体がうまく動かない。
やはり【ギガデイン】は体に負担が掛かり過ぎたか。
ベッドの上で寝かされている。
こんな所でのんびりしている暇なんてないのに。
「ごめんね、アルス……」
ティナは謝ることはない。
ただ俺が無力だっただけだ。
守るって決めたのに守れなかった。
好きな人すら守れなかった。
「本当は私が【棺おけの加護】になる筈だったの……」
「…え?」
今、ティナは、なんて言った?
「でもアリスちゃんが代わってくれた。代わりに【棺おけの加護】になって寂しい思いをして……それなのに私は何もしてあげられなくって…」
多分、ティナも存在を消す能力を持っていたのだろう。
でも友達が棺おけの加護になるのをアリスが黙って見ている訳がない。
俺だってそんな能力があったら代わってやる。
「ずっと申し訳なかった。アリスちゃんが居ないことになっているのに、私はみんなと一緒に居られて……アルス君と一緒に居られて……一緒に居られるだけで幸せなのにそれ以上の事をたまに望んでしまって……それなのに名前すら思い出せなくて、酷いよね、私……」
ティナはいつものように泣いている。
ずっとそんな事を気にしながらこいつは旅をして、申し訳なくって目立たないよう望まないように生活していたのか。
やっぱり【棺おけの加護】なんて初めから必要なかったんだ。
「お願い……アリスちゃんを………助けて」
こんなのただ悲しいだけだ。
世界を平和にするという大儀を掲げたとしても、こんな生け贄まがいの【棺おけの加護】なんて要らないんだ。
「当たり前だ」
まだきっと間に合う。
でも今のままだと勝てない。
おそらく『バラモス』はまた魔物を何体も並べて待ち構えるだろう。
万全の状態じゃない俺が司令塔となるとして前衛一人、前衛支援一人、後衛一人が最低でも二セットはいる。
そうしないと力を温存して『バラモス』にたどり着くことすら出来ない。
人数が、足りない。
「またずいぶんシリアスな展開だねー。そんな魔王と戦っている幼馴染を助けに行く最大の見せ場に私を置いていくのは不逞野郎ですヨ」
少しだけ、懐かしい声がした。
ニーナだ。
「まったく、そんな浮かない顔をしてアルスの心はもう折れてしまったのか?」
マリアも居る。一体どうして。
「アリシアが飛んできてアルスの大切な人が危ないって言うものでな。まだ【ギガデイン】をモノにしてなかったとは情けない奴め」
マリアが俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「アリシアは『エジンベア』と『海賊のアジト』にも周っているみたいだ。それと手を貸してくれるかもしれない『ポルトガ』と『サマンオサ』にもな。無論我が『ロマリア』も全面的に私の独断で協力させてもらうぞ」
マリアは笑いながらそう言っているが、きっと軍を動かすのは大変だった筈だ。
それにアリシアも切羽詰ったこの状況でよく混乱せずに皆を呼んでくれた。
後で無鉄砲に走ろうとした俺を止めようとしたのに怒鳴り散らしたことを謝らないとな。
「ステラとフィリアは現地で合流する。私達は【ルーラ】で『レイアムランドの祠』に行き『ラーミア』を復活させ、そこから直接『バラモス城』に飛ぶ。『レイアムランド』の景色は覚えているな?」
「ああ、【ルーラ】でちゃんと飛べる」
記憶力には自身がある。
存在の消えたアリスのこともちゃんと覚えられたんだ。
アリスの為だったらどこへだって飛んでみせる。
「アルス。皆を呼んできたわよ。って、ニーナとマリアさんはもう来てるみたいね」
息を切らしてアリシアが入って来た。
「すまない」
「謝るなっ。私はアリスに聞きたいことが山ほどあるし文句もたくさんあるの! 休むなら移動中。少し辛いだろうけど【ルーラ】で飛んでよ」
「ああ……そうだな。ありがとう」
「だからお礼も言わないでよ……バカ」
皆がまた揃った。
まだ希望はある。
だからきっとアリスを助けることが出来る。
助けて『バラモス』を倒せばアリスはもう普通の女の子だ。
これで全てが終わる。
俺は【ルーラ】で『レイアムランドの祠』に飛んで『ラーミア』を復活させた。
「世界の……いや、俺達の希望の翼になってくれ。『ラーミア』!」
俺に答えるように『ラーミア』は美しい鳴き声を轟かせ、その巨大な翼を羽ばたかせた。
魔王『バラモス』は強大な敵だ。だけど俺には仲間がいる。
復活させた『ラーミア』でアリスを助けに『バラモス城』に飛んだ。
今度はもう負けない。
全員集結していざバラモス城へ。
次章バラモス編と打ち切り用のエンディングで終了予定です。