【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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骨抜きにされてしまっているお姫様の小さな約束。


この青空に約束を-No.2ステラ

「少しの間『エジンベア』に帰ろうかと思うんです」

「あいつにセクハラされたの!?」

 

 アリシアさんは相変わらずアルスさんに厳しい。

 アルスさんがアリシアさんに締め上げられていた。

 ちょっとこの光景がしばらく見られなくなるのは残念だと思う。

 

 

「ちょっと力不足を感じまして……このままだとあまり役に立てないんじゃないかって思い始めたんです」

 

 

 『黄金の爪』があれば私でも戦えると思った。

 非力だから武器で補おうと『黄金の爪』をアルスさんと冒険する理由にした。

 

 

 でも実際は何も出来なかった。

 人攫いさんのお友達を守れなかったし、人攫いさんも守れなかった。

 やっぱり私自身が強くならなければダメ。

 

 

「いや、役に立つステラはステラじゃないだろ」

「はぅ!? そこまで酷く言うことないじゃないでしょうか!?」

「私も言いすぎだと思うな」

「だが役に立たないからこそのマスコットであろう」

 

 

 マリアさんが私を抱きかかえて頭を撫でてくる。

 真面目に話しているのにアルスさんもマリアさんも酷い。

 

 

「でもさでもさ、それならアルス君に特訓つけてもらえばいいんじゃないかな? ほらほら毎週好例のスパルタ特訓」

 

 

 ニーナさんの言うとおりアルスさんに出来れば教わりたいし一緒に居たい。

 でも多分私はアルスさんにどこかで甘えてしまう。

 だから私は強くなれない。

 

 

「賢人達に賢者になる修行をつけてもらおうかと思うんです。それで賢者になってから武道家になれば魔法も使える最強キャラの誕生です」

 

 

 だから一度アルスさんの側を離れないと。

 アルスさんは「私が帰りたくなるまで」連れまわしてくれると言ったから「帰りたい」と言った今止めようとはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 だけど少しは「行かないでくれ」とか言ってくれると嬉しかった。

 

 

 

 

 

 出発は今日の昼『キメラの翼』で。

 最後にアルスさんと二人でお話しがしたいから、朝早くに甲板に出たのに全然来てくれる様子はなくて潮風が鼻につーんとくる。

 

 

「アルスさんのバカ」

「誰がバカだって?」

「はぅ!?」

 

 

 不意に頬をつねられた。

 こんな酷いことするのはアルスさんだけだ。

 私がアルスさんの文句を言うまで隠れていたとしか思えないタイミングだ。

 

 

「たく、頑張って強くなって戻って来いよ」

 

 

 でもその一言で許してしまう私はもうアルスさんに骨抜きにされているみたいだ。

 戻ってくるのを待ってくれているって分かっただけでこんなにも嬉しい。

 だから「さよなら」は言わない。

 

 

「はい。またお互い元気な姿で会いましょうね」

 

 

 それは約束。

 青空の下で交わした小さな約束。

 強くなればまた会えると思えばきっと私は頑張れる。

 私はそうこの青空に誓って甘えてきた『黄金の爪』をアルスさんに返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書33―アルスの日記―

 今日はステラが『エジンベア』に帰っていった。戦力になるために魔法を覚えるつもりらしい。ステラが悩んで決めたことだから暖かく見送ろう。

 ニーナはニーナで『ヤマタノオロチ』戦で何かを悟ったのか街づくりを手伝うと言い出した。みんなに説明する俺の身にもなってくれ。

 そんな訳であっという間にメンバーが4人になってしまった。早くみんな戻ってきてもらいたいところだ。

 

 




ジパングで人の死を目の前にしたステラはアルスの為にも強くなろうと決意しました。
この一人ずつパーティーを抜けて、その後また合流する流れは、商人のニーナだけパーティーから外れるのは可哀想だなと思った作者のニーナ贔屓かもしれませんね。
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