プロローグ
不死鳥『ラーミア』の背中は心地よい。
これで『バラモス城』に着くまでゆっくり休めるだろう。
状況が状況だからニーナもマリアも静かだ。
今のうちに眠って失った体力を回復させるのが一番だが、アリスのことが気になってなかなか眠れない。
俺達の船まで【ルーラ】で飛んでもいいが、それで結界が張られていて【ルーラ】だと進入できなかったらシャレにならない。
この移動手段が一番確実で安全だ。
不死鳥だけあって何か加護がついているのか『ラーミア』は速度を感じさせない乗り心地だ。
安定していて実感がわかないが『ラーミア』の移動速度は船よりもずっと早いのだ。
すぐに『ネクロゴンド』まで辿り着ける速さだろう。
休む時間なんて限られている。
それがわかっていても眠れない。
ふと横目でアリシアを見てみると、どこから取ってきたのか新しい魔道書に目を通している。
ティナは皆の武器防具の手入れをしている。
マリアは無駄な体力を使わないように目を閉じて瞑想していた。
ニーナは道具の整理をしているようだ。
皆それぞれ戦闘に備えて準備をしてくれている。
まだ未熟だった俺の【ギガデイン】による反動は回復魔法だと回復しないんだ。
今俺に出来ることは休むことだけだ。
「……【ラリホー】しとく?」
ティナが『稲妻の剣』の手入れをしながら訊ねてきた。
そうしてもらえるとありがたい。
「頼む」
俺はティナの【ラリホー】に頼ることにした。
ティナは整備していた道具をしまうと、俺の頭を持ち上げて自分の膝の上に乗せる。
「ティナ?」
「うなされないように。大丈夫、絶対に間に合うから。皆、アルスに力を貸してくれるから」
髪を手串するように優しく撫でられた。
温かい温もりに温かい言葉が心にしみて、思わず涙が出そうになるがぐっと我慢する。
一人で戦っていたアリスはあんなにも強かったのだ。
時間稼ぎに徹すれば持ちこたえてくれている筈である。
ティナの言う通りアリスは絶対に助ける。
間に合うに決まっている。
「【ラリホー】……。お休み、アルス。皆で迎えに行ってあげようね」
ティナの【ラリホー】で、ゆっくりとまぶたが重くなっていく。
今まで受けた中で一番優しく安らぐ【ラリホー】で俺はようやく眠りにつくことが出来た。
冒険の書45―アルスの日記―
魔王『バラモス』は強大な敵だ。だけど俺には仲間がいる。
復活させた『ラーミア』でアリスを助けに『バラモス城』に飛んだ。
今度はもう負けない。
あまり気張らずにアルスのペースで行け。行く手を阻むものは全て私が切り開いてやる。
一日一章という電撃投稿もいよいよ最終日。
一人でも楽しんでくれる人がいるならと投稿し出した黒歴史。
残り僅かを少しでも楽しんで頂けたら幸いです。