一年後
「提督。」
高浜典明は秘書官である加賀にそう呼びかけられ、意識を回想の中から取り戻した。ここは一年経った後の横須賀鎮守府である。彼は今日新しく建造された空母、加賀と共に、執務室にいた。
「なんだ?」
典明はそう答えた。
「お茶をいれてもすぐに飲まなかったので、どうしたのかと。」
「思い出に浸ってた。俺とて回想にも浸る。」
「どんな回想をしていたのですか?」
「
そう言って、彼は先に書いたような事を話した。
「――それで、どうなったのですか?」
加賀は典明に問いかけた。彼は悩むような顔をしてこう答えた。
「効き目は薄かったが、効いたのは確かだったんだ。」
「はあ。」
加賀はぽかんとしている。
「その時銃弾が被弾したのは……空母ヲ級だったかなあ。ま、深海棲艦に当たっていた事に相違はないんだが。ともかく、そいつの被弾した腕から、人間の肌らしきものが見えたんだ。そこから肌の面積は広がっていったんだが、すべてが人間の肌には成らなかった。肩あたりで止まったよ。あちらは氷のような目つきでこちらを見ていた。あんな視線は今までみたことが無かったね。まあ、その後、そのまま弾が残り一発になるまで機関銃を撃ち続けた。それが功を奏したのか深海棲艦は帰って行ったよ。」
典明は続ける。
「その出来事のあと、政府のお偉いさんが家に来て、弾丸の出所を聞いてきたから、例のカルト集団の事について言ったんだ。そしたら、その弾が深海棲艦への砲弾に使われるようになったみたいで。それと同時期に『艦娘』という存在を政府が開発したんだ。それで、今に至るってわけ。」
典明は加賀の方を見た。そうしたら加賀は、
「ありがとうございます。」
と言った。
「良いんだ。俺も君に語れて良かった。」
「このことは、秘密に頼む」と言わんばかりに、典明は加賀に向かって人差し指を立て、唇につけた。加賀は了承したようで、コクリとうなずいた。
典明は加賀を連れて彼女が入る事となる第一艦隊を案内した。メンバーは、加賀を含め、赤城、長門、陸奥、大和、金剛であった。
「新しく着任した艦娘の加賀だ。今日からこの第一艦隊の旗艦を務める。」
典明は第一艦隊の面々にそう紹介した。典明は軽く紹介をすませると、全員がいた部屋から出て行った。
「加賀さん、お久しぶりですね。」
そう声をかけたのはかつて加賀の同僚であった。
「赤城さん……。」
「あまり硬くならないで下さい、加賀さん。ここの提督は怖い人ではないですし、艦隊の人も面白くてやさしい人が多いですから!」
赤城は緊張している加賀を励ました。艦隊のメンバーは
「よろしく。」
という言葉を語尾は違えども口にした。それも笑顔と共に。加賀はこれからの生活に、希望が見えたような気がした。
こんなにハイペースで投稿出来るのも今回くらいまででしょうなあ。