俺は『骸骨剣士』である。名前はまだない。
俺は『骸骨剣士』の中でも特に優れていて、自分より強い魔物の指揮官として『エジンベア』の制圧を任された。
力バカの『ボストロル』が国一つを乗っ取れたんだ。
俺にも出来ると思っていた。
が、結果は勇者の妨害により惨敗。
名誉挽回のために『渇きの壺』だけでも奪おうと勇者を追ってみたが、変な男に邪魔されて失敗。
ついに格下げされて『ヤマタノオロチ』が制圧した田舎の島国の護衛につかされた。
だが神は俺を見捨てなかった。
再び勇者が俺の前に姿を現し、【メタパニ】作戦で勇者を亡き者に出来た。
これで俺はまた上の職場で活躍できる。
神は死んだ。誰かがそう言った。
殺したはずの勇者が復活している。
【ザオラル】は勇者しかまだ使えないと思ったら、棺おけで死体を保護して教会まで運んだらしい。
俺が見たのは『ヤマタノオロチ』が勇者のなんかよく分からないすごい技でトドメを刺された瞬間だった。
俺の評価は『ジパング』防衛失敗。
俺は元々いた『サマンオサの洞窟』に帰らされた。
「よく戻ってきたな兄弟」
「うるせぇよ。ほっとけ」
正直ここに帰ってくるつもりなんてなかったのに、普通の『骸骨剣士』の連中が歓迎パーティーなんて開きやがった。
「聞いてくれ兄弟。俺この戦いが終わったら結婚するんだ」
そんな死亡フラグを言われても困る。
というかお前骨なのに結婚するのか。
同じ骨として結婚しても楽しいことなんて何一つないと思うぞ。
勇者が『サマンオサ』で捕まったらしい。
おそらく勇者一行は勇者を助けようと『ラーの鏡』を手に入れにここまで来る筈だ。
だが問題は勇者一行がおそらく【棺おけの加護】を受けていることだ。
噂でしか聞いたことないが、前回死体を無事に教会まで届けているのだから間違いないだろう。
システムはよく分からないが奴らは殺しても生き返る。
どうすればいいんだ。
「兄弟、それなら魂を念仏で成仏させればいいじゃないか」
なるほど。その手があったか。
既に魂が地上になければ復活しようがないだろう。
普通の『骸骨剣士』のクセによく考える。
「ここにこう宝箱をおいて最後に【ミミック】の不意打ちで【ザキ】だ。経典を貸せ。五分で覚えてやる」
勇者一行が来る前に経典を丸暗記する。
これで準備万端だ。
だが勇者一行に【ミミック】だと悟られたら不味い。
何かで気をそらさなくては。
「俺たちが囮になるぜ兄弟」
戦いが終わったら結婚すると言っていたくせに囮役を買ってでてきた。
なんて無謀な奴だ。
だがここで勇者一行を全滅させることが出来れば魔王軍の勝利は間違いない。
知らない女が先頭を歩いているが所詮新入りだ。
気にすることはない。
そう思ったが『骸骨剣士』達が簡単にやられてしまった。
指揮能力は勇者と同等とは厄介な奴だ。
だが、宝箱を順番に開けていって最後の一個も開けた今がチャンスだ。
『ミミック』の【ザキ】が先頭にいる女に当たった。
一人ずつ確実に成仏させてやる。
俺は暗記した御経を唱えた。
完璧な御経だ。
俺はついに勇者一行を一人消滅させた満足感か何か解放された気分になってきた。
暖かい。心が温まる。
今思ったがアンデッドの俺が御経読んでどうするんだ。
気づいた時にはもう遅かった。
死亡フラグを簡単に口にする『骸骨剣士』の言葉を鵜呑みにするんじゃなかった。
それに納得した時点で俺にも死亡フラグが立っていたとは……くそ、体が消えていく。
「ダメだよ。そんなことしたら」
誰かの声がした気がした。
「これにこりたら仲間達と静かにここで暮らしてね」
女の声だ。
いつの間にか俺の体の崩壊は止まっていた。
倒された筈の仲間達も復活している。
勇者一行はもう『ラーの鏡』を手に入れて洞窟を出た後だろう。
また作戦失敗か。
でも何故だかこれでよかった気がする。
もしも勇者一行を倒していたらあの声の主はきっと俺を助けてはくれなかった。
他の魔物も死んだままだった。
多分あの声の主が【棺おけの加護】なのだろう。
神の一種なのか精霊の一種なのかは分からないが、魔物の俺達まで助けてくれたんだ。
きっと偉大な方だ。
人間は嫌いだが折角拾われた命だ。
ここで普通の『骸骨剣士』の奴らと普通に暮らすのも悪くないだろう。
『ロマリア関所』から『オリビアの岬』を通って『旅の扉』で『サマンオサ』についた。
正直『旅の扉』はもう使いたくないところだ。
『サマンオサ』では偽者の王が人を片っ端から処刑しているらしい。解決するためにわざと捕まってみたところ姫に助けられて本物の王も見つけた。
『変化の杖』を見破るために『ラーの鏡』を『サマンオサの洞窟』で見つけたから後は明日俺の身代わりになってくれた姫の処刑の時に偽者の正体を暴いて倒せば万事解決だ。
各自明日の戦闘に備えてゆっくり眠るように。
付きまとっていた『骸骨剣士』は改心してくれたようだ。
次にあったら温かく迎えてやろう。
アリスによって冒険の書に付け加えられた二文の話でした。
フラグが立ちました。