【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

47 / 81
ステラ視点です。


外に連れ出してくれた彼方の為に‐No.5ステラ

 賢者さん達に城に連れ帰られてまた退屈な毎日が戻ってきました。

 

 でも、あのままアルスさんたちの優しさに甘えていたらきっと迷惑をかけてしまいますよね。

 

 

 我侭は城を抜け出したあの時だけで充分です。

 

 

 退屈にしているとなぜかモンスターが部屋に入ってきました。

「お姫様ってやっぱりこういうポジションなんでしょうか?」

 アルスさんの変わりに賢者さん達が駆けつけてくれた。

 

 おじい様方に守られてもあまり嬉しくはないんですけどって苦笑していたら、予想外なことに賢者さん達がすぐにやられてしまいました。

 私をアルスさんから引き離したんだからもっとしっかりして欲しいです。

 

 武器はアルスさんのところに置いてきてしまっているし、そもそも私は弱いから一人では勝てませんね。

 

 

「はぅっ!」

 

 

 

 抵抗してみたけどやっぱり勝てませんでした。

 体のあちこちが痛い。

 アルスさんがいれば、守ってくれたでしょうか?

 

 

§

 

 

 私は外の世界にあこがれていました。

 モンスターがいるということもありますが、一国の姫君として粗相がないようにと賢者さん達に外に出してもらえなくて退屈です。

 

 でも思い切って貨物船の積荷に隠れてみたら簡単に大陸を渡れてしまえて驚きでした。

 おかげで助かりましたがもっと検査を厳しくした方がいい気がします。

 

 外の世界はとても広くて色々な人が自由に働いたり冒険したりしていて、私は感動しました。

 ですがいざモンスターと戦ってみたら相手が強過ぎたのかとても戦えません。

 

 

 私って運動音痴でしょうか?

 

 

 落ち込んでいるところに現れたのがアルスさんでした。

 女の子に囲まれていてスケベそうな人だから、声を掛けたら簡単にモンスターを倒すのを手伝ってくれそうに見えました。

 

「あの、旅人さんですか? もしよろしければパーティーに参加させていただきたいのですが」

 

 冒険が楽しみだったからちゃんと笑えていたと思います。

 

「ナンパお断りだ」

 

 でも返された言葉はそれでした。

 いきなり一緒に冒険してくださいと言うのはやはり変だったみたいです。

 

「は、はぅっ。違いますよー。そうではなくってですね、えっと……頼みごとがあるんです」

「俺はナイスバディーなお姉さんの方が好きなんだ」

 

 やっぱりスケベな人みたいですが趣味が違ったようです。

 私だって大人になればきっと良い女性になれると思うのに失礼な人です。

 

 だけど彼と連れの彼女らのやり取りはとても楽しそうで、あの輪に加えてもらえたらきっとすごく楽しそうなんだろうな。

 

 

「『ピラミッド』に『黄金の爪』があるって聞いたんです。それを手に入れるお手伝いしていただこうかと思ったのですが……やっぱりダメでしょうか?」

 

 

 だから、諦める前にまともな理由をつけてみました。

 するとアルスさんは少しだけ考えて「採用」と当然のように答えてくれました。

 

 望んでいたことだけどまさか連れて行ってくれるなんてビックリです。

 

 でもここで一つだけ問題があります。

 賢者さん達は田舎者の名前は4文字以下と言っていました。

 私のマーゴッドという名前は5文字で田舎者ではありません。

 とても困りました。

 

 

 私は自分の名前を捨てるという意味を込めて、「捨てる」という単語から一文だけ字変えたステラという名前を名乗りました。

 

 

 この名前は結構お気に入りなんですよ。

 『黄金の爪』を手に入れた後私の目的はなくなってしまいました。

 せっかく皆さんと楽しく冒険できたのに少し残念です。

 

 でもアルスさんはそんな私の表情を読み取ってくれたのか冒険に誘ってくれました。

 この時からかもしれません。

 アルスさんがカッコいいなって思い始めたのは。

 

 

§

 

 

「よう、昨日ぶり」

 やっぱりアルスさんはカッコよかった。

 

 昨日『エジンベア』の賢者さん達に酷い目に合ったのに来てくれた。

 

 

「攫いに来てやったぞ」

 

 

 白馬の王子様が悪者からお姫様を救う物語はよくあるけど、勇者が姫を攫うお話しなんて読んだことがない。

 

 

 

 

 

 

 私が外で初めに声を掛けた人がこの人で本当によかった。

 

 

 

 

 

 白馬なんて似合わない田舎者で、【くろうにん】だし少しスケベで意地悪な時もあるけど、アルスさんと、皆さんともっと旅を続けたい。

 お父様に無理を言って、アルスさん達と旅を続けてもいいよう許可を頂きました。

 

 私はもう少しだけステラという少女でいようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書26―アルスの日記―

 宣言どおりステラをさらってきた。

 というのは冗談でモンスターに襲われていた“エジンベア”を救ったら軽い性格の王が簡単に許可をくれた。ついでに“渇きの壺”もゲットだ。

 似非賢者の無様な姿を見れて俺は大変満足している。え、勇者っぽくないって?

 そのあたりは気にしたら負けだと思う。

 しかしアリシアにこっぴどくやられたものだ。久々に仲間の攻撃で棺おけになるかと思ったぞ。アレはどうしようもない状況だったんだから許せ。

 とりあえず壺を手に入れたから明日は浅瀬で鍵を手に入れるとしよう。

 

 アリシアさんにセクハラをして、恐れ多くもお姫様を攫うなんて、とんでもない女たらしの田舎者さんですね、アルスさんは。

 いつ手籠めにされてしまうかおっかなびっくりですが、これからもご一緒させていただきます。

 皆さん、これからもよろしくお願いしますね。

ステラより

 

 




ロマンチストな運動音痴のお姫様。
当時アリーナとは違った味のお姫様を表現したくて、このようなキャラクターにした覚えがあります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。