【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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渇きの壷の情報と作者の黒歴史回。


第二話「自然の民と王国からの使者」

 『アープの塔』に向かっていたら少し航路がずれて大陸の東側に出てしまった。

 狭い水路を興味本位で渡っていくと先に『スー』という村に着いた。

 予定が変わってしまったが先に『スー』で情報を集めるとしよう。

 

 

「船か。懐かしいのう」

 

 

 ここの村の人とは雰囲気が違う老人が船を眺めている。

 

「わしはその昔『エジンベア』の兵士でこの村に来たんじゃが……わしだけ船に乗り遅れてのう。あれから何年経つかのう。壺は仲間の兵士がもっていってしまったんじゃよ」

 

 どうやら他国の人のようだ。

 物を略奪したというのにここの人達は世話を焼いてくれたらしい。

 

 まあ変な老人のことは置いておいてだ。

 俺が驚いたのはこいつだ。

 

 

 

 

 

「やあ、僕は喋る馬エドだよ」

 

 

 

 

 

 馬が喋りやがった。

 皆流石に引いている。

 

「アルス君アルス君アルスく~ん。この子喋るよ。すごいね。かっこいいね。この馬の喉一体どうなってるんだろ?」

「これは見世物小屋に売れば高くつきそうだ」

 ニーナとマリアは興味を持ったようだ。

 

 身の危険を感じたエドが教えてくれた情報によると、ここから持ち出されたのは『渇きの壺』といって西の海の浅瀬で使うものらしい。

 

 すごくアバウトな情報だ。

 

「……あるすー。馬っておいしい?」

「まあ食用に育てたのはうまいんじゃないか?」

「そうなんだ」

 フィリアがじっとエドを見つめると、『渇きの壺』は水を一時的に吸い込む壺で、浅瀬の下に『最後の鍵』があるらしい。

 

 ちゃんと口を割ったから見逃してやるとしよう。

 

 

「そういえば『銀の髪飾り』が売ってたな。フィリアはもう装備してるから5人分買っておくか」

 これは値段の割りに恐ろしい【防御力】を誇っている。

 一体こんな髪飾りのどこに【防御力】があるのだろうか。

 

「アルス君アルス君アルスく~ん。なんか村を作ってる人がいるんだって。0から物を作るってやっぱりいいよね。手伝ってあげてくれって村長さんが言ってるけどどうする?」

「いや、人助けはしていくつもりだけど専門知識ないからな」

 

 それに金掛かるし今は行っても邪魔になるだけだろう。

 街を出ようとすると変なおしゃれなスーツを着た男四人組が達を待っていた。

 

「マーゴッド姫、ようやく見つけましたよ」

 男の一人が誰かの名前を呼んだ。

 

 それに反応したのはステラだった。

 見つかっちゃいました、と眉を細めてたははと苦笑している。

 弱いことから旅人ではないと思っていたけどまさか姫だったとは驚きだ。

 

 

「王が心配しておられました。どうか城にお戻りください」

 

 

 ステラは眉を細めたまま「実は私、お姫様でした~」と俺達の方を振り向いて笑った。

 あまり国に帰りたそうな顔には見えない。

 

 【ルーラ】で逃げるか、それとも戦うか。

 そのどちらをとっても今まで積み上げてきた勇者の知名度は崩壊する。

 そんなことをしたら一国の姫を誘拐したことになるんだ。

 気付いたら俺はステラから顔を背けていた。

 

 

「田舎ものにしては物分りがいいな。今まで姫を護衛してくれたお礼だ」

 10000Gの大金を渡された。

 多分口止め料も入っているだろう。

 

「俺はただ仲間と一緒に旅をしていただけだ。こんな金受け取れるか」

 ステラをあっさり引き渡そうとしている俺がよく言う。

 

 ティナはいきなりの出来事に戸惑っている様子だ。

 ニーナは騒いでいるがマリアに抑えられている。

 マリアは自分を抑えようと歯を食いしばっていた。

 

 国際問題に発展しかねない状況に俺は何も出来ずにいる。

 自分が情けなくて、悔しくて、自分で自分のことを殴ってやりたい。

 

 

「これだから田舎もんは」

 男の一人が見下すように鼻で笑った。

 

 

 こんな国にステラは居たんだ。

 そして勝手に出たから連れ戻す為に使者がやって来た。

 国が嫌になって旅をし始めたのか、単なる姫のわがままで旅に出たのかは知らないけど、ステラは俺達の仲間だった。

 大切な仲間だ。

 

 

「今までありがとうございますね。もしも『エジンベア』によることがあれば、その時はマーゴッド姫として宜しくお願いします」

 まだ特別に親しくなった訳でもないけど仲間なんだ。

 

 

 

 

 

 

「待ちなさいよ!」

 耐えきれずにアリシアが叫んでいた。

 

 

 

 

 

「ステラは私の大事な友達なんだ。そんなはいそうですかって引き渡せないわよ! ステラ悲しそうにしてるじゃない!」

「アリシアさん……」

「田舎者は口を挟まないでもらおう」

 男達がいっせいに『雷の杖』をアリシアに向ける。

 

 

 

 

 

 ああ、そういうこと、するんだ。

 

 

 

 

 

「アルス落ち着け」

 マリアの言いたいことは分かる。

 今は人と人が争っている場合ではない。

 魔王を倒す旅をしているんだ。

 それにここで揉め事を起こせば昔終わったはずの戦争がまた引き起こされるかもしれない。

 

 

 そんなのわかっている。

 わかっているけど我慢の限界だ。

 

 

 

「……ステラは私の友達。マーゴッドなんて知らない」

 今まで食事以外に興味を持たなかったフィリアが、俺よりも早くに動いて『アサシンダガー』を男の一人の首に突きつけていた。

 

 同じくらいの年だからいつの間にか親しくなっていたのか、それとも皆と一緒に居て仲間意識が強くなったのか。

 とにかく、これでもう後戻りはできない。

 

「まったく、お前らは」

 それを理解してマリアも動いた。

 だけど仕方なく動いた感じではなく、その口元は緩んでいる。

 よし来たと言わんばかりにマリアの拘束から解かれたニーナも動く。

 もちろん俺も動いた。

 

 男達の『雷の杖』が一斉に火を吹いた。

 フィリアはそれを回避してアリシアは【ベギラマ】で相殺。

 マリアとニーナはそれぞれ左右に展開するよう散って回避。

 俺は炎の中を強引に突っ込み『鋼の鞭』を構えた。

 

 

 しょせん道具に頼っている奴らだ。一瞬で決める。

 倒した後のことは倒した後に考えればいい。

 

 

 

 

 

 

「アルスさんダメですっ!」

 ステラは相手を傷つけてはダメだと言ったのかと思った。

 でも違った。目の前にまた炎がある。特大の炎“メラゾーマ”だ。

 杖を使っていたことと頭に血が上っていたことで完全に相手の力量を測り損ねた。

 

 

 慌てて『魔法の盾』で防ぐが炎が俺を飲み込み俺の【HP】がごっそりと削られる。

 アリシアの【ベギラマ】とは比べ物にならない火力だ。

 

 

 

「アルス!」

 第二射が来る前にアリシアが俺の前に飛び出した。

 

「【ベギラマ】!」

 

 アリシアの得意技だけど、そんな中級魔法でどうにかなる相手ではない。

 再び放たれた【メラゾーマ】はアリシアの【ベギラマ】を飲み込んだ。

 

「【メラミ】!」

 だけど弱まった【メラゾーマ】に追加で【メラミ】を当てることで相殺してみせる。

 

 

 だが相殺するのがやっとだ。

 相手は四人いる。

 そいつら全員が【メラゾーマ】を使えたらこちらの手数が足りなくなる。

 予想通り他の三人も【メラゾーマ】を撃ち始めた。

 

 俺達の代わりに『バラモス』を倒しに行ってもらいたいところだ。

 

 隊長とニーナが前に出て【メラゾーマ】を引き受ける。

 マリアは器用にも剣で弾道を反らしやりくりし、ニーナは回避に専念することで爆炎で火傷を負いながらも真っ直ぐ相手を見据えて直撃だけは避けてくれている。

 フィリアが二人が囮になってくれている隙に一気に相手の懐に潜り込んだ。

 

 だが、その一撃は見当外れのところに振られている。

 おそらく【マヌーサ】を食らって幻を見ているのだろう。

 初めての絡め手にフィリアが目を見開き、驚きながらも【メラゾーマ】を大きく後ろに飛んで回避する。

 

 

 

 俺の身体はまだ動く。

 こうなったら俺の特大のお見舞いするしかない。

 

 

 

「言っとくが……こいつを人間に試したことはない。逃げるなら逃げろ。一応忠告はした」

 俺のすべての魔力を指先に集中させる。

 

 だけど俺は撃てなかった。

 奴ら忠告を聞くと【マホカンタ】なんて張りやがった。

 撃ったらこっちが雷に打たれて黒こげだ。

 こんな事なら忠告せず問答無用で撃っておくべきだった。

 ここまできておいて、相手が人間であることに躊躇して大技撃たなかった自分の未熟さに歯を噛みしめる。

 

 

 

 更にまだ状況がつかめずにキョトンとしているティナに向けて【メラゾーマ】を撃った。

 多分、俺が庇いに行く事を知ってて撃ったのだろう。

 そうでなければ何もしない奴に貴重な【MP】を消費したりなんかしない。

 

 

「くっ」

 

 

 奴らのもくろみどおり俺はティナを庇った。

 ダメージを抑えてくれる【魔法の盾】がありがたい。

 

 だけど奴らは容赦なく【メラゾーマ】を撃ってくる。

 人間の最大【HP】考えて撃って欲しいものだ。

 

 

「あ……るす?」

 

 

 その光景でティナがさらに取り乱す。

 平常心を保っていたら回復してくれるけど、いっぺんに色々な事が起き過ぎて今のティナは何も出来ない。

 

 

 

 

 ここまでか。

 だけど俺を倒してもマリアとニーナが今フリーだ。

 俺を助けに行くことを前程に撃っているようだがまだ甘い。

 俺は二人に「倒せ」と指の微妙な動きでサインする。

 それに気付いて二人が切り込みに行く。

 

 

 

 

「やめなさいっ!」

 だが決着がつく前にステラが叫んだ。

 涙ぐみながら叫ばれた言葉に、その場の空気が完全に止まる。

 

「『エジンベア』の王女マーゴッドの命令です。互いに直ちに戦闘行為を中止してください」

 

 

 俺達も『エジンベア』の使者も動けなかった。

 ステラは泣いている。

 ボロボロと涙を流しながら、『エジンベア』の王女として命令を下している。

 俺達が、泣かせてしまった。

 

 

「私は国に帰ります。元よりただの私のわがまま。今日までわがままに付き合っていただきありがとうございました」

 

 そんな悲しい言い方を泣きながら言わないで欲しい。

 そんなふうに庇われたら仲間なのに何もしてあげられない。

 

 

 身体から力が抜けていく。

 

 

 『エジンベア』の使者達に【ルーラ】で連れて行かれるステラを、俺達はただ見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書25―アルスの日記―

 ステラは『エジンベア』のマーゴッド姫だったらしい。

 今日『スー』の村まで『エジンベア』の使者4人が迎えに来た。

 彼らは高レベルの魔法使い。いや、【マヌーサ】も使ったから賢者なのかもしれない。

 戦ってでも取り戻そうとした結果ステラを泣かせてしまった。

 もちろんここで引き下がるほど俺は諦めのいい人間ではないし善人でもない。

 勇者というのはどこまでも自分勝手でわがままなのだ。

 ステラ攫いに『エジンベア』に攻めに行こうではないか。

 皆のやる気は十分だ。田舎者の恐ろしさをとくと見せてやろう!

 

 




やりたいことはわかるものの、もう少しキャラとキャラの絡みをやって、女の子同士でいちゃこらさせてからやるべき回だと今では思います。

それでも今リメイクしてもステラという偽名でマーゴッド姫がパーティーに加わり、渇きの壷を奪ったスーという地で迎えが来るという構成で行く筈です。
文章の手直しとキャラクターの追加したいエピソードは多いものの、やっぱり話の流れは同じなることでしょう。
私の脳って進歩ないッ!
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