「丁度良かったです。今自己紹介の最中なので姫路さんお願いします」
「は、はい!あの、姫路瑞希と言います。よろしくお願いします」
小柄な体を更に縮こめるようにして声を上げる姫路。
「はいっ!質問です!」
既に自己紹介を終えた男子生徒の一人が手を挙げる。
「あ、はい、何ですか?」
教室に入るなり自分に質問が自分に向けられることを想定していなかった為に驚く姫路。
その仕草は小動物のようで保護欲をかきたてる。
勿論俺はクレア達以外の女に興味はないけどね。
「どうしてここに居るんですか?」
聞きようによっては失礼な質問だがその疑問は当然。
だが、姫路はAクラスに余裕で入れる程の学力を持っている。
そんな彼女がこんな学力最低クラスに居る訳ない。
「そ、その……振り分け試験の途中に高熱で倒れてしまって……」
その言葉を聴き、全員が納得した表情になった。
試験途中での退席は無得点扱いになる。
彼女は最後まで振り分け試験を受けられずFクラスになったという訳だ。
そんな姫路さんの言い訳を聞いてFクラスで言い訳が始まった。
『そう言えば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに』
『ああ。化学だろ? アレは難しかったな』
『俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて』
『黙れ一人っ子』
『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』
『今年一番の大嘘をありがとう』
流石Fクラス、バカばっかりだ。
「はいはい。そこの人たち、静かにしてくださいね」
そう言って先生が教卓を叩くと……
バキィッ! バラバラバラ……
突如、先生の教卓がゴミ屑と化した。
あの教卓本当に壊れるんだな……
「代えを用意してきます。少し待っててください」
先生はそう言って教室の外に出た。
さっきまで興味はなかったけどこの設備は本当に酷過ぎる。
俺達神は体調を崩さないけどこんな設備にクレア達を居させたくない。
そう思った時だった
「吉井君、少し良いですか?」
坂本美子が俺に話しかけてきた。
「ん?どうかしたの?」
「ちょっとお話が……」
転生者の接触か……
俺はクレア達を見る。
クレア達は頷いた。
「分かった。廊下に出よう」
俺はそう言って立ち上がり廊下へと歩いた。
廊下
「あの……大変聞きにくいんですけどあn『ちょっと待って』え?」
何か話そうとしている坂本美子を止める。
彼女が深刻そうな話をしようとしていると分かったからだ。
パチン
指を鳴らす。
これは俺が固有結界を発動する時の呪文の様なものだ。
と、俺が指を鳴らした瞬間周りの光景が変わっていく。
「これは……」
完全に光景が変わると辺りに神殿らしき建物が現れた。
所々に洪水で壊れたような神殿もある。
「アトランティス……大陸と呼べるほどの大きさを持った島と、そこに繁栄した王国のことだ。
大きな軍事力を持っていて世界の覇権を握ろうとしたけどゼウス様に海中に沈められた。
ただし、俺のイメージの中でのアトランティスだけどね。
ああ、時間とかは気にしなくていいよ。
ここと本当の世界の時間軸は狂っているからね
こちらの方が千倍程早く時間が過ぎている」
そう言いながらゆっくりとアトランティスを歩く。
そして、少し歩いて俺は坂本美子の方を向く。
「それで?話って何かな?転生者さん」
「え……」
坂本美子は何を言われているのか分からないのか呆然としている。
まぁ、当然の反応かな?
俺はそう思って苦笑してこう言った。
「俺は吉井明久。神だ」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
坂本美子の叫び声がアトランティスに木霊した。
「落ち着いたか?」
神の力で作ったソファーに座りながら尋ねる俺。
さっきまで狼狽えていた坂本美子(以降坂本妹)は何とか落ち着いた様子だ。
「は、はい……でも、驚きました。
まさか、吉井君が神になっていたなんて……」
「俺も最初神に会った時は驚いたもんだよ」
まぁ、世界の本来の道筋の主人公が神になっていたら驚くのは当然の反応だよな。
俺は苦笑しながらも本題に入ることにした。
「それで、坂本妹、お前はこの世界で何を望んでいるんだ?」
俺は若干殺気を放ちながらそう尋ねる。
こいつの心の中に邪悪なものは感じない。
だが、もしもの時がある。
もしもの時は……俺の独断で粛清する。
俺がそう思った時坂本妹は言った。
「私、あなたに会いたかったんです……」
「俺に?」
「ええ、私、前世では守ってくれる人が居なかったんですよ……」
そう言って彼女は前世での人生を語り始めた。
彼女は前世では真面目な優等生で彼女を良く思わない生徒も多かったらしい。
そんな時、一人の男子生徒が転校してきた。
彼女はその男子生徒に一目惚れして告白したが結果は駄目だったそうだ。
『真面目すぎる優等生と付き合いたくない』
それが断られた理由だそうだ。
それから彼女は告白したことをクラスメイトからからかわれることになった。
更に彼女に対して好意を持っていた男子生徒に彼女は無理矢理犯されたそうだ。
写真も撮られ『これをばら撒かれたくなかったら俺と付き合え』と脅迫されたらしい。
だが、その男子生徒がある日間違えて学校にその写真を持ってきたことで彼女が犯されたことが学校中に知れ渡ることになった。そのことで更に彼女はからかわれたり犯されたりしたらしい。
「そんな時です。私は車に轢かれました。
その時思いました。『明久君なら私を守ってくれたのかな?』って。
そんな思いを汲み取ってくれたからでしょうか、神様が私をこの世界に転生させてあげるって言ったんです。
本当に嬉しかった……明久君なら私の心の傷を癒してくれるとも思っていましたから。
実際転生して正解でした。あなたは私を癒してくれましたから……」
彼女はそう言って微笑んだ。
「俺と会いたかったか……俺はいつの間にかお前のスターになってた訳か」
「はい、私にとっては大スターです」
そんなに褒められると何と言うかな……
まぁ、こういう奴にそう言うことを言うと『事実です』とか言うんだろうな……
「あぁ、そうだ。あの中岡信也って男には気を付けろよ。
あいつは相当クズだ」
「哲也君は『分かってる。あいつはクズじゃないんだろう?』はい、良い人です」
「目を見れば分かる。さて、そろそろ結界から出ようか。
結界から出た後はFクラスの連中を焚き付けるんだろう?」
「はい、一回やってみたかったんです。そう言うの」
俺は彼女の返事を聞いて指を鳴らし固有結界を解いて教室に入った。
Fクラス教室
生徒の自己紹介が終わり坂本妹の演説が始まっていた。
最初はこのクラスの設備とAクラスの設備を比較してクラスの連中の士気を高めていた。
そして、演説の最終局面
「皆さんもこの教室に不安はあるでしょう!こんな酷い教室は他の学校にありません!
そこで私から提案です!私達FクラスはAクラスに試験召喚戦争を仕掛けようと思います!」
Fクラス代表坂本美子は戦争の引き金を引いた。