【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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アリシアとアリスのお話。


x忘れてはいけないことxNo.1アリシア

 信じられなかった。

 何よりもアリスのことを忘れていたのが信じられなかった。

 

 何で私は友達のこと忘れてたんだ。

 例えそういう効果の魔法だったとしても忘れたらダメなことだってある。

 

 

 

 アリスは昔からアルスと仲が良かった。

 

 

 

 

 誰にでも優しい子でアルスに紹介された。

 不器用な私を見て初めは手紙でやりとりしてくれた。

 

 

 「元気にしてる」とか「家では何やってるの」といった感じの普通に話してもいいような内容から手紙は始まった。

 

 

 仲良くなってからも、ずっと広場の木下に埋めてある宝箱に手紙を入れてやり取りを続けていた。

 仲良くなったきっかけだからずっと続けていきたかった。

 それとアリスとの手紙のやり取りは自然と素直に返事を書けた。

 

 

 

 

 そしてその日はアルスの誕生日だった。

 

 

 

 

 

「ところでアリス。最近アルスとはうまくやってる?」

「私アルス君と付き合ってるわけじゃないんだけど」

「何言ってるのよ。どう見てもお似合いじゃない」

 

 そう、二人はお似合いだ。

 アルスは私やティナやニーナとも仲がいいけど、アリスに対する態度だけどこか少し違う。

 

 私でも気付けたんだ。

 鈍感なアルスならとにかくアリスがそれに気付いてない訳ない。

 

「まさか私たち気にして付き合わない……って言うんじゃないでしょうね?」

「んー、それとはちょっと違うかな。今ならアリシアもチャンスあるよ?」

「私はいいのよ私は!」

 

 第一アルスが好きなのはアリスだ。

 私はアルスのことが好き……だと思うけどアリスなら許せる。

 ティナとニーナでも許せる。

 

 

 

 みんな私の大切な友達だから祝福してあげないと、ダメなんだから。

 それにアリスは私の最高の友達だから悔しくはない。

 

 

 

「アリス、やっぱり私に向いてないんじゃない?」

 手紙で「魔法使いの才能があると思うよ」なんて言われたから、実際にアリスに教えてもらったけど【メラ】すら出せない。

 

「そんな事言わないの。アルス君が魔王退治に行くまで後三年はあるんだから、ゆっくりやろう」

 そう言ってアリスは毎晩私の特訓に付き合ってくれた。

 

 

 

 それのおかげでようやく飛ばないけど【メラ】の火の玉は出せるようになった。

 

 

 

 アリスに自慢したかったけどもう夜遅いし、その日は昼からずっと雨だったから呼ぶのは悪い気がする。

 

 手紙に書いて宝箱にしまっておこう。

 きっと明日の朝にでも読んでくれると思う。

 私は手紙を書いて傘を広げて外に飛び出した。

 

 いつも埋めている木の下を掘り返して濡れないように宝箱に傘を差して手紙をしまう。

 うん、泥もつかなくってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとう、アリシア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝箱を埋め終わると後ろからアリスの声がした。

 アリスも宝箱に手紙を入れに来ていたんだ。

 振り返ると傘も差さずにアリスが笑顔で立っていた。

 

 

「ちょっとアリス! 傘も差さないで風邪引いたらどうするの!?」

「それを言ったらアリシアも宝箱に傘刺してずぶ濡れだよ?」

 

 

 それもそうだった。

 でもアリスは傘すら持っていない。

 多分アリスの家はすぐ近くだから窓から私の姿を見てやってきたのだろう。

 

 

「それとごめんね。折角【メラ】覚えてくれたのに私はもうアリシアに魔法を教えてあげられないや」

 

 

 アリスは笑ってそう言っていた。

 様子がおかしい。

 

 いつも嬉しそうに笑っていたのに作り笑いにしか見えない。

 強がっているようにしか見えない。

 雨でぐしゃぐしゃに濡れた顔が泣き顔にしか見えない。

 

 

 

 

 

「私のことは忘れていいから、みんなと一緒にアルス君のことお願いね?」

 まるで遺言のようだった。

 

 

 

 

「忘れていいって……そんなことできるわけないじゃない。何かあったの?」

「うん、ちょっとね。多分次に会う時……私はもう……」

 

 後半が聞き取れなかった。

 聞きたくなかった。

 アリスがどこかに行ってしまう。

 行かせたくない。その一身でアリスを抱きしめた。

 

 

 多分このとき私は泣いていたと思う。

 

 

「私のこと嫌いになったの? 魔法全然上達しないから嫌いになったの!? 一緒に……居たくなくなったの!?」

「そんな訳ないよ。私だって……ずっとアリシアの友達でいたかった」

 

 

 いつの間にかアリスの笑顔は消えてて雨の雫じゃない本物の涙を流していた。

 初めて見た。

 アリスが泣くくらいどうしようもないことなんだ。

 

 

「この業はティナじゃ耐えられない。それにいざという時にみんなを守ることが出来ない。私はみんなが壊れていくところなんて見たくないから。みんなに笑っていてほしいから」

 

 

 アリスの体が透けていく。

 抱きしめている感触もなくなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルス君をお願いね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして私の中からアリスは消えた。

 

 

§

 

 

 私は一番の友達のことを忘れていたんだ。

 木下を掘り起こせばアリスと過ごした思い出がたくさん埋まっていたのに、今まで気付けなかった。

 

「これって……」

 

 掘り起こした宝箱の中に古ぼけた魔道書と、最近入れられたと思われる手紙が古い手紙の山の一番上に置かれていた。

 

 日付を見ると『ネクロゴンド』に行く前の日にちになっている。

 私は手紙の封を開けて目を通してみた。

 

 

 

 

私の親友アリシアへ。

 あなたがこれを読んでいるということは私の身に何かあったみたいだね。

 でも後悔はしてない。きっと私がダメでもみんなが生きているから。唯一つ心残りなのはアルス君とティナのことかな。

 多分二人はアリシア以上にショックが大きかったと思う。だからくじけずに二人を励ましてあげて。それと『バラモス』を倒すには人数が必要だから別れた仲間を集めてから『バラモス』に挑んでほしい。

 一緒に入れておいた魔道書はティナの両親が開発して私が引き継いだ魔法が載っている。アリシアならきっとマスターできると思うよ。

 戦いが終わった後もアルス君をよろしくね。

アリスより

 

 

 

 

 こんなの認めない。

 アルスが私を選んでくれるというのなら喜んで受け入れる。

 だけどこんな譲るようなマネをして、影からみんなを守って、また居なくなってアルスに心配掛けて、私とティナにも心配掛けて消えるなんて許さない。

 

 

 言いたい文句がたくさんある。

 言いたい想いがたくさんある。

 だからアリスは絶対に助ける。

 アリスが居る中でアルスに振り向いてもらうんだ。

 

 

 まだ泣かない。

 アリスはきっと生きている。

 だから助けるためにみんなを集めるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書45―アルスの日記―

 魔王『バラモス』は強大な敵だ。だけど俺には仲間がいる。

 復活させた『ラーミア』でアリスを助けに『バラモス城』に飛んだ。

 今度はもう負けない。

 

 あまり気張らずにアルスのペースで行け。行く手を阻むものは全て私が切り開いてやる。

 

 私もアリスを助けたいんだから一人で勝手に突っ走らないこと。いいわね?

 

 




【いじっぱり】だけど、真っ直ぐな時はどこまでも真っ直ぐな、そんなアリシアでした。
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