校舎へと続く坂道の両脇には新入生を迎える為の桜が咲き誇っている。
別に花を愛でる程雅な人間では無いけれど、その眺めには一瞬目を奪われる。
その美しい桜が咲くこの坂道を俺達は……
「急げぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「分かってるよ!」
全力疾走していた。
遅刻の原因はと言うと……
「明久君の所為だからね!あんなに私を……私を……きゃーーっ!」
「そんなことを大声で言うな!それと閻魔達も思い出してんじゃねえよ!」
このやり取りから分かる通り昨夜のアレだ。
いや、俺は悪くないんだよ!
読者の皆も想像してみろ!
好きな奴が涙目で『もうやめて』とか『もう許して』とか言ってくるんだぜ?
もう、興奮するしかないよな!
「……?」
因みに純粋なヒルデは首を傾げている。
やっぱり純粋だなぁ……
と、そんなことを思っていると
「おはよう、吉井達と篠井。全員遅刻だぞ」
クレア達は家同士で決めたフィアンセということになっている。
ヒルデは俺の従妹という設定だ。
因みにこの先生は西村先生。
渾名は『鉄人』
その渾名の由来は趣味のトライアスロンから来ている、
真冬でも半袖でいるあたりも由来の一つかもしれないけどな。
「「「「「「おはようございます、西村先生。遅刻してすいません」」」」」」
「……おはようございます。遅刻してごめんなさい」
「うむ、次から気を付けろよ。ほら、お前達の封筒だ」
先生はそう言って箱から封筒を差し出してくる。
俺の宛名の欄には『吉井明久』と大きく書いてあった。
「吉井、残念だったな……ちゃんと試験を受けていれば……」
ああ、そうか。
ゼウス様が記憶を操って俺は元々頭が良いって言う風になってるんだっけか。
「別に良いですよ。過ぎたことです。ただ、姫路にもう一度チャンスをあげてほしいって言うのはありますけど……無理でしょうね」
「ああ、学園長が規則だと言って首を縦に振らなかった……」
やっぱりか……
「それより吉井(妻達)!何故テストを無記名で出すとはどういうことだ!」
「「「「「あれ?そうだったんですか?」」」」」
うわ……見え見えの演技だ……
ここまで演技だと分かる演技は滅多に見れないぞ。
「はぁ……もう良い……」
先生も突っ込む気を無くしたみたいだ。
滅茶苦茶同情してあげたい……
「もう、教室に行け……ただでさえ遅刻しているんだ。
これ以上遅れるな」
「「「「「は~い」」」」」
「……はい」
「先生、本当にすいません……」
俺はそう言って封筒とその中身を鞄にしまい教室に向かう。
しまった封筒の中身には
『吉井明久 Fクラス』
と書いてあった。
――――さぁ、物語を始めよう。