閻魔に精霊機を渡されてから数日後。
俺達はあの頃の人間界に通じるゲートへと来ていた。
「さて、これから二年間は天界とお別れだ。思い残すことはあるか?」
後ろに居る六人(ヒルデも居る為)の方に振り向きながらそう尋ねる。
六人は持てるだけの荷物を持っていてまるで修学旅行みたいだ。
引率の先生は居ないけどな。
「ないない。二年って短いからすぐに帰れるよ」
そう言ったのは俺の手に抱き着いているアテナ。
反対側の手にはクレアが抱き着いていて三人(閻魔、デメテル、アテン)は嫉妬の表情で二人を見つめている。
何でも出かける前に俺の手に抱き着く権利をじゃんけんで賭けたらしい。
勿論、俺は公認していない。
「そう言えば、これだけの大人数、どうやって一緒に暮らすんだ?前までのマンションだとこの人数は入らねえだろ?」
ヒルデとはそういう関係ではないとはいえ一人だけ仲間外れって言うのは出来ない。
だから、七人暮らしと言うことになるんだが……
あのマンションは四人暮らしが限界だろう。
「そこら辺は大丈夫!お父様が人間達の記憶を色々と操ってくれたから!」
「「あの人は……」」
顔に手を当てながら呆れる俺とデメテル。
人間達の記憶を勝手に操るのは神の法則で禁止されている。
人間の記憶を操るにはオリュンポス十二神の過半数以上の同意が必要だがゼウス様は独断で操ることができるそうだ。
「あと、私達のこととかも明久君のお姉さんも私達との関係を認めてるんだよ!」
「普通なら絶対にありねえな」
苦笑しながらそう言う。
うちの姉貴は不純異性交遊を全面的に禁止している。
普通ならどんなに頼み込んでも許可してくれないだろう。
「あと、明久君の髪のこととか口調のこととかこの天界に居る間に変わったことは以前からのことだって記憶を操ったんだよ。転生者以外ね」
「ああ、なるほど。それで髪とか口調とかそう言うのに狼狽えた奴等は転生者だから対処しろってことか。
それなら転生者のリストを渡してくれればいいのに」
「無くしちゃったんだって」
「「はぁ……」」
あの人は……前まで尊敬していた俺がバカみたいだ……
「そう言えば俺あの世界の本来の道筋知らねえんだけど。
その辺りどうするんだ?」
転生者が世界の道筋を変えようとしたところで俺は本来の道筋を知らないから本来の道筋とどう違うのか分からない。そこらへんのことはどうするんだろうか?
「大丈夫!このゲートを潜れば行先の道筋が分かるから」
「へえ~、便利なもんだな」
「そう言ってくれると祖父も喜ぶでしょう。
このゲートは私の祖父がゼウス様と協力して造った物ですから」
「へえ~、閻魔のお祖父様が……すごい人なんだな」
「ええ、尊敬しています」
昔を懐かしむ様な表情をする閻魔。
今度会ったら挨拶しよう。
『お孫さんをもらいます』と。
そんなことを考えていると
「……明久、人間界でも鍛錬する」
ヒルデがそう言ってきた。
「は?いや、あのさ……、もし、俺とお前が戦ったら人間界がそれこそ何も残らない荒地になっちまうんだけど……」
「……………(ウルウル)」
「固有結界を張れば多分大丈夫だな!ヒルデ!絶対に負けないからな!」
「うん」
やっぱり俺は女の涙に弱い……
「明久、自己嫌悪に陥ってないで仕切ってくれ」
「ああ、悪い。さて、皆。行くぞ!」
「「「「「「うん!/……うん」」」」」」
俺達はゲートを潜った。