【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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忘れても、記憶に残らなくても、想いだけはきっと残る。
勇者とはどんな理不尽なことも諦めず勇気ある者なのだから。


エピローグ

 船を手に入れたものの明確な目的がまだ無い。

 

 『ポルトガ』でまずは灯台を目指すといいと言われたけど、せっかく『バハラタ』方面に船を持ってきたんだから『ダーマ神殿』を目指すとしよう。

 

 船の航海に慣れてきたら灯台周りで『バラモス城』を確認しにいけばいい。

 

 俺は広いキッチンで料理をしながら今後の予定を立てていると、足元にちょこんとフィリアが座った。

 船にいる時はよく「何か話し聞かせて」とちょこちょこと猫のようにやってくるが、食事の方が大事なのか料理を作っている時は大人しく待ってくれている。

 

「あれ? アルス、言ってくれれば私が作ったのに」

 これから料理を作ろうと思ったティナがエプロン姿でキッチンに入って来た。

 いつもはティナにまかせっきりなのに今日はなぜか作りたい気分だ。

 そういう時もある。

 

「……ごはん……」

 

 ティナに構って手を止めたらフィリアがそう呟いた。

 お腹が空いているから速く作れと少しお怒りの様子だ。

 チンチンチンとフォークとナイフを何度も何度も合わせて鳴らしている。

 

 適当に人数分作ってティナにテーブルに並べてもらう。

 フィリアも側にいるなら少しは手伝って欲しい。

「……はやくー、はやくー……」

 もうフィリア席に座り、皆が揃うのを待ちながらチンチンチンチンとまた食器をならしている。

 

「はっはっは、フィリアは可愛いな。おっと、もちろんステラも可愛いぞ」

「はわ!? マリアさん放してくださいっ。私の席はあっちであってマリアさんの膝の上では……ひゃっ! アルスさん、笑ってないで何とかしてくださいよ~」

 隊長がステラを自分の膝の上に乗せて撫でまわして遊んでいるがこのままではいつまでたっても食事が始まらない。

 フィリアが頬を膨らませながら食器を鳴らす音が大きくして食べたいアピールをしているので、じゃれ合いを止めてしっかり席に座ってもらおう。

 

 さて皆そろったところで食卓を囲んでいただきますだ。

 

 

 

「あんた、一つ皿が多くない?」

 アリシアの言うとおり皿が一つ多い。

 空いている席に食器共々俺が用意しておいた。

 

 もちろん俺の高速おかわり用の皿だ。

 食い終わったらすぐにおかわりの出来るようにしておくのだ。

 うむ、俺って頭いい。

 ティナも俺の意図をわかってくれたのか、「アルスのご飯久しぶりだね」と微笑みながら水まで用意してくれている。

 

 今日も皆と一緒に食事が出来て平和に過ごせた。

 おかわり用の皿がアリシアかニーナかフィリア辺りに食われてしまったが、まあいいだろう。

 

 これからも皆と共に頑張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書28―アルスの日記―

 今日は『大王イカ』に不覚を取って海に落ちた。

 おかげで武器防具は捨てることになってもったいない。無事に浜辺に打ち上げられたのは運がよかったか。

 少し休んでから【ルーラ】で船に飛んだ。俺ほどの魔法コントロールが出来れば動いている船だって多少脳内座標と存在位置がずれていても飛ぶことができる。

 今日も悲惨な一日だったけど、たまには自分で料理を作ってみるものだ。

 

第四章「ポルトガ編・完」

 

 




冒険の書の最後の一文がアルスの想いによって書き換えられました。
これでいてアルスはアリスのことを覚えていません。
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