ガキンッ!ガンッ!ガンッ!カキンッ!
宮殿の道場から剣戟が聞こえてくる。
宮殿でクレアと閻魔が明久と戦っているからだ。
明久は右手に刀を持っている。
その武器は模造刀で殺傷能力はない。
「「はぁっ!」」
クレアと閻魔は同時に明久に襲いかかる。
まず明久は上段から切り下そうとしている閻魔の偃月刀を弾き体の防御を無くす。
閻魔ほどの実力者なら一瞬で体勢を立て直せるが明久には一瞬あれば十分だった。
明久は閻魔が体勢を立て直す寸前にがら空きのボディに左手で一撃を入れる。
「くっ……」
閻魔は気絶し倒れた。
明久はすぐにクレアの方に振り向き刀を振るう。
「っ!」
クレアはその斬撃を鎌で防ぐ。
その瞬間明久はクレアの鎌を掴んでクレアの鎌を動かなくする。
そして明久は刀をクレアの首筋に当て……
「俺の勝ちだ。クレア」
そう言って微笑んだ。
明久side
俺が修業を始めてから百年が経った。
百年という月日は長いもので俺を強くしてくれた。
クレア達が勉強を見てくれたから頭も良くなった。
まぁ、百年という月日は強さや頭の良さだけじゃなく俺の性格や口調も変えたけどな。
『それでも明久君のこと大好きだよ!』と言ってくれるクレアは俺にとって本当に大切な存在だ。
「明久君、本当に強くなったよねぇ~」
「全くです。いつの間にか明久君に追い越されてしまいましたよ」
「師匠がよかったからな」
とは言ってもそれが本当の理由じゃない。
一番の理由は修行を始める前から全然変わってない。
三人の役に立ちたいから。
三人が隠していることを打ち明けられるほどは強くなりたい。
だけど、三人はまだ俺に秘密を打ち明けてくれていない。
まぁ、それでも良い。
皆が打ち明けてくれるまで気長に待つさ。
そんなことを思っていると三人(クレア・アテン・閻魔)が秘密話を始めた。
「(明久君、強くなったからもう敵のことを話してもいいんじゃないですか?)」
「(そうですよ、クレアさん)」
「(……二人の言うとおりだね。明久君は私達以上になったからもう話さないと駄目だね……)」
内緒話が終わったのか三人が俺の方に振り向いてきた。
その顔は真剣な表情で俺も思わず身構えてしまった。
「明久君に話すことがあるの」
「何だ?」
とにかく落ち着け。
クレア達が隠していることを打ち明けてくれるのが俺の本望だったはずだ。
今更どんなことを言われようと取り乱すな。
「私達神には敵が居るの」
「敵?一体どんな?」
「それを説明するにはパラレルワールドについて説明しなくちゃいけないの」
『パラレルワールドって何だかわかる?』と聞いてきたので頷く。
パラレルワールドとは、簡単に言えば可能性の世界。
例えば今、俺は車に轢かれてここに居るが車に轢かれていなかったらどうなったか。
この時点でもう一つの世界が発生する。
このもう一つの世界がパラレルワールド。
選択されなかった選択はパラレルワールドの自分が選択し行動するらしい。
もっと簡単に言えば俺がAのゲームに成功したことにしよう。
するとAのゲームに失敗するとどうなるか。
この可能性が生まれた時点でパラレルワールドが生まれAのゲームに失敗する俺が生まれる。
これがパラレルワールドの概念だ。
「それでね、明久君達の世界もパラレルワールドだって言うのは分かるよね?」
「ああ、それで?」
「パラレルワールドは細かいところは同じだけど大筋は違うの。
でも、大筋が変わることは絶対にない。元は同じだから」
「変わったらどうなるんだ?」
「世界は滅びる」
クレアは感情の籠っていない表情でそう言った。
『何でそんな簡単に言えるんだ』そう言いそうになったところで彼女の目を見てやめた。
確かに感情は籠っていなかったけど……俺には悲しそうな顔に見えたから。
「それで?世界が滅びるのと敵の件は一体どんな関係があるんだ?」
「世界の大筋を変えようとする者達が居るの。
それが私達の敵」
『どうしてそんなことをするのか分からないんですけどね』と閻魔がクレアのセリフに付け足した。
つまり、世界を滅ぼそうとする奴が敵ってことか。
そんなことを思っているとクレアが人差し指を立てて
「ところが!そういう訳じゃないんだな~」
そう言ってきた。
何で心が読めたんだ!?
俺は神になったはずじゃ……
「あ、びっくりしてるね~安心して。
今のは私が何となく明久君が『世界を滅ぼそうとする奴が敵ってわけか』なんてことを思ってるんじゃないかな~って思って言ったセリフだから」
「そ、そうだったのか。
で、そういうわけじゃないって言うのはどういう意味だ?」
「ほら、二次創作とかでよくあるじゃん?転生ってさ。
あれで偶々大筋を離れちゃうことがあるんだよ」
「そういう時はどうするんだ?」
「頼むんだよ。これ以上原作から離れた行動をするなって」
「それで聞かなかったら?」
「脅はk……ごほんっ!もっと深く話すんだよ」
「待て、今脅迫って言いかけなかったか?」
神様が脅迫って良いのかよ……
「良いんだよ、世界の為だもん」
「犯罪だからな。それと心を読むんじゃねえ」
地獄の試練を乗り越えた意味がなくなるじゃないか。
「それでさ~神からチートな能力を受け継いだ人とか小説とかであるじゃん?
ああ言う人が偶に居るんだよ。だから、私達が武力で叩きのめs……ごほんっ!お願いするんだよ」
……何でクレアは神になれたんだろうな……
「とりあえず明久君の武器をどうにかしないとね。
閻魔~地獄から何か持ってきてよ~」
地獄からかよ……
そこは天界で用意させろよ……
「良いですよ」
しかも良いのかよ……
そうだ、ここは常識が通用しないのを忘れてた……
「ある人と武器を用意するので数日待っていてください」
「ある人って誰だ?天目一箇神か?」
「いいえ、ほら、あなたが試練を乗り越えたら盃を交すようにと言った人です。
あ、そうだ。この武器の練習をしておいてください」
そう言って閻魔はどこからか紙を出すと何かを書いて俺に紙を渡してきた。
その紙にはこう書いてあった。
『剣・刀・刺突剣(レイピア)・曲刀(ショーテル)・楯(シールド)・籠手(ガントレット)・薙刀・戦斧(ハルバード)・大鎌(サイズ)・槍(ランス)・大鎚(ハンマー)・弓矢・拳銃・狙撃銃(ライフル)・大砲(キャノン)・杖(ワンド)・魔導書』
「……多くね?」
「明久君ならば大丈夫ですよ。では」
閻魔はそう言って道場から出て行ってしまった。
……俺にあと何年修行しろと言うんだ……
「明久君、がんばろ?」
まぁ、クレアが居るんだったら良いけどな。
「ふふっ、お二人とも仲が良いですね」
「「アテン!」」
「ふふっ」
アテンも意地悪だな……
そんなことを思っていると道場が開く音がした。
「………」
そこには二つの触覚みたいな髪がある特徴的な紅い髪に刺青とちょっと露出度が高い服を着た少女が立っていた。
「あれ?ヒルデ、どうかしたの?」
「……おなか減った」
「そう、アテン、ヒルデに何か作ってあげて」
「あ、はい」
アテンはそう返事をすると宮殿の台所に入っていった。
それを見届けているとクレアにヒルデと呼ばれていた少女が俺のことを見ていたのに気付いた。
「クレア、この子は?」
「この子は『ブリュンヒルデ』
今の明久君なら名前を聞いただけで分かるんじゃないかな?」
「ああ、分かる」
ワルキューレの一人。
人間界の物語では彼女は物語によって違う人格として描かれているがここ天界では最強の武を持っているという噂が流れている。
「……クレア、この子は?」
「吉井明久君。地獄の試練を乗り越えた子だよ。私の恋人」
「そういうことは紹介しなくていいんだよ」
「……仲が良い」
「そうでしょう」
嬉しそうにそう言うクレア。
あ、ちょっと可愛い……
「ヒルデさ~ん、ご飯持ってきましたよ~」
「……(ピクン!)」
うおっ!?触覚が動いた!?
俺が驚いていると
「ヒルデはご飯が目の前にあると髪が動くんだよ」
クレアがそうフォローしてくれた。
「な、なるほど……」
食べ物が好きな女の子なんだな。
そんなことを思っていると
「……明久強い。ヒルデと戦う」
ヒルデがそう言ってきた。
「え?はい?」
俺が困惑している間にもヒルデはどこからか自分の武器を出して準備をし始めた。
「明久君、とりあえずヒルデと戦ってみなよ。
何か得られる物があるかもしれないよ」
「そうだな」
俺はそう返事をして先程まで使っていた模造刀を持って構える。
「とりあえず、一撃で終わらせよう。良いな?」
「……(コクン)」
俺は頷いたのを見て居合の構えを取る。
「クレア、頼んだ」
「は~い」
そう言ってクレアとアテンは立ち上がり俺達から離れる。
どんな被害になるか分からないからその行動は正解だろう。
俺はその行動を見届けて集中を始める。
そして、少しして……
「始め!」
クレアの声が響き渡り俺達は一気にお互いに駆け寄る。
そして、お互いが武器を振るうと……
バキンッ!
そんな音がして……
俺の模造刀が粉々になった。
「あ~負けた~」
そう言いながら粉々になった模造刀を適当に捨てる。
するとヒルデが頭を横に振りながら
「……ヒルデが負けた」
そう言ってきた。
「はぁ?俺の武器が壊れたんだぞ?お前の勝ちだろ?」
俺がそう言うとヒルデは自分の武器を俺に渡してある一か所を指して
「……ヒビが入った」
そう言った。
「え、ヒルデの神器にヒビ!?」
そう言いながらクレアが近づいてくる。
それに倣いアテンも近づいてきた。
「……これが神器だったら明久の勝ち」
確かに模造刀と神器じゃ強度に天と地ほどの差があるからな。
因みに神器って言うのは神の武器のことだ。
「……また、戦う」
ヒルデはそう言って宮殿の道場から出て行った。
「明久、すごい人をライバルにしちゃったね」
「頑張ってくださいね」
「他人事かよ!」
まぁ、俺もライバルができるのは悪い気分じゃねえしな。
そんなことを思いながら俺は鍛錬を再開したのだった。