『アリアハン』に戻る途中に村が見えた。
こんな小さな島に村があるなんて聞いたことがないがせっかく見つけたんだ。
ここで補給をしよう。
村に入ると一人の女性が声をかけてくれた。
「ここは『ルザミ』。忘れられた島ですわ。あなた方の前に旅人が訪れたのはもう何年前のことだったかしら」
どうやら辺鄙なところにたどり着いてしまったようだ。
だけど辺鄙なところだからこそ歓迎してくれる。
宿はないというのでこの女性の家に泊めてくれるという。
食料も少しなら別けてくれるそうだ。
「アルス君アルス君アルスく~ん。道具屋いったらいいもの何もなかったよ。だけどねだけどね。お店の人がいい人でただで情報教えてくれたんだ。『ガイアの剣』っていう強そうな武器はサイモンって人が持ってるんだって。なんか伝説の剣っぽくってカッコいいよね。これはもう手に入れるしかないですヨ!」
確か『ガイアの剣』という単語は『ランシール』の神殿の神父も口にしていたな。
親父はそれが届くのを待たずに火山に行って行方不明になったらしいから、俺は手に入れてから火口に行くとしよう。
「まあたまには静かな村でのんびりって言うのも悪くないわね」
アリシアはこの村が気に入った様子でご機嫌だ。
フィリアは食べるものがあればどこでもいいといった感じである。
老人方に新鮮な海の幸でおもてなしされて餌付けされていた。
ふとマリアは何をしているのかと探してみると、何やら占い師と話しをしているようだ。
マリアも女性らしく占いが気になるのだなんて意外である。
「アルス、喜べ。アルスには女難の相が出ているらしいぞ」
「人のこと勝手に占ってもらって、しかもその結果でにこやかな笑顔を浮かべないでくれ」
どうやら俺をいじるネタが欲しかったらしい。
ため息をつく俺を見て、マリアはくすくすと口元に指先を添えながら笑みをこぼしていた。
「アルスさん大変ですよ~」
「急にどうした」
「さっき展望台で聞いたんですが地球は丸かったって言ってたんですっ」
今度はステラが当たり前のことを言っている。
大航海時代が過ぎたというのに、まだこんな時代遅れのことを言う田舎ものがいたとは驚きだ。
「違うんです。それ自体は当たり前なこと私だって知っていますっ。ですが展望台の人はそのことを誰にも信じてもらえなくってこの島に流されたって言うんですよ。これっておかしくありませんか?」
「なら、ここは『ムオル』と同じなんだろ。ここと外じゃあ時間の流れが違うんだ」
理屈は分からないがそういうことだろう。
「何でそんな簡単に納得できちゃうんですか。もっと取り乱してくれないとつまらないじゃないですかぁ~。せっかくアルスさんが驚く情報を見つけたと思ったのに~」
「ステラ、お前が俺をからかうなんて10年早い。俺はもう」
でもステラがそのことに気付いてくれて助かった。
少しゆっくりしすぎて旅に戻ったら既に魔王が世界を滅ぼしていたなっていたらシャレにならない。
ここはきっと忘れられた島じゃなくって、立ち寄ったら外との時間差で外の人に忘れられてしまう島なんだ。
だから旅人はこの村に寄らない。
俺達はこの不思議な村『ルザミ』から離れることにした。
今日は『ムオル』と同じように時間が狂っている『ルザミ』という村にたどり着いた。
忘れられた孤島は何もないが、何もないからこその楽園で冒険者達の足を止める。
そして外との時間差が開いて島から出ると次の世代に時代が変わってしまっている。
冒険者にとってこれほどの恐怖はないだろう。
次第にこの噂は広まりいつしかその島は何もない孤島として扱われるようになった。
だけど俺はこの島が悪意から生まれたものではないと思う。
誰だって幸せな時間がずっと続けばいいと思ってしまうことがある。その想いのなりそこないがあの楽園のような島『ルザミ』なのではないか。
あの島にいる限り争いごとに巻き込まれることもなく幸せな何もない毎日を送る事ができる。
俺はこの島を大人になれない国ネバーランド『ルザミ』と呼ぶことにした。
今日の日記は我ながらカッコいいと思う。
なのにマリアに「良いセンスをしている」と腹を抱えて笑われてしまった。解せぬ。
天文学者が島流しにあったことと、宿がないこと、ルーラでいけないこと。
島流しをされた忘れ去れた島ではなく、『ムオル』と同じ条件がそろっているのでこのような考察となりました。
前回から隊長という呼び方からマリアに変わったことと、どこかマリアがやわらかくなっていたりします。
そしてアルスのこのポエムである。