「うは、なんか崩れてるよ」
建物らしいものがあった跡と穴を囲っていた壁が崩れている。
「友人がこの穴に落ちちまった! これはえらいこったぁぁぁぁぁぁ!」
兵士から事情を聞くと彼はこの穴を監視するように命じられていて、急に地震が起きて壁ごと仲間が一人落ちてしまったらしい。
穴を覗き込んでみると底がまったく見えない暗闇だ。
その落ちた奴を助けるにも飛び降りるしかないよな。
「アルス。私達をおいてどこ行く気?」
アリシアの声がした。
振り向くとアリシアだけではなくてティナとニーナの姿まであった。
『ラーミア』は俺が使っていたのにどうやってここまできたのだろうか。
「『ラーミア』で飛び立つアルスの姿見たからアリシアちゃんに相談したの。そうしたらきっとここしかないって【ルーラ】で……」
「アリシアちゃんの【ルーラ】磨きが掛かってるんだよ。『ネクロゴンドの祠』に飛んでから【ルーラ】を何回もやって山を越えてここまで来たんだから」
先回りされていた訳か。
「あんたのことだからどうせ一人で行く気だったんでしょ」
「今度の敵は“バラモス”より強い。皆はここに……」
残れと言おうとしたらアリシアに殴り飛ばされた。
久々に殴られた気がする。
「強いならなおさら。あんたが誰も死なせたくないって思うのと同じように、私達だってそう思ってる。もう二度と大切な人を一人で戦わせなんかしない」
アリシアは強いと思う。
俺なんかよりずっと心が強い。
俺は目の前で誰かが死ぬのを見たくなくて一人で旅立とうとしていた。
「すまない」
「最近あんた謝りすぎ。分かったらさっさと新しい敵倒して世界を平和にするわよ」
「ああ、そうだな。みんなでさっさと方をつけよう」
もう誰も死なせはしない。俺が守る。
俺は覚悟を決めて『ギアガの大穴』に飛び込んだ。
深い闇の中を落ちていく。
そして気が付くと暗い闇に包まれた世界に立っていた。
船着場のようなところだ。
「なんだ。また上の世界から人がやってきたのか」
人間が居た。
海に釣竿をたらしている。
「上の……世界?」
「ここはアレフガルト。あんたが居る世界の下にある世界だ。お、ひいてるひいてる」
男は釣竿を引き上げるとよく分からない魚が糸にぶら下がっていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
上の方からアリシアの叫び声が聞こえた。
見上げた瞬間振ってきたアリシアに潰された。
それに続いてニーナとティナも俺の上に振ってくる。
「ちょっとアルス! こんなに高いなんて聞いてないんだけど!」
「なんだか落ちてるときスーってして怖気持ちよかったですヨ。ねぇねぇねぇねぇアルス君アルス君アルスく~ん。もう一回上に上って落ちてみようよ!」
「あ、アルスごめん!」
どいてくれたのはティナだけで、アリシアとニーナはまだ俺の上に乗っかっている。
いいからお前らどけ。
「また元気なのが来たものだ。泊めてある船は自由に使ってくれ。まっすぐ東に行けば城が見えてくるからそこでこの世界のことを知るといい」
奥の方に立派な船が泊まっていた。
「いいんですか?」
「絶望のふちに沈んだ私にはもう必要のないものだ」
よく分からないが『ゾーマ』の恐怖で『アリアハン』の王と同じように生きる気力をなくしてしまっているのだろうか。
男はまた釣りを始めていた。
『ギアガの大穴』についたらアリシア達に先回りされていた。
みんな付いてくる気満々だから一緒に行くとしよう。
穴から飛び降りたら変な船の停泊場についた。男を今日一日観察してみたが釣りをして食事をして寝ているだけだ。一人暮らししてるのかと思いきや子供と一緒に住んでいるようだ。なんだか外は暗いし今日はここで少し世話になるとしよう。
ここから先は最初の4人でまた旅立ち、マリアが来て、ステラとフィリアが来て、だけどアリスだけがそこにはいない物語。
大切な者を失った勇者はこれ以上失わない為に戦い、絶望に沈んだアレフガルトの希望の光となりました。
最後は上の世界と下の世界、両方の想いを募らせたミナデインで絶望を打倒すも、戦闘中【オクルーラ】で上の世界に送り返した戦闘不能になった仲間達は上の世界に、勇者だけは下の世界に取り残され、また望まない伝説が増えてしまいます。
そんな【くろうにん】の物語はここで打ち切りです。
最後に【くろうにん】が見た夢物語を笑ってやってください。
次回最終話「この青空に約束を-No.xxxアリス」