箱が現れた  ☆  /

 ☆            ☆ /

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆/

 

 

 

 

 

 

 

「はわわわわわっ! 宝箱が噛み付いてきたっ!?」

 『人食い箱』がニーナの手をパクっと噛み付いた。

 

 こいつの攻撃力はシャレにならない。

 なのに何故だろう。

 迫力のない『人食い箱』に遭遇した気がしてならない。

 頑張って作ってみたけどダメだったよ的な雰囲気をどことなく醸し出している。

 

 きっと油断させる罠に違いない。

 とにかくこのままではメンバー全滅の恐れがある。

 隊長と俺が慌てて切り込んでニーナを助けに入った。

 

「いあや~丸呑みされるかと思いましたヨ。もうそんなことされたらべとべとで生臭くてお嫁にいけなくなって独身35歳OLの人生をおくっていたけどこの一軒がトラウマで仕事がスランプでクビになり寒空の下震える毎日だー!」

「いいから『人食い箱』にトドメ刺せよ」

 

 せっかく助けてやったのにまた齧られている。

 ティナの【ホイミ】だと回復間に合わないから、口を動かしている暇があったら必死に抵抗してトドメ刺して欲しい。

 

 ほら棺おけになった。

 

 痛いのに喋り続けるってどんな芸人魂だよ。

 続けてアリシアが不意に飛び掛られて迎撃に【ベギラマ】を放つも効かなかった。

 

 棺おけ二つ目の出来上がりだ。

 

 これはアリシアのトラウマになりそうだ。

 不幸中の幸いなのは二人とも『人食い箱』相手の割りに死体が破損しなかったことだ。

 これなら問題なく教会で生き返れるだろう。

 

 でもティナが圧倒的な強さを持つ敵を前に足がすくんで動けないでいる。

 今にも泣き出しそうだ。

 回復は望めそうにないからティナを守る為に俺と隊長とステラでティナを囲ったアローフォーメーションを取り『人食い箱』と対峙する。

 

 俺もまだまだのようで今回は普通にやられそうだった。

 何とか勝てたものの入り口付近の宝箱で全滅しかけるとは。

 戦闘が終わったとたん緊張の糸がほぐれてティナが泣き出してしまった。

 

 隊長とステラに冷やかされながらもティナを慰めてひとまず『イシス』に戻るとしよう。

 

 

§

 

 

 二人を生き返らせたらまた一文無しになった。

 せっかくここまで来る間の敵で稼いだのにおのれ『人食い箱』め。

 

 ニーナは「ごめんごめん。私宝箱見るとついつい空けたくなちゃって。私だったらもう箱の中にあらゆる疫罪が詰まった箱も全部飛び出すまで締めないねー」と相変わらず軽い奴だ。

 

 アリシアの方は「もう行きたくない」と引きこもり体勢に入っていたがとりあえずレベル差が激しくなるのは嫌だから引きずっていくことにした。

 

 さて改めて『ピラミッド』攻略だが、まっすぐ進んだら見事に落とし穴にはまった。

 初めに入った時はすみの方を歩いていたから気付かなかった。

 

 落下しながらも横目で全員の状況を確認すると、隊長が一番ダメそうなステラを素早く掴んで抱き抱えてくれていた。

 とりあえず俺も着地できそうにないティナを抱きかかえておく。

 

 流石に人一人抱えての着地は辛い。

 だけどニーナもアリシアも隊長も無事着地できている。

 みんな無事でよかった。

 

「ありがとうアルス。えっと……その……足大丈夫? 怪我しなかった?」

「ああ、少し足がしびれたけどな」

 ティナを地面に下ろしてポンポンと軽く頭をなでてやる。

 

 アリシアが「私も非力なんだけど」と何だか睨んでいる。

 いや、流石の俺でも二人の重量を支えながらあの高さから落ちたら不味いから。

 というかお前は一人で着地できたからいいだろ。

 

 しかしこの地下は女王イシスの話しによると魔法が使えない。

 早くここから出るべきか地下にある筈の『黄金の爪』を捜すべきか。

 

「少年、ここに降りる階段があるようだが……」

 隊長がなにやら隠し階段を見つけたようだ。

 相変わらずこの人は凄いな。

 何がすごいかって言うといまだにステラをお姫様抱っこして遊んでいるところだ。

 

「あの、そろそろ降ろしていただけないでしょうか」

「私は君の命の恩人なんだぞ。ほらほら報酬としてもう少しすべすべの生足を触らせてくれたまえ。はっはっは」

「はぅぅぅぅっ!?」

 よく落とし穴に落ちたのに隊長はこんなにも余裕が持てるものだ。

 

 

 まあそれは置いておいて、階段を見つけてしまったからには行かないと『黄金の爪』を求めているステラに悪いだろう。

 

 

 階段を下りて通路を進んでいくと大きな扉があった。

 どうやら鍵がかかっていて開かないらしい。

 『魔法の鍵』から先にとるべきだったか。

 

「こんなものこうしてしまえばよかろう」

 隊長が扉を蹴り破った。

 隊長がいれば鍵も【アバカム】も必要ない気がしてくるのは何故だろう。

 頼りになるのだがこの人はフリーダム過ぎる気がする。

 

 扉の奥には大きな棺があった。

「お宝お宝ー」

 そして性懲りもなくニーナがそれを空けた。

 中に『黄金の爪』が入っていたからよかったものの、また罠だったらどうするつもりなのだろうか。

 

 

「何だか不気味な爪ですね。はぅっ!? ふぁふぁら、ひっふぁららいでくらふぁい~!」

 ほしがっていた本人の問題発言にとりあえず頬を引っ張っておく。

 

 さて、これで後は敵が出る前に地上に戻り『魔法の鍵』を回収するだけなのだが、どういうわけか道を埋め尽くすほどモンスターが群がっている。

 魔法使えないのに勘弁してほしい。

 

「ティナちゃんこれ使って!」

 ニーナが『イシス』で買っていたのか、『ホーリーランス』をティナに渡した。

「後アリシアちゃんもこれ!」

 さらに自分の持っているものの他にもう一本『鉄の槍』をアリシアに渡している。

 

「おい、いつ買ったよ」

「『ノアニールの洞窟』の宝箱に入ってたー」

 どうやら俺の見ていないところで宝箱を見つけては中身を漁っていたようだ。

 

 アリシアは「私魔法使いなのに」と呟きながらもちゃんと『鉄の槍』を使いこなしている。

「重くて振り回せないよ」

 装備できる筈のそこの僧侶、お前もアリシアを少しは見習え。

 

 とにかく敵の『マミー』や『ミイラ男』を倒しながら進んでいくも、数が多すぎて少しずつしか進めていない。

 

 

「まったく、私は持久戦が得意ではないというのに」

 

 

 隊長がぼやきながらも一番敵をなぎ払ってくれている。

 やっぱり肩を並べて戦える仲間は心強い。

 でもステラだってステラなりにちょこまかと鈍足ながらも背の低さを生かして牽制してくれている。

 『黄金の爪』の威力は非力なステラでも相手にそれなりのダメージは与えられるのだ。

 

「はぅっ~! こっち来ないでください! 何で私のところにこんなにたくさんついてくるんですか!?」

 おかげで攻撃が分散してくれて最前衛の俺と隊長の負担が軽くなっている。

 そして俺と隊長からもれた敵をアリシアとニーナが倒して、結局打撃に参加できなかったティナが薬草を運用する。

 

 これでなんとか今は何とか進めているがその内スタミナが尽きてアウトだ。

 流石の隊長も疲れを見せ始めて顔色が少し悪い。

 

「アルス君アルス君アルスく~ん! もう倒したはずの後ろからもモンスターがわんさか出てきてるよ! これはもうピンチもピンチで大ピンチだー!」

 ニーナが引きつった笑顔でそう言った。

 やばい、いつの間にか完全に囲まれている。

 

「あんた前衛なんだからもっと頑張りなさいよ!」

 アリシアは無茶を言ってくれる。

 でもここで何とかしないと全滅してしまう。

 少し思い切った行動に出る必要がありそうだ。

 

「少し強引に突き進む! はぐれるな! はぐれたら叫べ!」

 俺は『青銅の盾』を構えてモンスターの群れに飛び込んだ。

 盾で押しながら横にずれた敵は剣でなぎ払う。

 敵の攻撃を盾で耐えて足を踏ん張りまた勢いよく前に突き進む。

 

 強引に進んでいる分進みが速いがその分俺に返ってくるダメージが大きいし、漏れた敵が多いから俺の真後ろについて来れなければ囲まれて袋叩き。

 運がよくて棺おけ。

 悪ければひき肉だ。

 

 だが遺体を回収する余裕はないし大怪我もダメ。

 動けなくなる前に地上に出て【ルーラ】しかない。

 

「隊長はサポート頼む!」

 俺が既に道を開いているから、隊長はその道を皆が通りやすいように少し広げてくれるだけでいい。

 

 それでも負担は大きいが大軍相手をするよりはマシな筈だ。

 俺が倒れても、隊長が何とかしてくれる筈だ。

 

 

「階段……地下一階に上がる階段か。あと少しだから踏ん張れ!」

 

 

 階段をうめつくしている敵をなぎ払う。

 攻撃を受け止める。

 もう少し持つと思ったが『青銅の盾』がついに使い物にならなくなった。

 腕が痛い。

 

「アルス君!」

 ニーナが後ろから『青銅の盾』を投げてくれた。

 

「『ジャンパーニの塔』の宝箱に入ってたー」

 少しはみんなの道具袋に入れたらどうなんだ、こいつは。

 だけどおかげで助かった。

 ぼこぼこにへこんで所々砕け散った『青銅の盾』を目の前の大群に投げつけて、新たな『青銅の盾』を装備する。

 

 

 よし、左腕はまだ動きそうだ。

 

 

「アルスさん、出口が見えてきました!」

 モンスターの群れをかき分けている俺には見えないが、ステラのその声で出口が近いことがわかる。

 その言葉を信じて無理をして薬草付けで進んでいくと、モンスターの群れの奥に地上の光が差し込む階段が俺にも見えて来た。

 

 

 後少しなのに、盾は生きているけど左腕が動かない。

 

 

 それを察してくれたのか隊長とニーナとアリシアの三人が前に出て道を作っている。

 もう完全に後ろを気にしない陣形でティナとステラは走って後をついてきている。

 息を切らせているが心配するほど呼吸は乱れていない。

 

 これなら外に出られる。

 皆はぐれていない。

 光がどんどん近付いていく。

 出口の道が、開く。

 

 

 

 

 

「はぅっ!?」

 

 

 

 

 

 嫌な悲鳴が聞こえてきた。

 振り向くとステラが『腐った死体』に足を掴まれている。

 ティナが助けようと槍を振り回すがうまく振れていない。

 仮にこの『腐った死体』を倒せても二人の足では間に合わない。

 囲まれる。

 

 目の前にある筈の光がとても遠く感じた。

 アリシアが、ニーナが、最悪の事態に悲鳴を上げる前に、俺は何としてでも二人を助け出そうと、

 

 

「走れ、私が何とかする」

 

 

 俺より前に隊長が階段を飛び降りていた。

 一振りで『マミー』の大群をなぎ払い、二振りで『ミイラ男』をなぎ払い、『笑い袋』を踏み台にして勢いを殺さずにステラの足を掴んでいた『腐った死体』の脳天を突き刺した。

 

 

「アルス!」

 

 

 隊長のその叫びの意味を考える。

 俺に来いと言っている?

 違う、先に行けと言っている?

 違う、この人は、隊長はもっと無茶苦茶な人だ。

 

「ニーナとアリシアは先に行け! 俺は出口で二人を受け取る!」

 俺がそう言うのと同時に隊長は身体を捻って遠心力をつけて、ティナを出口目掛けて投げ飛ばした。

 ティナが声にならない悲鳴を上げて、アリシアとニーナはその常識外れの行動に目を丸くする。

 

「ちょっ、俺もこんなに勢いあるって思わなっ」

 なんとかティナを受け止めることが出来たけど、勢いは殺されないで俺はアリシアとニーナを巻き込んで外まで吹き飛ばされた。

 

 ミスった。

 俺まで外にはじき出されたらステラを受け止めることが出来ない。

 いくら隊長でもステラを抱えたままここまで来れない筈。

 

 まだ間に合う。

 俺は慌てて戻ろうと、

 

「邪魔だ」

 

 隊長が矢のような勢いで、ステラを抱えたまま階段を駆け上がっていた。

 そして戻ろうとした俺は吹き飛んだ無数のモンスターの屍と共に外に吹き飛ばされた。

 それに続いて隊長が地上に飛び出す。

 

 

 正直、この戦闘力は化け物かと思う。

 普段どれだけスタミナを温存して戦っていたのだろうか。

 

 

 でもいつも余裕の表情をして戦っていた隊長の呼吸は異常に乱れていて、顔色がいっそう悪くなっている。

 もう限界なんてとうに超えていたのだろう。

 隊長の手からステラが滑り落ち、そのまま力なく()()()()()()()()()()()()()

 助けようと伸ばす俺の手を取る余裕すら今の隊長にはなくて、俺の手が虚しく空を切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書14―アルス日記―

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人食い箱のAAは当時初めて作ったAAでお察しな出来栄え。
それでも載せるからこその黒歴史である!
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