【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士 作:Survivor
それはズバリ、恋愛事情です。
※9/16、一部修正
夢を見ている気がする。
あれは確か数ヵ月前、前学期で起きた出来事だった。
暫くの間、グリフィンドール生のケイティ・ベルが瀕死の重態に陥り聖マンゴに入院したこと以外、ホグワーツは平穏無事な学校生活が続いた。
そんな何事も無く時間だけがただ刻一刻と過ぎていく退屈な日々も、今シーズン最後のクィディッチ戦及び決勝戦当日を迎えれば、一度城内を覆う雰囲気はガラリと激変する。
その日、クィディッチ競技場は未だかつてないほどの異様な空気と熱気に溢れ返っていた。
レイブンクロー戦とハッフルパフ戦で快進撃を続けてきた、グリフィンドールとスリザリンの決着が再びつけられる時が来たからだ。
特に初戦で激しい屈辱を受けたグリフィンドールは長らく入院してようやく帰ってきた優秀なチェイサーであるケイティの復帰も相まって、皆一様にやる気満々で熱意にみなぎっている。
無論スリザリン側も、この試合で必ずや勝利し優勝杯を手に入れると言う強い目的意識でこの日を迎える前から闘志を燃やしていた。
本来であればトーナメント戦ではなくリーグ戦で、今シーズンラストの幕を飾るのはグリフィンドールVSレイブンクローだった。
………のだが、今年だけは変則的にリーグ戦からトーナメント戦に変更したので、こうして因縁の対決が再度叶ったのである。
ダンブルドア曰く、「そちらの方がより盛り上がると思ったから」だ。
英国魔法界に住む住民全員が薄々感付いているだろうが、現状からしてそう遠くない内に、いよいよ全ての命運を分けた第二次魔法戦争が勃発する可能性が非常に高い。
そうなれば授業のみならず、クィディッチさえプレー出来なくなる。なら、停戦期間中の今の内に思いっきり楽しもうと、今回だけは特別にルール変更したに違いない。事実、今年のクィディッチ戦はトーナメント戦と聞いたホグワーツ生は例年よりハイテンションになった。
ひとまずは「生徒達を活気付かせる」と言う目標は達成したので、教師陣としては上手くいったとホッとしたことだろう。
「先輩、頑張ってくださいね!」
「ベルンカステル、今回も絶対にポッターより先にスニッチ取ってくれよ!」
「何てったって、お前は俺達スリザリンの勝利の女神なんだからな!」
ロッカールームでユニフォームに着替え終えたフィールは集合場所のコートに向かう途中、スリザリンのギャラリーから黄色い声援や野太い声援を沢山貰った。行く手を遮られたフィールは嫌な顔1つせず微笑して相槌を打つが、その微笑みの裏では緊張感が益々高まっていく。こうして応援されるのは純粋に嬉しいが………やはり、少なからずのプレッシャーは与えられた。
後輩や先輩、同級生がニコニコしながら応援席に登っていくのを見送り、さあそろそろ行くかとフッと1つ息を吐いた直後、
「―――フィー!」
と、背後から誰かに呼び掛けられた。
声がした方向にフィールは振り返る。
相当急いで走ってきたのか、茶色い髪はいつになく乱れており、息も上がっていた。
見紛うことはない。フィールに声を掛けたのは応援席に居たはずのクシェルだった。
彼女の片手には、何かが握られている。
「………クシェルか。なんだ?」
「ハァ、ハァ………良かった、間に合った」
「間に合ったって?」
「これを渡しに来たんだよ」
そう言って、クシェルはある物を差し出した。
それは―――
「………ピアス?」
光の当たる角度によって色が3色に変わる特性を持つパワーストーン・アイオライトのピアスだった。
アイオライトは、かつてその特性を活かしてバイキングが航海の際に羅針盤代わりに使用し、太陽に翳して最も青色が鮮明に見える方向に船を進めたと言う伝承が残っている。
その事からアイオライトは持つ人の人生において望みや目的地への導き手となる石―――つまり羅針盤のような役割を果たすパワーストーンと信じられてきた。
静かな青色が美しく、ウォーターサファイアとも呼ばれるアイオライトはその色が示す印象のように『鎮める』エネルギーを持つ。
何が正しいのか悩んだり、人生における迷いが生じた時、正しい方向を指し示し心身に溜まった不要なものや不純物を洗浄しスッキリとさせてくれるアイオライトの効果は、イライラや不安など蓄積されたネガティブな感情を洗い流しクリアな気持ちで心に安心感をもたらしてくれると言われているのだ。
何故このような物を? と戸惑いつつも、フィールは右手を出す。
ピアスを受け取った瞬間、軽く、互いの指先が触れた。
「その………大事な試合前で集中してる時に、ホントごめん。でも、どうしても今貴女に渡したくて………ピアスなら、ネックレスとかブレスレットとかと違って気が散らないだろうし、フィーがいつも付けてるイヤーカフとも一緒に付けられると思ったから………」
俯きがちのクシェルは珍しく口ごもる。
そんなクシェルに、彼女が他の人とは違ったやり方で自分を励ましてくれたのが嬉しいフィールは柔らかく微笑んだ。
それに………ピアスに触れる前も、その色を見ているだけで、なんだか身体がフワッと軽くなったような気がした。
いや、身体だけじゃない。心の中にあった重いもの―――不安やイライラみたいなものが、スッと消えた気分であった。
アイオライトのヒーリング効果の1つに、過剰な期待に応えなければならないと言うプレッシャーを和らげてくれるものがある。
恐らく彼女は言葉による励ましよりも、こうして物による励ましで自分に要らぬ心労を掛けないようにしてくれたのだろう。
不安を取り除き、楽な気持ちで前進出来る心境へと導いてくれるきっかけを作ってくれたクシェルに、
「ありがとな、クシェル。………私、これできっと、大丈夫だ」
と、心からの感謝の言葉を伝えた。
顔を上げたクシェルは、普段滅多に見ることのないフィールの爽やかな笑顔に一瞬眼を見張った後、目元を和らげて頷いた。
そうして、フィールは背を向けて歩き始める。
歩きながら杖を抜き出したフィールは一振りさせると、魔法で耳朶の穴を貫通させ、そして一瞬でその穴に通してピアスを付けた。
その後ろ姿を見送ったクシェルは「頑張って」とフィールの手前、プレッシャーを掛けないよう口には出さないでおいた応援の言葉を呟き、観客席へと戻って行った。
クシェルからピアスをプレゼントされ、早速それを身に付けたフィールは「遅いぞ」と既にコートに集合していたメンバーに叱責され、「遅れて悪かった」と贈り物を渡されて遅れたことは黙って素直に謝る。
「ったく………まあいい。とにかくこれで全員が集まったな。あともう少しで試合が始まる。終了するまで決して気を緩ませるなよ。そんなことすれば、後でタダではおかないからな」
腕組みし厳しい顔でチームメイトの顔を見回したキャプテンのウルクハートは、遅れてやって来たフィールに視線を向ける。
「特にベルンカステル。勝利の鍵はお前に掛かっているのだからな。今回も頼むぞ」
ウルクハートから要らぬプレッシャーを加えるような発言をかまされ、フィールは一瞬眼を細めたが、すぐにグッと引き締めた表情で小さく頷いた。
それを見て、ウルクハートは満足そうに笑う。
「さあ、いよいよ決勝戦だ! 絶対に勝って、優勝杯を持ち帰るぞ!」
ウルクハートの鼓舞にチームは鬨の声を上げ、改めて一致団結する。
皆「絶対に勝つぞ!」と意気込んだ時、タイミング良く伝令が来た為、フィールはファイアボルトを、その他6人はニンバス2001を片手を取り出し、跨がった。
そして颯爽と飛び上がったスリザリンのクィディッチチームは、選手入場した瞬間にワアッと天を衝く勢いで上がった力強い声援を受けながら、それぞれのポジションに就く。
敵チームのグリフィンドールの選手も各自配置に就き、空中でスリザリンの選手と向き合った。
今この場に居る14人が、目の前の敵を睨み付けている。
中でもハリーの気迫は凄まじかった。
2度に渡り因縁のライバルに破れてきた彼は今日この日まで、チームの誰よりも猛特訓に励んできた。
その彼の目標はただ1つ。
3度目の正直で次こそフィール・ベルンカステルに打ち勝ち、グリフィンドールに優勝をもたらすことだ。
キャプテン2人が握手を交わし、手を離した次の瞬間、開戦を告げ知らせるホイッスルが高らかに鳴り響く。
クアッフルが空高く放たれ、ブラッジャーが無差別に飛び回り、そして金のスニッチが何処かに飛び去る。
選手は各々の役割を全うするべく一斉に動き出し、応援席に居るギャラリーもまた、喉が潰れるんじゃないかと思うくらいの声を出して、選手達の士気を高めた。
試合はほぼ互角の展開が繰り広げられている。
グリフィンドールは初戦の雪辱を必ず晴らす為にストイックに練習に励んだ為か、前回とは比べ物にならない目覚ましい成長を遂げていた。
シーカー2人は豪速球で飛んでくるブラッジャーを避けながら、スタジアム全体をくまなく注視しながらスニッチを捜索する。
「もう2度と負けるものか。今日こそ僕は君に勝つ! 絶対に勝つ! その為にも今まで練習してきた!」
「それはこっちのセリフだ。今回も勝利は私達スリザリンのものにする。ここまで来て負けて堪るか」
互いに言葉を交わし時折肩を衝突させながら、ハリーとフィールは己の目的を口にする。
空中を飛び回る2人のシーカーの姿に生徒達の視線は釘付けになり、どちらが先にスニッチを取るのかとハラハラしっぱなしであった。
そして試合がスタートしてから数十分後。
一進一退のシーソーゲームを繰り返していた一戦は、遂に終わりを迎えることとなる。
お互い離れた場所でスニッチを探し続けていたフィールとハリーは、ほぼ同時に青い空を背景に浮かぶ金色の小さな光を上空で見付けた。
(! アレは―――)
(金のスニッチだ!)
考えるよりも早く、2人は風になりスニッチに向かって飛び出した。
唐突に空高く舞い上がったシーカーに歓声が一際大きくなる。
その2人目掛け、両チームのビーターがブラッジャーを思い切り叩き込んだ。
物凄いスピードで飛んで行くブラッジャー。
それをクルリと1回転して回避する黒髪の少年少女。
先に崩れた体勢を立て直したのは―――
―――ハリーの方であった。
「―――!」
顔を上げたハッとフィールは息を呑む。
その彼女に、再びもう1つのブラッジャーが飛んできた。
一瞬身体が硬直したフィールは慌てて避け、全力でスニッチを追い掛けると、必死に手を伸ばした。
だが………。
ファイアボルトの特性を発揮し全力で上昇し直したフィールの眼に飛び込んできたもの。
それは。
一直線にスニッチとの距離を詰めたハリーが。
フィールの指先が僅かな差で触れる寸前で、金のスニッチを掴み取った腕を高々と突き上げた姿だった。
♦️
ハリーがスニッチを取った後、一切の音が何も無くなった。
拍手も、歓声も無くて………自分の心臓の音さえ聞こえなくなったみたいに。
とても長い間だったように思えた沈黙だったけど、その数秒後に、スリザリンを除く3寮から嵐のような大歓声と大拍手が沸き起こった。
競技場全体が揺れたかと思うくらい勢いよく、グリフィンドール生、ハッフルパフ生、レイブンクロー生が立ち上がり、爆発したのだ。
歓喜に包まれるグリフィンドールはグラウンドに雪崩れ込んできた生徒も含め全員で地面に降り立ったハリーを胴上げする。ハリーは満面の笑顔を浮かべており、胴上げが終わった彼は自分と同じくらい嬉しそうな笑顔で駆け寄りそして抱き付いてきたハーマイオニーを抱き上げ―――約1000人近くもの視線が注がれているのも構わず、彼女にキスした。
ハリーがハーマイオニーにキスしたシーンに、場はシンと静まり返る。時間としてはそこまで経っていなかったのだが、2人にとっては永遠とも思えた時間の中で口付けを交わしたハリーはハーマイオニーに優しく笑い掛ける。その彼の微笑みに、ハーマイオニーは思わず嬉し泣きした。
今この瞬間誕生したばかりの初々しいカップルに、何人かが冷やかしの口笛を吹き、あちこちで勝利を喜ぶ歓声とはまた違う歓声を上げた。
ハリーが手荒い祝福を受ける一方で、ハーマイオニーは温かく祝福される。
その何とも微笑ましい光景を、失意に暮れるスリザリン生はどこか遠い眼で眺めていた。その眼には、あと一歩でスニッチを掴めなかったシーカーに対する苛立ちや負けたことへの悔しさが滲んでいる。
暫く突っ立っていたフィールは背中に突き刺さる厳しい視線を感じつつも、潔く敗北を認めてゆっくりとハリーの元へ歩み寄る。それに気付いたハリーもフィールへ近付いた。
再び試合会場は静けさが訪れ、グラウンドのど真ん中で向き合うフィールとハリーの姿に、3年前の光景がピッタリリンクする。
「………3年前、アンタが私に言った通りだったな。アンタは私に勝った。そして私はアンタに負けた。………潔く、負けを認めるよ」
フィールは、グローブを嵌めた右手を差し出した。それをハリーは黙って掴み返す。
最後に握手したら、フィールは暗緑のローブを翻し、踵を返した。
背を向けた瞬間、頬に悔し涙を流して。
そして決勝戦を終えた翌日から。
身も心も苛む地獄の日々が始まった。
♦️
クィディッチチームのピンチヒッター。
寮の救世主とも言える助っ人を懇願され、それを引き受けたフィールにスリザリン生は大きな期待を寄せた。
宿敵・グリフィンドールは勿論の事、ハリー・ポッターに唯一勝てるシーカーとしてスリザリンに所属する一団が注目していることを知っていたフィールは、正式な選手でないにしろ、全力を尽くして皆の期待に応えようと、彼女なりに熱意を注いで意気込んでいた。
しかし、シーズンラストで肝心な決勝戦、僅かな差でスニッチに手が届かなかったフィールはハリーに負けた。
重要なファイナルでの無様な敗北。
期待を裏切ったピンチヒッターに、周囲の眼は厳しかった。
向けられる眼差しは称賛と期待から嘲笑と落胆へと一転し、雪辱を果たしたグリフィンドールを初めとする3寮には侮辱され愚弄された。
何処に行っても、フィールは笑い者にされた。
フィールを見掛ける度、殺意にも似た憎しみの視線を送っていたホグワーツ生達は、今度は蔑みの瞳で見るようになり、わざと彼女に聞こえる声で悪意に満ちた言葉を叩くようになったのだ。
3年前の時みたいに優勝と勝利の奪還を願っていたスリザリン生の殆どはフィールに厳しい眼を向け、フィールのせいでスリザリンは惜敗したと彼女を激しく責め立てた。大半の魔法使い共通のクィディッチの事になると頭に血が上りやすい性格も手伝い、その口調は厳しいものだった。
フィールは最初、自分に非があることなので謝った。皆が己にスリザリンの勝利を託し信じていたのを裏切ってしまったことへの罪悪感を感じていたので黙って非難の言葉を受け止めていたが、それがあまりにも長く、加えて激しかったので、収まる気配を感じなくなってきたフィールは次第に「こんなことになるならピンチヒッターなんてやらなければ良かった」とチームのピンチヒッターを務めたことに対し後悔するようになった。
クシェルやグリーングラス姉妹は彼女に非難の集中砲火を浴びせる同寮の生徒達に「いくらなんでも責め過ぎだ」と窘めたが、やはりと言うかなんと言うか、一向にクールダウンする兆しは見せず、むしろヒートアップしていく一方で、どれだけ彼女を励ましても、どこか暗くて虚ろな瞳の彼女は、何も反応してはくれなかった。
応援していたはずのスリザリン生達からフィールが買ったのは失望。とんだ期待外れのピンチヒッターだったと、かつてフィールを英雄視して称賛の言葉を述べていたとは到底信じられない程の掌返しだった。
後悔と屈辱に満ちた日々の中、今日もフィールは濁った眼で廊下を歩く。ニヤニヤと下卑た笑みや軽蔑の視線を送られているのを嫌になるくらい感じながら、隣で慰めてくるクシェルを横目に授業が行われる教室へ向かおうとしたが―――
「………ごめん、クシェル。今日の授業は欠席するって教師に伝えてくれないか?」
「え? うん、別にいいけど………」
フィールからの頼みに少々ビックリしながらもクシェルが頷いた直後、フィールはすぐに何処かに立ち去った。
フィールが来た場所はホグワーツ城で最も高い天文台の塔だった。此処に着いて気持ちの張りが解けたフィールは、はぁ、と深いため息を吐き、床に座り込んで壁に背を預ける。
そうして、体育座りして両手で膝を抱えながら俯いていると―――
「やっぱり、此処に居た」
頭上から声が降り掛かった。
えっ………と思いながらフィールが顔を上げると、そこにはクシェルと―――意外や意外、ドラコが立っていた。
教師のマクゴナガルにフィールは欠席する旨を伝えた後、やっぱり彼女の事が心配で探しに行こうと、どういう訳か珍しく早退したクシェルにドラコもついてきたのだ。
「………何しに来たんだ」
「フィーが心配だったから、それで」
「まだ授業続いてるだろ。今からでも戻れよ」
「親友が苦しそうにしているのに放っとけって言うの? 悪いけどフィー。私はフィーが辛そうなのを知ってて知らないフリは出来ないから」
頑なに突き放そうとするフィールにクシェルが肩を竦めると、ドラコが口を開いた。
「………お前の事だから、負けたのは自分のせいって思って、悩んでるだろ。表面上は無表情貫いて気丈に振る舞ってるけど、こういう時は………無理するなよ」
フィールは眼を大きく見張る。
あのドラコがこんな事を言うなんて、昔では全然信じられなかったからだ。
なんとなくだが、彼と彼の母親を助けて以来、態度が幾分か穏やかになった気がするなとフィールが思っていると、
「放課後、僕の方からもスリザリンのヤツらに何か一言言っとく。あの様子じゃ当分収まらないだろうが、ひとまずはやってみる」
そう言って、ドラコは踵を返した。
フィールは未だに唖然としている。
すると、クシェルがニッコリとドラコに向かって笑い掛け、
「………ドラコ、少しは変わった?」
「は? 何がだ?」
「だって、前のドラコだったら、あの人達と同じようにフィーを笑い者にしたり、責めたりしたでしょ? ドラコも成長したんだね、偉い偉い」
からかい半分にドラコを誉めると、ドラコはフンと顔を逸らして、
「言っとくけど、僕は別にベルンカステルの為にやる訳じゃないからな。勘違いするなよ」
と言い返し、今度こそ立ち去ってしまった。
クシェルは「もしかして………ドラコって案外ツンデレ?」と笑みを溢しつつ、フィールと向き合う。
「さっき、ドラコも言ってたけど………こういう時は無理しなくていいんだからね。フィーには頼れる人が一杯居るって事、忘れないでよ。何かあったら相談して。私達に話してスッキリするならいくらでも聞くから」
クシェルの、真摯な気持ちに溢れた………温かい言葉。
それは、とても嬉しいけれど………今のフィールには素直に受け取ることが出来なくて。
フィールの口から突いて出たのは、
「別にそんな………無理なんか、してない」
と言う言葉だった。
本音と建前は全く真逆のことを言ってしまい、暗い影が落ちる。
クシェルやドラコの気持ちは嬉しい。
正直、このまま胸に飛び込んで、泣きじゃくってしまえたら―――と思う。
けれど、甘えたところで、心は決して軽くはずはない。
なのに―――
「そういう所が無理してるって言ってんの」
苦々しそうに言ったクシェルは、両手でフィールの頬をパチンッと挟んだ。
「フィーはホント、変なところで頑固だよね。フツー、皆から一方的に責められたら誰かに話してストレス発散したくなるものだよ? いつも言ってるでしょ、独りだけで何でも抱えないで、少しくらい、私を頼ってって」
その言葉に。
堪えていたフィールの気持ちが、抑え切れないくらいに大きく膨れ上がった。
そんな風に言われたら、我慢出来ない。
悔しい。苦しい。辛い………辛い………。
ずっと我慢していた激しい感情が一気に大波のように押し寄せてきて、気付いた時には、涙が一筋頬を伝った。
「………ごめん、クシェル。今だけは………後ろを向いてくれる?」
言われた通り、クシェルが後ろを向くと………背中に何かが当たる感触がした。
そっと肩越しに見てみると、タガが外れたらしいフィールが額をクシェルの背中に押し付けて静かに涙する姿があった。
【ロマンス<フレンドシップ】
本作の原作キャラとオリキャラの絡みは恋愛要素より友情面を重視。
そして先の展開を見通すとどうしても恋愛絡みは到底無理だったので恋愛面のみ原作キャラとオリキャラは越えてはならないラインを引いた関係。
ただし例外として原作では割りとあっさり初恋叶ったセドリックとフラーはそれぞれオリキャラに片思い&失恋と言う経験は挟んだ。
逆に色恋沙汰を比重に置いたらここまでの交友関係築けなかった可能性がデカいような気がする。
【天然石・パワーストーンアクセサリー】
最近はカクテル言葉だけでなく石言葉にもどハマり。その他星言葉や花言葉にもめっちゃ興味沸いてます。よかったら色々調べてみてください。
【フォイのレベルがちょっとアップしたフォイ】
恩を仇で返すほどフォイフォイもイヤなヤツではない………はずだよね?