【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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今回はアリシアが苦労するお話です。


第一話「メタルスライムを追え」

 アルスの変な思いつきで、私とティナとニーナとステラとフィリアだけで『ガルナの塔』に挑むことになった。

 

「ティナ、転職してからいくつくらい【LV】上がった?」

「えっと……今【LV10】みたい。何だかいっぱい魔法を使えるようになったよ」

 

 ティナはそう言って笑った。

 なんだか私もうかうかしてると呪文数でティナに負けそう。

 ここで頑張らないとね。

 

 とにかく私がリーダーだからみんなに指示出す側の人間って事だから、しっかり皆の役割を頭に入れておかなちゃ。

 

 ティナは今までどおり回復重視で強敵が出たら、【バギ】や今日覚えたらしい【ピオリム】を使ってもらおう。

 ニーナは接近で壁役をやってもらいたいけど何だか不安だな。

 ステラはいつもどおり牽制と弱った敵のトドメね。

 フィリアは強いみたいだけど、何だかアルスがいなくなったら興味なさそうにしてる。

 

 

 アルスの次にご飯を作るティナに懐いてるから、ティナに上手くフォローしてもらおう。

 

 

 この中で一番攻撃力があるのは私の魔法かな。

 最近アルスの特訓のおかげでずいぶん魔法のコントロール出来るようになったけど、誰かに誤射しないかまだ不安だな。

 

「ほらほらアリシアちゃん。考える前に行動行動。接近戦は私とステラちゃんとフィリアちゃんに任せて大きいので一掃しちゃってくださいヨ」

 

 それもそうだ。

 まずは考える前に塔の中に入ろう。

 

「あー、ちょいと待て」

 アルスが【ルーラ】でやってきた。

 ダンジョンまで移動できるなんて本当に器用な奴ね。

 やっぱり私達が心配で付いてくる気かしら。

 

「ピンチになったらこれ開け。ほんじゃあ頑張れよ」

 何か分厚い本を私に渡して【ルーラ】で帰っていった。

 ピンチの時にこんな分厚い本を読めって、いったい何を考えてんだか。

 気を取り直して塔に入ろう。

 

 塔に入るとさっそく『大くちばし』の群れが出迎えてくれた。

 確かこいつは二回攻撃するからまとめて倒すぞってアルスが言ってたっけ。

 

 私の【ベギラマ】とティナの【バギ】で勝つのは簡単だった。

 私達だけでも結構いけるじゃん。

 

 今度は『痺れアゲハ』二体と『ガルーダ』二体のグループだ。

「まずは『ガルーダ』から! ニーナとステレはそれぞれ別の奴。ティナとフィリアでアゲハ一体お願い!」

 『ガルーダ』が【ベギラマ】を打つ前に叩いて、私の【ベギラマ】で粉砕。

 『痺れアゲハ』の方もうまく一体倒せている。

 もう一体は皆で袋叩きだ。

 

 

「アリシアちゃんアリシアちゃんアリシアちゃ~ん! 『メタルスライム』だよ。てかてかだよ経験値だよ。宝箱に『銀の髪飾り』だよー」

 

 

 ニーナは相変わらず宝箱を見つけたらすぐに取りに走って行ってしまう。

 はぐれないか心配だけど、ニーナはなんだかんだでしっかりしているし大丈夫だと信じたい。

 

 『銀の髪飾り』は何だかまだ装備の古いフィリアに装備させてあげよう。

 『メタルスライム』は、

「逃がさずに追うわよ!」

 敵をセオリー通りに倒しながらも、逃げていく『メタルスライム』をひたすら追い続ける。

 

 逃げ足は速いけど出会った敵を瞬殺しながら追えば視界には捉えられる。

 このままアルスが目指していた『メタルスライム』の住みかに案内してもらおうかしら。

 

 

「アリシアさん待ってくださいよ~」

「アリシアちゃんちょっと待って」

 

 

 ニーナとフィリアはついてこれてるけど、少し運動音痴のティナとステラは辛そうだ。

 あちゃ~、皆のことも考えろよ私。

 メタルスライムは旅の扉に逃がしちゃったけど後で追えば良いか。

 疲れ気味の二人がモンスターに襲われる前に皆で合流しに戻る。

 

「もう、追いて行くなんて酷いですよ~」

「ごめんね、また迷惑かけちゃったよね。私足が遅くて……ごめんね」

 

 ステラの方はそこまで気にしている様子はないけど、ティナがうじうじモードに入っちゃった。

 

「あーもう泣かないの。『メタルスライムが旅の扉まで逃げるところは見たんだから追い詰めたも同然だって」

 

 アルスの苦労が少し分かった気がする。

 ティナはちょっとした事で自暴自棄になりすぎ。

 

「いや~、リーダーって大変そうだね。でもアリシアちゃん結構さまになってるよ」

 ニーナが「あはははは」と笑っているからきっと今の私の姿は【くろうにん】なんだろうな。

 私は【体力】よりも【賢さ】が欲しいんだけど。

 

 

 ティナをようやく慰めて旅の扉に進んだ。

 奥に進んでいくとロープが向こうの建物までビンと伸びている。

 

 後ろを振り返るとティナとステラが無理無理と言っているように首を横に振っている。

 いや、私もこんな所渡りたくないから。

 

「……あそこに、光ってるのいる」

 だけどフィリアがロープの先を指差した。

 そこにはメタルスライムの群れが走り回っている。

 倒せれば皆のレベルは上がりそうだ。

 

 

 

 

「……りゅう」

 

 

 

 

 フィリアが今度は上を指差した。

 指が刺される方を見上げると『スカイドラゴン』の群れがいた。

 まだ会ったことは無いけど強いらしい。

 というか強そう。

 

「アリシアちゃんアリシアちゃんアリシアちゃ~ん! 何か出たよ。強いのでたよ。ドラゴンだよ。しかも空を飛んでるなんて卑怯だよね。だよねだよね?」

 

 

「『スカイドラゴン』は【燃えさかる火炎】で広範囲に大ダメージを与えてくるそうですよ。飛竜族に属していて神話の中に出てくる竜の神様もこの飛竜族だったという説がありまして~」

 

 

 ステラの説明は無駄に長い。

 ようは炎を吐かれる前に倒しちゃえばいいだけじゃない。

 

「【ベギラマ】!」

 

 炎はまっすぐ飛んでくれて『スカイドラゴン』に直撃した。

 もう私絶好調だ。

 なのに煙が晴れると『スカイドラゴン』は無傷だった。

 

「【炎】や【ラリホー】は効かないですから皆さん気をつけてくださいね」

 ステラの長い説明を先に聞いておけばよかった。

 というか肝心なことは先に言ってよ。

 

 『スカイドラゴン』の大群が口をあけた。

 

 

§

 

 

「おお、勇者アリシアよ死んでしまうとは情けない」

 気が付いたら『ダーマの神殿』でアルスの顔が目の前にあった。

 どうやら全滅してしまったらしい。

 

「ちょっとあんなの出るなんて聞いてないわよ!」

「うは、生き返ってすぐに文句言うとは元気な奴だな。トカゲの一匹や二匹楽勝だろ」

「あんた三匹同時に火を噴かれてみなさいよ。絶対に死ぬから」

 一瞬のことであまり痛くなかったけど、怖かった。

 

 アルスがついてきてくれたら盾になってくれたと思うけど、そんな考えじゃダメ。

 私がアルスも守るって決めたんだ。

 

「絶対にアレを突破してメタル狩りしてやるっ」

 

 みんなをアルスのGで復活させてもらってから再度『ガルナの塔』に挑む。

 まずはピンチになったら開けと言われた本を開いてみる。

 1ページ目には5Fに出てくる『スカイドラゴン』の攻略法が書いてあった。

 【ヒャド】系と打撃で倒せない場合はティナに【ニフラム】を唱えてもらえば良いらしい。

 経験値は入らないけど面白いように効くそうだ。

 

 別のページには別のモンスターの攻略や皆の特徴を生かした作戦とかがびっしりと書かれている。

 

「あいつ冒険の書と一緒にこんな物書いてたんだ」

 まだ出会っていないモンスターも図鑑や人から仕入れた情報を元に既に作戦が用意されていた。

 私達が思っている以上にアルスは頑張っているみたいだ。

 私ももっと頑張らないと。

 このアルスの書いた攻略本を参考にして進んでまた5Fにたどり着いた。

 

「ティナ!」

「えっと……【ニフラム】!」

 本当にドラゴンがこんな簡単にやられるなんて思いもしなかった。

 これで『スカイドラゴン』はもう怖くないけど、問題はロープだけしか足場の無い向こう岸までどう渡るかよね。

 

 【ルーラ】みたいに飛んでいければ皆安全に渡ることができるのに、イメージした場所にしか飛べないからな。

 

「向こう岸をイメージして使うのはどうでしょうか?」

「それだわ。ナイスだよステラ。【ルーラ】!」

 

 私なりに頑張って向こう岸をイメージした。

 魔法のコントロールはあいつのおかげでうまくなったからきっとできる。

 

 

 

 

 

 

 皆で天井に頭をぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 一瞬あいつの顔を思い浮かべたから多分『ダーマの神殿』向かって飛んじゃったみたい。

 あーもう、私ってダメダメだ~。

 

「ねぇねぇアリシアちゃんアリシアちゃん。【ルーラ】って自由に飛べないの?」

「飛べたらこんな苦労しないわよ」

「う~ん。アリシアちゃんの最近やってる魔法をゆっくり動かすのがあるからいけると思うんだけどなー」

 魔法なんだからもっと夢を広げようよ、なんてニーナが無茶を言ってくる。

 

 でも行きたい場所に飛んでいける魔法があるんだから、自由に飛ぶだけの魔法があってもいい気がするんだけどな。

 ちょっと魔法の参考書をめくってみるけどそれっぽいのは載ってなかった。

 

 もう一回頑張って向こう岸に【ルーラ】したら正面の壁にぶつかったけど何とか渡れた。

 でも途中でステラを落としちゃったようで私は無我夢中でロープ下に飛び降りる。

 

 

 ステラが泣きながら声にならない悲鳴を上げている中、何とか【ルーラ】で落ちるステラを追い越して、地面すれすれで再び【ルーラ】で元の足場に戻ることが出来た。

 

 

 今日の収穫は『銀の髪飾り』と『悟りの書』、『メタルスライム』が3匹。

 それと【ルーラ】は少し上手くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書29―アルスの日記―

 ようやくティナがなんちゃってから正式な僧侶になった。【MP】がちゃんと【賢さ】の二倍あるし魔法だって覚えてくれる。

 これで後はレベルが上がれば戦力になってくれるはずだ。というわけで今回の『ガルナの塔』は修行をかねて俺と隊長なしで潜ってもらった。

 全滅回数は一回と上々。みんな一回り強くなっていたがステラが「【ルーラ】怖かったですよぅ」と呟いていたのとフィリアが「【ルーラ】楽しかった」と楽しんできた様子が謎だ。

 まあ『悟りの書』まで拾ってくれるとは正直驚いた。

 今日も俺が料理を作ってご馳走しておこう。

 みんなお疲れ様。

 

 何かあんたの苦労少し分かった気がしたわ。

 アルス君がいなくてアリシアちゃんが寂しがってたよ♪

 そんなこと無いから勘違いしないでよね。

 アルスお料理上手になったんだね。昨日も今日も美味しかったよ。 ティナより

 人の日記に寄せ書きというのはなかなかドキドキしますね。お料理美味しかったです。

 りょうが少なかった。

 

 




闘えるようになってもクセが強いのは相変わらず。
そしてアルスのことを考えてしまい天井に皆と頭をぶつけることになったアリシアは照れ隠しやツッコミに拳が飛ぶも可愛いく良い子です。
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