昨日の冒険でティナが【ベホイミ】を覚えてくれたから、今日は先に進んで『ガルナの塔』の奥にある『ムオルの村』に寄ってみた。
こういう田舎にも困っている人は居る筈だ。
地道な知名度アップは欠かせない。
「ああ、ポパカマズさんではないか。旅の調子はどうだ?」
俺はこの村に寄ったことが無いのに、なぜか村人が俺を変な名前で呼んでくる。
「少年、変な偽名でどんないやらしい事をしてきたのかな?」
いつもながらすぐに隊長にからかわれた。
身に覚えが無いんだから勘弁してほしい。
だけど村人全員が俺のことをポパカマズと呼んでくる。
人望が厚い人物のようだ。
そんなに俺と変な名前の奴とそっくりなのか。
「ポパカマズさん。奥さんいるのにそんなに若い子引き連れて大丈夫ですか?」
宿をとろうとしてもこれだ。
いや俺奥さんいないから。
「子供の顔は見に行きましたか?」
いやいやいやいや、子供もいないから。
「というかお前ら信じてひそひそと俺の後ろで話をするなっ」
アリシアとニーナがひそひそと後ろで何か話しており、ティナはおろおろとしている。
首を傾げるフィリアにステラが「こ、コウノトリさんが運んでくるんですよ」と斜め上のフォローをしていた。
隊長にいたっては「若さゆえの過ちか」なんて言っているけど、今のこの状況を全力で楽しんでいるのか珍しくもクスリと笑いを堪えきれずにいる。
何だかとんでもない村に足を運んでしまった気がする。
ここは何としてもポパカマズという人物を探し出すか正体を掴んで、これが濡れ衣だということを証明しなければならない。
「ねえねえ、お兄さんはポパカマズさんじゃないでしょ? 似てるけど少し雰囲気が違うよ」
分かってくれる少年が一人居た。
どうやら昔ポポパカマズという人が村の前で倒れていて手当てしたらしい。
「きっとポパカマズさんが言っていたアルスさんだね。これ、返すね」
それはボロボロの兜だった。
写真で見覚えがある。
俺の親父が旅立った時にアリアハンの皆が作ってくれた兜だ。
「息子が来たら渡してくれって」
もしかしたら親父は自分が旅の途中で力尽きるかもしれないと気付いていたのかもしれない。
だからあとを継ぐことになる俺に残せる何かを誰かに託したのだ。
色々な想いがこもった兜はとても重かった。
会ったことは無いけど親父はきっと偉大な男だったのだろう。
「この村は少し違うから浦島太郎になる前に旅立ったほうが良いよ」
よく分からないが村を出ることを勧められた。
皆にポパカマズは親父だったことを伝えると誰も茶化さなくなった。
うむぅ、ちょっと空気が重くなって失敗だったか。
隊長ならからかってくれると思ったけど、親父の兜を知ってるから隊長すら茶化してこない。
「ねぇねぇアルス君アルス君。その兜さ、親父くさくないかなかな?」
「……めっちゃ汗臭い」
「それ洗うまで装備しない方が良いねー。もうエンガチョですヨ」
こういう時ニーナがいてくれるととても助かる。
村を出て最後にもう一度親父の立ち寄った村を見ようと振り返ると、そこには村は無かった。
もしかしたらあの村はこことは違う次元か時間が流れていたのかもしれない。
突拍子もない話だが、親父の顔を知る小さな子供と親父の兜、消えてしまった村を理屈で説明することが出来なかった。
親父が立ち寄った村『ムオル』は不思議な村だ。出会った少年が「浦島太郎になる前に旅立った方が良い」と言っていたから、多分時間の流れが違うのかもしれない。
まあ分からない事を考えても仕方が無い。どうやら俺の親父『オルテガ』は俺の為に皆の想いの詰まった『オルテガの兜』を残してくれたようだ。
他にも残してくれた物があるかもしれないから、次はアリアハン以外での親父の知り合いを当たってみることにしよう。
隊長の話では当初は『ロマリア軍』と共に『バラモス城』へ攻め込むつもりだったので、ロマリア王はおそらく知り合いだろう。それと『アッサラーム』の団長は親父の友達と名乗っていた。
この二人から話を聞いて、他の親父の知り合いについての情報をもらうとしよう。
小さな子供すらオルテガのことを知っていたムオルの村の独自解釈でした。
兜を作ったアリアハンの住人の想いとオルテガの想いが、アルスを本来そこにはない村へと導いてくれた、そんな宿もルーラ登録のない村の小さくも大きな物語と考えております。
こういった『人の想い』の具現化というテーマはこの先でもまだまだ続きます。