相変わらずのクオリティーですがお付き合いしていただけると幸いです。
情報どおりに船を進ませて大陸にたどり着いた。
深い森の中にアジトがあるなんて探しにくいから勘弁してほしい。
「しかし海賊のアジトがある中船を放置しておくのは危険だな。誰か残していった方が良いのではないか?」
確かにマリアの言うとおりだ。
ここは戦力を同じくらいに振り分けた方がいいかもしれない。
俺、ステラ、フィリア。
マリア、ティナ、ニーナ、アリシア。
これが妥当……いや、俺の方が少し戦力きついがアジトに忍び込むのにうるさいニーナやとろいティナを連れて行くわけにはいかない。
なによりティナは俺を除けば唯一回復が使えるから片方に残しておく必要がある。
戦力バランス的にマリアは俺と一緒だと偏りすぎる。
でもステラを連れて行くのは何かドジしそうで怖いな。
船側の魔法攻撃がなくなるけどステラをアリシアと交換するか。
この配分なら何があっても乗り越えていけるだろう。
船はマリア達に任せて海賊のアジトに行くことにした。
「ところであの拳が出てきたらどうする? 今度は私も戦おうか?」
「ああ、アッシュって奴のことか。まあその場の空気でやってくれ。一応マリアからチェーンソード貸してもらってるし今度は大丈夫だろ」
正確に言うとマリアに『鋼の鞭』を取られてチェーンソードを押し付けられた。
でもずいぶん『鋼の剣』をカスタマイズしたものだ。
ただ鎖を簡単に付けた訳ではなく柄そのものが『鋼の剣』の原型を留めていない別物になっている。
おそらく鎖を振り回しても取れないようにしてくれたのだろう。
しばらく歩いていると意外にも簡単にアジトにたどり着けた。
「アリシア、『山彦の笛』」
「あ、うん」
アリシアは『山彦の笛』を取り出して一生懸命吹いた。
笛からは変な音色が流れてきてその音色が山彦のように返ってくる。
「おお、やっぱり『聖なるオーブ』もあるのか」
「何だか色々とショックが大きかったんだけど……」
「その内うまくなるから気にするな」
さすがに自分の下手な演奏が返ってくるのは堪えたのか、アリシアが溜息をついて肩を落としていた。
当然ながら今の音で海賊達がアジトから出てきた。
見つからないように行く筈が、少し笛を吹くタイミングを早まったか。
「ちーっす。オルテガの息子アルスだけと船長さんいるか?」
とりあえずどうどうと挨拶してみる。
オルテガの名は伊達ではないのか海賊達が騒いでいる。
「あの化け物の息子だと!?」
「自分の腕を自分でくっつけたあの」
「取立てか、取立てに来たのか!?」
なんだが親父が人間扱いされていない気がする。
親父、あんたはここで何をしたんだ。
「ついに来たか。オルテガは俺のソウルブラザーだ。歓迎するぜボウズ」
そんな騒がしい中、黒いコートに黒いハット。
左目に眼球といういかにもって感じの銀髪の男が出てきた。
マリアのようにどうどうとしていて隙がまったくない。
親父と一週間戦い続けた男だ。
間違いなく俺が今まで出会ってきた何よりも強い。
そんな偉大な男が出てきた瞬間に突然フィリアが殺気だった。
「フィリア……お前、どうして……」
海賊の船長もフィリアを目にして呆然となった。
隙のなかった男に一瞬だけ隙ができる。
それをフィリアは逃さない。
「待てフィリア!」
「どいて。そいつ殺せない」
気付けて良かった。
フィリアを押さえつけることが出来た。
海賊達が船長の前に飛び出してアリシアは混乱しながらも俺を庇うように前に出る。
「お前ら下がれ」
「しかし船長っ」
「いいから下がれ」
また出てきた時の落ち着きを取り戻しているがフィリアはまだ殺気だっている。
「自己紹介がまだだったなボウズ。俺は大海賊アクアブルーの船長カーチス。お前の連れの父親だ」
連れ、とはフィリアのことだろう。
「お前のせいで母さんは死んだ。お前のせいだ」
「フィリア落ち着きなさいって。ちょっとフィリアを船に送ってくるから後お願い」
やっぱりステラでなくアリシアを連れてきて正解だった。
突然の出来事にも慣れてきたのかアリシアは俺が指示を出す前に動いてくれた。
正直ありがたい。
「すまない」
「別にあんたのせいじゃないしあんたの為にする訳でもないから」
「ああ、ありがとう」
アリシアは少し照れて顔を逸らした。
だけどすぐに状況はあまりよくないと思い出し、海賊達に軽く頭を下げてからフィリアを連れて行く。
「いい仲間を持ったな」
「ああ、フィリアも俺の自慢の仲間だ」
初めてフィリアに会った時彼女はすべてに対して無関心だった。
関わっていくうちに実は甘えん坊であることが分かった。
それなのにカーチスを見た瞬間殺意を発した。
「いくら親父の友人だからって返答しだいで俺はあんたを許さない」
「なかなかいい目だ。度胸もいい。自分と相手の力量の差を分かっていながらその目が出来るとは…さすがソウルブラザーの息子だな。ついて来い」
立ち話でするような話しではない、と言いたいのかカーチスは俺を建物の中に案内して自分の部屋に招きいれた。
「お前ら誰も入れるなよ」
海賊達にそう言って扉を閉ざした。
完全防音設備の整った部屋…断末魔も外に漏らさないだろう。
何か間違いが起きても中を覗くまでは何もなかったことになっている、そういう部屋だ。
「俺も“オルテガ”と同じでな、家族を故郷において旅立った。もちろんソウルブラザーのように世界を救うとかそんな大それた理由じゃねぇ。ただ病気で苦しむ妻を助けるのに金が必要だった。それが俺の海賊人生の始まりだ」
大それた理由ではないと言っているが守りたいという想いは同じだ。
だけどそれだけではフィリアがあそこまで殺気立つ理由にならない。
「金のためならどんなこともやった。そして何かを守りたい奴、ただ金がほしい奴、ひたすら強さを求める奴が集まった。笑っちまう。一人で始めたことがいつの間にか大海賊の誕生って訳だ。だが俺は目立ちすぎちまった。極悪人の妻だ極悪人の娘だとののしられて気付いた時には家は壊されていて誰もいなかった。愛する家族を守るために始めたことなのにその付けがすべて愛する家族に返ってきたわけだ。これが笑わずにいられるか?」
それがフィリアの父を憎む理由。
そしてすべてから興味を無くした理由か。
他の方法で金を稼いでいればこんな事にはならなかったかもしれない。
だけどこの男は、カーチスという男は不器用だったのだろう。
「村の奴らを皆殺しにしてやろうかと思った時、あいつが、お前の親父が俺の前に立ちふさがりやがった。そして「男は構わんが女を殺すのは許さん」なんてバカなことをぬかしやがる。正直むかついたぜ。俺は最愛の家族を失ったばかりだってのにそんなこと抜かすあいつが許せなかった」
それが一週間不眠不休で戦った理由。
「だけどあいつは自分から悪役になることで俺を救ってくれた。村のバカなやつらに罪の意識を植え付けて、俺が村を守る形を勝手に作りやがった大バカ野郎だ。村人全員に家族の大切さを教えやがった。信じられねぇ奴だよ。あいつは……」
やっぱり親父は偉大な男だ。
まだ見たこともない親父の背中がすごく遠くに感じる。
だけど親父はまた遣り残したことがある。
『テドン』とマリアの問題と同じだ。
もしかしたら親父はわざと問題を残して俺を成長させようとしているのか。
いや、それは流石に考えすぎか。
「家族のために金を稼いでたなんて言い訳にしかならない。俺も苦しんでいたなんて言い訳にすらならない。俺は、あいつが…フィリアが生きていることにすら気付いてあげられなかった最低の親だ。いっそのこと悪役を演じきった方がフィリアのためかもな。俺が原因で妻を死なせてフィリアに辛い生活をさせてしまったのは事実だ」
それはフィリアを俺に任せる、ということだろうか。
そして悪役を演じて母の敵として殺される気なのだろうか。
「一つ聞く……海賊になる前は幸せだったか?」
「ああ……後悔している。だがもうどうしようもない。フィリアはお前らに任せる。人並みの幸せを与えてやってくれ」
その言葉で俺の何かが吹っ切れた。
「……ふざけるな。親は子を守るべきだ。そんなの他人に子育てを押し付けているだけだ。それに本当に娘の事を心配しているのなら自分の手で守るべきだ。一人で巣立って行けるまで見守ってあげるべきだ。綺麗事を言っている? ああ、言っているとも。綺麗事の何が悪い。夢を見て何が悪い。家族の幸せを願って何が悪い。あんたを一生俺に頭が上がらないようにしてやるから覚悟しろっ」
多分、俺は親父に言いたいことを言っているだけかもしれない。
俺は親父とキャッチボールをするどころか、親父の顔を若い頃の写真でしか知らない。
でもフィリアはちゃんと親との思い出を持っている。
もっているからこそあんなにも裏切られたと思って殺気立っているのだと思う。
そこに幸せな記憶が少しでもあるのなら、それを元通りにしてあげたい。
これはまだ子供の、親父というものを知らない俺のわがままだ。
「その強引なところはそっくりだな。まあ期待せずに待つとしよう。ほらよ、『最後の鍵』と『レッドオーブ』だ。アッシュの奴がすまなかったな。ボウズに『最後の鍵』を渡す為に取りに行かせたつもりがボウズから盗ってくるとは思わなかったぞ」
このタイミングでアイテムを渡すということは本当に期待していないのだろう。
船に戻るといつも通りの空気だった。
フィリアは落ち着きを取り戻しているし、マリアは俺とアリシアがいない間に何かしでかしたのかご機嫌でニーナとステラは俺の顔を見るなり顔を真っ赤にして逃げていく。
ティナは真っ赤な顔をしていてあたふたしているが逃げる様子はない。
「どうだった?」
「まあ目的の物は手に入れたがしばらくここで待機だ」
「そう……まあいつものことだから良いんだけどさ」
アリシアは「本当に【くろうにん】ね」と呟きながら自分の部屋に戻っていく。
『くじけぬ心』を外してみると元の【くろうにん】に性格が戻っていた。
夜、フィリアに部屋に呼び出された。
俺の部屋に来ることは多かったが呼ばれたのは初めてだ。
「あるすはここー」
ベッドに座らされた。
「私はここー」
その俺の膝にフィリアは座る。
男女の関係というよりは幼い娘が父親に甘えるそれだ。
きっとカーチスとはこんな感じだったのだろう。
「私はあるすがいればそれでいい」
俺が思っていることを感じ取ったのか、初めからそれを言うつもりで俺を呼んだのかは分からないけどフィリアはそう言い切った。
俺を自分の親の代わりにしようとしている。
きっとこれを受け入れても苦にはならない。
でも俺は本当の父親でもないし、本当の父親はフィリアの事を大切に思ってくれている。
カーチスが最悪な親ならきっと、こんな事を言わずに、フィリアの親になることを選んでいたんだろうな、俺は。
「親父のところに帰れ」
フィリアは俺がそんなことを言うとは思わなかったのか呆然としていた。
フィリアの中では俺は【やさしいひと】だったのだろうが、俺は自分に正直なだけだ。
もちろん部屋から追い出されて鍵まで閉められた。
「……あるすなんて嫌いだっ」
ドア越しからそんな震えた声が聞こえてガタンと大きな音が聞こえた。
多分ドアに何かを投げつけたのだろう。
だけど俺はここで何日も引きこもりを説得する気はない。
『最後の鍵』でドアの鍵を強制的に開ける。
「……信じてたのに」
「俺の何を信じてたんだ。俺はフィリアの親父じゃないし、フィリアの親父は俺の親父と違ってすぐそばにいる」
「……あるすのお父さんはカッコいいからそう言えるんだ」
フィリアは泣いていた。
マリアに続けて俺はフィリアまで泣かせるとは極悪人だな。
だから物を投げつけられても避けたり弾いたりはしない。
投げられて当然だからだ。
「なら自分の父親の何を信じられない?」
「あいつのせいで……お母さんは死んだ」
「不器用だっただけだ。それはフィリアが一番良く知ってる筈だ」
フィリアが押し黙る。
言い返せないから多分頭では分かってるのだろう。
時より「いじわるなあるすはキライだ」と呟く。
「別に親父の罪を許せなんて言わない。理由はどうあれカーチスは悪い事をした。そして取り返しのつかない事態になった。許さなくても、憎むな。怒るなら好きだから怒れ」
相変わらず口が下手だ。自分で何を言っているか分からない。
でもフィリアは俺に父親の姿を重ねて求めてきた節があった。
だからそう、きっと本当は嫌ってなんかいない。
ただ色々ありすぎて、好きだったことを押し込めて、憎しみだけが残った。
「……言ってること……よく分からない」
「なら質問を変える。俺のことは嫌いか?」
また少し押し黙ってとても小さな声で「キライ」と答える。
「なら俺なんかもう二度と会いたくないか? 信じたのに裏切られたもんな。俺はフィリアにひどいことをしている自覚はある」
「……いつものアルスは好き」
「それと同じだ。嫌なことをされたら誰だって怒る。相手が怒ったことで自分の罪の重さに気付ける。好きな相手だからこそ怒る時がある。好きな相手だからこそ許してはいけない時がある。でも、その感情は憎しみじゃない」
何度かアリシアに殺された俺が言うんだ。多分そう思う。
「好きって気持ちは簡単に消えない。好きだったから裏切られた時辛いんだ。人を許して罪を許さず。俺はこの言葉が好きだ。カーチスが犯した罪は許さなくてもいい。むしろ責めてやれ。だけどカーチス自身を嫌いにならないでくれ。殺したいなんて悲しいこと、簡単に言わないでほしいんだ」
俺が言っていることはとても難しいことだ。
それでもフィリアなら出来ると信じている。信じたい。
「あるすは卑怯だ。あるすがわたしをいじめてるのに…わたしがあるすをいじめてるみたいになってる」
いつの間にか俺は泣いていたらしい。
何で泣いているのかよく分からない。
ただ俺はわがままを言っているだけなのに、なんで俺は泣いているんだ。
フィリアが自分の父親と仲良くしないから?
違う。
フィリアがこれをきっかけに俺との縁を切るかもしれないから?
違う。
俺は散々御託を並べておいて結局は、フィリアに人殺しをさせたくないだけだった。
一度も見たことがない満面の笑みが見たいだけだった。
人を憎んでいる時に本当の笑顔なんて作れない。
人を殺したらきっと、もう二度と笑ってくれない。
そんな気がしたんだ。
なんて子供じみた理由だ。
「俺はフィリアに笑っていてもらいたいんだ。だから過去を引きずるのを止めてもらいたかった。多分、それだけなんだ」
「……あるす……」
フィリアが俺をかがませて首の後ろに腕を回してぎゅっと抱きしめてくれた。
「……泣いたとき、お母さんがよくこうしてくれた。……お父さんも……たまに……」
これだとフィリアよりも俺の方が子供みたいだ。
みんなが最終的に笑っている世界を作れるのなら子供だってかまわないじゃないか。
かっこ悪くても良い。無様でも構わない。笑わない女の子を笑わせてあげたい。
だけど俺は無力で、目の前にいる女の子一人笑わせることが出来ないのが悔しい。
「……わたしもあるすに笑っててほしい。ティナやステラやマリアにニーナにアリシアにも笑ってもらいたい。だから、けじめ…つけてくるね。わたしの笑えない原因を消してくる」
止めるまもなくフィリアが窓から外に飛び出して『キメラの翼』を使う。
慌てて追いかけようとするがアジトの風景が思い出せない。
「なんで……こうなるんだよっ」
上手くいかないのが人生だって分かっていた。
今日の俺は……いや、最近の俺はどうかしている。
何をそんなに焦っているんだ。
これじゃあ……どんどん親父の背中が遠のいていくだけだ。
【ルーラ】の座標を視覚情報から設定して飛んでいく。
勢いよく『海賊のアジト』に突っ込んでカーチスの部屋に駆け込んだ。
本当に、俺は、何をこんなにも焦っていたんだ。
そこには娘を抱きしめる父親と父親に泣きつく娘の姿があるだけだ。
何も無理に説得しなくても、俺は今までどおりきっかけを作ってやればよかっただけだ。
今までだって仲間を信じて遠くから見守ってきた。
大変そうだったら影から手を貸してあげるだけだった筈だ。
俺が直接手を貸す時は『ピラミッド』の時のようなどうしようもない時だけだっただろ。
多分、親父を超えなければならないという気持ちが見当違いの場所に道を伸ばしてたのかもしれない。
ちゃんと親父は手紙で書いていたではないか。
お前のやり方でやれ、と。
今回はフィリアを救すくうつもりで動いていたのに、逆に俺がフィリアに救われたようだ。
だけど俺を救うという目的がきっかけでこの親子は仲直りする事が出来た。
だからきっと、きっかけを作るのが俺の力。
俺の役目はきっかけを作ってサポートする。
ただそれだけだ。
親子水入らずのところに水をさすのは悪い。
今日はもう船に戻って寝るとしよう。
今日は『海賊のアジト』でフィリアの父親カーチスに会った。まさかフィリアの父親が俺の親父の友で海賊の船長だとは驚きだ。
最近急ぎすぎてから回りが多かったのは自重するとして『最後の鍵』と『レッドオーブ』は無事入手。熱血男のアッシュとも出くわさなかったから万々歳だ。
それと本を持ち込んで皆に見せたマリア、後で覚えてろよ。
女海賊にしなかった理由は、病弱な妻の為に海賊になってしまった男とその娘を書きたかったからです。
後にフィリアがここの頭になるものの、自分のキャラクターを立たせる為に大本の性別を変えてしまう暴挙を行なってしまった私の未熟っぷりと来たら(吐血
この作品に置いてフィリアというキャラクターが出来上がってしまった以上、ここもまた今書いても同じような設定で書き進めることになるでしょう。