昼前に起きるって俺どんだけ。
目を覚ますともう昼で宿の飯はもうない。
そしてステラの膝の上で目を覚ますという訳の分からない状況で目が覚めた。
場所は『イシス』の広場。
アリシアとニーナとティナが隊長相手に模擬戦をしている。
流石隊長といったところか、『ヒノキの棒』同士の模擬戦だが二人を軽くあしらっていた。
「おはようございますアルスさん、気分はどうですか?」
ステラが優しい笑みを浮かべながらで聞いてくる。
「本当に胸少しあったんだな」
だから俺は膝から見上げた感想を笑顔で答えてあげたら「はぅっ、どこを見てるんですか!?」と慌てふためきだした。
反撃はしてこないがこの慌てふためき様はからかっていて癖になりそうだ。
とりあえず宿のかしきり時間がすぎてGないから外に俺を寝かせた、と言ったところか。
そして暇な人が俺の枕になってくれていたと考えるべきだろう。
うむぅ、全員分の太ももを堪能するまで寝た振りをするべきだったか。
「よし、みんな元気みたいだな」
身体を起こそうとすると少し違和感があった。
左腕にギブスがはめられている。
体の傷は消えているのでティナが【ホイミ】を限界まで掛けてくれたようだが【MP】が足りなかったらしい。
死んで教会で完全復活してもらうにもGがない。
どうしたものか。
「アルスおはよう。ちょっと待っててね。今ご飯作ってあげるから」
「あ、アルス君おはよー」
ティナとニーナ二人とも目の下にくまを作っている。
こいつら寝てないのか。
「おはよう。あんた腕折るなんて中途半端な怪我したわね。死んでくれてたら教会で完全復活してもらえたのに」
俺と同じ考えだが何か言われるとむっとくる。
でもアリシアも目の下にくまを作っているところを見ると、相変わらず心配なのに意地を張っていると言ったところか。
微笑ましい限りである。
だが、よく見るとステラも目の下にくまがあった。
「お前ら黙って寝てろ」
俺のそんな提案に対してブーたれる皆を【ラリホー】で眠らせてもう一泊宿を借りる。
うむ、徹夜明けで疲れている奴にはよく効くな。
「少年、今思ったのだがこの魔法があれば眠らせている間に悪戯し放題ではないか?」
「いや、それ犯罪だから」
「死ぬまで起きない奴だっているんだ。ちょっとの悪戯なら起きないと思うのだが……どう思うよ少年」
厄介な人だけが眠らなかった。
頼むから大人しく寝ていてほしい。
とりあえず皆が寝ている間に俺はプライベートな時間を送ろうと思う。
といっても何をすればいいか思いつかない。
片手だと本も読みにくいし食事だってしにくい。
これでは遊びまわることもできない。
【ルーラ】分の【MP】を残しておきたかったが、ここは自分の【ホイミ】で腕を治しておこう。
左腕のみに限定してかければ数回で治る筈だ。
ほら治った。俺の魔法コントロールは我ながら惚れ惚れする。
「なんだ治してしまうのか。そのままならお姉さんが面倒を見てあげようと思ったのだがな」
隊長がまた俺のことをからかっている。
いいから寝てください、お願いします。
「まあ私も寝るとしよう。正直君を背負ってここまできたから疲れた」
ここでからかって「なら今度お姫様抱っこで次の街まで運んでやろう」なんて言ったら隊長のことだ。「よろしく頼む」とにやけながらからかってくるだけなので止めておこう。
俺より隊長の方が口も力も上手だ。
からかった日にはそれが倍返しされる。
大人しく宿に入っていく隊長を見送ってから俺は【ルーラ】で『アリアハン』に飛んだ。
まずは王に旅の状況を報告。
次にティナを引き取っていた神父やアリシアとニーナの親に元気でやってると報告。
一区切りしたら皆も連れてこよう。
例のごとくニーナの父親からは届け物をもらった。
もちろん中身を確認したさ。
手紙と『毒牙の粉』が入っていた。
敵に使ってくれると信じておこう。
「勇者さんではないですか」
変な武道家に声をかけられた。
どうやら『レーベ』で俺が助けた武道家らしい。
お礼として『鎖鎌』をもらったけど、いまさらという感じがする。
ふと耳に挟んだ情報だが、笑いながら俺を死地へと送り出すきっかけを作った母さんは毎晩俺の帰りを待っているらしい。
挨拶だけはしておこう。
一通り挨拶が終わったから『アッサラーム』に【ルーラ】で飛んで遊びまわることにした。
まずは踊り子達の練習でも見てみるとしよう。
なかなか良い足……ではなく踊りだ。
いや、本当に楽しそうに踊っている。
これはやましい目で見るのは失礼だろう。
でも目のやり場に困る。
「坊やも一緒に踊ってみる?」
お姉さん方にからかわれながら踊らされた。
結局俺はどこでも年上にいじられるのか。
日が落ち始めたが置手紙で「夜までフィーバーしてくるぜ」って書いていたから皆も心配していないだろう。
「もしも暇だったら坊やも一緒に食事とかどう?」
楽屋裏で食事までおごってもらった。
団長もなかなか良い人で旅人の俺を笑顔で向かえいれてくれる。
「時にアルス君、君はもしやオルテガ氏の息子ではないのかね?」
どうやら親父はこの街にもよったらしい。
「オルテガ氏とは話の会う友人だったが、息子の付けでとチケットを買ったことが何回もあった。計360G払ってもらうよ」
団長は笑顔だった。
実はピラミッドの地下で稼いだGがたくさんあるが、おのれ親父め。
生きていたらただじゃおかないぞ。
まあ食事をおごってくれたから本番の踊りも見ていくとしよう。
もちろんチケットは自分のGで買っておく。
席は一番遠い席にしてもらった。
遠くからの方が全体の踊りがよく見えていい。
「オルテガ氏もその席がお気に入りでね。息のぴったりあった良い踊りだと褒めてくれたよ」
団長が俺の向かい側の席に座ってそっとカクテルを差し出してきた。
俺は未成年だって。
「だけど踊りをほめてくれる客は少ない。皆踊り子の体が見たくて来てる連中ばかりさ。そういう街だからね、ここは」
他の客は近くの席を取って踊り子の体を嘗め回すように見ている。
外にピンク色の店が多いからこうなってしまうのかもしれない。
「レナちゃんという踊り子がいてね。ダンスがとても好きな子だった。だけど彼女はこの目線に耐えられなかった。もしも旅先でレナちゃんに会うことがあれば伝えて欲しいんだ。君はもう自由だから、好きに踊ってもいいんだよ、と」
せっかくもらった酒だ。
俺はカクテルを一気に飲み干した。
「つまらない話をしてしまったね。楽しんでいってくれ」
団長はやはり笑顔だった。
俺は踊りを見終えて拍手を送ると、「真剣に見てくれてありがとう」なんて悲しいことを言われる前にこっそりと劇場を抜け出した。
さて、俺はそろそろみんなのところに帰るとしよう。
ティナのことだからきっと宿で用意される夕食がさげられてしまっている時間なので、何か作って待ってくれている筈だ。
あまり待たせると悪いだろう。
今日はみんな疲れているので休みの日にした。
とりあえず『アリアハン』に戻って旅の報告とみんなの報告をしておいた。今度はちゃんと皆で行くとしよう。。
後は俺のプライベートタイム。ひたすら遊びまわってハッスルハッスル。たまには生き抜きも必要だと実感する一日だった。
戦利品の“鎖鎌”は有効活用するために『鋼の剣』に鎖をつけてみた。
これで『破壊の鉄球』のように全体攻撃ができれば嬉しいのだが。
夫を亡くし息子を送り出すことでしか世界に希望を残せなかった母親は辛かったと思います。
毎晩家の外で主人公を待ち続ける母親の姿に何か感じた人がいたのは私だけではない筈。
無料で休める宿屋ではなく、母親に元気な姿を見せる為にアリアハンに戻ってあげましょう。