【くろうにん】の書(完結)   作:へたペン

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バラモスとの決戦。
大分戦場がごちゃごちゃとしております。


第四話「魔王バラモス」

 眠ったおかげで少し体が楽になった。

 

 『バラモス城』周辺にはまだ結界が張られている。

 まだアリスは戦っているのだろうか。

 

 『ラーミア』から見下ろした戦況は既に『ポルトガ』、『ロマリア』、『エジンベア』、『サマンオサ』の船が四方から島に上陸していて、端の方には海賊船も泊まっている。

 

 『ネクロゴンドの祠』の方でステラとフィリアが手を振っていたのが見えたので、『ラーミア』をそこに下ろした。

 

「アルスさんお久しぶりです」

「アルスー。元気でろー」

「二人共相変わらずだな。とりあえず戦況報告してくれ」

「はい。『エジンベア』含めた四国が上陸して今魔王軍を押しています。とにかく勇者が来るまで気をそらすという作戦なので、上手く引いたり押したりして今のところ戦死者は奇跡的に0です」

 

 なるほど。

 加勢してくれるのは嬉しいけどもしも死者がたくさん出てたら後味悪いからな。

 うむ、『ラーミア』の飛行速度が思った以上に速くて何とか間に合ったか。

 

「お父さんはみんなと山のぼりしてる」

 フィリアはそう言って『バラモス城』の方に指を指す。

 

 周りを囲んでいた瘴気の川は神官に貸した『渇きの壺』で見事に干上がっていた。

 なるほど、進行可能にするために貸してくれなんて言っていたのか。

 しかし自分の足で『バラモス城』に行くとはオッサンも根性あるな。

 

 

「先に言っておくけど目的はアリスの救出だ。だけどアリスだけ助けたって意味がない。全員死ぬなよ」

 

 

 自分で言ってて無茶苦茶な命令だったと思う。

 ここは魔王城なんだ。

 犠牲を気にしていたら魔王なんて倒せないのは分かっている。

 だけどこんな時だからこそわがままを突き通したい。

 全員に『祈りの指輪』を持たせる。

 

「死んだらそれを取り上げるから覚悟しろよ」

「ほう、つまり最後まで立っていれば嫁にもらってくれるのだな?」

「いや、そういう意味じゃ……」

 

 マリアの言葉でなんだか皆が勝手に盛り上がっている。

 まあ士気は上がったからよしとしよう。

 

 指輪も渡せたことだし俺達は『ラーミア』で『バラモス城』に突っ込むことにした。

 『ラーミア』で飛んでいると途中で大きな穴が見える。

 

 

「『ギアガの大穴』だ。一説によるとあそこから『バラモス』がやって来たとも言われているな」

 

 

 俺の視線の先に気付いてマリアが説明してくれた。

 そういえば『浅瀬の祠』で全ての災いが出た場所だとか何とか聞いたような気がする。

 

 

 

「今は『バラモス』が来た原因よりもアリスを助けることだ。一気に『ラーミア』で突っ込むぞ!」

 『ラーミア』で急降下してモンスターが反応する前に素早く城に乗り移る。

 だが、流石『バラモス城』だ。

 どこから入ってもモンスターが待ち構えている。

 

 

 『ガメゴンロード』に『エビルマージ』がいきなり飛び掛ってくる。

「邪魔をするな!」

 俺はそれを火炎切りで払いのけ、接近戦のニーナとマリアが素早く攻撃して第一波は何とか退けた。

 だが次から次へとモンスターがやってきてきりがない。

 

 

「へっ、鳥で飛んでくるとは面白い方法考えるじゃねぇか。ここは俺たちに任せな!」

 

 

 壁が吹き飛びアッシュが敵の群れに突っ込んでいく。

 もうこいつは山を登りきったのか。

 当然ながらオッサンも外の方でモンスターを軽くあしらっている。

 

 更に城の入り口の方に海賊達が押し寄せてモンスターと激突している。

 注意がそれた。

 今なら中央突破できる。

 

「ニーナとマリアは通り道の敵を切り崩してくれ。ステラとフィリアはそのバックアップ。ティナとアリシアは後方支援を!」

 

 とにかく今は前に進むしかない。

 テラスから飛び出すとまたモンスターの群れが襲ってきた。

 『スノードラゴン』に『動く石造』と大型モンスターばかり並んでいる。

 

「ここは任せろ」

 マリアがモンスターの群れに飛び込んでいった。

「マリア!」

「安心しろ。折角もらった指輪を取り上げられたくないからな。お前は何も気にせずにお前のお姫様を助けに行け」

 

 マリアの特攻により大型モンスターの群れの一部に穴があき道は開いている。

 だけどマリアは持久戦は不向きだ。

 放っておくことはできない。

 

「【ホイミ】くらいなら出来ますから私はここでマリアさんと敵の足止めをします!」

 ステラがそう言って、マリアに吹雪を吐き出そうとしていた『スノードラゴン』の頭を蹴り飛ばして息を暴発さ、再び息をしようと開いた口に手を突っ込んでそのまま【イオ】を放ち【スノードラゴン】の頭を吹き飛ばす。

 

 

 役に立とうと本気で努力してくれたのだろう。

 見違えるほど強くなって戻ってきてくれたものだ。

 

 

 ここは二人居れば大丈夫だ。信じろ、仲間を。

 二人が作ってくれた道を駆け抜ける。

 

 また建物の中に入り回路を駆けて行くと再び『エビルマージ』の群れが立ち塞がった。

 無駄な浪費は避けたいのに魔法は【バギ】系しか通用しない厄介なヤツだ。

 

 

 ニーナとフィリアが素早く攻撃してくれたので、それに合わせてチェーンソードで敵を一掃するが、後ろから『ライオンヘッド』の群れがやって来た。

 

 

「ここはニーナちゃんにお任せ!」

 

 

 ニーナが『眠りの杖』をかざした。

 さらに『さばきの杖』で風を引き起こして相手を寄せて、チェーンランスで一気にそれを通路の奥まで吹き飛ばす。

 

 

「みんなは先に行ってね。絶体絶命のピンチになったらヒーローのように駆けつけるからその時はまたよろしくね!」

 

 

 ニーナ一人だと危険だ。

 止めようとしたらアリシアに手を引っ張られた。

 持久戦だと人間の方が不利なんだ。

 

 『バラモス』を速攻で倒して、世界各地のモンスターを浄化した方が皆無事に生き延びることは分かっている。

 

 それにニーナだって強いんだ。

 簡単にはやられはしない。

 

 

 そう、体力や魔力を浪費してない俺含めた四人が『バラモス』までたどり着いて、速攻を仕掛ければいいんだ。

 

 

 バリア地帯に囲まれた玉座には『バラモス』の姿はない。

 外か。アリシアの【トラマナ】でバリアを突破して外に出ると、また『動く石造』の群れが待ち構えていた。

 もうメンバーは四人しか居ない。

 ここは戦いながら『バラモス』を探すしかないか。

 

 

「俺は人間が嫌いだ。だけど俺達の女神が……【棺おけの加護】がピンチと聞いた」

 

 

 無数の剣筋が『動く石造』を押し倒した。

 『骸骨剣士』の群れがなぜか俺達に加勢してくれている。

 アリスの奴、思わぬ助っ人を作ってくれていたようだ。

 

「貴様ら魔物の癖に人間の味方をするのか!?」

「我ら一度は散った命。もはや『バラモス』に義理立てする理由なし! 降格の恨みここで晴らしてくれる! 行くぞ兄弟達!」

 『骸骨剣士』の群れと『動く石造』の群れが衝突する。

 

「昨日の敵は今日の友とはよく言う。ここは任せたぞ」

「笑止、我らの女神を頼んだぞ憎き勇者よ!」

 

 俺は背中を『骸骨剣士』達に任せて前に進む。

 

 奥に地下に下りる階段が見えた。

 前感じた魔王独特の威圧感が下から感じられる。

 

 だが階段の前に『エビルマージ』の群れ、空からは『スノードラゴン』の群れが待ち構えている。

 

 

「みんな先に行って」

 

 

 そこでアリシアが足を止めた。

 古ぼけた魔道書を広げて『理力の杖』を振りかざす。

 

 

 

 

 

「【ベタン】!」

 

 

 

 

 

 聞いたことのない呪文だった。

 『エビルマージ』の群れと『スノードラゴン』の群れが重力で圧し潰されていく。

 

「【メラミ】!」

 

 更に射程から外れていた『スノードラゴン』に【メラミ】をぶつけて怯ませる。

 

 

 

「アリスを助けに来たんでしょ。男ならほれた女の子くらい守りなさいよ!」

 

 

 アリシアがここで足止めしてくれなければ、『バラモス』と同時にこいつらまで相手をしなくてはならなくなる。

 

「すまない」

「だから謝るな!」

 

 俺はそんないつものアリシアを背に階段を駆け下りた。

 城全体を覆っていたまがまがしい空気が濃くなる。

 

 そして圧倒的な威圧感。

 祭壇のような場所に『バラモス』は立っていた。

 

 

「またきたか勇者よ。今度こそ腸を食らいつくしてくれよう」

「アリスはどこだ」

 

 

 アリスの姿はどこにも見当たらない。

 

 

「あの女か。ダメージが思いのほか大きかったのでな。我の魔力の糧となってもらった」

 『バラモス』が何かを投げつけてきた。

 それは俺の足元にボトと落ちる。

 

 

 

 

 誰かの左腕だった。

 少し火傷がある左腕。

 腕なんてどうでもいい。

 火傷なんてどうでもいい。

 ただその薬指には『祈りの指輪』がはまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか美味であったぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後ろでティナが膝を突いた。

 音もなく泣いている。

 

 フィリアは『アサシンダガー』を抜いて既に戦闘態勢に入っていた。

 

 俺は、俺は―――――――――――――――――――――――――――

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 怒りに任せて剣を振っていた。

 

 

 好きだった。

 守りたかった。

 

 

 ずっと棺おけの加護なんてバカなものに縛られて寂しい思いをしていた。

 これからなのに。

 アリスを幸せにしてやれると思ったのに。

 もう寂しい思いをさせないために『バラモス』を倒すと決めたのにこいつは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラモス!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実にいい顔だ。憎しみに満ちたその顔だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前はもう喋るな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの女は最後の最後まで希望を捨てず未来を信じて戦っていたのに勇者とはなんとも意志の弱い生き物だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダマレ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の一撃は空振りに終わった。

 かわされた。

 

 【イオナズン】が来たから『雷神の剣』で自分の体を吹き飛ばして攻撃を避け、更に自分の【イオ】で起動を変えてもう一度斬りつける。

 だが、それも避けられて打撃を受けた。

 

 

「遅い遅い遅い遅い遅いぞ勇者よ。つまらぬ奴だ。地獄の業火でその身を焼くがよい!」

 

 

 【激しい炎】が俺に迫る。だからどうした。

 『魔法の盾』で受けながら【ライデイン】を『バラモス』に落とす。

 

 少し効いているがまた打撃を直撃してしまった。

 だけど俺の鎧は『刃の鎧』だ。自分の力でダメージを受けるがいい!

 

 

 

「……落ち着いて」

「うるさい!」

 

 

 

 誰かに声を掛けられたが構っていられない。

 今度は【メラゾーマ】が来た。

 それを【火炎切り】で相殺したら衝撃で俺の体が吹き飛ぶ。

 更に【メダパニ】が来るが俺の敵は【バラモス】だけだ。そんなもの効かない。

 

 またこりずに【イオナズン】をしてきた。

 寸前のところで交わして懐にもぐりこむと、今度は【バシルーラ】で壁に叩きつけられた。

 

 さらに【イオナズン】で俺の体が宙に浮いた。

 反撃しようとしたら体が動かない。

 いつの間にかダメージを受けすぎている。

 打撃が来る。避けられない。

 

 

 

「落ち着いて」

 

 

 

 フィリアが俺の体を抱きかかえて『アサシンダガー』でバラモスの打撃をそらした。

 そしてすぐにまだ膝を突いているティナの方に飛んで、俺の『魔法の盾』を『バラモス』に向けて投げつける。

 

 

 すると【激しい炎】が盾に当たってこっちまで届かなかった。

 

 

「アルスもティナも落ち着いて。そこで少し頭を冷やしてて。憎んでも泣いても……どうにもならないから」

 フィリアが『バラモス』に突っ込んでいく。

 それを『バラモス』は鋭い爪で応戦する。

 そしてすぐに【メラゾーマ】を撃ってから牽制で【メダパニ】を撃ってくる。

 

 

 憎んでもどうにもならない……分かっているけどどうにもならない。

 だけどこのままだと全滅だ。

 俺達がここで全滅したらアリスは何のために俺達を逃がしてくれた。

 アリスは何のために今まで【棺おけの加護】なんてものになってた。

 ここにたどり着くまでに敵の足止めをしてくれた皆の行動が無駄になってしまう。

 

 

 頭が醒める。

 『バラモス』は憎い。

 でも冷静になれ。

 

 

 今フィリアが『バラモス』を抑えてくれている。

 だが攻撃を防ぐのがやっとだ。

 これ以上はもたない。

 

 

 

 

「ティナ。後悔するのは後だ。あのくそ野郎をぶっ飛ばすぞ」

「……うん」

 ティナも動ける。

 まだ不安定だけど戦える。

 

 ティナは涙を手の甲でぬぐって『バラモス』を睨みつけた。

 

「取り囲むように陣形を組むぞ! まとまると範囲攻撃の餌食だ!」

 

 まずは陣形を組む。

 そして『草薙の剣』とティナの【ルカニ】で相手の守備力を下げる。

 

 

「こしゃくなマネを」

 

 

 【イオナズン】が俺に来た。

 『魔法の盾』はさっきフィリアが使って床に転がっている。

 『草薙の剣』で防いでみたけど、やっぱり耐え切れずに『草薙の剣』は吹き飛ばされ地面に突き刺さった。

 

 

「【ベホマラー】!」

 

 

 ティナの範囲回復で少しは楽になった。

 だがそれを見て『バラモス』は【バシルーラ】をティナに放つ。

 

 何とか外れてくれた。

 

 その隙に『雷神の剣』を振り下ろしたがまた避けられた。

 『バラモス』は俺達が一回行動する間に二回は行動できる。

 

 更に動きに無駄がない。

 まず動きを封じなければ攻撃すら当てられないのか。

 でも何とかなる。動きを封じるチャンスはある。

 

 

 また【イオナズン】が来てフィリアの体が爆発で宙に浮いた。

 さらに追撃するようにフィリアに向かって勢いよく地を蹴る。

 

 

「【ピオリム】!」

 ティナの補助でこっちの速さが底上げされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこいつを……この瞬間を待ってた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チェーンソードの鎖で『バラモス』の腕を拘束する。

 『バラモス』は魔力のチャージ時間の問題かずっと()()()()()()()()()だ。

 

 だから、この【バシルーラ】の次にくる【イオナズン】の後には魔力温存の為、確実に打撃攻撃で来るんだ。

 打撃攻撃の瞬間なら例え魔王でも一瞬の隙が出来る。

 そこを狙えばいい。

 一気に鎖を引き寄せる。

 

 

 

「この短期間で余の行動を読んだというのか!?」

「同じ行動ばかりならバカでも分かる!」

 

 

 

 そのまま『雷神の剣』で斬りつける。

 ダメージはある。

 だがこいつには自動回復がついているんだ。

 だけどこの接近した状態で魔法を使えば『バラモス』は自爆だ。

 

「フィリア!」

「いくよ」

 

 フィリアが素早く斬りつけて、『バラモス』が避けようとすれば鎖を引き寄せ『雷神の剣』の重い一撃を叩き込む。

 

 

 

「調子に乗るな!」

 

 

 

 『バラモス』は【激しい炎】を吐き出した。

 ローテーションどおりだ。

 

 

「もう二度と後悔したくないから! 泣き虫なままじゃダメだから!」

 俺の僅かなしぐさの合図を理解しティナの【フバーハ】が炎を和らげる。

 

 

「ここで『バラモス』を仕留める!」

 俺はチェーンソードを『バラモス』の胸に突き刺して『雷神の剣』で斬りつける。

 

 『バラモス』が怯んだ。

 

 その隙に後ろからフィリアが『アサシンダガー』で『バラモス』の背中を突き刺し、背中を蹴飛ばしてそこから離脱した。

 

 

 

 後はトドメだけだ。

 

 

 

 一瞬、転がっているアリスの左腕が視界に入った。

 気をそらすな。

 まだ『バラモス』は生きている。

 

 

「我は認めぬ。認めぬぞ!」

 

 

 『バラモス』の右腕が俺の左腕を掴んだ。

 更に左腕を俺の腹部に当てる。

 次に来るのは【メラゾーマ】だ。

 

 

「人と魔族の戦争は魔族の勝利に決まっておる。貴様さえ居なければ世界は余が支配できた! 貴様さえ居なければ!」

「俺は……俺達は戦争をしてるつもりはない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただみんなと幸せに暮らしたかった。

ただ、それだけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルス!」

「アルス避けて!」

 避ける時間なんてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでアルス君はどの指にはめてくれるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎に焼かれる中でアリスの笑顔を思い出せた。

 もう見ることの出来ない笑顔だ。

 ここで燃え尽きたら向こうにいるアリスに怒鳴られるだけだよな。

 

 

 分かってる。

 分かってるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒せば、いいんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 回復する時間なんて与えない。

 【ギガデイン】の電撃を『雷神の剣』に集中させる。

 

「ギィィィィィィィィィガ・スラァァァァァァァァァァァッッシュゥ!」

 

 激しい雷撃を剣と共に振り下ろす。

 その瞬間に体から力が抜けていく。

 『バラモス』は今ので倒せただろうか。

 

 

 

 

みんなは無事だろうか。

俺は、生きてるのだろうか。

 

 

 

 

 

 光が見える。

 光の先でアリスが笑っている。

 だけど近付こうとしても近付くことができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルス君が帰る場所はここじゃないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それも分かってるさ。

 分かっているけど、涙が止まらない。

 気が付いた時、俺は『バラモス』の亡骸の上で子供のように泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

私の声が聞こえますね?

あなたたちは本当によく頑張りました。

さあ、お帰りなさい。あなたたちを待っている人々のところへ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険の書46―アルスの日記―

 気付いたら船に居た。

 どうやら『バラモス』を倒した後俺は倒れてしまったらしい。【ギガデイン】の反動は思ったほどない。使用できるレベルまで達したということだろうか。

ティナもアリシアもニーナもマリアもステラもフィリアもみんな無事だ。海賊達も誰も欠員はいない。

 これ以上ないというくらいに犠牲者は少ない。魔王が居る大陸に乗り込んで犠牲1名という魔王戦は歴史の中で俺が初らしい。

 みんなが無事だったのは素直に喜んでおこう。

 これで世界は平和になる訳だがまあ一緒に旅をした腐れ縁だ。

 落ち着いたらまた顔を出すからその時はよろしく頼むわ。

 

 




苦労し続けて来たのに、一番大切な者を守れなかった勇者。
それでも人々は世界を救った英雄だと勇者を称えます。
各国と結束し、戦死者1名で済ませた英雄として語り継がれます。
それはきっと勇者にとっては辛いことだから、今だけは安らかな眠りを。

後2話+打ち切り用の新規エンディングまでは見守ってあげましょう。
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