【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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情報集めと息抜きをする話。


第七章「少女の想い編」
プロローグ


 マリアの言うとおり一度『アリアハン』に戻って、『ルイーダ』に海賊アクアブルーについて聞いてみた。

 

「あー、思い出した。確かそこの船長ともあんたの親父さんは仲良かったわね。『誘いの洞窟』から真っ直ぐ東に船をこぐと大きな大陸にたどり着くから、そこの森の中に彼らのアジトがあった筈よ」

 

 本当に親父は顔が広い奴だ。

 まさか海賊の船長と仲が良かったらしい。

 

 なんでも一週間不眠で喧嘩して友情が芽生えたとかなんとか。

 これは話せばわりと簡単に『最後の鍵』を貸してくれて、しかも『聖なるオーブ』まで持っているかも知れない。

 まさに一石二鳥だ。

 

 

「ところでアリシアちゃんはさっきからピーヒャラピーチャラ何をやってるの?」

「ああ、オカリナに興味を持ったみたいで練習中だ。すごい音だろ?」

「何よ、まだ始めて初日だし……大体まずは適当に吹けって言ったのあんたじゃないっ」

 

 

 まあそうなんだけど、それにしても音がこうも酷くなるとは。

 思ったとおり指よりも笛の吹き方を教えた方がいいな。

 

「とりあえずあれだ、トゥートゥートゥーって感じで次吹いてみろ」

 少し教えたら多少マシになった。

 それを見てニーナが目を輝かせている。

 とても嫌な予感がするのは気のせいではないだろう。

 

「アリシアちゃん良いな良いな良いなー。私も私も私も何か音楽やりたいやりたいやりたい。もうアルス君に手取り足取り教えてもらって、ああコーチそこは。いいではないか。やめてコーチ。君は教えてもらう立場なんだぞ、わははははははー。みたいな展開になって夜な夜なヒグラシが鳴く夏の終わりに鉈を振り下ろしたいですヨ」

 

「お前はそんな血みどろの展開を望んでいるのか」

 バラバラ死体は生き返れそうにないから勘弁してもらいたい。

「まあ別に音楽やるのは構わんが……何やりたいんだよ?」

「カスタネットっ!」

「……まあ騒がしいお前にはちょうど良いか。昔使ってたのなら俺の部屋にあるぞ」

 他にも色々あるからこのさい俺の部屋に皆入れるか。

 

 

「ほう、ここがアルスの部屋か」

 マリアがズカズカと部屋に入るとベッドの下や枕の下、さらに本棚や机の裏を突然調べだした。

「つまらん奴め。お前それでも男か」

「簡単に見つかるところには隠さないって」

 マリアは『エッチな本』を発掘して俺をからかうつもりだったのだろうが、完璧無敵の俺はそんな単純なところには隠さない。

 

「それにしてもすごい楽器の量ね」

「アルスは音楽好きだから。あ、これ懐かしいね。アルスが初め使ってたギターだよ」

 ティナが俺の初代壊れたギターを発掘した。

 

 俺自身残っているとは思わなかった。

 何だか部屋中を発掘したら後で食べようとして忘れ去られたカビパンが出てきそうで怖い。

 

「私が求めるカスタネット発見! って、なんか棒にカチャカチャがついてて、中心の持つところっぽい変なのに鈴みたいなのがついてる!? ねぇねぇねぇねぇこれはどうやって遊ぶものなの。あれかなあれかな、男の子のエッチな道具かな?」

「どこからそういう発想が出てくる。これは鈴を鳴らしながら手首のスナップでカスタネットの部分を当てて音を鳴らすんだ。表と裏で叩いたときの音が違うし指でこう押さえておけば鈴だけ鳴らせる。まあ珍しい楽器で名前は忘れたけど結構いい運動にはなるぞ」

 

 ニーナの目の前でやってみせるとすごく目を輝かせていた。

 

「やらせてやらせて何だか踊ってるみたいでカチャカチャ音もすごいし鈴鳴るしで楽しそう!」

 騒がしいニーナにはぴったりだな。

 

「私も何かいただいてもよろしいでしょうか?」

「ステラはこれが似合いそうだな」

 トライアングルを渡しておく。

「はぅ!? 何だかすごく地味なんですけど」

「いや、だってお前姫って割には地味じゃん」

 ステラが膝を突いたようだが気にしないでおこう。

 

「くそ、二段底になっていて仕掛けもあったから期待したのにこれすらダミーとは。まさか私がここまで手玉に取られるとはな」

 マリアはとても悔しそうだ。

 というかまだ『エッチな本』を探していたのかこの人は。

 

「マリアはギターでもやってみるか? 二代目ギターがまだあるんだけど」

 ティナに買ってもらう前に自分で買った物がまだ余っている。

 マリアの高めの身長とこの性格はギターがとても似合う気がする。

 

「ん、お姉さんもやるのか」

「嫌ならいいけど」

「嫌ではないが、お姉さんは君の隠した『エッチな本』を探す方が楽しいのだが」

「いや、その話題を出す度に何かニーナとステラがその辺あさりだして、アリシアの目線が痛くなるから止めてくれ」

 

 とりあえずギターを渡しておく。

 するとマリアはギターの絃を調節し始め、調節し終わると綺麗な音色でギターを弾き始めた。

 曲は適当にその場で考えて弾いている節があるがそれが逆にすごいと思う。

 

「何でもできるんだな」

「まあな。人前に出ても恥ずかしくないようにと、オルテガが色々いらんおせっかいを焼いて講師を付けてくれたからな。私はお前以上に何でもこなせる自身があるぞ」

 マリアが勝ち誇ったように笑ってみせた。

 

 

 別に悔しくなんてないやい!

 

 

「……あるす~。私もほしい……」

「ああ、お前は何がいいんだ?」

「これ~」

 フィリアがもってきたのはマラカスだった。

 まさかこんな物まで持っていたとは昔の俺、恐るべし。

 

「そうか……あそこの可能性があるな」

 ギターを弾いていたマリアの手が突然止まった。

「すまんがお手洗いに行ってくる。トイレを借りるぞ」

 やけににやけている。

 

 流石マリアだ。

 この部屋にはないと判断したのだろう。

 だけどいくらマリアでもそう簡単に見つけることは不可能なはずだ。

 

「アルス。私は何を使えばいいのかな?」

「あー、ティナは声いいから歌ってくれればいいさ。俺はギターも笛も使われているからヴァイオリンだな」

 ヴァイオリンを取り出すと妙にアリシアがご機嫌だ。

 

 そういえばヴァイオリンを弾いている時は高確率でアリシアは聞きに来たり、窓から俺を見下ろしていたりしてたな。

 

 昔プレゼントこれを選んだのはヴァイオリンの音色が好きで聴きたかったところか。

 

「はっはっは。なかなか良いところに隠していたな」

 目星をつけていたのかただ葉っぱを掛けているだけなのか、マリアがすぐに戻ってきた。

 耳元で「なかなか良い趣味ではないか」と呟いてきたのが怖い。

 

「そうそう、お前の祖父の部屋にあった本棚から楽譜をもってきたが使うか?」

 マリアは今日一番の笑みを浮かべた。

「え、遠慮しときます」

 

 木を隠すなら何とやら。

 じいちゃんの本棚に隠さずにしまっていたのに少し色物すぎたか。

 じいちゃんの『Hな本』と俺の『Hな本』では趣味の方向性が違うから、きっとそこでばれたのだろう。

 しっかりと見覚えのあるカバーのついた本をピンポイントで持ってきている。

 

 

 頼むからそれを船に持ち込んでネタにしないでくれよな。

 

 

 俺はにやけるマリアに内心怯えながらも笑顔を装い、皆にそれぞれ楽器の基本を教えた。

 それにしてもマリアだけは敵に回したくないとしみじみ思わされる一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書29―アルスの日記―

 『ルイーダの酒場』で聞いた情報だが海賊アクアブルーの船長と親父は仲が良かったらしい。アジトの場所はまっすぐ東に船を進めた先の森の中にあるそうだ。

 たまには生き抜きも必要だから皆に楽器の使い方を少し教えた。いつかみんなで演奏してみたいものだ。

 




アルスだって男の子だもの、『Hな本』の一つや二つ持っています。
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