【完結】ハリー・ポッターと蒼黒の魔法戦士   作:Survivor

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まずは新谷奏様、そして全ての読者の皆様、大変申し訳ございません。
皆さん待望のクシェフィルイチャコラ回は文字数の関係上、次回までのお預けとなり今回は前回の事件の決着編となりました。
最初はそのまま結合しようかとも考えましたが思いの外、話が長くなってしまいまして……急遽「中編」を追加する事に。
中編は内容が内容なだけに後編では純粋にクシェフィルのイチャコラを楽しんで頂けたら良いなと言う思いもあって話を区切る事にしました。
次回こそは正真正銘クシェフィルのイチャコラ回をギュッと凝縮してお書きしますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いですm(_ _)m。

あ、予め前置きしますが物語中盤、描写するとなればガチのR-18展開になってしまう場面があるのですが、残念ながらそこだけは全カットォォォ!となりました。
期待されていた読者様がいましたらすみませんm(_ _)m。頑張っても前回までの描写が限界でそれ以上の領域に両足を踏み入れる勇気と自信を私はまだ持ち合わせていません……。
ですので描写を全カットされた場面のみ、読者の皆様が各自脳内再生で補完をお願いします。


リクエスト②.ノックアウト(悩殺)【中編】

 聖マンゴ1階ロビー。

 そこでクシェルはさっきから忙しなく歩き回っていた。

 落ち着き無いクシェルの心情を表すようにライムグリーンのローブがはためき、その顔には「早くフィーに会いたい」と言う気持ちが分かりやすいくらいに書かれている。

 フィールから直接両面鏡による連絡が来たのでひとまず安心はしたが、任務中にフィールが被った魔法薬のせいで部下の男共に襲われたと聞いた時は一瞬息が詰まって心臓が止まるかと思ったし、怒りさえ沸いた。

 フィール曰く部下達が襲って来たのは「魔法薬の影響によるもの」らしく、被害者の彼女からは「彼等を責めないでやって欲しい」と言われているが……。

 

「―――フィー!!!」

 

 クシェルの馬鹿デカい大声がロビーに響き渡り、ロビーに居た者達は揃ってビクッと肩を揺らし、何事かと視線が一箇所に集まる。

 グッドタイミングでやって来たライリーとクリミア……と、三人から簡単に話を聞き及んだドラコは、

 

「気持ちは分かるけどもう少し声のボリュームを下げなさい! 他の人達に迷惑でしょう!」

「全く君は! ベルンカステル絡みになるとすぐ暴走して! 少しは抑制しろ、抑制を!」

 

 と窘めながらも、内心ではクシェル同様フィールの事が心配だったので、ハーマイオニーとニンファドーラの肩を貸して貰って此処まで来たフィールを見て安堵の表情を浮かべていた。

 三人に指摘され、注目を浴びたクシェルは慌てて皆へ頭を下げると、脇目も振らずに走り寄り人目も憚らないでフィールをギュッと強く抱き締めたのだが、

 

「!! ぁっ……、はう、うっ……あ、ん…あぁあ……っ」

 

 そろそろ解毒剤の効果も弱まってきているのか、それともクシェルが相手だからか、はたまたその両方か、ハーマイオニーに抱擁された時よりも身悶えて全身の力が一気に抜け、クシェルに凭れ掛かりながらペタンと座り込んでしまった。

 再び身体中を巡る疼きに一度は収まった熱と情欲がぶり返し、呼吸が乱れ始める。

 

「これは……かなり重症だね」

 

 少しの間だけ我慢出来る? と尋ね、フィールが小さく頷いたのを確認してからヒョイと抱き上げたクシェルは「ところで部下の男共は?」と無意識に声のトーンを低くしてハーマイオニーとニンファドーラに訊き、

 

「彼等は後でハリー達が連れて来るわ。同時に運んだら傷口に塩を塗るでしょう?」

 

 賢明な判断で何より、と大きく頷く。

 それからいつまでも此処に居たら他の患者や癒者の迷惑なので、クシェルはフィールを横抱きのまま予め準備していた病室へと連れて行き、ハーマイオニーとニンファドーラも癒者カルテットの後を追い掛ける。

 辿り着いたのは魔法薬関係の患者が多く集まっている4階突き当たりの入院個室。

 中はそれなりに広く、浴室も備わっているので診察が終わったら一旦身体を洗ってさっぱりしなさい、と言うライリー達の心遣いから湯張りはもう出来ている。

 フィールがライリーとクリミアに診察されている間、病室の外で待機中のクシェルとドラコは改めてハーマイオニーからフィールに教えられた話を詳しく聞いていた。

 四人の手にはドラコが購入してきたコーヒー缶が握られている。

 

「全く……ベルンカステルは底無しのアホだな。いくら部下を守る為とは言え、何の効果を持つかも分からない魔法薬を自ら被るなんて。しかもそのせいで助けた部下に……その、犯されそうになったとか、愚行にも程があるだろ」

 

 やれやれと呆れた表情で肩を竦めながらドラコは多少の嫌味を言い、コーヒー缶を傾ける。

 今回ばかりはドラコの言葉も一理あるので、強く否定はしなかった。

 実際、今回の薬は媚薬だったからまだ良かったものの、これがもし硫酸などの魔法薬だったらどうなっていた事か……。

 

「……皆。かなりマズい事になったわ」

 

 暫くして診察を終えたライリーが険しい顔と硬い声音でそう告げた時、何がと訊くよりも早く、クシェル達は急いで病室に入った。

 解毒剤の他に睡眠薬でも飲んだのかベッドに横たわるフィールは眼を瞑って眠っておる。

 

「ライリー、何がかなりヤバいの?」

 

 いつもは陽気なニンファドーラが珍しく神妙な顔付きで固く言葉を発する。

 問われたライリーは顔を顰め、重苦しいタメ息を吐く。

 

「皆が察してる通り、フィールちゃんが浴びたのは媚薬の一種よ。それも数ある種類の中でもトップクラスで厄介な、ね」

 

 成分分析した結果、フィールが受けた謎の魔法薬の正体は案の定媚薬の一種で、その効果は「最大で一晩だけ対象の熱が昂る」と言うものだ。

 これだけ聞くとあまり大した事無いように聞こえるが、一度喰らったらこの媚薬に対する解毒剤以外……それこそ大抵の毒の解毒剤になるベゾアール石数個であっても完全には治せないらしい。

 精々短時間だけ抑制効果や中和効果が働く程度のものでしか役に立たず、しかも時間が経てば経つ程、一般の解毒剤の効果は効きにくくなる。

 昔は裏社会でよく出回っていたが最近では効果が強過ぎて誰も手を出さなくなった代物だそうだ。

 

 そりゃそうだろう。

 この媚薬、大概は燻る熱に耐えられないのが殆どで薬が切れる夜明け前に腹上死、運良く朝まで生き残ったとしても媚薬に含まれている中毒性や依存性が強い場合、後遺症で身体が媚薬に侵されていた時の熱を覚えてしまい、快楽を求めて色に狂う廃人になったり発狂する……要はマグル界でも問題とされている「薬物依存」のケースが非常に多い。

 この媚薬に対するちゃんとした解毒剤自体、調合は脱狼薬や真実薬と並んで複雑で高難易度、しかも効力を十分に発揮するにはどちらにしろ粗方媚薬を抜いて中毒性や依存性を中和しなければ、飲んでも時間差で体内を巡る疼きが再び蘇り、同じように悶え苦しんで上述の末路を辿る羽目になる……。

 一度この薬を使ってしまえばやるのも地獄、やらないのも地獄。

 元の生活に戻れるかどうかは最後は対象者の運にもよる―――との事だ。

 

「何っっっっって物を密輸したのよ、あの密輸組織は!!!」

 

 全員の心の叫びをハーマイオニーが代表して代弁する。

 危険魔法薬密輸班と言うだけあってとんでもない物を密輸していたヤツ等だ。

 非常に恐ろしい。恐ろし過ぎる。

 脱狼薬と同等に普通の魔法薬と比べて特殊だけれどそれ相応の解毒剤が存在しても尚これだけの効果を発揮するのだから、これなら誰も手を出さなくなるのは当然の話であった。

 

「娘に、それも人前でこんな事を言うのは母親としてアレだけど……そういう訳だからクシェル。私達が解毒剤を調薬している間、貴女はとにかく今晩だけはフィールちゃんを死なない程度に抱き続けなさい。抱いてる間はとりあえず狂わないし、その分薬も抜ける。それに……身体の方は例え一晩で治っても今回負った心の傷までは治せないから。少しでも癒してあげなさい」

 

 その言葉に業腹だったハーマイオニーは気絶から目覚めた際のフィールの傷付いた蒼い瞳が脳裏を掠め……ほとぼりが一瞬で冷める。

 殊に自分の事になると鈍感な本人は無自覚かもしれないが、いきなり部下に、それも己が助けた直後に性的に襲われたとなればフィールとて怖くて堪らなかった筈だ。

 と―――そこまで考えたハーマイオニーはふと、さっきからずっと胸の内で引っ掛かっていた違和感の正体に気付き、「ん?」とある疑問を抱く。

 

「あの……ライリーさん。一つ訊きたい事があるのですが」

「どうしたの?」

「フィールが浴びた例の媚薬。アレに周囲の人間も巻き込む効果は含まれてるんですか?」

「? いいえ、調べたところ純度の高い物だったからか副作用や二次効果含めてそういうのは同定されなかったわよ。対象者の熱が一晩だけ燻るだけのものであって周りの人達が薬に当てられる事は―――」

 

 そこでライリーは、ハーマイオニーの言わんとする事に気付いてハッとした。

 どうやら他の皆も気付いたようで、室内は自然と重苦しく、殺気が籠っていく。

 最初はつい当事者(フィール)の証言から全員が周囲にもと思い込んでしまった。

 ……が、よくよく考えれば、本当に部下達が薬の影響を受けてフィールを襲ったとしたらすぐ近くに居たハーマイオニーやハリー、ロンも今頃は薬に当てられていた筈なのだ。

 それに……。

 

「此処に運ぶまでの応急処置でフィールに口移しで安らぎの水薬と解毒剤を飲ませた身として率直な感想を述べるけれど……。媚薬のせいで色っぽさは半端ではないと思いこそすれ、身体が言う事を利かなくなる等の媚薬の影響は受けていないわ。だから恐らく……部下の男性達が我を失ったのは魔法薬のせいではないわね」

 

 ハーマイオニーの言葉を聞いたライリーとクリミアが「現に体感した貴女が言うのなら間違いないと見ていいでしょうね」と首肯した一方で、クシェルは「……口移し?」と彼女的に聞き捨てならない発言に別方向で首を傾げていた。

 

「ごめんなさいクシェル。フィール、魔法薬を浴びた結果このような目に遭ったせいで自ら薬を飲むのには抵抗があったようでね。緊急事態だったし、事後報告を前提に私が『口移しで飲ませましょうか?』って提案したのよ。だから……貴女には申し訳けれど、今回だけはどうか怒らないでくれるかしら?」

「……………まあ、ハーマイオニーの言うように今回は事情が事情だし、フィーを助けてくれたのもハーマイオニー達だから口移しの件については怒らないよ。でも―――部下のクズ野郎共がフィーにした行為は絶対許さない。許してなるものか」

 

 低く抑え込んだ声でクシェルは手を固く握り締める。

 今、クシェルは猛烈に怒り狂っているだろう。

 否、憤怒を通り越して最早憎悪や殺意の域に達しているが、今のハーマイオニー達はクシェルと全く同じ気持ちなので「抑えろ」とは言わなかった。

 本当に魔法薬の影響だったのならばフィールの擁護に免じて責めるのは控えようと考えていたが、そうでないのであれば遠慮は要らない。

 もうじきハリー達も例の部下達を連れてやって来る筈だ。

 丁度良い。その時に魔法薬で直接本人達に真相を聞くとしよう。

 彼等の証言と診察の結果がピッタリ一致すればそれが決定的な証拠になる。

 だがそこで、意外な事にクシェルから「待った」が掛かった。

 

「フィーを襲ったクズ共に問い詰めるのは明日の朝にお願い出来ない? 今はクズ共に構ってる時間が勿体無いし、自白させるにも真実薬を使うとなれば魔法省に掛け合わないといけないだろうし……。何より今行けば私、歯止めが利かなくなってマジで殺しかねない」

「そうね……。どのみち今回の件はキングズリー―――シャックルボルト大臣にも報告しなければならないし、分かったわ。私達の方から大臣には話をしておくから、クシェル、貴女はひとまずフィールを第一優先にしなさい。ライリーさん、クリミア、ドラコは解毒剤の調合と例の部下達の診察をお願いします」

「ええ、任せておきなさい。シャックルボルト大臣にはハーマイオニーちゃん達の方からよろしく頼むわね」

「解毒剤の方は明日の朝までに絶対完成させるから心配はしないでちょうだい」

「ベルンカステルには前にマルフォイ家を保護して貰った借りがあるからな。こんなチャンス滅多に無いし、何なら倍にして恩を売ってやるさ」

「と言うか今更だけど……ドラコ。貴方も心配して来てくれたのね」

「心配? はっ、馬鹿言え。助けて自分が部下に襲われるなんてダサいヘマをするようなベルンカステルの失態は後で良い弄りネタになるからな。僕はいつもお高くとまってるベルンカステルの情けない姿を拝みに来ただけだ」

「とか何だとか言ってクシェルから話を聞いた時は『フィールは無事なのか!?』って柄にも無く取り乱したくらい、本当は凄い心配してる癖に素直じゃないわねえ」

「いつもお高くとまってるのは寧ろドラコの方じゃないかしら?」

「自分の事はさらっと棚に上げる辺りドラコらしいや」

「よっ、ツンデレの極み!」

「五月蝿いぞお前らっ! 僕はコイツが元通りにならなきゃアステリアとスコーピウスが悲しむからであって、別に心配なんかしてないからな! 勘違いするなよ!」

 

 女性癒者トリオとニンファドーラがニヤニヤすれば、ドラコは顔を真っ赤にさせて怒鳴る。

 そのお陰で殺伐とした空気も少しは和らいだのだが、別の癒者が「院長。ポッター局長達が来ました。彼等が運んで来た者達は別室に集めています」と伝えに来た瞬間、瞬く間に室内はピリッと緊張が走った。

 

「……分かったわ。もう少ししたら診察しに行くからそれまでは様子見をお願いするわね」

 

 分かりました、と頷いた癒者は「失礼します」と頭を下げて早々と退室する。

 癒者に案内されたハリーとロン、そしてイーサン、シリウス、ルーピンはクシェル達から漂う殺気を敏感に感じており、表情が強張っていた。

 

「……ライリーさん。フィールはどうしてますか?」

「ハーマイオニーちゃんが飲ませてくれた物より強力な解毒剤と睡眠薬を飲ませて寝かせているわ。……媚薬が媚薬なだけに効き目はそう長続きしないけど」

 

 ハア、と深く重いタメ息を吐いたライリーは今来たばかりの五人に簡単に説明する。

 話を聞いた彼等は暫く「は?」と衝撃の事実に驚愕と憤りで眼を大きく見開かせ、ライリーの顔を見つめていたが……。

 軈て頭の整理がある程度が出来ると、ハリーは突然両膝を突き始め、

 

「フィールのご家族の皆さん。此度は僕の判断ミスによりこのような事態を引き起こしてしまい、大変申し訳ございませんでした」

 

 と、局長としても親友としても不甲斐無さを改めて痛感したハリーは何と土下座した。

 その場に居た者達は揃って瞠目し、地面に頭を付けて謝罪したハリーを凝視する。あのドラコでさえもだ。

 

「あの時……いつもならすぐ帰還するフィールが中々戻って来なくておかしいと感じた時点で連絡するなり様子を見に行くなりしていれば、フィールはあんな思いをせずに済みました。僕の誤判断で大切な娘さんを危険な目に遭わせてしまい……そして全ての関係者に多大なる迷惑を掛けてしま―――」

「―――そいつは違うぞハリー……。皆に迷惑を掛けたのは私だ。アンタじゃない……」

 

 ハリーの言葉を遮ったのは今しがたまで眠っていたフィールだった。

 目を覚ましたフィールにクシェルは「触れても大丈夫?」と訊き、「今はまだ大丈夫」と返答を貰ってから助け起こす。

 

「……防御魔法を展開しても部下を助けるには間に合わない状況だったとは言え、効果不明の魔法薬をモロに喰らったのは私自身の責任だ。あの時……もっと注意していれば、或いは防御は間に合わずとも部下を軽く吹き飛ばして避けさせれば魔法薬を喰らわずに済んだ。助けた部下に襲われずに……犯されそうにならずに済んだ。闇祓い副局長としてこんな醜態を晒さずに済んだ。……これは私の不注意と未熟が招いた結果だ。だからこうして皆に迷惑を掛けてしまっている。副局長失格だな」

 

 ……襲われたのは魔法薬の影響ではなく部下達自身の意思だったのは流石にショックを隠せないけど、とポツリと呟き、フィールは顔を伏せる。

 寝ていた筈のフィールがその事を知っていると言う事は、もしかして少し前から目覚めていたのだろうか……?

 

「……フィー。いつから起きてたの?」

「クシェル以上に馬鹿デカかったハーマイオニーの大声で半分覚醒した」

 

 あっ、とハーマイオニーは今更ながら恥ずかしくなって「ごめんなさい、私のせいで起こしちゃって」と謝る。

 フィールは「いや……私が起きてからアンタ達が説明する手間が省けたんだから気にしなくていい。遅かれ早かれ知る事が少し早まっただけだ」と何て事無さげに言うが、その声音はどこか暗かった。

 気まずい沈黙が流れる中、一番始めに口を開いたのは意外にもドラコだった。

 

「ベルンカステルにポッター。この際だから言っておくが……曲がりなりにも闇祓いのツートップなら自分の役目と立場ってものを勘違いするなよ。今後も副局長と局長を務めるならお前らの行動や判断一つで自分のみならず周囲にも影響を与えるって事をもう少し自覚しろ。今回の件、一番悪いのは仕事中に助けて貰った恩を仇で返す欲に飢えたバカ共だが、お前らにもそれぞれ非があるからな。まあ、何処かのおバカな誰かさん達みたいに助けて自分が襲われるなんてダサいヘマや、判断を間違えて自身の地位も危うくなりかけるなんてダッサいヘマ、僕なら絶対しないけどな」

 

 最後は何ともドラコらしい小馬鹿にしたような言い分だったが、言い返す言葉が無いフィールとハリーは「……ごもっともです」と素直に受け止めた。

 

「ドラコの言う通りだな……。これからはもっと気を付けるようにするよ。無鉄砲な行動も反省する。それと……帰ったらアステリアにも言っておいてくれ。今度有名スイーツ店に私の奢りで連れて行くから楽しみにしててくれって。……色々ありがとなドラコ」

 

 微笑したフィールが礼を述べれば、ほんのり赤面したドラコはプイッと顔を逸らした。

 

「ふ、ふん。僕はただお前が死んだりすればお前になついてるアステリアとスコーピウスが悲しむからであって―――」

「あ、それはさっきも聞いたからいいぞ」

「ここまで来たら最後まで言わせろ!」

「ははっ、ごめんごめん」

「全く君ってヤツは……。それはそうとさっきの約束、忘れるなよ。約束破って『死因:媚薬』なんて不名誉なレッテル貼られたら存分に笑ってやるからな。早いところ治して有名スイーツ店に僕らを連れてけ。そして好きなだけアステリアとスコーピウスに食べさせろ。そうすればチャラにしてやる」

「ああ、約束する」

 

 皆にも今度高級レストランのディナーをご馳走するから楽しみにしててくれ、と言ったフィールの表情はドラコのお陰で多少なりとも明るさを取り戻していた。

 ようやくフィールの微笑みを見れた皆はやっと少しは安心感を抱き、見事なタイミングで「ドラコ、ナイス~!」とドラコを褒め讃える心の叫びが見事にシンクロするのだった。

 ただ一人、クシェルを除いて。

 

✡️

 

 その後、クシェルを除く癒者組は解毒剤の調合と例の部下達の診察の為に病室を後にし、ハリー達はキングズリーへの報告と真実薬の使用許可を貰いに魔法省へと向かった。

 事情が事情なので、防音魔法や無関係者の立ち入りは不可能な防衛魔法が掛けられた病室でフィールと二人きりになったクシェルが「まずはお風呂に入る?」と振り返った瞬間、フィールがベッドから転げ落ちそうになった為、慌てて抱き止めた。

 

「フィー、大丈夫!?」

「はぁっ……はっ……、…っ、ごめん……そろそろ中和効果が消え掛かってるみたい……」

 

 息苦しいのか、浅い呼吸を繰り返し、悩ましげに眉を寄せ、時折何かに耐えるように熱い身体を小さく震わせる姿は文字通り「目の毒」の一言に尽きた。

 クシェルはライリー達が用意してくれた気休め程度の解毒剤の小瓶を一つ手に取り、

 

「フィー、飲ませるよ」

 

 と断りを入れてからハーマイオニーと同じく唇を重ね合わせ、口移しで解毒剤を飲ませる。

 

「……んっ……くっ」

 

 一度口移しで飲ませて貰ってるからか、身体も慣れたようで大人しく受け入れられるようになったフィールは解毒剤を素直に飲み込む。

 そうしてフィールが解毒剤を全て飲み終わったらクシェルはそのまま彼女を抱き上げて脱衣室へと向かった。

 

「えっ……? ちょっ、ちょっと待って……。もしかして一緒に入るの?」

「そうだけど? だっていつまた中和効果が切れるかも分からないし……。フィーが浴びた媚薬は時間経過と共に解毒剤の効果が効きにくくなるから、今の内にお風呂入っちゃわないと後が大変だよ? 話を聞いていたんなら分かってるだろうけど、貴女が助かるには粗方媚薬を抜いた状態でちゃんとした解毒剤を飲まないといけない。そしてその為には今夜はノンストップで続けなきゃいけないから、当然精神的にも肉体的にもかなりキツくなる。……心の準備は出来てる?」

「出来てるも何も……それしか他に助かる方法は無いんだからやるしかないでしょう? ……ごめんなさいクシェル。貴女にも大きな負担を掛ける事になって」

「そう思うなら少しは身体を盾にする悪癖を治すよう努力して。今回はまだ媚薬だったから明日の朝まで抱けば何とかなるけど、これがもし硫酸系の魔法薬だったらどうなってたと思う?」

「うっ……考えたくないわね」

 

 硫酸によって身体の皮膚が溶けていく姿は想像するだけでもゾッとするので、フィールは顔が青くなった。

 

「でしょう? だから今後そういった事が起きないようにする為にも反射的に身を挺するのは控えて。そもそもフィーはすぐに庇う癖があるんだから。……その年齢で副局長と言う偉い立場になって、重責やら責務やらその他諸々を背負って気を張って気を配って。部下が大ケガしないよう身体張って守る。それは確かに立派な行いではあると思うよ。でもねフィー」

 

 フィールをゆっくりと下ろし、ハーマイオニーが貸してくれたローブを脱がしてワイシャツのボタンを外す。

 

「知ってる? フィーが仕事に行く度……危険な任務に向かう度、いつか私の所に帰って来ないんじゃないかって私がいつも心配しているの。フィーは確かに強いよ。それは学生時代の頃からよく知ってるし、そう簡単にやられる程ヤワな人じゃない事も分かってる。分かってるけどさ……。強いからこそ『フィールなら大丈夫』って自然と皆がそう思い込んで、知らず知らずの内にフィーに対する心配の念があまり向けられない事も知ってるんだよ」

 

 だから6年に進級する前の夏、実際に多忙な身で仕方無かったとは言え、不死鳥の騎士団員達はフィールにハリーの護衛を全面的に押し付けるばかりで彼女に労いの言葉は掛けようとしなかった。

 

副局長(フィー)だって一人の人間なんだよ。どんなに心身共に強くても無理を続ければいずれ限界が来てパンクする。何度も言うけど私の前では無理しなくていいんだからね。寧ろ頼ってくれなきゃこっちが悲しいから。副局長として部下や仲間に弱音を吐きづらいなら、一個人フィール・ベルンカステルとしてなら遠慮せず弱音を吐けるでしょう?」

 

 自身の前では副局長としている必要は無い。己に対してまで強い人で在ろうと苦しい気持ちを圧し殺す必要は無い。

 

「フィーは無意識の内に皆の前ではなるべく平静を装ってたけどさ……本当は今すぐにでも泣きたいんじゃないの? 思い出せば震えるくらい怖い思いを抱いてるんじゃないの? さっきは一見すると明るく笑ってたけど眼は今も相変わらず傷だらけだよ? それってつまり、フィーの心もボロボロに傷付いているって意味なんじゃないの? それなら人の心配してる場合じゃないでしょ?」

 

 矢継ぎ早に問われたフィールは「……?」となっていたが、気付けばいつの間にか身体が小刻みに震えていた。

 今がクシェルしか居なくて皆に気を遣う必要が無くなったせいなのか、無自覚に張り詰めていた最後の緊張の糸がプツンと切れたせいなのか。

 理由はどうあれ、クシェルに問われた事でフィールはようやく自分自身が心の奥底ではどう思っていたのかをハッキリと自覚した。

 

「そう……なのか。私は……怖かったのか……」

 

 意識した途端、部下達に襲われた記憶がフラッシュバックする。

 突然押し倒してきた男の腕力の強さと獣じみた眼差し。ゴツゴツした大きな手と分厚く気持ち悪い舌に身体中を弄ばれた嫌な感触。そして極め付きは……。

 

「あっ……、あっ、ああっ……あああああああああぁぁああああああああッッッ……!!」

 

 ハーマイオニー達が間一髪駆け付けるのに間に合わなければ犯されそうになった瞬間の出来事が嫌でも脳内再生され、あの時の恐怖が一気に蘇ったフィールは泣き叫んでクシェルにしがみついた。

 そんなフィールを強く優しく抱き締め返したクシェルは困ったようにタメ息を吐きつつ、ようやく彼女がちゃんと泣いてくれて安心し頻りに背中や頭を撫でる。

 

「もう……本っっっ当にフィーはつくづく自覚するのが遅いんだから。生まれてこの方、フィー以上に不器用な子を私は見た事無いよ。今はとにかく、落ち着くまで存分に泣いて全部吐き出しちゃって。……フィーが生きて帰って来てくれて本当に良かった。言っておくけどフィーが死んだら私も後を追って死ぬからね。フィーが居ない世界で生きたところで最早生きた屍も同然だから。私を死なさせたくないと思う気持ちがあるならもっと自分を大事にしてよ。フィーの身体は自分一人だけのものじゃないんだから」

 

 クシェルの言葉を聞いたフィールは泣きじゃくりながらも首を縦に振り、そして言った。

 

 ―――クシェルが死んだら私も死ぬわ、と。

 

✡️

 

 泣きに泣いてようやく気持ちが落ち着いたフィールが泣き止んだ後、ピアスとイヤーカフを一旦外して丁寧に洗ってからお互い服を脱いだフィールとクシェルは浴室に足を踏み入れた。

 先に身体と髪を念入りに洗い、高めに結って湯船に浸かる。

 チラリと隣に居るフィールを見ればカモミールとラベンダーの入浴剤の香りも相乗効果としてあるのか、大分リラックスしている様子にクシェルはホッと胸を撫で下ろした。

 

「フィー、今のところ気分は?」

「さっき沢山泣いたから落ち着いてるけど……最愛の人がすぐ隣に居ると思うと、そういう意味では媚薬関係無しにドキドキしてるわよ」

 

 ……本当にこの人は何故こういう時だけはこうも恥ずかしいセリフを平然と言えるのだろうか。

 お湯に濡れた姿と相まってクシェルは少しずつ理性が崩れていくのを感じる。

 何気無く視線を顔から下に移せば、過去にフィールの右上半身と首筋に刻まれた痛々しい傷が眼に入り……本来であれば(家族を除いて)自分のみが知っているフィールの裸も艶かしい姿も声も、他人に、それもあんなクズ共に見られ聞かれたのかと思うと、腹立たしい気持ちが再び沸々と沸き上がった。

 

「く、クシェル……?」

 

 気付いたらクシェルはその場に縫い止めるようにフィールの背中を壁に押し付け、両手首を掴んで固定していた。

 戸惑ったフィールの声を無視してクシェルは無言のまま真っ直ぐな眼でフィールの蒼い瞳をじっと見つめ……不意に唇を押し付けて舌を入れた。

 

「んっ……」

 

 舌を絡め合う深いキス。

 その行為自体は慣れている筈なのに、事情が事情だからか普段以上に身体が熱くなる。

 入浴中でお互い裸なのも原因かもしれない。

 そんな事を考えながらクシェルはひたすらフィールの口内を掻き乱す。

 薄目でフィールの様子を窺えば、恥ずかしさから頬を紅潮させながらもクシェルからのキスを抵抗する事無く受け入れ応えている。

 胸の形が変わるくらい裸の状態で密着している状況もまたクシェルの理性を焼く一因であった。

 

(ハァ~……。本当、フィーから『私を襲った部下を殺して』って頼まれたら今すぐ喜んでナメック星爆発の5分よりも早く全員血祭りに上げてやるのに……。まあ、私らがわざわざ殺らなくても多分と言うか絶対フィーのお母さんお父さん達が夢の中で代わりに殺っといてくれるだろうから、現実世界で例のゴミクズクソ野郎共を殺すのは明日の警告を無視したらでいいか)

 

 何て物騒な事を考えつつ、クシェルは唇を離すとピアスとイヤーカフを付けていないフィールの耳に口付けし、吸い付き、キスマークを付ける。

 

「っん……、あ、はぁぁ……んっ」

 

 甘く掠れたフィールの声がクシェルの鼓膜を震わせる。

 頭の芯が痺れ、もっとその声を聞きたい、啼かせたいと強く思い、口に含んで優しく甘噛みし、チロチロと舌先で舐めて口内で転がす。

 

「ぁ、ん…っ……、クシェ………ル……っ」

 

 ギュッ、とフィールの方から抱き付いてくる。

 服の上からとは全然違う、赤みを帯びた色白の素肌の柔らかい感触と熱い身体の熱が己の体温と混ざり合い、片腕で抱き締め返したクシェルはもう片方の手でフィールの太腿を焦らすように撫で、耳から首筋に向かって舌を這わせた。

 

「ぁっ……ぁっ……、は、ぅ…、んん………っ」

 

 吐息混じりのフィールの喘ぎ声が湯煙が立ち籠めた浴室内に響く。

 部下にされた時のような不快感と言う不純物が一切混ざっていない純粋な快感は媚薬の効果と相まって凄まじい。

 ピアスとイヤーカフのしていない耳を責められる度、舌先でうなじをなぞられる度、一つ、また一つと男達に植え付けられたトラウマが上書きされていく。

 目の前に居る相手が身も心も許した最愛の伴侶であるからか、普段は狼のような鋭さを持つ蒼い瞳も今はトロンと快楽に溺れていた。

 

(ああ……。もう、無理、限界……)

 

 元々クシェルは独占欲が強い方だ。

 モノと言う表現があまり宜しくないのは重々承知だが、完全に恍惚とした表情でこちらを見つめるフィールのエロい顔と嬌声が悪いんだ、と一人で勝手に責任転嫁し……。

 

 「フィールは自分のモノ」と言う証や実感が無性に欲しくなったクシェルは、彼女の綺麗な首筋に歯を立てて強く噛み付いた。

 

「痛ッ……! んんんっ……!」

 

 気が抜けていたところに不意打ちで思い切り噛まれたフィールの全身がビクビクッと強張る。

 それからゆっくりと力を抜き一度は皮膚に埋もれた歯が完全に首筋から離れれば、見るからに鮮やかな歯形がくっきりと現れていた。

 それを見たクシェルは自分のモノと言う証が出来たようで愛おしく思うのと同時に痛い思いをさせてしまった申し訳無さを感じ、痕を癒すように優しく舌を這わせる。

 

「っ……、クシェル……」

 

 強張りが解けると全身の力が抜け切ってしまったのか、フィールは脱力した様子でクシェルに凭れ掛かり、膝から崩れ落ちる。

 骨抜きにされるとはまさにこの事だった。

 

「……擽ったいから止めて……」

「ごめん、フィー……痛かったよね」

「ん……確かに痛かったけど……怒ってはないわよ」

「? どうして?」

「だって……こうすれば、私はクシェルのモノだって周囲にハッキリと認識させられるでしょう?」

「……虫除け的なヤツ?」

「それもあるけど……」

「けど?」

「どうせ支配されるんだったら……この世で唯一、いや、死んでもクシェル以外認めたくないわ。クシェルになら……例え支配されても構わないし、クシェルは『私のモノ』だって迷う事無くハッキリ言えるもの……」

 

 息も絶え絶えに拙く言葉を紡ぎながら一瞬だけフッと微笑んだフィールは真っ直ぐにクシェルの翠の眼を見つめ、背中に両腕を回して肩に顎を載せる。

 

「お願い……。今日の嫌な出来事は……全部貴女の記憶(いろ)で塗り替えて忘れさせて。……私を、助けて」

 

 懇願するフィールの声は微かに震えていた。

 明日の朝、今頃はライリー達が調合しているであろう解毒剤を飲んで身体が元通りになるまで生き残れるかはフィール自身の運にも掛かっている。

 仕事で危険な任務に向かう時とは別の恐怖が少なからずあるのだろう。

 クシェルはフィールを抱擁し、安心させるようにふわりと柔らかく笑む。

 

「勿論。フィーは私が、私達がちゃんと助けるから心配しないで。……今宵は私以外考えられなくなるくらい朝まで抱き尽くすから覚悟してね?」

「ふふっ……優しくお手柔らかにお願いするわ」

 

 クシェルの微笑みを見て少しは不安が和らいだフィールは微笑み返し、クシェルに身も心も委ねる。

 フィールは絶対に死なせない。死なせて堪るか。

 改めてそう決意したクシェルはフィールの濡れた唇に三度目の口付けを落とし、のぼせる寸前になるまで夢中で濃厚なキスを堪能するのだった。

 

✡️

 

 翌朝、昨日の入浴後から夜明けの現在に至るまでノンストップで肌を重ねた二人の顔は互いに隠し切れない疲労と眠気が見て取れた。

 定期的に眠気覚ましの薬も服用してどうにか耐え凌いだとは言え、流石にこの持久走はキツ過ぎた。

 しかしその甲斐あってフィールの身体からは粗方媚薬が抜けた為、今の状態であればライリー達が作ってくれた解毒剤を飲んでも後遺症……体内を巡る疼きは再発しないだろう。

 ライリーとクリミアによる念入りな診察の末、彼女らが調合してくれた解毒剤を全て飲んだフィールは自身の身体から完全に媚薬が浄化されたのを感じ、この時ばかりは疲労と眠気を忘れて歓喜した。

 喜色満面な様子のフィールに女性癒者トリオも満面の笑顔を浮かべる。

 

「その様子……もう大丈夫みたいだね」

「ええ……。ありがとう皆。私を助けてくれて。貴女方には感謝してもし切れないわ。勿論、此処には居ないドラコにも」

 

 フィールが最大級の感謝を込めて礼を述べれば、三人は堪らずフィールをギュッと抱き締めた。

 媚薬に侵されていた時はビクッと震えていた身体も今はそのような反応は一切起きない。

 

「フィー! フィー! 良かった、本当に! 本当に……!」

「昨日からずっと気掛かりで仕方無かったけど、これでやっと心の底から安心したわ。フィールもクシェルも……昨夜はよく頑張ったわね」

「一時はどうなることかと思ったけど……無事乗り越えられて私達も本当に嬉しいわ。今日の夜は二人の好きな物、沢山作るから楽しみにしてなさい。勿論ハリー君達も一緒にね」

「やった! お母さんが作る手料理! ベイカー家の三ツ星!」

「お義母さん……何から何までありがとうございます」

「娘を心配するのは母親として当然よ。フィールちゃんも私の大事な愛娘なんだから、こういう時は素直に甘えなさい」

「はい……」

 

 ライリーの優しい言葉がフィールの胸に染み渡り涙ぐむ。

 頭を優しく撫でたライリーは「二人共、着替えを持ってきているからまずはシャワーを浴びてさっぱりして来なさい。皆には私達から伝えておくから」と言い、頷いたフィールとクシェルは自然と手を繋いで脱衣室へと向かった。

 二人の後ろ姿が消えるのを見届けたライリーとクリミアは「良かった良かった」と顔を見合わせ、病室を後にする。

 病室の外では解毒剤の調合者の一人であるドラコが壁に背を預けて腕組みしていた。

 

「……どうやらベルンカステルは無事生き延びれたみたいだな」

「ええ。今はちゃんと解毒剤が効いて元気を取り戻してたわ」

「……そうか」

「ドラコ君も長時間作業を手伝ってくれてありがとう。フィールちゃん、凄く喜んでいたわよ」

「……………そうですか」

 

 ライリーから感謝の言葉を受けたドラコはフイッとほんのり紅く染まった顔を背ける。

 いつまで経っても素直じゃないドラコにフッと穏やかに笑ったライリーは彼の頭を優しく撫で、「子供扱いしないでくださいっ」と恥ずかしそうに慌てた時、タイミングが良いのか悪いのか、ハリー達がキングズリーも連れて此処へやって来た。

 ハリー達はニヤニヤ笑ってドラコを弄り、ドラコはドラコでキッと鋭い目付きで彼等を睨む。

 

「ライリー。フィールとクシェルは?」

「今は二人共シャワーを浴びに行ってるわ。勿論フィールちゃんは無事よ。媚薬は完全に解毒されたわ」

 

 ライリーからの朗報にその言葉が聞きたかったハリー達は揃って安堵の笑みを浮かべ、胸のつかえが取れてホッとした。

 特に昨日のフィールの酷い有り様を実際に自分の眼で見、同じ女として彼女が受けた恐怖や嫌悪感を本能で理解していたハーマイオニーは誰よりも心配していた為、フィールの無事を聞けただけでも嬉し涙が溢れた。

 それから暫くしてフィールとクシェルが病室から出て来た。シャワーを浴びて着替えを済ませた二人はさっぱりしていて、ハーマイオニー達を見るなり顔を綻ばせる。

 

「フィール……!」

 

 自分の眼で確認するまでは流石に不安だったのだろう。

 フィールを眼にするなり、ハーマイオニーは真っ先に彼女に抱き付いた。

 身体がキツいフィールを気遣い、力加減はしている。

 

「フィール。その……僕達は君にハグしても平気かい?」

 

 襲ってきた対象が「闇祓いの男」だからか、ハーマイオニーみたいに衝動的に抱き付けないハリーとロンは不安げな表情を浮かべていた。

 あのような出来事が起きれば例え親友であっても抱擁するのに抵抗があるかもしれない、と言う二人の心遣いに目元を和らげたフィールは察したハーマイオニーが身体を離したら自ら歩み寄り、二人に抱き付く。

 

「ハリー達なら大丈夫よ。……昨日は言えなかったけど二人も私を助けてくれてありがとう。貴方達が助けに来てくれなかったらどうなっていたか……」

「! ……ごめん、フィール。僕が判断ミスしなければあんな思いをさせなくて済んだのに、本当にごめん……」

「もう気にしないで。私も悪かったし。今後はもっと気を付けるから。……私の方こそ心配掛けてごめんなさい」

「ま、何はともあれ、君がこうして無事元通りになって良かったぜ」

 

 ハリーとロンは嬉しそうに笑って自分達より華奢な身体を擁き、フィールも自分より大きな背中にそれぞれ腕を回す。

 同じ闇祓いの男でもハリーとロンの手はとても優しかった。

 その様子を温かく見守っていたハーマイオニーはクシェルにそっと近寄り、「ありがとう、フィールを助けてくれて。クシェルもお疲れ様」と感謝と労いの言葉を掛ける。

 

「ライリーさんも言ってたけど……身体は一晩で治っても傷付いた心は治らないから。私達の前では無意識に気を遣ってかなるべく普段通りに振る舞っていたのが気掛かりだったけど、あの様子ではちゃんと泣けたようで心底安心したわ。クシェルが居なかったらどうなってた事か……」

「ハーマイオニーも。昨日は私のフィーをハリー達と一緒に例のクズ共から救ってくれてありがとね」

「どういたしまして。……親友の身に危険が迫ればどんなに遠くに居ても助けるのは親友として当然の事でしょう?」

 

 クシェルとハーマイオニーのやり取りを黙って聞いていたライリーとクリミアは「フィールは本当に良い友達に恵まれてるのね」と眼と眼で会話した後、ハリーとロンとハグしているフィールをじっと見つめているドラコの視線に気付いて声を掛ける。

 

「ドラコ君はフィールちゃんにハグして来ないのかしら?」

「はっ? 何で僕がベルンカステルを……」

「だって貴方、暇さえあればずっと『フィールが無事生き延びれますように』ってお祈りしてたじゃな……」

「あああああっ! 言うな言うな!」

「それなら、ほら」

「行って来なさい」

 

 クリミアとライリーはトンッ、とフィールの方に軽くドラコの肩を押す。

 振り返ったフィールを前にしたドラコは暫し躊躇していたが、前後から突き刺さる「早くしちゃえよー」と言う視線やクシェルが何も言ってこない事から軈て意を決したのか、もうどうにでもなれ、と言う破れかぶれに近い気持ちでドラコは力加減を忘れてフィールを強く強く抱き締めた。

 

「ちょっ……ドラコ、痛い……」

「痛くて結構だ。この底抜けのあほんだらが。いっそのことこのまま窒息死させてやろうか? 敵対してる筈の人間さえも身体張って命懸けで守るようなお人好し大バカ野郎が同じスリザリンの同級生だったなんて笑い話もいいところだ」

「……私、野郎じゃないんだけど」

「黙れ。コイツ、僕の気も知らないで……」

 

 ギュッと抱き締める腕に更に力を加え、呼吸がしづらいフィールの耳元にドラコは唇を寄せる。

 

「……お前に何かあれば悲しむヤツ等がいるって事、いい加減自覚しろ。昨夜だってアステリアにスイーツ店の伝言を伝えたら、守秘義務からお前が任務中に部下に襲われた事は教えてないにも関わらず『突然そんな事を言うって事は何かあったのか?』って感付いてたんだぞ。頼むから無謀な行動は止めてくれ」

 

 何かを押し殺すようなそんな声だった。

 心做しか震えているようにも感じる。

 

「あの、ドラコ……心配してくれてるのは凄く嬉しいんだけど、耳、弱いから……っ」

 

 フィールにだけ聞こえる声で、耳のすぐ近くで囁いたせいで彼女のそれは昨日の事もあり今まで以上に敏感になって真っ赤に染まっていた。

 本当にコイツ、底抜けに耳が苦手なんだな……とドラコは意地悪そうにくつくつと笑う。

 

「副局長様とあろう者がこんな微弱な刺激に我慢出来ないなんてなあ。それでも本当に闇祓いNo.2か?」

「ぁ……ダメ、ホントにやめて……っ…」

「くくくっ……」

 

 喉を鳴らして笑うドラコに改めて皆の前で弱点を暴露されて「うぅ……」と羞恥心で涙眼になるフィールだったが、そこでふと、いつの間にかドラコが腕の力を緩めて優しく背中を撫でているのに気付き、

 

「まだ言ってなかったけど……ドラコも夜遅くまで解毒剤を作ってくれて、そして心配してくれて、本当にありがとう」

 

 いつもの男性口調から一変、柔らかい口調になって破顔した。

 背中を摩っていた手がピタッと止まったドラコは軽く眼を丸くし、反射的に否定し掛けたものの「……ふん」とお得意の澄まし顔をするだけで言い消す事はしなかった。

 ドラコとのハグを終え、他にも心配してくれた人達全員にフィールが感謝と謝罪の言葉を伝え終わったタイミングを見計らって「ライリー、例の部下共は今何処に?」とキングズリーが問い掛ける。

 

「此処から離れた病室に一人残らず集めているわ。……診察の結果、彼等から媚薬の成分は一切検出されなかった。診察時、彼等は『媚薬の影響を受けて身体が言う事を利かなくなり副局長様を襲ってしまった』と証言したけれど、もしも本当に薬に当てられていたのなら多少なりとも成分が検出されているわ。だから最後に真相を確かめるべく真実薬の入った飲み物を今から飲ませに行く。その上で本人達に直接問い詰めて昨日の証言と一致しなければ……彼等はハーマイオニーちゃんの言うように、フィールちゃんを襲ったのは媚薬のせいではないと言う何よりの証明になるわ」

 

 ライリーの言葉を聞き、改めて全員の胸に抑え切れない怒りの炎が燃え上がる。

 

「……ねえ、フィー。私も含めて今から皆で例のクズ共の所に行って来るけど嫌だったら先に寝てていいんだよ。私は一言警告したらすぐ戻るから……」

「いや……何度も言うけれど今回の件は私にも責任があるから。副局長としてけじめを付ける為にも伝言としてではなく私の口から直接部下達に言って最後にしたい」

「……分かった。フィーがそう言うなら私はフィーの意思を尊重するよ。でも辛くなったらすぐに言ってね?」

「ええ……そうするわ」

 

 フィールが頷いたのを見て、「ああ、それと」とライリーは皆の顔を見回す。

 

「彼等の病室には私達以外の人間には話し声も物音も一切聞こえないよう防音魔法を施して、他の癒者達にも暫く立ち入りを禁止しているから。安心して大声出しても問題無いわよ。さあ参りましょうか。もうじき睡眠薬も切れる頃よ。……皆、くれぐれも殺さないようにね。彼等は殺すだけでは償いにならないのだから」

 

✡️

 

 と言う事で例の部下(クズ)達が集められている病室の前までやって来たライリーは皆に軽く頷くと、ノックして病室の中へと消えて行った。

 ライリーの思った通り、彼等は少し前から目覚めていたようで今すぐ呪いを掛けてやりたい衝動を必死に抑え込んでライリーは至って普通に話し掛ける。

 

『おはよう。気分はどうかしら?』

『あ、レイラインさん。おはようございます』

『十分睡眠を取ったので調子が良いです』

『そう……それなら良かったわ』

 

 本当は全くそう思っていないのだが、表情と声音には出さないで表面上は出来るだけ穏やかに笑み、しかしその実眼の奥は全く笑わないで一言二言会話を交わした後、ライリーは持ってきたグラスを彼等に手渡した。

 まさかその中身に真実薬が入っているとは微塵も思っていない彼等は素直に受け取ってすぐに飲み込む。

 ライリーは密かに薄ら笑いを浮かべた。

 

『あ、そうそう。私、貴方達に二つ程確認したい事があるのだけれどいいかしら?』

『何ですか?』

『貴方達は本当に媚薬の影響を受けてフィールちゃ―――副局長様を襲ったのかしら?』

『―――ッ?!!』

『昨日は敢えて黙ってたけど分析の結果、あの媚薬は対象者の熱を一晩だけ燻らせるものであり、周囲にまで悪影響を与える効果は判明されなかったのよ。つまり……貴方達は故意に行ったのよね? 「媚薬のせい」と言う虚言を吐くにはこれ以上無い名目を盾にして副局長様を襲ったのは』

 

 何の前置きも無く切り出されて動揺していた彼等は一瞬答えに詰まり、「違います」と否定しようとして……出来なかった。

 

 

『―――ええ、その通りですよ。俺等は媚薬の影響を受けてません。副局長を襲ったのは俺等自身の意思です』

 

 

 これで決定だ。

 彼等は媚薬の影響など受けていなかった。

 言い逃れ出来ない返答を聞けた以上、彼等を罰するのに躊躇う必要は無い。

 一方、どういう訳か口が勝手に動いて意思とは反対にペラペラと秘密を打ち明けてしまった彼等はサーッと顔面蒼白していた。

 何故? と分かりやすいくらい?マークが顔に表れている彼等にライリーはあっさりネタバレする。

 

『貴方達がさっき飲んだ飲み物には真実薬が入っていてね。だから自ら暴露したのよ。勿論、シャックルボルト大臣から正式に使用許可を貰った上で使用してるから抵触はしてないわ』

『なっ……ぁ……』

『もう一つ訊くわ。何故貴方達は上司である副局長様を襲ったの? 返答次第では……分かっているわよね?』

 

 穏やかな声から辛うじて激しい怒りを抑圧する低音ボイスに変わったライリーが問い質せば、自暴自棄になったのか真実薬の効果が強過ぎたのか、高揚した彼等は包み隠さず全てを告白する。

 

『そんなの、憧れの副局長様を堂々と襲える千載一遇のチャンスだったからに決まってるじゃないですか! 魔法薬のせいと言う事にすれば俺等は不可抗力って事で無罪放免、悪くても数週間の謹慎処分……こんなまたとない機会、俺等が見逃す訳が無いでしょう?』

 

 ブチリ。

 と、ライリーを含め病室の外に居る皆は自分達の中で何かが確実にキレる音がした。

 それでも興奮した彼等の暴走は止まらない。止められない。

 

『いやぁ……それにしてもまさかあの副局長様を好き勝手出来る日が来るとは夢にも思わなかったな……!』

『副局長最っ高だった……!』

『あのエロい表情(かお)、喘ぎ声、しなやかな身体……もう思い出すだけで滾るわぁ……!』

『超激レアな副局長の泣き顔も見られたし、あの端整な顔が俺達の手で乱れてぐしゃぐしゃになる様はそそったなあ……』

『にしても副局長ってやっぱスゲーよなぁ……。あんな状態でも男の俺等より強かったし』

『でもそっからこっちがケガしないようにって本気の抵抗しなくなったのはスッゲー可愛くって萌えたよな!』

 

 次の瞬間。

 愛娘に汚い手を出した目の前の男共に対する殺意と憎悪が頂点に達したライリーが杖を抜くよりも早く、我慢の限界を迎えて力任せに勢いよくドアを開けた人物がつかつかと歩み寄り、

 

 バチンッッッ!!!

 

 と、最早そのまま殴り殺す勢いで彼等の頬に一発平手打ちを食らわせた。

 

「―――ふざけた事を抜かすのも大概にしなさい!!! 貴方達の身勝手な行為のせいで一人の女性の心に一生癒えない傷を負わせた事がまだ分からないの!!? 曲がりなりにも魔法界の平和を守る闇祓いの一員でしょう!!? どうしてそんな人達が女性を、それも自分達の上司である副局長を傷付けてそんな風に悪びれもせず平然と笑っていられるのよ!!! 闇祓いが聞いて呆れるわ!!! 闇の魔術や魔法使いに対抗するには仲間の存在が何よりも大切だと習わなかったのかしら!!!?」

 

 大の男が痛みと衝撃で床に倒れる程の強烈なビンタをお見舞いしたのはハーマイオニーであった。

 阿修羅と表現しても大袈裟ではない鬼のような形相で怒鳴り付けたハーマイオニーの怒鳴り声はビリビリと室内に響き渡り、一瞬で興奮から冷めた男達は思わず身を寄せ合ってガクガクブルブル震える。

 もう、いいだろう。

 ハーマイオニーの突撃を機に部屋の外で待機していたハリー達はゾロゾロと入室し……凄まじい怒りの表情や「ないわー」と言うドン引きした表情、能面のような顔で冷たく静かに見下ろす自分達の上司と、今しがたまで話題となっていた副局長の姿を認めた男達はこの世の終わりと言わんばかりの表情になった。

 

「だ、大臣……局長……副局長……」

「やあ、お前達。今の気分はどうだい?」

 

 言葉だけ見ると一見穏やかそうだが、その実ハリーの眼は一っっっ切笑っていなかった。

 まあ、それは他の皆もそうなのだが、一番はやはりクシェルだろう。

 気付けば何かを通り越して無表情のクシェルの瞳は絶対零度と言う言葉すら生温いレベルで酷く冷え切っていた。

 

「本当に魔法薬のせいだったのなら被害者のフィールの擁護に免じて精々1~2週間の自宅謹慎処分で済ませるつもりだったが……そうじゃないならそれ以上の罰を考え直さないといけないな」

「闇祓いの一員とあろう者が既婚女性を襲っただけには留まらず? あまつさえ魔法薬のせいだとデタラメを吐き散らして? 何食わぬ顔で元通りの生活を送るつもりだったとか、過去に『服従の呪文』で操られていたと嘘八百を並べてのうのうと生きてた死喰い人と大差無いな。クズにも程があんだろ」

 

 何も映していない視線を部下達に向けるハリーのロンの顔に時に優しく時に厳しく指導してきた上司の面影はもう見られない。

 あるのはただ、度が過ぎる程の最低(ゲス)な犯罪者を見据える時と同じ凍てついた眼差しだけだ。

 

「……アンタ達」

 

 他の面々が口を開くより先にゆっくりと近寄ったフィールはしゃがんで目線の高さを合わせ、少し離れた場所でこちらを見つめる嘗ての部下達を見つめ返す。

 

「……理由はどうあれ魔法薬を浴びたのは私の自己責任だし、私が無謀な行動をしなければアンタ達に襲われずに済んだのも事実だから、()()アンタ達を責めるつもりはない。媚薬の影響の有無関係無くな。だけど……それでも……媚薬のせいではなくアンタ達自身の意思によって襲われ、挙げ句の果てに犯されそうになった事だけは……どうしても許せないし、アンタ達を信じる事ももう出来ないんだ。同じ闇祓いの仲間として信頼していた部下(ヤツ)に裏切られた事実もまた変わらないから」

「……ッ!!」

「もしもアンタ達が私に対し申し訳無さを感じているなら……もう二度と、私の前に現れないでくれ。関わらないでくれ。触れないでくれ。……それがアンタ達に課す私からの最後の上司命令だ」

 

 苦しみと哀しみを織り混ぜたような声音で、辛さの滲んだ面持ちで最後の「上司命令」を言い渡したフィールは苦しい表情を隠すように顔を伏せる。

 初めて見る副局長(フィール)の弱々しい姿に嘗ての部下達はようやく自分達が何を仕出かしたのか、本当の意味で理解し……冷水を内蔵にぶちまけられたような、そんな感覚に襲われた。

 

「フィー、そろそろ戻ろう」

「……うん」

 

 クシェルの手を借りて立ち上がったフィールは見上げる男達の視線から逃れるように背を向ける。

 男達はその悲壮感漂う後ろ姿に思わず声を掛けようとしたが、クシェルの鋭い目付きに牽制され、息を飲んだ。

 

「まどろっこしい言い方は嫌いだから単刀直入に言わせて貰う。これは最初で最後の警告だ。よく聞け。―――二度とその面見せるなよ。フィーの前にも私の前にも一っっっ切現れるな。次に警告を無視してお前等の姿がちょっとでも視界に入ったら……一人残らずブッ殺す」

 

 とんでもない殺意の籠った眼差しと全身から溢れ出る殺気中の殺気。

 それを全面的に当てられた男達は一度は白眼を剥いて失神したが、間髪入れずにライリーとクリミアが蘇生魔法を掛けた為、自分達が気絶した事に恐怖と言う色で頭も心も魂も染まっている彼等は気付かなかった。

 最後に舌打ちを残してクシェルはフィールを連れて病室から出て行く。

 後悔に打ちひしがれる男達はそれを黙って見送る事しか出来なかった。

 

「お前達」

 

 今更ながらの謝罪すら許されない、そんな男達を「自業自得だな」と肩を竦めながら自責の念に押し潰される彼等にハリーが一言、代表して冷たく言い放つ。

 

「僕は心底失望した」

 

 その時の彼等の表情は今も、そして後に闇祓い局ひいては魔法省から姿を眩ませてからも分からないままだ。

 

✡️

 

 完全なる決別を言い渡して昨夜使用した病室へと戻って来たフィールとクシェルは一直線にベッドに向かって身を投げ出した。

 お互い心身共に疲れ果てて眠気がピークに達している。

 

「フィー……よく頑張ったね。偉かったよ」

「クシェル……ありがとう。最後まで私を支えてくれて。私の事、助けてくれて。……本当に、お疲れ様でした」

「うん。フィーもお疲れ様。……今日はもう、夕方まで寝ちゃおっか」

「ん……そうね」

 

 寒くならないように掛け布団を被り、お互い抱き付く形で眼を閉じる。

 

「……おやすみ、フィー。良い夢見てね」

「おや、すみ……クシェ、ル……」

 

 すやすやとフィールは深い眠りに落ちていく。

 安心し切った穏やかな寝顔を薄目を開けて見たクシェルは柔らかく微笑んでフィールの黒髪を優しく撫でると、再び瞼を下ろして自身も彼女と共に夢の世界へと旅立った。




【ドラコ】
通称「ツンデレの王子様」。
そしてある意味では今回の影の功労者とも言う。

【やっっっと唇でキスしたクシェフィル】
IF含めて本編でもクシェフィルが作中で唇キスしたのはこれが初めてとか……本当に長かった。

【ハーマイ鬼ー】
その姿、まごうことなき阿修羅。

【モブ部下'sの末路】
その後、ハリー達にキツ~いお仕置きをされて最終的に強制退職になった。まあ、当然ですね。
そしてその日の夜は夢の中で死んだ親世代と姉世代に魔法的にも物理的にも死ぬ程クルーシオされて最後はアバダされた瞬間に起きると言う人生最大の最悪の目覚めを経験した。
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