【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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皆様、大変ご無沙汰しております。気紛れ作者ことSurvivorです。
暫くの間、色々多忙で執筆する時間や余裕が中々持てない日々がずっと続き、前回のリクエスト回①前編からかなりの期間が空いてしまいました(ミニットマン1994様、大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m)。
それではリクエスト回後編をどうぞ。
あ、今回は割りとネタを多く取り入れました。


リクエスト①.キャロル(この想いを君に捧げる)【後編】

 デート翌日。

 リリーの希望で遊園地にやって来たフィールはルークから男物のデート服を借りてばっちりオシャレしてきたリリーと一緒に入園ゲートを潜ったのだが、その表情は少し曇っていた。

 此処に来るまでもそうなのだが、さっきから主に若い女性達から滅茶苦茶熱い視線……と、それに混じって何処からかリリーに対するとんでもない殺気の籠った視線を感じるせいでどうしても気持ちが落ち着かない。

 後者はまあ……言わずとも分かるだろう。

 昨夜、男体化した影響で身体の違和感がまだ拭えない事もあるが一番の理由はやはりこれだ。

 本来であればとっくに来襲されているところなのだがそうならないのはハリー達のお陰だ。

 ハリー達には今度それぞれ好きな物を何でも一つ奢る事と引き換えに今日1日絶賛ご乱心中のクシェルのストッパー役を務めて貰っている。

 彼等が居なければ今頃平和なこの遊園地、もっと言えば此処に至るまでの道中は血の雨を通り越して血のゲリラ豪雨が降り注いでいただろうと思うと頭が痛かった。

 

「フィールさん、めっちゃ注目されてますね」

「誰のせいだと思ってんだよ……」

「口移しされて素直に飲んだフィールさん」

「然り気無く嘘を混ぜんなコラ」

「嘘を吐く時は本当の事も混ぜる。これ、上手い嘘の吐き方のコツであり常識」

「つくづく思うんだがその辺はアンタの父さん母さんとは全っ然似てないよなあ」

 

 フィールが頭を抱えているのはクシェルの事だけではない。

 元々マグルより長寿の魔法族である事を差し引いても実年齢より見た目が若々しかったのは性転換しても変わらず、外見年齢は女性の時と同じ20代でしかも超絶美形となれば注目を浴びるのは必然。

 故に上述した通り、先程からず~~~っと若い女の子達から熱の籠った眼差しを向けられるのは何とも言えず心中穏やかではなかった。

 

「ま、せっかく遊園地に来たんですし今日は思いっ切り楽しみましょうよ」

「そうしたいのは山々なんだが楽しめば楽しむ程、後でクシェルに何をされるか分かったもんじゃないから怖いんだけど……」

「大丈夫ですよ。流石のクシェルさんもマグル界でバカスカ魔法撃つ程バカではない筈です」

「バカ野郎、人間狂戦士(バーサーカー)状態(モード)になったら何を仕出かすか分かんないぞ。魔法じゃなくてもリアルマリ○カートの如く無敵(スター)状態みたいにトラック乗って突っ込んできたらどうするんだ」

「それはフィールさんとロンさんでしょう。世界中何処を見渡してもリアルマリ○カートを実践した人なんてあなた方だけですよ」

「ああ……あれは今思い返してもただの黒歴史だな。あの時はロンと一緒に『穴があったら入りたいよね……』ってお互い恥ずかしい気持ちを共有しながらやってたけど懐かしいなあ……」

 

 以前、フィールはハリー達と一緒に自動車免許を取りに自動車学校に通ったのだが、ロンと同じく生粋の魔法族で生粋の魔法界生まれ故、流石にマグル界の自動車事情については知識不足だった為にフィールとロンはゲーセンやゲームの影響から、

 

「マグル界ではバナナの皮や亀の甲羅を投げたりとかするんだなあ」

 

 と見事に勘違いした結果、技能教習初日にしてマリ○カートに出てくるアイテムを模したバナナやミドリ甲羅をマジで投げて当たり前と言うべきか、教習所の教官に「現実はマ○カーと全然違うからな!?」と滅茶苦茶怒鳴られた事があった。

 その後、話を聞いたマグル出身のハリーとハーマイオニー、母親が魔法族とマグル生まれのハーフの関係でフィールとロンよりマグルの知識を持っているクシェルからも「マ○カーみたいにアイテム使うのはゲームの中だけの話だからね!? 現実はマ○カーと全然違うからそこん所勘違いしたらダメだよ!?」と注意され、

 

「全然違うの!? バナナとか甲羅とか投げたりしないの!?」

 

 とフィールとロンがビックリして訊き返したら、

 

「投げないよ!? ただの不法投棄だよ!?」

 

 と二人以上に驚愕してそう回答されたので、

 

「だから免許学校でバナナや甲羅を投げたら注意されたのか……」

 

 と二人は衝撃の事実に一驚しながらもそれ以降はアイテムを投げる事はしなくなったと言う、何とも嘘のような本当のエピソードがある。

 因みにそれを初めて聞いた時、リリーやクリミア達は大爆笑して暫くの間弄られ、フィールとロンは「やっぱり穴があったら一緒に掘って掘って掘りまくって地球の裏側にまで行こっか……」と更に羞恥心を感じて謎の同盟を結んだのはまた別の話だ。

 

「それはそうと最初は何処で遊びましょうか。もう此処まで来たんですから楽しまなきゃ損ですよ。それに昨日も言いましたが今日のデートはフェアに勝負した結果、相手が私になった話なんですし。勝てば官軍、負ければ賊軍と言う諺があるように勝負の世界では勝者こそが正義なんですから、敗者のクシェルさんが何を言ったってムダですよ」

「……いや多分クシェルが怒ってるのはデートと言うより昨日のアレが原因だと思うぞ」

「ああなんだ、昨夜の口移しにクシェルさんは怒り狂ってるんですね。てっきりデートそのものに怒ってるのかと思ったのですが、私の思い違いだったようで良かった良かった」

 

 HAHAHAHAHAHAHA、とリリーが笑えば、何処かで隠れながら尾けているクシェルのリリーへ向けた殺意の眼差しが一層強くなった気がして「……お前、マジで後でクシェルにぶっ殺されるぞ」と思わずフィールは呟く。

 それに対し当の本人は「何の事ですか?」とわざとらしく笑うものだから、最早そのタフな精神力には脱帽せざるを得なかった。

 

「さ、今だけは全てを忘れてエンジョイしましょう。クシェルさんに関しては私が後で何とかしますので、何も心配しないでください」

「……………その言葉、今だけは信じるぞ」

「ええ、信じてください。偉大なる我が祖先イグノタス・ペベレルの名において、フィールさんには一切の害をなさないようにすると誓いましょう」

 

 ここでリリーがイグノタス・ペベレルの名を出すのは、分かりやすく例えるならヴォルデモート卿がサラザール・スリザリンに誓うようなものだ。

 不安要素はまだ残るがどのみち今回ばかりはリリーを信じるしかない。

 「どうか何も悪い事は起きませんように」と祈りながらフィールはリリーとのお出掛けもとい今日限りのデートを楽しむ事にした。

 

 

 一方、今回のお出掛けは絶対邪魔しない約束(ほぼ無意味だが)でハリー達に抑えられながら連れて来られたクシェルはと言うと、

 

「アァアアアアアア!! リリーめ!! リリーめ!! リリーめぇええええ!!!」

「落ち着きなさいクシェル!! 日本の某ジャンプ漫画に出てくる年号鬼の真似事してるんじゃないわよ!!」

「これが落ち着いていられるかあ!!!」

 

 やはりと言うべきか絶賛ご乱心中で、さっきから何度も我を忘れて飛び出そうとするのをハーマイオニーが必死に羽交い締めにしてハリーとロンが「頼むから大人しくしてくれ~っ!」とクシェルの口を塞いで叫んで暴れるのを3人掛かりで抑止していたのであった。

 

✡️

 

「何か今クシェル達の声が聞こえなかったか?」

「気のせいじゃないですか?」

「そうだといいんだが……」

「年号鬼の真似をしている方とクシェルさんは別人ですよきっと」

「バリバリ年号鬼の真似=クシェルがやったと気付いてんじゃねえかよ」

「さあ? 何の事やら。ところでフィールさんは鬼○隊に入ったら何の呼吸の使い手になりたいですか?」

「私か? そうだな……。臨機応変に対応したいなら水だけど炎も捨て難いな。元々炎属性は得意だし何より技がめっちゃカッコいいし」

「確かにフィールさんの恵まれた筋力や体格を考えれば身軽で変幻自在の水よりも攻撃重視型の炎か風が一番相性良さそうですね。フィールさんは水面のように静かな心よりも熱く心を燃やす事でレベルアップするタイプですし、貴女の場合は守るべきものがあってこそ限界を超えて強くなれる人間ですので」

「その逆を言えばクシェル達が居なかった場合は炎よりも水との相性が良さそうだな。リリーの言う通り、私はクシェル達が居るから限界突破出来るけど居なかったら何も喪うものがないから、今以上に弱くなる事はなくても強くなる事もないと思う」

「ああなるほど。心を燃やす燃料となるべき存在(もの)がなければわざわざ心を燃やす必要は無いから、水鏡のように静かに穏やかに、何事にもそう簡単には波立たない凪の心で黙々と鬼を斬り殺せばいいと、そういう事になる訳ですね?」

「要はそういう意味になるな。……っと、そんな話をしてたらいつの間にかホラーハウスの前までやって来たな」

「じゃあまずは此処のホラーハウスに入りましょうか。少し並んでますけどそこまで待たないでしょうし」

「そうだな」

 

 と言う事で二人はゾンビを始め洋風と和風、両方の様々な怪物やお化けが続々出てくるまさにバラエティー満載のホラーハウスから入ってみる事にした。

 ホラーハウスの中からは小さな子供から付き添いの大人まで恐怖の悲鳴を上げているのがこちらにも聞こえてくるので並んで待っているだけでも雰囲気が盛り上がってくる。

 暫く並んでいると順番が回って来て「二名様ですか?」と係員のお姉さんに訊かれ、「はい」と答えて二人分の回数券を払ったリリーは「じゃ、行きましょうか」とナチュラルにフィールの手を握って中に入った。

 二人の後ろで扉が閉まると中は真っ暗だ。

 おまけに通路が狭いので並んで歩くと自然と距離が近くなる設計になっている辺り、まさにカップル打ってつけのアトラクションと言えよう。

 

「思ったより結構暗いですね。眼が慣れるまでちょっと時間が掛かりそうです」

「ん~まあ歩いてたら直に慣れるだろ。それより怖くないか?」

「大丈夫ですよ。フィールさんが居ますし。いざとなればぶん殴るなり蹴るなりして撃退するので」

「やめろやめろ。アンタが本気で対処しようなら絶対シャレになんないし次に来たお客さんが別の意味で大パニックになるわ」

「それはそれで新しいホラーの誕生ですね!」

「そんなキラキラした瞳で言うなよ全く……」

「やだな~、ジョーダンですよジョーダン」

「リリーが言うと冗談に聞こえんわ」

「私の信用度どんだけ低いんですか」

 

 そんな会話をしながら先へ進んでいくと、狂科学者の様々な実験の犠牲者が苦悶の表情を浮かべて電気椅子で責められたり、手術台の上で切り刻まれている様子が効果音付きで並べられていた。

 その他にも横たわっていた作り物のゾンビが急に起き上がったり、棺桶が開いて吸血鬼が眼を見開いたり、あの和風ホラーアクションゲームの名作を思わせるような、怨霊を筆頭とした西洋のホラーとはまた違う怖さで有名なジャパニーズホラー特有の湿っぽい恐怖感を掻き立てる演出でこちらを脅かしに来たりと、客を飽きさせない多種多様の恐怖要素がぎっしり詰め込まれて中々面白いものだった。

 

「こうして見てみると全て作り物とは思えない素晴らしい出来ですね。しかし、もしも本当に現実世界でゾンビとかが現れたらこんな感じになるんでしょうかね?」

「某カプコン不動の名作に出てくるような本物のゾンビがマグル界に出現したらそれこそ大パニック間違い無しだな。ゲームや映画のキャラ達は主人公補正でウィルスに対する抗体を持っているのと、職業柄対ゾンビの特殊訓練を受けているから生き延びれる訳であって、対抗する術やサバイバル能力を殆ど身に付けてない一般市民は大抵ゾンビに噛まれて新たなゾンビになるか、そのまま喰い殺されるか、他者を犠牲にしてでもどうにかして逃げ回るかのどれかだもんな。定期的にバイオテロが発生するなら定期的にゾンビ対策の講座を行えばいいのに」

 

 ゲームである事をつい忘れて闇祓い副局長らしくフィールが思わずと言った感じにそう言えば、「普通に考えて定期的にバイオテロが発生する時点で最早完全アウトなんですけどね」とリリーは苦笑いしながら肩を竦めた。

 

「そもそも一般市民の日常生活を守る事が主人公ズの役目ですし。と言うか、何度解決してもまた新たにバイオテロが発生するのは味方陣営から敵陣営に寝返る人間も中には出てくる事も一因なのかもしれませんね」

「あ~そういえばいたな。パートナーへの強いコンプレックスから寄生虫に手を出したにも関わらず嘗ての相方には一勝も出来ないまま終わり、最期の最期でトドメを刺された際に『タイプじゃない』とまで言われた哀しき元エージェントが」

「何かそれ以上言うとク○ウザーさんが可哀想なのでもう止めてあげてください。彼のライフはゼロですよ」

「それもそうだな。悪い悪い。ところで……真面目な話、実際に大量のゾンビが蔓延る終末世界に突然様変わりしたらリリーはどうするつもりだ? 魔法とか抜きにしたらの話だけど」

「私ですか? ん~……とりあえず急いで必要最低限の物、例えば食料とか水とか衣服とかをリュックに詰めて武器になりそうな物を探し、ゾンビとエンカウントしたら慌てず騒がず落ち着いて頭部か足を撃ち抜いて文字通り足止めしますかね」

 

 それでもダメだった場合は出来る事なら椅子や消火器を投げ付けた後に全力で逃げるのみです。普通に逃げたところで逃げ切れる確率は極めて低いですので―――とリリーが続ければ、「それが妥当だな」とフィールは首肯する。

 

「今のフィールさんなら頑張ればベンチ投げ付けられるんじゃないですか?」

「流石にそこまでの腕力は無いぞ私は。魔法で強化すれば別だけどな」

「フィールさんは身支度を整えたらまず何処へ避難しますか?」

「ん~……最も籠城に優れている場所と言えばホームセンターだからまずはそこかな? 彼処なら食料、アウトドアグッズ、武器になりそうな物が完備されてるし。ああでも、考える事は皆同じだろうから多分他の生存者達も一気に集まるだろうな。でもってそういう時はゾンビも気配に釣られて集まるのがお決まりパターンだし、あんまり人が多くなり過ぎると極限状態と相まって内輪割れして最悪人間同士の殺し合いに発展するのがオチだろうから長居は恐らく無理だと思う。さっさと武器やら食料やらを拝借したらなるべくゾンビと人間両方が少ない場所を探すのが無難だな」

 

 確かに、とリリーは大きく頷く。

 

「一番恐ろしいのはゾンビよりも恐怖に思考が染まって正常な判断が出来なくなった人間の方とも言いますしね。それも逃げ場の無い密室空間になればなるほど人間の知能(あたま)はゾンビと大差無いくらい低下しちゃいますし。状況が状況なだけに仕方無いと言えば仕方無いんですけどね。誰だって我が身が可愛いのは当然であって何もおかしい事ではありませんので」

「そういやそんな映画があったな。列車内でゾンビのパンデミックが起きるヤツ」

「そうそう。あれは最後がとにかく涙無しでは観られませんでしたよね」

「そうなんだよ。主人公が最初はゾンビ映画あるあるのめっちゃ嫌なヤツの典型例だったのに、他者に娘を助けられた事を機に少しずつ人間的にも父親的にも成長して、娘と娘の命の恩人の奥さんを命懸けで守った末に最期は愛娘が産まれた時の幸せな想い出に微笑みながら機関車から飛び降りたシーンは、もう何回見ても涙腺崩壊して号泣必至なんだよなあ……」

「フィールさん、あれ観る度に闇祓い副局長とはにわかには信じ難いくらいメチャクチャ泣きますよね」

「あれは泣くしかないだろ……。ああ、思い出したらまた涙が出てきそうになるからこの話は一旦やめるか」

「そうですね。泣き腫らした眼のままデートとなれば要らぬ誤解招いて何処かの誰かさんが無関係のお客さんを殺しかねませんし」

「それに関しては全面的に同意するわ」

 

 そんな会話を交わしている内に気付いたら出口前まで到着した二人が真っ暗なホラーハウスから出れば、陽射しがとても眩しかった。

 

「あ~、思ったよりも結構楽しかったな」

「また遊びに来たいですね。今度は父さん達も連れて皆で来ましょう」

「それはいい提案だがアンタの母さん大丈夫か? 前に皆でホラゲーやった時凄い叫んで危うく失神しかけただろ」

「そういえばそんな事もありましたっけ。確か父さん、ロンさん、クシェルさんも初見でプレイした時は物凄い悲鳴上げてましたよね。まあ私達もそうでしたけど」

「少しは慣れてきた今でもやっぱりまだビクッとするからなあのゲームは。そのお陰なのかホラーハウスでは悲鳴上げずに済んだけど」

「思えばその時初めて魔法界のゴーストと怨霊は似て非なるものなんだなって身を以て学びましたよね」

「そういや、リリーは仮にああいう恐怖の屋敷から死に物狂いで脱出した後はやっぱり真っ直ぐ自宅に帰るのか?」

「う~んまずは最寄りのスーパーに行きますかね。日本だったらそれこそコンビニ……出来れば24時間営業の所に寄るかと思います」

「へえ、それはまた意外だな。でも何でだ?」

「明るいし基本的に一人か二人は必ず誰かが居ますからね。あとはジュースやサンドイッチとか買ってまずはそこで一旦落ち着きたいですし」

「あ~その心理は分かる気がする。恐怖から解放された直後って見知らぬ他人であっても人の顔を見たら少しは安心するし、飲み物にしろ食べ物にしろ何か口にすればホッとするよな」

「まあでも大概そういうのって一難去ってまた一難の可能性(パターン)もあるから完全には気を抜けませんけどね」

「天国から地獄的なヤツか」

 

 ホラーハウスから出た後も暫くはホラー関連の話題で盛り上がりつつ、入園の際に案内所で貰ったパンフレットを広げて次は何処に遊びに行こうか考えていたら、「フィールさん、あれ」とリリーがいきなり立ち止まって服の裾を軽く引っ張ってきた。

 突然足を止めた事、そしてその緊張を孕んだ声音からただ事ではない事を瞬時に察し「どうした?」と怪訝な顔になったフィールがリリーの指差す先を辿って見れば、離れた場所で高校生か大学生くらいの若い女性二人組が如何にも柄の悪そうな男達に絡まれている光景が眼に映った。

 それを見ていた周囲の人々は心配そうな視線を送りつつもナンパ男達に関わる事で自分達が面倒事に巻き込まれるのはゴメンなのか、チラッと見ただけですたすたと早足で立ち去っていく。

 女性組の様子を見るに嫌がっている事は一目瞭然なのだが、ナンパに夢中な男達は一向に引く気配がない。

 それどころか「離してください!」と頑なな態度を取り続ける女性に痺れを切らしたのか、遂に男の一人が女性の手を握って無理矢理連れて行こうとしていた。

 刹那、フィールとリリーは目配せをする。

 そして以心伝心。

 二人はすぐさま駆け寄り、女の時よりもパワーアップした握力でフィールが一瞬で男の手首を掴み上げ、その隙にリリーが「こっち!」と女性二人を素早く連れてその場から離れた。

 

「嫌がってる女性を無理矢理連れて行こうとするとはいい度胸してんなあお前。男として恥ずかしくないのかよ」

「あ!? ダメだてめえ!?」

「通りすがりの入場者だ」

 

 フィールに手首を掴まれ、更にはリリーが女性を連れて逃げたせいでナンパが失敗した男はそれまでの一見爽やか、その実下卑た笑顔を浮かべていた男と連れの男はギッと鋭くフィールを睨み上げる。

 が、見下ろすフィールのナイフとアイスを織り交ぜたような鋭く冷たい眼差しに不覚にもゾクッと、背筋に悪寒が走り冷や汗が流れた。

 

「遠慮無くハッキリ言わせて貰うがお前らは眼が悪いのか? どう見たってあの女性達はお前らのナンパを拒絶してただろ。にも関わらず素直に応じなければ強引に連れて行こうとするとはどういう了見だ? 欲しいオモチャを買って貰えなくてデパートの前で転げ回る駄々っ子かよ。知ってるか? そういう男の大半は逆上した途端に本性現して暴行に働こうとするんだぜ? ―――女性に対する礼儀もマナーも満足に出来ないようなクソ野郎に彼女なんて作れる訳がねーだろ。分かったらとっとと帰って良い男の心得の一つや二つでも勉強し直す事だな」

「るせえ!! 何なんだよてめえはよォ!! 部外者が余計な口を挟むんじゃねえ!! ブッ殺すぞ!!」

「はっ、笑わせんなよ。そういう所が女性にモテないダメポイントだってまだ分かんないか? ああそうか、分かんないからそう言えるんだか。悪いね、すぐに理解してやれなくて。いやー本当に申し訳無い」

「この野郎……!!」

 

 手首を掴まれている方の男が殴り掛かるより先に連れの男の拳が顔面目掛けて迫ってきたが、それを最小限の動きだけで避けたらフィールはもう片方の手で、いつかの学生時代の時と同じように右ストレートを思い切り捻り上げた。

 

「がああぁあああぁぁああぁッッ………!!?」

 

 凄まじいパワーで捻り上げられた男は骨折するんじゃないかと思う程の膂力に堪らず「離してくれェ!!」と情けない声を上げる。

 11歳時点の、それも女の状態で相手を秒殺可能なら大人の男の場合はもっと早い。文字通りの瞬殺だ。

 骨を折ったら面倒なのでフィールが無表情でパッと両方の手を離した直後、殴り掛かってきた男は涙眼で痛む腕を摩りながらその場に踞り、解放されたもう一人の男は鬼のような形相で睨め付ける。存外懲りないヤツだ。

 

「今更だろうが一応忠告するぞ? こちとら曲がりなりにもその道のプロでね。序でに言えば一番上から二番目の立場だからお前ら程度のチンピラなんざそもそも相手にすらならないんだわ。分かったらさっさと立ち去れ。俺の気が変わらない内にな。お前らのせいでせっかくの楽しい時間をぶち壊しにされた身として、これ以上目障りな行為をするつもりならこっちも黙っちゃいないんだわ」

 

 大分男体化に慣れたせいか、それとも状況が状況だからか、或いはその両方かすっかり男役になり切り一人称も「私」から「俺」に変えたフィールが低音ボイスで忠告すれば、

 

「お、おい……もう帰ろうぜ……。帰って一緒にコーラでも飲みながら映画鑑賞した方がいいって絶対……」

 

 寸前で骨折する恐怖と激痛を覚えた男がフラフラと立ち上がり、ガクガクブルブルの萎縮した様子で相方に早期帰宅を促したが「てめえはすっ込んでろ!!」と完全に頭に血が上ってイライラが頂点にまで達した男は両者の忠告を無視して「死ねやオラァ!!」とフィールに襲い掛かった。

 それを見たフィールはやれやれと深いタメ息を吐きながら肩を竦め、

 

「ハァ……これだから嫌なんだよなあ、どっかの顔面核兵器野郎みたいに知能がミトコンドリアレベルの馬鹿な輩は」

 

 ドスッ! と男の腹部に一発強烈なパンチを入れた瞬間、見事な背負い投げを決めて男を力一杯投げ飛ばした。

 

「ぐあああああああああぁあぁぁぁッッ!!!」

 

 男は腹部の痛みと投げ飛ばされた痛みで地面を激しくのたうち回る。

 そんなナンパ男に静かに歩み寄ったフィールは冷酷な表情と冷え切った瞳で見下ろし、

 

「これでもまだやるか?」

 

 と問い掛け、これ以上フィールを刺激すれば冗談抜きで命に関わると思った連れの男が「お、おい! 早く帰るぞ! お前殺されたいのか!?」と慌てて男を助け起こし、「失礼しましたぁ!」と何度もペコペコ頭を下げてこの場を後にした。

 ナンパ男コンビの背中が完全に見えなくなった途端、それまで固唾を呑んで見守っていた入場者達は全員拍手喝采した。

 皆あのしつこい男達を追っ払ってくれたフィールには大層感謝しており、「さっきの背負い投げメチャクチャカッコ良かったです!」や「ファンになっちゃいました!」等、主に10代から20代の女性を中心にキャーキャーと黄色いを上げ、しかもその騒ぎを聞き付けた警備員や遊園地の関係者まで登場する始末なものだから良くも悪くも目立ってしまった。

 大勢に囲まれ困った表情を浮かべたフィールは「すみません、連れを待たせているので失礼します」と頭を下げるとダッシュでそこから離れ、ひとまずは物陰に隠れて「ふぅ」と一息吐く。

 

「全く……何で人助け一つでこんな事態に発展するんだか。私にはよく分からん。別にそんな大した真似をした訳でもないだろうに。……それより早くリリー達の所へ行くか」

 

 ポケットに仕舞っていたパンフレットを取り出したフィールは今自分が居る場所とリリー達が居ると思われるエリアを確認し、程無くして物陰から出て迷う事無くそこを目指す。

 まさか直前にリリーの言ってた言葉が30秒どころか10秒も足らずにフラグ回収の如く物凄い速さで実現するとは、夢にも思ってみなかった。

 

✡️

 

 フィールがやって来たのは気軽に食べ歩けるおやつやドリンクから軽食まで様々なフードメニューが一通り揃ったフードコートだ。

 リリーの言葉を信じるなら此処の何処かに彼女達はきっと居るだろう。

 フィールがキョロキョロ見回していると「フィールさん、こっちこっち」と呼び掛ける聞き慣れた声が耳に入り、声のした方向へ向かえば、案の定リリーがあのナンパ野郎共にナンパされていた女性組と共にテラス席に腰掛けていた。

 テーブルの上にはドリンクカップとスイーツが並べられている。

 ちびちび食べているのを見る限り、多少は彼女らも気持ちが落ち着いているのが分かった。

 

「やっぱり此処に居るって分かったんですね」

「幽霊屋敷脱出後はスーパーかコンビニに寄ってまずは一旦気持ちを落ち着かせるって直前に明言してたからな。すぐに分かったよ」

「流石ですね。恐らく貴女ならこっちから連絡せずとも居場所(ここ)に気付いてくれるだろうと思って四人席を確保して正解でしたよ。あ、勿論フィールさんの分のドリンクとスイーツは買ってるのでご安心を」

「それならわた……俺もアンタを信じて良かったわ。ありがとな」

「どういたしまして。……フィールさんが此処に来たと言う事は―――」

「ああ、安心しな。あのナンパ野郎共は俺がブッ飛ばしといた。一人はまだ賢いヤツだったから残りのバカを連れて仲良く帰ってったよ。だからもう心配しなくていい。怖がらずに残りの時間を楽しめ」

 

 フィールが微笑すれば不安がまだ拭えてなかった女性二人は「本当ですか……?」と尋ね、「本当だ」と安心させるように二人の頭を優しく撫でれば彼女らはようやく緊張感が解けた笑顔で「ありがとうございます……!」とフィールとリリーに深々と頭を下げて礼を述べた。

 

「お二人のお陰で本当に助かりました。あなた方には何とお礼を申し上げれば良いか……」

「いや、その気持ちだけで十分だ」

「そうそう。私達は偶々通り掛かったただの通行人に過ぎないから気にしなくていいよ。それよりせっかく遊園地に遊びに来たんだから楽しまなきゃ損だよ」

 

 ポンポン、とリリーが人懐っこい笑顔で女性達の頭を軽く叩いてギュ~とハグすれば彼女らは恥ずかしそうにしつつも満更でもない様子だ。

 フッと微笑んだフィールはその間にスイーツを食べてドリンクを飲み、お腹を満たしたら「そろそろ次のアトラクションに行くか」とリリーに声を掛ける。

 

「あ、そうですね。それじゃ、私達はこれで失礼します」

「あの、せめてお金だけでも……」

「いいからいいから。恩義を感じてるって言うならお家に帰るまでの間、さっきの嫌な事は忘れて私達と別れた後は二人で仲良く楽しんでくれたらそれが対価になるから。ね?」

 

 最後にリリーが「短い間だったけど付き合ってくれてありがとね」と笑い掛け、フィールが「元気でな」と目元を和らげれば、女性達はもう一度「ありがとうございました!」と感謝の言葉を述べて頭を深く下げ、軽く頷いた二人は手を振って颯爽と立ち去るのであった。

 

 

 因みにあのナンパ男コンビはその後どうなったかと言うと、

 

「私のフィーに殴り掛かるとかお前マジでふざけんなよこのゴミクズクソ野郎が。死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」

「ヒィィィィィィィ?!! い、命だけはどうかお助けくださいぃぃぃぃぃ……!!」

「ア゛? 嫌なこった。フィーの警告を無視するような底無しのマヌケの命乞いなんて一ミリも聞く価値ないんでね。ちょうどいいお前らにはストレス発散のサンドバッグも兼ねて罪を償って貰うからさっさと歯ァ喰い縛れ!!! その腐った根性私が叩き直してやる!!! 二度とフィーに近付くなよこの下衆野郎が!!! 次にフィーに手を出したら私が直々に死刑を下してやるから覚悟しろ!!!!」

「だ、誰か助けてくれええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 一難去ってまた一難とはまさにこの事を言うのであろう。

 断末魔の叫びを上げる彼等は一時的に尾行を中断し遊園地から遠く離れた場所で阿修羅の如く猛烈に怒り狂ったクシェルにボッコボッコに制裁され、「触らぬ神に祟り無し」と言う暗黙の了解からハリー達はそれを瀕死の状態になるまでは黙って見守るだけは救いの手は一切差し伸べなかったのであった。

 自業自得とは言え、御愁傷様である。

 そしてその時ハリー達は思い出した。

 改めて頭に胸に心に魂に深く刻み込んだ。

 

 自分達の知る限り、この世で最も怒らせてはいけない存在ランキングトップ10に間違いなくクシェルは含まれているんだろう……と。

 

✡️

 

 ナンパ事件解決後、フィールとリリーは遊園地の人気アトラクションの一つ・ジェットコースターを始めとした幾つかの絶叫マシン系を楽しんだところで建物の中のゲームコーナーにやって来た。

 此処は外のアトラクションとは違い回数券ではなくコインを入れて遊ぶゲームがズラリと並べられている。

 様々な武器を駆使してクリーチャーを倒しながらステージを進んでいくガンシューティングゲームからプレイし始めると、その後もバスケのゲームでは華麗にシュートをバンバン決め、音楽に合わせて光る床を足で踏むリズムゲームでは満点を叩き出したりと、運動神経抜群の二人は気付けば沢山の戦利品を獲得し、それら全ては物欲しそうにしていた子供達にあげた。

 そして戦利品のオモチャを譲った事がきっかけでチビッ子達と親しくなった彼女らは暫しキッズスペースでチビッ子達の遊び相手を務める事になった。

 制裁タイムが終了したら即座に遊園地に戻って尾行を再開したクシェルに付き添い物陰に隠れていたハリー達は、リリーはともかく笑顔で子供の面倒を見るフィールに新たな一面を見たような気分を味わいつつも微笑ましそうに見守る。

 これにはクシェルも少しは鎮静化したのだが、一人のませた女の子がリリーと交互に見ながらフィールに「彼女なの?」と訊いた時は伴侶の自分を差し置いての発言にブチッと切れ、思わず壁にヒビが入る程の握力を発揮し「相手は子供で何も知らないんだからムキにならないの!」とハーマイオニーが慌てて宥めた。

 半日以上ドロドロした不穏なオーラととてつもない殺気を間近で当てられているハリーとロンは「早くお家帰りたい……」と疲れた顔を見合わせつつ、誰か一人でも欠けたら爆発寸前のオブスキュリアル状態のクシェルの大暴走は絶対に阻止出来なくなるので、否応無しに諦めるしかなかった。

 

✡️

 

 遊園地に来て数時間、最後にリリーの希望で観覧車に乗ったフィールはリリーとは反対側の座席に腰掛けて眼下に広がる光景を眺めていた。

 日はすっかり沈み、観覧車は既にライトアップされている。夜景に浮かび上がる観覧車の中は温かな光に満ちており、この中に居れば誰でも楽しく笑い合う事が出来るだろう。

 

「今日は付き合って頂きありがとうございましたフィールさん。とても楽しかったです」

「私の方こそ今日は楽しかったよ。まあ、男体化の影響で何故かメチャクチャ注目浴びたのは居心地悪かったけど……悪い事ばかりではなかったな。この身体のお陰であのナンパ野郎共を早く追い払えたし」

「…………………………」

「……リリー?」

「……フィールさん」

 

 向かい側の席に座っていたリリーは眼を細め、フィールの前まで来ると顔をグッと近付けた。

 昨夜の出来事を思い出したフィールはリリーの両肩を掴み、引き留める。

 

「悪いけど二度目はダメだ」

「あはは、今回は油断しませんでしたか」

「そんな風に分かりやすく接近してくれば流石に察知するわ」

「ん~つまらないなあ」

 

 わざとおちゃらけてみせたリリーは残念そうにコテンと首を傾げたが、すぐに真剣な面持ちでフィールを真っ直ぐ見つめる。

 

「……一応訊きますけど、フィールさんは今のところクシェルさん以外の人間に目移りする気、ありますか?」

「ある訳無いだろ。私の伴侶はクシェルだけだ。それだけは死んでも絶対変わらない」

 

 間髪入れずにフィールが答えれば、数秒間黙って見据えていたリリーは何を思ったのか、安心したように笑った。

 

「……何で笑うんだ?」

「いや……フィールさんは本当にクシェルさんの事が大好きなんだなって。貴女の心の中は常にクシェルさんで一杯なんだなって。でもこれで……改めて安心して正々堂々と戦えますよ」

「……どういう意味だ?」

「私、昨日言いましたよね? 貴女にクシェルさんと言う伴侶がいる事は理解しているけど私は貴女が好きだって。だから―――最初で最後にクシェルさんじゃない誰かに目移りするなら、私以外認めませんので。クシェルさん以外の人を好きになった貴女を手に入れたところでそれは正々堂々とは言えませんし、何より私自身嬉しくもなければそんなのは絶対嫌なので。貴女を手に入れるんならクシェルさんに真っ正面から挑んだ上で堂々と奪ってみせますので」

 

 それがリリーなりの「正々堂々」なのだろう。

 なるほど、実に目的の為なら手段を選ばないスリザリンと不正は許さないグリフィンドールの2つの要素をフィフティーフィフティーに持ち合わせた娘らしいなとフィールは思った。

 

「私の中で貴女が好きな気持ちが少しでも残っているなら……どうか完全に消えるまではこのまま好きでいさせてください。だって未練ダラダラ引き摺ってる状態で、自暴自棄になって、投げ遣りな気持ちのままさして愛情も抱いていない人と付き合う……。そんなのは相手に失礼極まりないでしょう? もし貴女以上に好きだと思う人が現れたら、その時は潔く諦めますので。だからせめて、貴女の事が好きな内は好きでいさせてください。私の想いを貴女に捧げさせてください」

 

 それこそがリリーの……嘘偽り無いフィールへ対する譲りたくない感情(おもい)だった。

 

✡️

 

 観覧車から下り、比較的人通りが少ない所まで歩いたフィールとリリーだったがこれまた唐突に後者が立ち止まり「出て来てください。デートの時間はもう終わりましたので」と声を張り上げれば、物陰から静かに姿を現したのはクシェル達四人だった。

 バレてたのか、とハリーとロンが決まり悪そうな顔になったのに対し、察しの良いフィールとリリーの事だからきっとクシェルの殺人光線に感付いているだろうと薄々思っていたハーマイオニーはやっぱりと肩を竦める。

 

「そんなに睨まずとも、今日は十分満足したので貴女の大事な大事な伴侶さんはちゃんとお返ししますよ」

「……そう。それなら遠慮無く返して貰うよ」

 

 何か言いたげだったのか、少しの間を置いてクシェルはフィールを連れ戻そうとしたが、

 

「改めて宣戦布告します。私、リリー・フィール・ポッターはフィールさんじゃない誰かを好きになるその時まで、クシェルさんに勝負を挑み続けると。正々堂々、真っ正面からぶつかった上でフィールさんは手に入れてみせますのでくれぐれもご注意を。油断していたら略奪されかねませんよ? 何せフィールさんは変な所でガードが緩いお方なので……。例えば今みたいな時とか、ね」

 

 その直後、リリーはクシェルの目の前でフィールの腕を掴んでグイッと引っ張り……背伸びして彼女の唇に自身のそれと重ね合わせた。

 

「んんっ……!!」

「―――ッッッ!!!!!!」

「はあっ!?」

「えっ!?」

 

 一瞬何が起きたのか、思考が停止したハリー達は理解出来なかったがすぐにリリーがフィールにキスしたのだと分かるが否や、眼前の光景に赤面するのと同時にハッとクシェルの方を見る。

 昨夜の口移しの件以上にクシェルの殺気とオーラがとんでもない事になっていて、「頼むからこれ以上クシェルを刺激しないでくれよォォ!!」とリリーに非難の眼を向けるが、当の本人は澄まし顔で、

 

「ホント、フィールさんは腕っぷしこそバカみたいに強いのに変な所で隙だらけですよね。そんなんだから私みたいな人間に狙われるんですよ? それではいつかクシェルさんじゃない別の人間にメチャクチャにされてもおかしくないので、少しはガードを固めてくださいね? それじゃ、私は一足先に帰ります。父さん、母さん、ロンさん、今日はクシェルさんのストッパー役ありがとうございました。ああそうそう、クシェルさん。―――これで今夜はフィールさんと過ごす明確な理由が出来たんですから、楽しまなきゃ……損ですよ?」

 

 「余所見してたら掻っ攫いますからね」と結局のところは応援しているのかそれとも略奪を示唆しているのか、イマイチよく分からないが最後はクシェルだけに聞こえる声で耳打ちすると彼女がルーズコントロールするより前に道化師のように笑ってみせて、幸せなムードで賑わう遊園地を後にした。

 

 

 ―――私の伴侶はクシェルだけだ。それだけは死んでも絶対変わらない。

 

 

「あーあ……ホント、悔しいなあ……。どんなに頑張っても努力しても……私じゃフィールさんを振り向かせられないって分かってる筈なのに。それなのに……そう簡単に未練を断ち切れるならここまで好きになる訳、ないんだよなあ……」

 

 フィールのあの言葉が脳裏で反響し、クシェルに対する悔しさと羨ましさから悔し涙が込み上げ、しかしそれでも立ち止まる事はしなかった。

 

 そうすれば、自分を悩ませる数多の感情を振り切れると信じているかのように。

 

 温かい涙で頬を濡らしながらリリーは泣き笑いをして延々と走り続けた。




【リアルマリオカート】
フィール&ロン「えっ!?マグル界ではマリカーみたいにバナナ投げたり虹色に輝いたりキラーに変身して体当たりしないの!?」
ハーマイオニー「しないわよ!?逆に何でそんな事が可能だと思ったの!?」
フィール&ロン「だってマリカーがそうだったもん」
ハーマイオニー「マリカーがそうだったもん!?」

【号泣必至のゾンビ映画涙腺崩壊シーン】
フィール「お父さん……何で……グスッ」
ハーマイオニー「まーた泣いちゃってるわよこの子」
フィール「だってこんなの感動するしかないじゃん!てかハーマイオニーだってこっそり泣いてたの知ってるからな!」
ハーマイオニー「ギクッ」

【零だよ!全員集合!(没ネタ)】
ハーマイオニー「ギャアアアアアアアアアア!!(パタン)」
フィール「大変だハー子が息してないぞ!こんな事は初めてだ!」
クシェル&Jr.「な、何だってーーーーっ!!?」
ハリー「何ーーーーっ!?通常の気絶とは違うのかい!?お、おい!急いで心臓マッサージだ!」
ロン「君達は原作1巻のハーマイオニーかい!?僕らは魔法使いなんだから魔法を使えば一発で解決するだろ!?」
全員「やっべ忘れてた!」
ロン「忘れないで!?」

【ナンパ男コンビ】
死に掛けるまで制裁された後、魔法に関する記憶はオブリビエイトされたけど何かとんでもないトラウマを植え付けられた気がして(実際にその通り)ガクガクブルブル((( ;゚Д゚)))。

【鬼殺隊士IF】
フィールはクシェル達が居る世界なら炎の呼吸、不在の場合は水の呼吸、フィールが前者の使い手だったら水がクシェルで風がリリーが私のイメージだったり。
因みにIF番外編として本編で戦死したフィールが鬼滅の世界に転生して鬼殺隊士になる話は考えていても実際に執筆となれば多分最後まで書き切れない可能性が高くて執筆する覚悟が持てません……。

【後日談】
薬の効果が切れて無事に元の性別に戻りました。
え? 結局クシェルとはあの後どうしたのかって?
描写はカットとなりましたが読者様のお察しの通りで合っているかと思いますよ~。その辺りについては各自読者様のご想像で補完お願いします。
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