【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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ようやくヤマタノオロチとの決着。


第六話「無理の代償」

 マリアを連れて【ルーラ】で『ジパング』に戻った。

 

 洞窟には向かわない。

 俺にはやらなければならないことが残っている。

 親父の友、卑弥呼がいる館にもぐりこむ。

 

 そこには旅の泉と傷ついた卑弥呼が倒れていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだろう。

 栄養補給に見張りの男を食らっている。

 

「アルス」

「ああ、こいつがオロチだ」

 

 カーチスの情報では卑弥呼が『聖なるオーブ』を持っていて、親父の仲間だったらしい。

 なのに親父のこともオーブのことも知らないと言った。

 親父を知り合いは皆オルテガを尊敬していた。

 それを否定するということはまず別人の線が高い。

 

 女王が交代したという線もあるが村人に聞いたところここ十年交代したことはないそうだ。

 そして『エジンベア』を襲撃したモンスターはステラに成り代わろうとしていたらしい。

 警戒はしておいて正解だった。

 

 ただ唯一の失態はこいつを皆のところに行く前に正体を暴いて退治できなかったことだ。

 みんな無事だといいんだが、まあ大丈夫だろう。

 

「ふふふふふ……ここで見たことを他言しないと誓うのなら見逃して」

「そんなこと聞いてない。本物の卑弥呼をどうした」

 

 チェーンソードを構える。

 聞かなくたって分かることだが希望を捨てたくなかった。

 

 

「ああ、あの女か。最後まで抵抗してな。面白かったぞ? 勝てないと分かっていながら挑んでくる。あのカンダタという男もそうだ。人間とはバカな生き物よのう。だがこの人の皮はお気に入りじゃ。アレから女を食らうのが無性に楽しゅうて楽しゅうて」

 

 

「もういい。黙れ。そして胸に十字を切り奪った命に命乞いをしながら死んでいけ」

 マリアが俺の言おうとしてたことを言ってくれた。

 偽者の卑弥呼は目の前で竜の姿に変わっていく。

 

 『ヒドラ』タイプの癖に頭が三つしかない。

 アリシア達がずいぶん暴れてくれたようだ。

 三つの口が【火炎の息】を吐いて建物に火がつく。

 

 その騒ぎに館の見張りが次々に集まってきた。

 

「ちょうどいいところに来た。我の糧となることを光栄に思うがよい」

 

 俺達を無視して駆けつけてきた兵士を食らい始めた。

 一人食らうごとに頭が一つ増えていく。

 

「貴様っ」

 

 チェーンソードを投げつけるが硬い皮膚に弾かれた。

 炎系は効きそうにない。

 だがこれ以上身勝手に命を奪われてたまるか。

 多少のダメージは一人食えば治るといわんばかりに、俺を無視して館を吹き飛ばして外に飛び出していった。

 

 

「マリア、村の人の非難を頼む」

「一人で戦うつもりか?」

「持久戦になる」

 

 

 これ以上犠牲が出る前に『ヤマタノオロチ』を追う。

 外に出ると首が八つに増えていた。

 

 マリアは俺よりも早く『ヤマタノオロチ』の前に回りこむ。

 そういえば『星降る腕輪』を俺から取り上げていたんだったな。

 

 

 『ヤマタノオロチ』の足元に沢山の死体がある。

 食い千切られ無残に散らばった血と肉の残骸。

 その側で「お母さん」と6歳くらいの少年が泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様に分かるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリアが地を蹴り矢のように飛んで行き、『鋼の鞭』ですれ違い際に『ヤマタノオロチ』を()()()()()

 

 

 

「親を失った子の気持ちが魔物の貴様に分かるか?」

 

 

 

 更に矢のように飛んで切り裂く。

 

 

 

 

「村を失う子の気持ちが分かるか?」

 

 

 

 

 繰り返し矢のように移動して、『ヤマタノオロチ』を中心とした五芒星の角度から斬り裂き続ける。

 『ヤマタノオロチ』はほぼ同時に五箇所から受ける攻撃スピードについていけてない。

 これが『星降る腕輪』でスタミナ配分を考えずに動いているマリアの力か。

 

 

 

 

 

「チリ一つ残さず消し飛べ……究極剣技【アルテマソード】!」

 

 

 

 

 

 最後に闘気を込めた一撃が五芒星の中心で爆発を起こした。

 滅茶苦茶な攻撃力だ。

 

 地面は抉れて『ヤマタノオロチ』の巨体が空高く吹き飛ばす。

 

「アルス!」

「【ライデイン】!」

 上に上がってしまえば全力で放てる。

 

 【ライデイン】を『ヤマタノオロチ』に向けて連発する。

 確実にダメージを与えている。

 だがまったく気にしている様子もなく、【火炎の息】を【ライデイン】を食らいながらも上から吐いてくる。

 

「っ」

 

 『魔法の盾』で防ぐがダメージがデカイ。

 『ドラゴンシールド』か『フバーハ』が欲しいところだ。

 マリアの無事を確認してしようと辺りを見回すが、地上にマリアの姿はない。

 なら、上か。

 

 

 

「食らって回復するつもりなのだろうが、そんなこと易々させると思うか?」

 

 

 

 いつの間にかマリアは『ヤマタノオロチ』の真上まで飛び上がって鞭で地面に叩き落とす。

 

 そして再び五芒星に切り刻んでいく。

 

 このままなら身動きさせずに倒すことが出来るかもしれない。

 だが今までこの技を使わなかったのはなぜか。

 普通の身体ならまだ負担は少なかっただろう。

 だけどマリアの身体は毒でもうボロボロだ。

 どこまでひどい状態なのかは聞いていないが本来戦える身体ではない筈だ。

 

 

「やめろマリア!」

「まだ行ける。止めるな」

 

 

 地面に血で滲んだ五芒星が出来ている。

 『星降る腕輪』で全力で動き続けられる身体になっているせいか、それとも身体が悲鳴をあげていることに気付いていながら続けているのか、おそらくマリアのことだ。

 後者だろう。

 

 再び爆発が『ヤマタノオロチ』を上に打ち上げる。

 

 

 

「……後一発くらいはいけると思ったのだがな」

 

 

 

 マリアは追撃をしない。

 いや、できない。

 咳き込んで嘔吐している。

 無理しすぎだ。

 

 再び空中で【火炎の息】を吹き出す。

 マリアは嘔吐しながらもそれを回避した。

 

 

「無茶しすぎた罰に今日の飯マリアが作れよ」

 

 

 ずっとマリアの下に走っていたがようやく合流できた。

 今度は俺がマリアから『星降る腕輪』を没収だな。

 

 

「そうか。それは張り切って作らねばな」

「変なもん作るなよ」

「失礼な。私は何でもこなせると言っているではないか」

 

 

 気休め程度に【ベホイミ】を掛けるがマリアの顔色は悪いままだ。

 だけどまだ戦う気満々な分性質が悪い。

 せいぜい無理させないように上手く立ち回るとしよう。

 

 二発目の【火炎の息】を盾で防いだ辺りで『ヤマタノオロチ』が地面に落ちてくる。

 周りに人はもういない。

 

 

 

「おのれ人間っ! こうなればもう手段はえらばぬ。この島ごと飲み込み貴様らを滅してくれる!」

 

 

 

 『ヤマタノオロチ』の体が地面に同化していく。

 流石に島一つの質量を吸収されたら勝てそうもない。

 どんどん大地の力を吸収して周りの植物を枯らしながら回復していく。

 

 

 

 

 

「後一発……【アルテマソード】を放つ。トドメは刺せそうか?」

「まあチャージ時間は掛かるがいける。後、船掃除を追加な」

「それは困ったな」

 

 

 

 

 

 マリアは笑ってから一息呼吸を整え、再び矢のように『ヤマタノオロチ』に飛び込んで行った。

 悔しいが今はマリアに頼るしかない。

 マリアが時間を稼いでいる間にチャージを開始するとしよう。

 

「【ライデイン】」

 

 回復し続けている『ヤマタノオロチ』にやっても焼け石に水だ。

 空に掲げた剣に【ライデイン】を落とす。

 【火炎切り】と同じ要領だが流石に慣れてない魔法は制御が難しい。

 

「このくらい……」

 

 きっとこの先この技に世話になる。

 だからここで成功させてものにする。

 

 剣に落とした瞬間電撃が逆流した。

 体の内からバラバラに吹き飛びそうだ。

 マリアが【アルテマソード】の最後の一撃で『ヤマタノオロチ』を打ち上げた。

 

 

 体が熱い。成功したのか失敗したのか分からない。ただ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――チャージは完了した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが最後のチャンスだ。決めろ」

 マリアはそう言って膝をついている。

 しばらくは無理がたたって動けないだろう。

 

「まかせろ」

 

 【ルーラ】で体制を崩して打ち上げられた『ヤマタノオロチ』の真上まで飛ぶ。

 炎を吐こうと口を開いているが遅い。

 

 

 

「貫け……【稲妻切り】!」

 

 

 

 【デイン】の力が宿った剣を振り下ろし、雷の刃でヤマタノオロチの体を二つに割った。

 『ヤマタノオロチ』の体は回復が間に合わずに崩壊していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――せめて貴様だけでも道連れに―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崩壊する“ヤマタノオロチ”の身体が膨らんだ。

 こいつ、吸い取ったエネルギーを爆発させるつもりか。

 蛇というのは執念深くて嫌いだ。

 

 【ルーラ】は……間に合いそうにないか。

 俺の死体が残ればいいが後は神頼みだろう。

 

 

 

 

 

 

「アルス!」

 アリシアの声がした。

 アリシアがまっすぐ俺に向かって飛んできている。

 

 

 

 そして『ヤマタノオロチ』が爆発した。

 

 

 

 爆風で俺の身体が吹き飛ぶがアリシアが抱えてくれたおかげで直撃は避けられたようだ。

 

 

「バカかお前っ。一歩間違えば一緒にお陀仏のタイミングだったぞ!?」

「バカって何よ!? 人が折角助けてあげたっていうのに!」

 

 

 アリシアは泣いていた。

 取り乱していないところを見ると仲間内は無事のようだ。

 多分、カンダタの死についてだろう。

 

 

「……ごめんアルス。カンダタは……助けてあげられなかった」

「アリシアのせいじゃない。とりあえず助けてくれてありがとな」

 

 人の死というものをまじかで見たんだ。

 ショックは大きくて不安もあっただろう。

 アリシアの頭を優しく撫でてやる。

 

 

「撫でるな……私はそんな子供じゃないっ」

「そういうのはこういう状況で胸の感触を与えるくらいのスタイルになってから言え」

 

 

 そこで俺の記憶は少し飛んだ。

 バカをやっている分にはアリシアもみんなも元気でいてくれる。

 それでいい。

 

 

 今回の被害はあまりに大きかった。

 だから少しでも明るく振舞おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書32―アルスの日記―

 今日は『ジパング』にいる卑弥呼に会いに行ったが、既に『ヤマタノオロチ』に入れ替われていた。カンダタに罪のない村人。被害は大きかったが『ヤマタノオロチ』を倒して『パープルオーブ』は手に入った。早く平和な世の中を作らないとな。

 今日の夕飯は無理しました賞でマリアに作らせたら悔しいぐらい豪華だった。

 

 




ヤマタノオロチの設定ベースは『ロトの紋章』からだと思われます。(同化や超再生を読み返して自分で「ふぁ!?」っとなる作者)
そしてマリアの切り札アルテマソード。
『ドラクエ7』仕様なので攻撃力が上回っていればはぐれメタルさんも一刀両断できます。(当時リメイク前なので単純に闘気による攻撃力で一刀両断する剣技として見ています)
破壊神を破壊した男ばりの攻撃力とマリアはまさに決戦兵器です。

アルスの技が稲妻斬りなせいで新技なのに全てにおいて負けているというジレンマ。
当時はもう一段回上の雷神斬りもないので仕方がありません。
『ダイの大冒険』のライデインストラッシュをしたかったのですが、今までアバンスラッシュのような剣技を行ってこなかった為、無難な稲妻斬りにした覚えがあります。
今思えばどうせ後にギガスラッシュを使うのだから、ライデインスラッシュでよかった気がしますね(白目
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