新校舎Bクラス教室前。
そこでは明久が圧倒的力を以てDクラスの生徒を薙ぎ払っていた。
「一撃も喰らってないでここまで来ると何だか弱いものイジメをしてるみたいだな……」
明久の言う通り明久は未だに一撃も喰らっていない。
明久の操作がすごいのも理由の一つであろうが理由は他にもある。
その内の一つがDクラスの生徒が明久の迫力に圧されたということだろう。
先程からDクラスの生徒は明久が一歩進むごとに一歩後退している。
それでも明久に挑むのは最低クラスに負けて設備を下げられたくないと言う意地。
だが、明久はそんな意地さえも薙ぎ払う。
己の愛する者の為に悪魔にすらなる。
それが、明久が百年間修行してきた中で得た答えだから。
とは言うものの……
「やっぱり弱いものイジメみたいで嫌だなぁ……何だか萎えるぜ……」
ため息を一つ吐きながら目の前に居るDクラスの生徒達を見る。
そこに居る生徒達は皆怯えた表情を見せている。
それを見てまた明久は一つため息を吐いた。
「お前等、撤退してくれねぇかな?これ以上弱い者イジメしたくねぇんだよ」
正直かなりそう言いたい。
撤退してくれる訳がないとは分かっていたがこれ以上弱いものイジメをしたくなかった。
あり得ないとは分かっているが撤退してくれないだろうか。
そんなことを考えた時だった。
「前線部隊撤退しろ!代表からの命令だ!撤退しろ!」
「……は?」
Dクラスの前線部隊隊長である平塚がいきなり通常ではありえないような命令を下した。
その命令に従いDクラスの生徒達が撤退していく。
―――まさか、降伏する気か?
もうDクラスに勝ち目はない。
だから、降伏するのではないかと思ったのだがその考えはすぐに消えた。
それは一組の男女を見たから。
ただの男女ではない。
その二人は撤退するDクラスの生徒の流れに逆らいながらゆっくりと明久の方へと歩いてくる。女子生徒の方に見覚えはないが男子生徒の方に見覚えがあった。
先程中岡を拾いに行った時に中岡を投げた生徒だ。
明久は何となくその男子生徒の正体を掴んでいた。
確信なんてものは無い。
だが、間違いはないだろう。
―――転生者
その思考を肯定するかのように男のデータが頭の中に浮かんでくる。
矢崎宏―――睦月中学校出身。冷静沈着で滅多に感情を表すことがない。
Dクラス代表。
「また会ったな」
「ああ、あの時、初めて会った時俺はこういう絵が描かれるんじゃないかってずっと思ってたよ」
そう、明久はずっと思っていた。
―――例え、この男がDクラス代表でなくとも戦うことになるだろう。
そう思うと血が滾って仕方なかった。
『強者は強者と会うと血が滾る。その滾りは戦うことが無い限り止むことは無い』
かつて天界に居た頃に明久の同僚が言っていた言葉は真実だったらしい。
今すぐ戦いたい、この滾りを満たしたい。
だが、礼を失する訳にもいかないだろう。
滾る血を一生懸命理性で抑えこみながら明久は自己紹介を始めた。
「一応自己紹介をしておくぜ。俺は吉井明久だ。あんた等の名前をお聞かせ願いたい」
「……矢崎宏だ」
「鈴浦三留です」
「さて、自己紹介も終わったしさっさと始めようぜ?」
獰猛な笑みを浮かべながらそう言う明久。
……正直、こんな笑みを浮かべている明久が自分のことを神だと言っても誰も信じないだろう。……同じ神でさえも。
「その前に変な事を聞いていいか?」
「何だ?」
早くしろと言う顔をする明久。
そんな彼の顔はすぐに固まることになる。
「お前は何者だ?」
「………」
宏の質問を聞いて明久の表情が獰猛な笑みのまま固まった。
だが、明久はすぐに表情を真顔に戻し、それから数秒後また獰猛な笑みを浮かべた。
「この勝負が終わったら教えてやるよ」
「なら、勝って聞くことにする。俺は今度こそ三留の前で強大な力に抗って打ち勝たなければいけないんだ。行くぞ、吉井明久!試獣召喚《サモン》!」
「あぁ、来いよ。俺も負ける訳にはいかねぇからな。本気で行くぜ!」
こうして神と強靭な意志を持った二人の戦いが始まった。