【
「──
月夜が照らす光しか光源のない夜、薄暗く人気の無い路地裏にて、一人の少女が手鏡に映る自分の姿──緑の髪に深紅の瞳──を見てそう呟いた。
「ハナハナの実で花妖怪? そう言えばハナハナの実の能力のせいで妖怪呼ばわりされて忌み嫌われていたんだっけ? いやでも、だからって……」
彼女の名はニコ・ロビン。
海軍の手によって壊滅されたオハラという名の島の唯一の生き残りであり、齢8歳にして7,900万ベリーの懸賞金を掛けられた経緯を持ち……
──今現在、海軍に追われている身である。
彼女は悪魔の実であるハナハナの実を所持していたのだが、デメリットであるカナヅチのことを考えて今の今まで口にしなかったのである。
(ニコ・ロビンに転生したときは生きた心地がしなかったけど、風見 幽香の容姿と能力ならば……)
海軍が追っているのは黒髪に黒い瞳の少女。
だが今の彼女の姿は緑の髪に紅い瞳である。
(──追手を撒けるかもしれない!)
この日の夜を境にニコ・ロビンに関する目撃情報は途絶え、その後の調査も一向に進展しないことから海軍は捜索を打ち切った。
──それから13年後、ルフィの物語が始まる5年前……。
彼女はニコ・ロビンから風見 幽香と名を変えて
その1年後、
【サンディ島「アラバスタ王国」】
レインベース──ギャンブルが盛んな街──にはクロコダイルが経営しているレインベース最大のカジノがある。その名も「レインディナーズ」
風見 幽香はレインディナーズの支配人を務めており、裏では社員に姿を見せないクロコダイルの代わりに社員に仕事の指示を出していた。
他にも時折やって来る海賊の撃退及び捕縛。さらに能力を用いての薬草や毒草を含む植物の栽培──等々と彼女の仕事は多岐にわたり、彼女は淡々とこなしていった。
今日も今日とてレインディナーズの一角にある彼女のために設けられた部屋にて豪華な椅子に腰掛けながら報告書に目を通していく。
(えーっと、
Mr.7に同情しつつ、彼女はこれを機に
──それから物語が始まる3年前……。
クロコダイルによる国乗っ取りが始まった。まず手始めに社員に命じて首都アラバーナでダンスパウダー(雨を降らせる代わりに周囲から雨雲を奪う粉)を極秘に使用させたのだ。結果、アラバーナを除く全ての町に雨が降らなくなった。
それと同時に部下を引き連れた風見 幽香が各地に赴いて復興のための支援を開始。水や能力を用いて作った食料援助等を行う。涙を流して喜ぶ彼らに彼女は良心を痛みつつも笑顔で指令を実行していく。
──2年前……。
バロックワークスの工作により国王コブラにダンスパウダー使用疑惑が浮上する。反乱軍が立ち上がった。
ほどなくしてサボテン島にある歓迎の町ウイスキーピークに名を偽ったアラバスタ王国の王女ネフェルタリ・ビビと王国護衛隊隊長イガラムが現れ、風見 幽香は二人の正体を知りつつも入社を承認した。
(──これでようやく肩の荷が一つ下りるわね。でも、念のためにMr.6以下のフロンティアエージェントにすべきだったかしら? でも王国護衛隊隊長の実力があれば大丈夫か……)
王女と護衛隊長がバロックワークスに潜入したその日から数日後。二人はフロンティアエージェントになっていた。他ならぬクロコダイルの指示によって……
風見 幽香はしばらく呆けて、やがて理解した。
アラバスタ王国の外で、いつでも始末できるようにわざと二人を見逃していたと──
そして頃合いを見てオフィサーエージェントであるMr.5とミス・バレンタインを送り込むのだろう……とも、
(──あるいは海賊との交戦で死ぬことを望んでる? だとしたら援軍を送り込むべきかしら?)
顎に手を当てつつ思案にふける素振りを見せたあと、ウイスキーピーク宛への手紙を書くために筆を取る。
"──双子岬に監視員を置くこと、そこで自分たちの手に余る相手と判断した場合は援軍を要請しなさい。──"
手紙の出来映えに満足したのか笑顔で頷くと、傍らに控えていたラッコとハゲタカ──アンラッキーズに手紙を持たせてウイスキーピークにいる責任者の元へと運ばせた。
(──これでいずれは王女ビビとルフィは接触、アラバスタ編に突入することになる。それまではどうしたものか……)
彼女はあれこれ考えたが結局いつもの業務をやることで時間を潰すことにした。
そして
──ルフィが旅立ち、物語が始まった。
【
船内、船長室には風見 幽香が陣取っており、彼女が使っている机の上には
表向きは海軍の動向を探るため、実際はルフィ率いる麦わらの一味の足取りを追うために……
「 ジョ──ダンじゃないわよ─────う!!!! 」
大柄なオカマであるMr.2ボン・クレーがバレェのように両手片足を上げてくるくる回りながらそんなことを叫ぶ。その近くには「3」という髪型が特徴的なメガネをかけた男──Mr.3が椅子に腰掛けて紅茶を啜っている。
「最弱の
「うわさの鷹の目にやられたのではないガネ?」
首領・クリークを提督とした50隻の船からなる総勢5,000人の海賊艦隊。ウイスキーピークにいる賞金稼ぎたちでは手に負えないだろうと風見 幽香は町に入る前に海上で迎撃すべく二人を引き連れて討伐に赴いたのだが……。彼女たちが現場に着いた頃にはすでに鷹の目ことミホークに狩られた後だった。
「とりあえずウイスキーピークの連中を呼び寄せてここの後始末をさせなさい。私たちはこのまま帰るわよ」
帰還することに二つ返事で了承するオカマと男。彼女たちを乗せた船は元来た道を引き返す。それからウイスキーピークに到着後、風見 幽香はMr.2とMr.3と別れ、彼女自身は町に滞在することにした。物語の主人公を待ち構えるために……
やがて彼女の元にルフィが首領・クリーク、ノコギリのアーロン撃破した報告が入り、3,000万の懸賞金をかけられたことを知る。彼らがここに来るのも、もはや時間の問題となった。
風見 幽香は最後の仕上げとばかりにMr.9とミス・ウェンズデーであるビビを双子岬に送り込む手配をする。表向きは双子岬にいる巨大鯨ラブーンの捕鯨。実質はそこを通るであろう麦わらたちの実力を測るために……
「相手は懸賞金3,000万。あの二人で大丈夫かしら?」
「相手の戦力を調査するだけですし、問題はないでしょう」
ウイスキーピークにある宿屋の一室。Mr.8──イガラムにそう問いかける風見 幽香。イガラムは何の問題もないと言わんばかりにほがらかに応えた。そこへシスターの格好をしたミス・マンデーがビビの帰還の報せを伝えに来た。
「懸賞金3,000万とはいえ、最弱の海出身です。いつも通りに彼らを迎えますので、貴女様はそこで吉報をお待ちください」
「ええ、楽しみに待っているわ」
「ではのちほど……」と扉から出ていくイガラムたち。彼らが遠ざかっていくのを感じてから風見 幽香は口を開いた。
「麦わらのルフィと出会えることをね」
「ふふふふふ」と彼女の小さな笑い声が部屋に木霊した。
しばらくして建物の外が騒がしくなるも、一時間も経たないうちに鎮火。静けさを取り戻す。
「そろそろかしら?」
先ほどの喧騒はルフィの仲間の一人であるゾロと社員たちとの戦闘に発生したものだろうと彼女は考え、日傘を片手に、はやる気持ちを抑えて彼女は建物の外へと出ていく。
(──ようやく、彼らと出会える。ふふふふふ)
そんなことを心の中に思いながら……
( ´・ω・)にゃもし。
活動報告にあったネタその1
ニコ・ロビンに転生、主人公とかって話あったかな? と執筆。