ここは天国の宮殿。
え?何でそんな所に居るかって?
それじゃあ、何でここに居るのか順を追って説明しようか。
時は少し戻り
「えっと……何て言ったの?」
多分聞き間違いだろう。そう思って聞き直す。
だって神様が恋人になってなんて言う訳……
「私の恋人になって欲しいの」
言ってたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
何で!?何で僕なんかとなの!?
「ずっと天国から吉井君のこと見てて吉井君のこと好きになっちゃったの」
勝手に心を読まないでとかプライバシー侵害だよとかそう言うツッコミは全て置いておこう。
「本当に僕なんかで良いの?」
僕は学園で観察処分者に認定される程の問題児だ。
そんな僕が神様に釣り合う訳がない。
でも、神様は
「吉井君が良いの。だから、お願いします」
そう言ってくれた。
だからか分からないけど……僕は頷いて
「こちらこそお願いします」
そう答えた。
神様は涙を流しながら
「ありがとう、吉井君!」
そう言って僕に抱きついて来た。
それを見て僕は幸せ者だと思った。
だって、僕なんかと付き合えるってだけで目の前の神様は涙を流して喜んでくれたんだから。
少し経って神様は顔を紅くしながら
「ごめんね、ちょっと取り乱しちゃって」
そう言いながら僕から離れた。
あ、可愛い……
って
「もしかして読めた?」
「うん、ばっちりと♪」
うわぁぁぁぁぁっ!やっちゃったぁぁぁぁぁっ!
良し、無心になるんだ!そうすれば心を読まれない!
「ふふっ、本当に吉井……明久君って可愛いね」
無心……無心……
「そう言えば明久君に私の名前って名乗って無かったよね?」
むs……そう言えばそうだった。
折角彼女になるんだから名前を知っておかないとおかしい。
「私の名前は『ブラフマー』宇宙の創造を担当する神で渾名はイタリア語で創造を意味する『クレアツィオーネ』とかそれを縮めた『クレア』だよ。明久君は私の彼氏になるんだから『クレア』って読んで欲しいな」
「分かったよ。よろしくね、クレア(ニコ)」
「う、うん///」
?何で顔を紅くしたんだろう?
「うん、分かってたよ。明久君がそう言う反応をとるくらいね……」
今度は遠い目?何でだろう?
「はぁ……」
今度はため息か。一体何なんだろう?
って、無心にならないと……
そんなことを考えて心を無にしようとしていると
「そんなに心を読まれるのが嫌なら読まれないようになる?」
クレアがそう言って来た。
「出来るの?」
出来るならすぐになりたい。
そして僕のプライバシーを守りたい。
「うん、出来るよ」
「ならなりたい」
「ふふっ、分かったそれじゃ、行こうか」
そう言って僕の手を握って来るクレア。
うぁ……女子に手を握られたのって久しぶりだよ……
はっ!しまった!
「ふふっ」
うわぁ……完全に読まれた……早く心が読まれないようになりたい……
そんなことを考えていると目の前に相当大きな門が見えてきた。
大きさは大体僕が住んでるマンション位の大きさかな?
と言うかこの門開くのかな?
「開くよ。門は開く為にあるんだから」
そう言いながらクレアは門の前に出る。
だから、心を読まないでよ。
そんなことを考えていると
「アテン~!遊びに来たよ~!開けて~!」
そう叫んだ。
まさか、そんなんで開く訳……
『分かりました~!待っててください!』
そんな少女の声が聞こえて門が開いた。
え、そんなんで開くの?
「ね?開くって言ったでしょ?」
そう言いながらクレアは門の中に入って行った。
ここでは常識が通じないと思っておこう……
そう思いながら門の中に入る。
すると
「「嘘!?」」
そんな驚愕の声が聞こえた。
何事かと見ると中にはクレアと紫色の髪をした大人しそうな子が驚愕の表情で僕を見ていた。
あれ?ボク何かした?
「えっと……その門から内に入れる人は指で数えられる程も居ないんです」
「????」
意味があまり分からない。
「あのね、その門はある特殊な術がしてあって神様もしくは神様の素質がある人じゃないと入れないの。
神様の素質がある人でも入るには頭痛程度の抵抗があるんだけど……何の抵抗もなかったよね?」
「うん」
特に頭痛とか苦痛があったとかそう言うのは無かった。
「それってつまりね?相当上級の神様になるってことなの」
「上級ってどれ位?」
「独断で死んだ人を一万人は生き返らせられる位は」
人を蘇らせられるのがどれ位すごいのか良く分からないけど二人の表情から余程凄いことだって言うのが分かった。
「これなら吉井君は相当上級の神様になれますね」
大人しそうな少女……確かアテンだったかな?がそんなことを言った。
僕は神様になろうと思ってる訳じゃないんだけどな……
すると僕の心を読んだクレアがこんなことを言った。
「明久君、神に心を読まれないようにするには神になるしかないの」
「へぇ~そうなんだ。って僕も神様になれるの?」
「なれますよ。そもそも人は死んだ瞬間にもう神としての末席に座っているんです」
「大抵の人間は気付かない内に転生しちゃうんだけどね」
つまり、今の僕も神様の末席に座ってるってことか。
末席って確か最下位の座席って意味だったよね?
……二人共、そんな目で僕を見ないで……
「と、とにかく、吉井君には立派な神になってもらう為に試練を受けてもらいます」
「試練って?何をするの?」
僕がそう尋ねるとクレアが俯いた。
?どうしたんだろう?
「吉井さん、あなたには地獄に行って貰います」
「え!?」
地獄!?地獄ってあの悪いことをした人が行くって言うあの地獄!?
「そうです。その地獄に行ってあなたには試練を受けてもらいます」
「……試練ってどんな?」
「七千度の熱湯に肩まで浸かって一年間幽閉させてもらいます。
その間人間界では時間は十分程度しか進みません」
クレアの肩が震えたのが見えた。
多分試練を受けたか見たんだろう。
つまり試練は相当辛いと言うことだ。
……やってやる。
「「え?」」
二人は僕の心を読んだのだろう。
信じられないといった表情で僕を見ている。
「心を読めなかった?僕はその試練を受けるよ」
「あ、明久君、本気!?あの試練は見ているだけでも十分拷問だよ!?
それを受けるだなんて『良いんだよ』え?」
「心を読まれたくないからとかそう言う理由だけじゃない。
僕はクレアと同じ場所に居たいんだよ。
男の勝手なプライドかもしれない。
それでも君と同じ場所に居たい。
だから僕は試練を受ける」
僕がそう言うとその場に沈黙が流れる。
少ししてその沈黙を破ったのは……
「分かったよ、明久君。私はもう何も言わない」
クレアだった。
クレアは僕が試練を受けることを認めてくれた。
僕は心の中で感謝の言葉を告げながらアテンに近づく。
「そう言う訳だよ。僕は試練を受ける」
僕がそう言うとアテンは少し思案顔になってから一枚書類を取り出してそこに判子らしき物を押す。
するとアテンはそれを僕に渡して
「あなたが無事試練を乗り越えることを祈っています」
そう言ってくれた。
僕は『ありがとう』と返事をしてその書類を受け取る。
そして僕達はそこから出た。
地獄
地獄に着いた僕達は試練を受ける場所を見下ろしていた。
その光景はその名の通り地獄絵図。
地獄の裁きを受けている罪人達が叫び声をあげて助けを求めている。
「明久君……これを首にかけて」
そう言ってクレアが僕に渡したのは十字架の首飾り。
「お守りにして」
「ありがとう、クレア」
僕はそう言って首飾りを首にかけた。
「それでは吉井明久さん、こちらへお願いします」
そう言ったのは案内人。
罪人にちゃんとした裁きを与える為に居るらしい。
「分かりました」
僕はそう返事をして案内人について行く。
すると服の袖が引っ張られる感触がした。
振り向いてみると涙目のクレアがそこに居た。
僕は心を読むことは出来ない。
でも、この時は何が言いたいのか分かった。
『行かないで』
そう言いたかったんだろう。
僕はクレアの耳に口元を近づけこう言った。
『必ず帰るから』
そう言って僕は案内の後を追った。
そして少し歩いていると少し熱くなってきた。
目の前に先程罪人達が入っていた沼があった。
「さて、入るとするかな」
そう言いながら少し体を動かす。
体を動かしたのは準備運動がしたかった訳じゃない。
震えている体を誤魔化す為だ。
「お洋服をお預かりします」
案内人のその言葉で覚悟を決める。
僕はクレアに言ったんだ。
必ず帰ると……
そう言ったんだ。
「それじゃ、行くか」
僕は服を脱いでゆっくりと地獄の沼に入る。
「っ!」
少し体が触れただけでものすごい苦痛が身体中に走る。
一瞬だけやめてしまおうかと言う考えが体の中を走るが僕はその考えを振り払って一気に沼の中に入る。
「くぅっ!」
さっきとは比べ物にならないほどの苦痛が身体中に走る。
それでも僕はクレアとの約束を守る為にここで諦める訳にはいかない!
「絶対この試練を乗り越えてやる!!!」
そんな僕の声が響き渡った。