【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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#113.ホグワーツ決戦

 刻一刻と、怖いくらい静かに、そして音も無く迫って来る、魔法界の命運を分けた最終決戦開幕の刻限。

 大広間の一件で一悶着があったパンジー・パーキンソンや彼女に賛同した魔法使い、非戦闘員の下級生など、この戦争に不参加の者は最上階に在る必要の部屋に匿われ、それ以外の者は各自配置に就き、戦端の火蓋が切られるのをじっと待つ。

 最期の瞬間までヴォルデモートに屈服しない。

 かつて誰もが恐れる闇の帝王に恐れず立ち向かった魔女のように、勇敢に戦い抜いた末に命が尽き果てるのならば本望と、これから此処に押し寄せて来る大軍の猛攻をいつでも迎撃出来るよう、武器をしっかり握って神経を研ぎ澄ませる。

 緊張感が高まる中、ハリーとフィールは2人きりで周りには誰も居ない場所に居た。後者が敵勢力の報告が光の陣営の総司令官・ダンブルドアに完了した後、前者が急に「頼みたい事がある」と言って呼び出したのだ。

 

「………それでなんだ? 頼みたい事って」

「その前に、1つ確認したい事があるんだ」

「確認したい事?」

「うん。賢い君の事だから、多分前々から気付いてたたかもしれないけど………さっき、ダンブルドアに言われて確信したんだ」

 

 複雑な気持ちを露にしながら、ハリーは悲壮な面持ちで、全てを見透かしてるような眼で黙っているフィールに、彼女が天文台の塔に行ってる間にダンブルドアに告げられた己の秘密を伝えた。

 

 

 

「やっぱり僕、分霊箱の1つだったんだな………ヴォルデモートの」

 

 

 

「………いつから感付いてた?」

「クラミーさんの存在が発覚した辺りから………かな。クラミーさんは魂を通じて君の思考や精神状態を把握していたし、ダンブルドアや君もその繋がりはまるで分霊箱みたいだって言ってたし。………だから僕、気付いたんだ。どうして、ヴォルデモートとの間に絆があるのか、ナギニの視点で遠く離れた場所で起きた事態を見る事が出来たのか。その答えは、僕自身がヴォルデモートの分霊箱で、ナギニも僕と同じ分霊箱だからなんだって、君と君のお母さんを見て、察した」

「………………」

「フィールはさっき、『いつから感付いてた?』って言ったよね? 逆に訊くけど、フィールはどの辺から気付いたの? 僕が分霊箱だって」

「結構前から………かもな。ほぼ確信したのは、アンタが感付いたって言う時くらいだけど」

「………そっか」

 

 一言そう言って一瞬視線を足元に落としたハリーは、すぐに逸らした目線をフィールと合わせ、

 

「折り入って頼みがある。フィール、今此処で、破壊してくれないか? 僕の中にある、アイツの魂を」

 

 と、分霊箱を破壊する力を持つ彼女に頼んだ。

 が、フィールは腕組みしたまま、姿勢を崩さない。

 

「………そこまで教えられたのか」

「うん………ヴォルデモートは肉体を復活させる際、復活に必要な材料(敵の血)として僕の血を使った。その関係でアイツは僕の血に宿る母さんの護りの魔法も取り入れた。結果、僕はアイツの肉体が生きている限り死ななくり、分霊箱の破壊が可能な手段で殺害しようとしても、僕の中にあるアイツの魂だけが破壊される―――ってダンブルドアに言われたんだ。あと、僕の杖がヴォルデモートの杖の資質の一部を吸収した事も」

 

 ハリーとヴォルデモートの杖は両者共に全く同じ芯が使われた兄弟杖。相対すると互いに正常に作用しなくなる、謂わば天敵同士。

 2年前、墓場でハリーと復活したヴォルデモートの杖が繋がった際、杖がハリーにとってヴォルデモートこそが最大の敵であると認識した上に、ヴォルデモートの力の断片を吸収した。

 その為、『ヴォルデモートにのみ異常に強力な杖』と進化を遂げたのだ。

 

「なあハリー。どうしてこのタイミングで、しかも自ら破壊してくれと頼むんだ? アンタの中にあるヴォルデモートの魂の一部が残存する限り私達に勝利は無いけど、逆を言ってしまえばアンタが分霊箱じゃなくなるまではヴォルデモートもアンタを殺害する事は出来ないし、同一条件で闇の陣営にも勝利は訪れない。アンタを除いて最後の分霊箱たるナギニを破壊した後や死喰い人を粗方始末してからじゃなくていいのか?」

 

 フィールやダンブルドアが考えているように、ハリーが分霊箱である状態を逆手に取って戦況を有利に展開させる手段も一理あるだろう。だがハリーは、フィールの蒼い眼を見ながら笑顔で首肯した。

 

「僕には命を預け預かる事が出来る程の全幅の信頼を置いている仲間が傍に居るんだ。だから僕は大丈夫。例え分霊箱じゃなくなっても、その仲間は身体を張って僕を護ってくれる。そして僕は、その仲間の覚悟を無駄にしないよう必ずヴォルデモートを倒すんだ」

「………………」

 

 一欠片の迷いも無くキッパリと明言したハリーにフィールは呆気に取られる。しかし、ハリーの言葉の意味を理解すると、微笑とは言えないが苦笑でもない、ちょっと困ったような笑みを浮かべた。

 

「全く………ポジティブなヤツだな」

「君の影響を受けたせいかもね」

「私はそんな楽観的な人間か?」

「うん」

「おいコラ」

「君はどんな状況であっても絶対に屈しない。何があっても最後は必ず勝つと信じて戦うから、周りの人間はそれに感化されて戦意を喪失しない。最期までヴォルデモートに立ち向かった君のお祖母さんもそうだ。どれだけ相手が自分より強くても、背を向けて逃げやしなかった。その気概と勇気を君は受け継いだから今の君が此処に居ると、僕は思うよ」

「………やれやれ、随分大層なお言葉を頂くな、私は」

 

 軽く肩を竦めたフィールに、ハリーは微笑みを絶やさない。ハリーの発言は本心から来るものだと容易に理解出来る。

 基本的にハリーは嘘を吐かないし、とフィールが心の中で付け加えたら、

 

「そこから動くなよハリー。『悪霊の火』で、アンタの魂に引っ掛かっているヴォルデモートの魂の欠片を取り除く」

 

 と杖を構え、ハリーは言われた通りにする。

 そして、

 

インフェルノ・フェニス(終焉の業火よ)!」

 

 深い闇魔術の一種『悪霊の火』を唱えた。

 ドラゴンの形に構成された火炎はハリーの全身を飲み込む。が、闇の炎に包み込まれたにも関わらず、炎が収まり姿が顕著になったハリーの細い身体に火傷の跡は何処にも無い。

 今しがたまでハリーが分霊箱だったと言う何よりの証拠であった。

 これで分霊箱は残り1つ、ナギニだ。

 ナギニを破壊し、ヴォルデモートが肉体的破滅を迎えた時、英国魔法界に平和が訪れる。

 と、その直後、窓外から夜空を埋め尽くす幾筋もの閃光がホグワーツ城目掛けて飛来して来るのが見えた。

 2人がそちらを見てみると、遂に闇の陣営が始動したらしい。腕時計を見てみると、針は9月2日の午前0時を指している。

 

「………いよいよだな」

「うん………そうだね」

 

 死喰い人数百人が総勢で総攻撃を仕掛けるが、堅牢なホグワーツの防御魔法はちっとも貫通出来ない。焦燥する闇の魔法使い達は猛ラッシュを繰り返すが、牙城を覆う強力な防壁は依然として無傷のままであった。

 すると、いつまで経っても敵陣の防塞を突破出来ぬ大勢の部下に煮え切らなくなったのだろう。

 苛立ったヴォルデモート卿が自ら1歩前に踏み出し、桁外れの超弩級の力でバリケードの破壊を試みたのだ。

 流石にダンブルドアとその他多勢の豪傑魔法使い・魔女によって構築されただけあって一撃では破砕されなかったが、2発、3発くらい撃ち込まれた瞬間、ピシリ、と言う亀裂音が走り、5発目で遂に防護壁がクラッシュされてしまった。

 夜風に吹かれて舞う砕け散った巨大なバリアの破片。

 障壁が貫通されたその瞬間、ヴォルデモート陣営が雄叫びを上げながら一斉にホグワーツの陣地に流れ込んできた。牆壁を破壊し戦争勃発のトリガーとなった張本人のヴォルデモートは最終決戦の場には突入せず、ニヤリと口の端を歪めて嗤うと『姿現し』して何処かに消え去る。

 襲撃してきたヴォルデモートの配下をダンブルドア陣営に属する者は努めて冷静さを欠かさず、標準を合わせて的確に呪文や呪いを発射して迎え撃つ。ものの数秒間で屋外・屋内は色とりどりの光線が至る所で絶え間無く飛び交う危険な戦場へと遂げた。もう既に何人かが死の呪いを受けたり巨人に踏み潰されたりなどして絶命している。

 

「私らも行くぞ、ハリー」

「ああ、行こう!」

 

 グータッチしたフィールとハリーは顔を見合わせる。そして頷き合うと、時間短縮の為に眼前の窓を突き破って、安全地帯など存在しない地獄と化した戦陣に臨んだ。

 

♦️

 

「思ったより早く突破されたわね………」

 

 手を眼の上に翳して遠方を見ながら、アリアは小声で呟く。ホグワーツの敷地内に雪崩れ込んできた死喰い人や亡者、巨人は眼に入ったダンブルドア陣営の魔法使いを片っ端から撃ち殺したり叩き潰したりしていた。此処に攻めて来られるのも時間の問題、と言うか、早くも死喰い人が5~6人現れた。雷速で魔法を叩き込みあっさりと戦闘不能にした美女3人は、戦況を確認する。

 

「私達の想像以上に、敵は強大って事ね」

 

 杖を振るいながらまた1人敵を倒したソフィアの言葉に、『盾の呪文』で自分達の身を護ったクリミアとアリアは頷く。

 

「それを知ってる上で戦うなんて、ある意味私達も結構な物好きよね」

「いいじゃない。私は案外物好きな人好きよ? それに戦っても戦わなくても、闇の陣営が壊滅しなかったらどのみち全員死ぬんだし、そこまで大差無いわよ」

「それもそうね。ま、要はルールの無い大乱闘って考えればいいのかしら?」

「その考えで言えば、私達は数多く居るファイターの1人ね。面白いじゃない、ならここはチームを組んで1発ド派手にやりましょうか」

「いいけど、あんまりハメを外し過ぎてフレンドリーファイアになるのは禁止よ?」

 

 分かってるわよ、と不敵な笑みを見せるソフィアの注意に2人は同じように笑い掛ける。

 此処に居る時点で戦死は覚悟している。

 そうでなければ、そもそも最初から戦場に立ってすらいないのだから。

 だから、全力で戦い続けるのだ。

 終戦の刻を迎える、その瞬間まで。

 

「先手必勝、行くわよ!」

 

 自分と親友を奮い立たせるようにクリミアが腹の底から叫び、それに応えたソフィアとアリアと一緒に混戦の真っ只中に飛び込み、参戦した。

 

♦️

 

「シリウス、リーマス。聞くまでもないがアレってどう見ても亡者だよな?」

「「ああ、そうだな」」

 

 ライアン、シリウス、ルーピンの同期3人組の視線の先にはゾロゾロと殺到する亡者の集団。

 青白い肌の、かつては命を持って活動していた生きる屍達は降霊術と呼ばれる闇の魔術で操り人形のように動かされている。

 それを聞くと可哀想に見えてくるが、だからと言って抵抗しなかったらこっちが死の世界に引き摺り込まれる。哀れみの心による躊躇は言語道断だ。

 

「なあ2人共。僕達はいつの間にホラー映画に出演してたんだ? 流石にこれはビビるな」

「ホラー映画なら化け物倒して美女とハッピーエンドと行きたいところか?」

「残念ながら君の言う美女は何処にも居ないよ、シリウス」

「言うなよリーマス。せっかくやる気スイッチオンの為に自分を鼓舞したってのに、ド直球に言われたんじゃ全てパーだ」

「だったら別の事でやる気スイッチオンするんだな。そのくらい君なら出来るだろ?」

「お喋りはここまでのようだ。行くぞ!」

 

 ライアンの一声にシリウスとルーピンは気を引き締め、それまで軽口叩き合って互いに緊張を解した男3人は、亡者の大軍目指して突撃した。

 

♦️

 

 亡者と激闘する3人から離れた場所で、ベイカー夫妻とライアンの妻・セシリアは、ウィーズリー夫妻とその息子2人―――ビルとチャーリーと手を組んで人狼の大群と死闘していた。

 双子はパーシーと、末弟・妹はハーマイオニーとクシェルと一緒に居る為、此処には居ない。

 離れた場所に居る我が子の安否情報が気になるが、今は自分達の事で精一杯だ。今誰か1人でも抜け出したら、確実に被害が出てしまう。そうなった後では手遅れだ。

 

「くそっ、どんだけ涌き出てくるんだよ!」

「流石にこの量は骨が折れるわね………」

 

 イーサンとライリーは人狼の数に呻くが、呻いたところで何かが変わる訳でもない。ウィーズリー一家も同じ事を考えているのがその表情から安易に読み取れる。

 

「苦しい戦いだが、私達でやるしかない。ここで私達が食い止めなければ、人狼は必死に戦っている子供達に近付き更なる混乱とパニックを引き起こしてしまうだろう。絶対に噛み付かせる訳にはいかない」

 

 メンバーの中でも年長者で沢山の子供を持つ父親であるアーサーの言葉に、子持ちの大人達はハッとする。

 そうだ、噛み付くだけで新たな人狼を生み出すコイツらを子供達に接近させてはならない。

 愛する子供にこんなヤツらと戦わせたくない。

 それは勿論、かつて自分達が通っていた学舎に通う生徒達にも言える。

 

「そうね………そうよね、その通りよね。子供があんなに頑張って戦ってるのに、私達大人が弱音を吐いてなどいられないわよね」

 

 杖を薙ぎ、銀の槍を出現させ、貫通させる。

 グッサリと腹部を貫かれ命を奪われた人狼の屍を飛び越え、ライリーは現存する狼人間の中で最も残酷と言われるフェンリール・グレイバックと対立する。

 フェンリールはルーピンが幼少期の頃、彼を噛んで人狼に変えた張本人だ。

 

「アンタが親玉ね………私がコイツを殺るわ。他の皆はそれ以外の人狼を倒してちょうだい!」

 

 ライリーは全身に『盾の呪文(プロテゴ)』を張り、スッと深呼吸する。

 そしてキッと睨み付け………彼女は牙と爪を武器にする狼人間の親玉に向かって駆け出した。

 

♦️

 

「おいおい、マジかよ………こりゃとんでもねえ数だな………」

「少ない訳は無いと思ってたけど、まさかここまでとはね………」

 

 父親の生まれ育った故郷の危機に両親の母校に馳せ参じたベルンカステルツインズ・ルークとシレンはとりあえず襲い掛かってきた死喰い人と相手しつつ、敵と自分達の人数の差に圧倒されていた。

 2人の近くには1歳上の先輩フラー・デラクールと、三大魔法学校対抗試合でダームストラング専門学校の代表選手として出場したビクトール・クラムも居る。2人共両親の制止を振り切り他国から駆け付けてきてくれたのだ。

 クラムは英語を猛勉強したらしく、さっき会話してみたら、以前あった鈍りや辿々しさは消え去っていた。クラム曰く、国際的なクィディッチプレイヤーとしての義務と、3年前再会したら英語でも談話しようとフィールと交わした約束を守る為らしい。クラムはちゃんと覚えていたのだ。

 

「別に平気よ。こちらにやって来る連中をただ普通に返り討ちにしてやればいいんだし、私達にはあのダンブルドアが居るのよ?」

 

 クラム同様英語をかなり勉強したらしいフラーがチラッと、教師陣の中心で指揮を執り洗練された杖捌きでヴォルデモート陣営の魔法使いを次から次へと討伐していくダンブルドアを見やる。

 アントニン・ドロホフ、ワルデン・マクネア、オーガスタス・ルックウッド、マルシベール、ヤックスリー、トラバース、ソーフィン・ロウル、アミカス・カロー、その妹のアレクト、ロドルファス・レストレンジ、その弟のラバスタンなど、死喰い人の中でも特に強者揃いの連中が総勢で教師陣と死闘を繰り広げるが、やはりダンブルドアの前では敵わない。

 ダンブルドアの実力は化け物クラスだ。

 あのヴォルデモートが唯一恐れる人物、それがアルバス・ダンブルドアなのだ。

 たかが並みの魔法使いよりちょっと強いだけの死喰い人が彼を殺せるはずがない。

 ダンブルドアの足元にも及ばぬ平凡な魔法使いなど、彼にとっては敵ではなかった。

 

「油断は禁物だぞフラー。上には上が居る事を忘れるな。どれだけ歴戦の猛者が味方についていたとしても、相手側の戦略や人材次第ではいくらでも戦況を覆せる」

「分かってるわよ。それに自分が死んだら意味無いし、人に頼ってばっかなのは止めるわ。最後に生き残れるかどうかは、自分の実力の他に運にも掛かってる訳だし」

 

 慢心していると捉えたクラムに釘を刺されたフラーは軽く肩を竦める。ルークとシレンは苦笑しながらもキリッと表情を引き締め、2人同時に放った強力な魔法で棍棒を振り上げたトロールを吹き飛ばす。吹き飛ばされたトロールに下敷きにされた死喰い人はその重みで死亡、ズドンッと言う衝撃が辺りに走り、地面が振動した。

 

「しっかし、中々減らないわね………これじゃキリがないわ」

 

 数え切れない敵人にフラーは舌打ちする。

 フラーの言う通り、確かにこのままでは埒が明かない。無駄に体力を消耗するだけだ。

 せめて無力化させるだけでも出来ないのか。

 それを言ったら、ルークが何か閃いた顔になった。

 

「だったら、こうすればいいだろ!」

 

 言うと、ルークはエネルギーを集約し、

 

「お前ら、伏せてろ!」

 

 と叫び、プロのクィディッチ選手であるクラムは持ち前の反射神経を活かしてすぐに伏せた。

 シレンは双子の兄が何を考えているか察すると「え?」と硬直するフラーの頭を抱えて急いで身を屈める。

 仲間が身を低くしているのを確認すると、ルークは強烈な衝撃波を発生し、周囲の敵手を1度に纏めて跳ね飛ばした。そのおかげで周辺の敵兵は粗方片付いたが、今の1発でかなりのエネルギーを消耗した為、ルークは肩で息をする。

 

「やっぱりそうしたわね。助かったけど、その場凌ぎの為だけにエネルギーを使い過ぎよ。今度からは長期戦における持久力の事も頭に入れて力はセーブしなさい」

 

 シレンは1つ息を吐くと、栄養補給の為の魔法薬を手渡す。

 受け取ったルークは一気に中身を飲み干し、空になった瓶を杖を一振りして消し去る。

 

「仕方ない、気合いでこの難局を乗り切るぞ!」

「気合いだけでどうにかなるとは思えないけど、まあ気合いは大事よね」

「絶好調の時は勢いに身を任せる。それがクィディッチと人生の鉄則だ」

「クラム、微妙に話ズレてるわよ。てか言うても貴方そこまで人生経験積んでないでしょ。私と同い年なのに」

 

 他愛ない会話で連帯感を高めた4人は、まさに『ガンガン行こうぜ』精神で終わりの見えない征野に身を投げ出した。

 

♦️

 

 大半が残留した3寮の生徒が随所で散開して善戦するのに対し、少数グループで構成されたスリザリンの学生組織・SSは寮監のスネイプを指揮者に団体で奮闘していた。

 二重スパイだったスネイプはフィールがマルフォイ母子を救済したのを皮切りに完全にヴォルデモートを裏切り、こちら側にやって来た。

 もう少しスパイとして機能していたらそれはそれで別の手を尽くせただろうが、あのような事が起きた以上、下手にヴォルデモートの近くに居て殺されればシャレにならない。

 その為スパイである事が露呈した以上、せめて今は亡き愛する者の忘れ形見を命と引き換えに護ろうとスネイプは決意したのだが………。

 

 ―――理由は何であれ、ハリーを護ろうとした貴方の想い(意志)は、私が引き継ぎます。

 ―――私はスネイプ先生を見す見す死なせるような真似はしたくありませんので。

 

 戦争が始まる前、味方として最後まで庇ってくれたかつての先輩の遺児の声が耳の奥で響く。

 あの少女の言葉は、まるで己とダンブルドアだけの秘密を知っているような口振りだった。

 いや、実際本当に知っているのだろう。

 でなければ、あんな事を言う訳が無い。

 「誰にも話さないで欲しい」とダンブルドアには口止めしたのに、とスネイプは最初憤ったが、フィールが「この事は誰にも話しませんよ。勿論ハリーにも。貴方自身が彼にカミングアウトするまで貴方の秘密は私の中だけに仕舞っておきますから」と言ったので、スネイプは口が固い彼女の言う事を信じる事にした。

 リリーの一人息子・ハリーを護る。

 それが元・死喰い人だったスネイプの存在意義だった。

 幼き頃から恋い焦がれ、例え決別しようと、別の男を愛そうと、この世に居なかろうと、この想いは変わらないし、消えない。

 彼女を死に至らしめてしまった唯一の償い。

 それが彼女の息子を命に代えてでも護り抜く事だった。

 だから危険と承知の上で死と隣り合わせの二重スパイになる事さえ厭わなかったし、汚れ仕事も自ら引き受けた。

 全てはリリーの為。

 彼女の遺志を受け継いで、己の生涯を『リリーの息子を護る』事に捧げてきた。

 そしてその意志を、自身が受け持つ寮の生徒が引き継ぐと言った。

 最初は、当然躊躇いがあった。

 だが―――

 

「例え戦争が終結したとしても、彼の大事な人が全員死んでしまったら、意味無いでしょう? だから先生は、そうならないようにしてください。先生が居る事で救われる命があるんですから」

 

 そう言われてしまえば、断ろうにも断れない。

 確かにそうだ。例えハリーを護り抜いても、彼の仲間が殺されてしまえば、全て水の泡になってしまう。無意味に終わらせる事だけは、絶対にしたくない。

 だからこそ―――

 

「どうあってもヤツらは倒す! 我々光の陣営が負ければ、この世は終わりだ!」

 

 今はスリザリン生と共に奮戦するのだ。

 大丈夫だ、ハリーとフィールなら。

 2人なら、きっと生きて帰って来られる。

 スネイプがそう思えるのも、フィールなら有言実行でハリーを護ってくれると信じてるからだ。

 それに………ハリーはジェームズの、憎き男の息子でもあるのだ。

 父親に似て傲慢で、生意気で、規則破りの目立ちたがり屋で、それでいてどんな大敵を前にしても恐れ知らずに立ち向かえるヤツが、そう易々と殺られるはずがない。散々手を焼いてきたハリーが、名前を言ってはいけないと言われている闇の帝王の名を口にするのに抵抗感が無い彼が、泣いて命乞いをする訳が無い。

 だから、勇敢とも自信過剰とも言える彼の生還を信じよう。

 スネイプの力強い宣告に、先が見えない乱戦に挫けそうだったSSの面々は奮起する。

 

「見せてやるのだ、諸君らの底力を。我々スリザリンの名に懸けて、これより先に敵は1人として通らせるな。必ず仕留めろ!」

 

 気持ちのスイッチを切り替えた寮監からの指示にSSメンバーは吠え哮る事で承知し、士気を鼓舞して果敢に進撃した。

 

♦️

 

 ありとあらゆる効果を帯びた閃光が行き交い、阿鼻叫喚と化するホグワーツの大広間。

 その一角で、2人の魔女が対峙していた。

 1人は茶髪の少女、1人は黒髪の女性。

 身長も年齢も経験も差がある2人だが、その眼力だけは対等だった。

 互いに強い目付きで睨み合う彼女達に立ち寄る者は1人も居ない。前者に加勢したい者は居るがそれは彼女が断った。

 コイツは私が相手になり、そして倒す。

 今日こそこの手で討つのだ。

 前回逃がした獲物を再び狩る時が来たチャンスを逃したりはしない。

 今逃したら、恐らく2度とチャンスは来ない。

 珍しく意見が一致した2人―――ハーマイオニーとベラトリックス・レストレンジは、円を描くようにお互いに回り込んで攻撃する隙を狙っていた。ウィーズリー兄妹とクシェルはハーマイオニーの安否を心配しつつも自分の成すべき事は忘れないで杖を振るい、近くに居る敵を倒していく。

 

「この日をどれ程待ち望んだ事か………ベラトリックス、今日こそ私は貴女を逃がさないわ」

「それはこっちのセリフだグレンジャー。私の方こそお前だけは逃がさない。この手で葬る」

 

 ホグワーツ特急でハーマイオニーと対峙し押された事が余程屈辱的だったのか、ベラトリックスの瞳に目の前の敵を侮る色は浮かんでいない。口調もかつてない威圧感と冷静さを感じられる。

 

「グレンジャー。マグル生まれのお前がこの私を退けた事、認めたくはないが称賛してやろう。だが所詮マグル生まれはマグル生まれ。穢れた血が我々純血の魔法使いに敵う事はない」

「そう。だったら分からず屋の貴女に教えてやるわ。本当にマグル生まれは貴女の言う純血の魔法使いに敵わないのかどうかを」

 

 ベラトリックスとハーマイオニーのやり取りもここまでだ。

 どちらからともなく、歩みを止める。

 互いに互いを目線でその場に縛り付けていた2人は杖を上げ、今度こそ決着をつけるべく、手加減は一切禁止で双方共殺す気で掛かった。

 

♦️

 

 仲間や家族がそれぞれ交戦する中、ハリーと一緒に敵と応戦していたフィールは信じられないと言う表情で顔が凍り付いていた。

 つい先程、死角からの狙撃を狙った死喰い人や邪魔者が誰かに殺害された。

 不意打ちとは言え、寸分狂いもなく的確に心臓を狙い撃ちしたのは誰なのかとフィールとハリーが辺りを見渡して探した時、2人の前にある人物が現れたのだ。

 

 薄茶色の髪にソバカスのある顔、蛇のような執念深さと舌舐めずりが特徴の『あの男』が。

 

「コイツは俺の獲物だ。お前達のじゃない」

 

 そう、そのまさかだ。

 フィールに討たれたはずのバーテミウス・クラウチ・ジュニアが、ギラついた眼でそこに居たのだった。




【随分前から真実に気付いてたハリー】
なんか本作に出てくる原作キャラって随分頭のキレが鋭いような気がするのは気のせいだろうか?

【強力なバリケードをクラッシュした闇の帝王】
映画と違って一撃ではなかったとは言え、ダンブルドアも加わって構築された防壁を破壊したヴォルデモートは端的に言ってスゴい。

【メンバー組み合わせ】
★ダブル主人公
★姉世代
★悪戯仕掛人withライアン
★ウィーズリー一家with親世代3人
★教師陣
★他国組
★SSwithスネイプ
★進化組withクシェル

【クラウチ、まさかまさかの再登場】
あの時クラウチはギリギリ生き延びてました。

【まとめ】
今回は豪華オールスターズがそれぞれのポジションでそれぞれのやり取りを交わしながら戦場に身を投じる回でした。
本作史上、レギュラーの原作・オリキャラが集結した#113、恐らく全#の中でも最も多くの登場人物数じゃないでしょうか?

4章番外編が当時の現役学生オリキャラが大集合したのに対し、今回は最高学年となったクシェフィル、OGの姉世代、ベルンカステルツインズ、そして親世代のオリキャラが最終章ならではの大集合☆。
原作キャラも他校の卒業生フラー&クラムも含めて主要キャラ達が多数登場、ほぼオールスターキャスト勢揃いの回は多分もう無いですね。

と言うか、あともう少しで長かったこの物語も完結しますし。基本本作のカメラワークは1個でオリ主のフィールを視点にどんどん進めてるので、多分5話もしないで最終話を迎えてその次にエピローグで終了するかなと思います。ですので画面外で他の皆さんは頑張ってるんだなって思ってください(´・ω・`)。

あんまり多く入れ過ぎると次の展開に中々進まなくて「はよ次進めや!」になっちゃいますし。あ、でも何人かはチラッと出てくるかもしれません。あくまで予定ですが。
なんか1年以上続けてきただけあっていざ終わりが近付くと寂しいですね。
実は当初の予定とは大分変更してここまで長くなったのは作者の私も予想外だったり。
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